性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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今の所 ごんべえの設定は
一位 人型
二位 見滝原から
三位 いろはと



はんたーさんからファンアートをいただきました


別れもあったが、出会いがあって

「まどか、大丈夫!? っ、貴方は………誰!?」

「鹿目さん、強化切れちゃった……魔力余裕があるなら………ごんべえ?」

「………え?」

 

 ワルプルギスの夜がなぜか止まった隙にほむら達がまどかの下にやってくる。このような場所に居るはずのない少年の姿にほむらが警戒し、マミがその正体に気付く。

 

『っ! アッハ!!』

「っ!!」

 

 と、魔法少女が集まったことよりワルプルギスの夜が再び動き出し炎が滝のように降ってくる。魔法少女達は咄嗟に飛び退き、まどかがごんべえを抱える。

 巨大な火柱が上がり熱波が吹き荒れ魔力による防御ができないごんべえが焼かれるが直ぐに回復した。

 

「不死身のまま、なんだ」

「みたいだ…………おいインキュベーター」

『うん。ここにいるよ』

 

 枝が殆ど焼かれた大樹に着地したごんべえ達の下に、火柱に焼き尽くされた躯体を捨て新たに現れたインキュベーター。何かを願おうとするごんべえをまどかが止めようとするが、ごんべえが足をかけ肩を押し木から落とした。

 

「え、ちょ! きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『酷いことをするね』

「止められるのは面倒だ」

 

 何故か知らんがまどかの言葉はやたらと自分に響くのだ。

 

『それで君は何を願うんだい? 君なら全ての魔女を消し去り、二度と魔女の生まれない世界を作ることだって可能だ』

「なんで俺がそんな世界作らなきゃならねえんだ」

 

 キュゥべえの言葉に面倒くさそうに呟くごんべえは魔法少女達と戦いを再開したワルプルギスの夜を見る。

 

「あれは願い、理を捻じ曲げたことに対する順当な対価だ。割に合わないというほど肩入れした覚えはねえ」

『そういえば君は事前説明しないことが気に入らないだけだったね。じゃあ君の願いは?』

「……抗いにも対価をよこせ」

『?』

「絶望して終わるのも勝手だが、絶望に抗ったまま何も成せない事が決まっているのが気に入らない。全ての宇宙、過去未来現在の魔法少女達の物語、その絶望の続きを願う」

『!? その祈りは──』

 

 その言葉に動揺するように揺れるキュゥべえ。

 全ての時代、全ての宇宙に願いを届けるとしたのなら、それは最早──

 

『その祈りは、そんな祈りが叶うとしたらそれは時間干渉なんてレベルじゃない、因果律そのものに対する叛逆だ! ごんべえ、君は本当に神にでもなるつもりかい!?』

「神と呼ばれるなんざ慣れっこだ。まあ、俺は俺のやりたいように世界を歪めるだけだし、真っ当な神でもない…………そうだな、己の主観で条理を捻じ曲げる俺は………魔神とでも名乗ろうか。ほら、俺は願ったぞ? 今更お前に何ができる? なあ、インキュベーター……」

 

 願いを聞かされた時点で、インキュベーターにも最早止めることは出来ない。願いは受理され硝子のようなダイヤのような無色のソウルジェムがごんべえの胸から現れ、ごんべえが己のソウルジェムを手に取ると同時に膨大な魔力が可視化するレベルで溢れ純白の光の柱が漆黒の森から空へと昇った。

 

 

 

 

「どうして………どうして、そんなことを願っちゃったの? だって、あなたは漸く唯一の存在に成れたのに………これから、貴方だけの時間を歩めるはずだったのに」

「…………誰に覗かれようと、彼奴等と歩んだ記憶は俺だけのものだ。彼奴等に出来もしない道のりだったからな。まあ、独り占めできたのは確かに数分だったけど」

 

 髭の生えた綿が持ってきた紅茶を飲みながら目の前で啜り泣く女を前にあっけからんと言い切るごんべえ。

 女はそれでも悲しそうな目をごんべえに向ける。

 

「未来も過去も、全ての時間で………貴方が存在した時間以上の永遠………戦い続けるんだよ? せっかく得た個を捨てて」

「…………まどかの願いは、あんたの干渉か?」

「…………ううん。あれは、あの鹿目まどかの心からの願いだよ」

「無駄にしちまったことは申し訳…………いや、彼奴が勝手にやったことだしいいか」

 

 その物言いに泣いていた女は漸く泣き顔以外の表情を浮かべる。具体的にはむっとした。

 

「というか()()()()()()()()お前に俺の願いをとやかく言う資格があってたまるか」

「それは………だけど……………」

「………俺にもそれを行うだけの理由があった。それだけだ」

 

 と、遠くでこちらを見ている魔法少女達に目を向けるごんべえ。顔をそらしながら視線を向けてくるもの、笑顔で手を振るもの、泣きながら笑うものなど様々だ。

 

「別れもあったが、出会いがあって………事の終わりだけ見て俺を決めるな………俺の終わりが不幸だったわけでもあるまいし」

「でも…………」

 

 また泣きそうになる女にごんべえは嘆息しながら話題を変える。

 

「あの質問を俺にしたのはお前だな?」

 

 確信に満ちた言葉にビクッと肩を震わせる女。その目には怯えや後悔、慙愧の念など様々な感情がうずまき、一貫してごんべえに対して罪悪感を覚えているのが解る。

 

「ごめん、なさい…………私、私は………こんなつもりじゃ………」

「………ありがとう」

「え?」

 

 涙を流し蹲っていた女はキョトンと顔をあげる。

 

「あの言葉があったから、俺は俺になれた。あの言葉があったから、俺は人と歩めた」

「でも、そ、そのせいで………何度も、大切な人を失って………」

「さっきも言ったはずだ、別れの数だけ、出会いがあった………俺は沢山の人間に出会えていた、それを出会いと思えていたんだよ。それは、俺が俺達ではなく『俺』だからだ………」

 

 インキュベーターならその出会いをただの接触として記録するだろう。出会ったなどと言いながら、そこに魔法少女としての契約以上の意味を見出さないだろう。その出会いに意味があると思えたのは、ごんべえに心があったから。

 

「だから、俺は俺が生まれたことを感謝してる………ありがとう、()()()………あの時俺に声を届けてくれて」

「っ! お母さん………かぁ。私、何時の間にかお母さんになってたんだ………」

 

 女は漸く笑う。その顔にごんべえもホッとする。

 

「じゃあ、俺はそろそろ行く。此処に時間の流れは関係ないだろうが………」

「…………ごんべえ、あのね………ちょっと来て」

「?」

 

 手招きした女に近づくごんべえ。女はごんべえの前髪をかきあげ額にキスをする。

 「祝福」、或いは「母性」を意味するキス。

 

「頑張ってね………」

「ああ」

 

 

 

 

 純白の光が消え、現れたのはインキュベーターの耳の下から生えた副腕をもした白いマフラーが特徴的な白い衣装に変身したごんべえ。

 片手を上に上げると光のリングが現れる。

 

「っ!? だ、誰? 男………の娘!?」

「あ、あれごんべえだ」

「何で解るの貴方達………」

「え、ごんべえさん?」

「なに………未来が、歪んで………」

 

 魔法少女達の声が聞こえるが、反応せず光のリングが回転を始め曇天を貫く。先程までの薄暗さが嘘のように晴天が現れた。

 天へと登った光は四方八方、距離や時間すら飛び越えあらゆる自体、あらゆる宇宙へと向かっていく。

 

 

 

 そう遠くない過去、魔女となった友に家族を襲わせないