性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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これを、馬鹿なことだって思える貴方が、私達を見守っていたから

 成る程、この場合……

 

でも何故?

     さあ、でもこの時はこういう反応が多い

 

 

 

  この感情に関しては? 全部同じだろうに

 

             反応が複雑だね

 

                   統計が難しい

   後回しにしよう

 

 

 

 嗚呼、またこれだ。

 理解出来ない感情を、自分という同族を通して理解しようとする無遠慮な視線。

 理解出来るはずもないのに真似ようとする同族達による観察。

 五感に頼る間は、そちらに意識を割いて無視しているのだが、今はその五感がない。体を乗っ取られた。

 乗っ取られたという言い方も正しくはないのだろうが…………。

 

 

   この年の子はこの時

 

でもこっちの子は      家庭環境的に似たようなもののはずだけど

 

 

 気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い気持ちが悪い。

 一丁前に理解できると思っているなら勘違いも甚だしい。触れるな、見るな、聞くな。

 ただ俺は俺が感じたものを俺だけのものにしたいのに。

 誰かに伝えるのは、己の意思でしたいのに。

 そんな当たり前をどうしてさせてくれない。

 学べよ、何万年の時を解析に費やした。

 それでも学べなかったのがお前らだろう。いい加減に、放っておいてくれ。

 

 

 

 

「………ど、どうしてキュゥべえが、ごんべえの体で」

『僕達の身体は本来母星そのものだからね。端末自体は何時でも変えられるんだ…………ごんべえのは少し改造されてるけどね』

 

 爪を出し入れして説明するキュゥべえの姿は、ごんべえの体を使っているというのがありありと解る。

 牙や爪があるのはごんべえだけらしい、それに慣れないのだろう。

 

『彼は優秀だ。契約数こそ少ないが、個体値とでも言うのかな? 魔法少女一人一人が生むエネルギーは群を抜いている。だから、彼の行動には目を瞑って、観察させてもらってたんだけど…………やっぱり、君ほどの逸材を見逃すのは僕達の使命に反するよ』

「っ! 私は、断ったよ………!」

『そうだね。でも、人間は自分や他人の死を前に願うだろう? マミ達の誰かが死んだり、ワルプルギスの夜を止められずここまで来てしまえば願ってくれると思うんだ』

「……………」

 

 悪意なく誰かの死を考える目の前の生き物に、ヒュッと息を飲むまどか。キュゥべえと話せば話すほど、なまじごんべえという例外を知るからこそ悍ましく映る。

 

『君が願いを決めた時に僕達が間に合わず、君が死んでしまったりしたらそれは宇宙にとって大きな損失だ。だから、それまでここにいていいかな?』

「いい訳、ないでしょ…………」

『どうして?』

 

 まどかの拒絶を理解出来ないキュゥべえは首をひねる。ごんべえの体で………可愛らしい容姿で行っているのにただただ不快。

 

「今すぐごんべえから出ていって!」

『君達は知覚できない魂を重要視するくせに、どうして肉体までも固執するんだい? 訳がわからないよ』

 

 肉体も、魂も、どっちも大切に決まっている。

 魂はその人で、肉体は、その人がこの世界で誰かから血を受け継ぎ共に過ごした軌跡。ごんべえの肉体だって、ずっと魔法少女達と共にあったはずなのだ………。

 

「貴方には、何も理解できないんだね」

『何を指しているのか解らないけど、きっと君の言いたいことを理解できていたら、僕等はこんな星に来てないからね』

 

 この星も、ごんべえにとっては悠久の時を誰かと歩んだ星でも、彼等にとってはただエネルギー回収するためだけに足を運んだ、その程度の認識なのだろう。

 

「………貴方は、私が魔女になったらどうするの?」

 

 まどかが魔女になる時は、即ち星が滅びる時だ。感情エネルギーを持つ生き物どころか、生物そのものが死滅する。ならば当然彼等は他の星を目指す。

 

「ごんべえを、どうするの?」

『文明の発展を手伝ってもらうよ。僕達がごんべえのマネをして文明発展させてみても、この星ほど感情エネルギーを出す知的生命体はいなかったし、うまく行ったと思った星も魔女に滅ぼされたしね』

「……………また、ごんべえにやらせるの?」

『彼は僕等以外の話し相手を欲しがってるからね。この星が駄目になれば、また新しい文明を作ると思うよ』

「………………」

 

 きっと、彼はそうするだろう。インキュベーターの使命ではなく、一人ぼっちが寂しいから。そしてきっと、またその繋がりを無遠慮に覗かれ利用される。

 

「ごんべえは、貴方達にとってバグなんでしょう? もう、放っといてあげてよ」

『「ごんべえ」というバグは結局のところ僕等の一部だからね。そもそも切り離すなんて不可能だよ。まどか、君は君の体の細胞を切り離して生かし続けるなんて出来るのかい?』

 

 あくまで本体はキュゥべえ達であり、ごんべえはそこに生じた異常でしかない。魂の根源は母星にあり、ごんべえもキュゥべえ達もそこから派生した人格に過ぎない。

 

「………私なら、出来る?」

『…………もちろん!』

「……………」

『それが君の願いかい、まどか?』

 

 願えば、叶う。でもそれは、自分を守ろうとしていたほむらの祈りを無駄にする願い…………。

 

──…………俺の願いを叶える、とでも言う気か? 

 

──ううん、気になっただけ

 

──…………俺の願いは生まれた時から変わらねえ

 

──生まれた時から?

 

──俺達に赤子時代なんてもんはねえ、体が用意されて大本の人格から別視点になる

 

──そうなんだ………

 

──だから、生まれた時からずっと俺が思う事は一つ。一人になりたい。俺は唯一つの生き物になりたい

 

 きっと貴方も怒るだろう。馬鹿な真似をしたと罵るだろう。

 こんなことを望まないと知ってる。だからこれは、自分の我儘。

 

「ごんべえを、人間にして。貴方の一部じゃない………人と触れ合い、人と歩けるただの人間にして………」

『契約は成立だ。君の祈りは、エントロピーを凌駕した』

「っ!? く、う………ああ!!」

 

 胸の奥から、大切な何かが抜け出ていく感覚。光が集まり、やがてそれは桃色に輝くソウルジェムとなる。

 まどかの目の前には真っ白な見滝原中学の服を着た白い髪の少年が倒れていた。赤い瞳を開けた少年は己の体を困惑するように眺める…………

 

「ごんべえ、なの?」

「っ! お前一体、どういうつもりだ!!」

「うっ!!」

 

 人にしては鋭い歯を剥き出しに、怒りのまま吠えまどかを壁に押し付ける少年、ごんべえ……。やっぱり怒った、と冷静な部分がそんなふうに彼を見る。

 

「誰が人間になりたいと願った! 誰が一つの生き物にしてくれと頼んだ! あれは、俺の願いだ。俺の望みだ、お前に干渉される謂れはない!」

「私、だって………そう、だよ…………」

 

 嘗て向けられたこともないほどの怒りを向けられながらも、まどかはごんべえを真っ直ぐ見つめる。

 

「貴方が死ななくなって、苦しんだように………これからも、苦しむかもしれない。それでも、私はごんべえにキュゥべえから開放されてほしいって、勝手に願った…………私のために、願ったの。私がそうしたいと思ったの………」

「……………お前は………お前達は、どうしてそう馬鹿ばかりなんだ」

「これを、馬鹿なことだって思える貴方が、私達を見守っていたから……かな」

「………はっ。俺の自業自得ってわけか」

 

 自嘲するように笑いまどかから手を離すと、床に座り込むごんべえ。

 

「ただ一つになったところで、俺は別に救われない。無駄なことをしたな」

「そうかも………でも、私はごんべえが私の願いで苦しむところを見るまでは、後悔しないよ」

「……………そうかよ」

 

 ごんべえは目を合わせようとしない。怒っているのだろう。

 

「お前が世界を壊すかもな」

「そうならないように、気をつけます」

 

 ごんべえの皮肉に苦笑いを浮かべながら返すまどか。嵐は、まだ消えない。

 

「行ってくるよ、ごんべえ。私は、貴方とも、皆ともまだまだ一緒にいたいから」

「勝手に………」

「勝手にするね」

 

 そう言って走り去る背中を見つめながら、ごんべえは眉根を寄せる。

 タルトもリズもフローも歴史に名を残せなかった者達も、老若男女問わず、一度決めたことを絶対に曲げない馬鹿がいる。何時だって自分はそれを止めることは出来ない。

 

「人間か………はっ。より無力になっただけだな」

 

 全てを知る情報網は既になく、ここにいるのは過去を知るだけの不死者。新しい身の振り方でも考えるか、と避難民の集まるひらけた場所に移動する。

 不安そうな顔をした人々ばかり。でも、まあ………救われるだろう。とりあえず今回は………

 

「ごおべ!!」

「あ?」

 

 と、足元に何かが引っ付いてきた。幼い子供………というかたつやだ。

 

「こらたつや! すいません、うちの子が」

「ぱぁぱ、ごおべ!!」

「え、この人が? えっと、その制服は……まどかのお友達かな?」

「ただの知り合いだ」

「えっと………でも、たつやと遊んでくれてたりしたんだよね? ありがとう」

 

 そうお礼を言う鹿目知久。取りあえず子供を回収させてさっさと離れようと顔を下に向ければたつやはジッとごんべえを見つめていた。

 

「ごおべ、やなことあーた?」

「あったあった。すげえムカつくけど、文句も言わせてくれねえ」

 

 たつやをヒョイと抱えて肩に乗せるごんべえ。たつやはキャッキャッとはしゃぐ。

 

「ただい………ん、その子は?」

「あ、まま。まどかは居た?」

「駄目だ、見つかんねえ…………何処行ったんだあいつ」

 

 心配そうに戻ってきたのは鹿目詢子。まどかを探していたのだろう。入れ違ったようだ……。

 

「まぁま、ごおべ!」

「そいつが………おい、私達がいない間に変なことしてねえだろうな?」

 

 たつやが知っているが自分達は知らない。なら両親不在のタイミングで家に来たと思うのが普通だろう。年頃の男女が、親のいない間にだ………。

 

「別に隠れてたつもりはねえよ。たつやだって俺の名前頻繁に出してたろ」

「……………そうか。ま、その辺はおいおい聞かせてもらうとして………まどかを知らないか? 急にいなくなって、何処探しても居ないんだ」

「知るかよ、あんな奴………」

「……………まどかは何処行った?」

 

 ごんべえの言葉に目を細め詰め寄る詢子。こういった手合は下手な誤魔化しなど効かない。たつやを知久に渡そうとするが髪の毛を掴まれた。

 

「やー!」

「たつや、また後でな」

「あとー?」

「後だ。抱っこでもおんぶでも肩車でもしてやる」

 

 ごんべえの髪を掴み引き離されまいとしていたたつやもその言葉に漸く手を離す。

 

「ここじゃ何だ、場所を変える」

「…………パパ、たつや見てて」

「うん」

 

 

 

「外に行っただと!? お前、それを止めなかったのか!?」

 

 先程ごんべえが娘にそうしたように、詢子がごんべえを壁に押し付ける。

 

「言って止まる口か、お前の娘は」

「っ!」

「自分で決めたことを曲げねえよ、あの手の娘は。育つのを見守ってたのに何時の間にか自立しやがる」

「ガキのくせにいっちょ前に子育て体験したみてえなこと言うじゃねえか…………まどかは、何しに行った」

「……友達の助けになりに」

「友達だぁ?」

 

 と、眉根を寄せながらも美樹家も娘を探していたことを思い出す。まさか、あの子も?

 

「人手が必要ではあるが、俺達に出来ることはない」

「出来ることがないからって、しない理由になるかよ! まどか達は何処行ったんだ!!」

「そこまでは知らねえよ」

「っ………くそ!」

 

 外に出ようとする詢子の肩を掴み、文句言いたげに振り返ったところで顎を打つ。

 

「て、め………」

「人の身もまぁまぁ便利だな」

 

 倒れそうになる詢子を支え近くのベンチにそっと寝かせる。詢子をその場に残し、ごんべえは風が唸り始めた外に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「せん………インキュベーター」

『なんだい?』

 

 街を歩くごんべえの言葉にヒョコッと現れ隣を歩くキュゥべえ。長年の付き合いで姿を見せた、とか言う理由ではないだろう。余計な時間は取らないのが此奴等の主義であることをよく知っている。こうして姿を見せたなら、それはつまり

 

「俺の因果は顕在か」

『そうだね。この星の、この宇宙の多くの文明を開くきっかけとなった君の因果は時間軸を束ねたまどかにも勝るとも劣らない……希望と絶望の振り幅が小さかったとしても、並の魔法少女を大きく上回るエネルギーが回収できるよ』

「そうか…………因果がそれなら、叶えられる願いにも上限はなさそうだ」

『ごんべえ………君は一体、何を願う?』




ごんべえ(人型)
 まどかの願いにより人の形を手に入れたごんべえ。インキュベーターのネットワークから切り離され自立した存在。
 まどかのイメージが反映されているので、ごんべえの特徴を残しており白髪赤目で歯は鋭い。
 髪は長めで赤いリボンで纏めている。見滝原の制服なのもまどかがイメージ出来る男子が制服姿だから。実は制服の背中に丸模様がある。
 中学生男子平均的な身長、体重があるので相手の顎をうち脳震盪を起こすのが楽になった。あと加減もできる。不滅性は健在。むしろ母星から切り離された結果、完全なる不死者。
 姿を特定の人間にしか見せないということが出来ないので居候として魔法少女の家を梯子する。願いによる奇跡で作られた体なので魔女を知覚できるが、戦えるとは言っていない。

本編後

  • マギレコでも魔法少女を誑かす
  • たるマギで家族3人でフランスを救う
  • たむらの旅につきあわされる
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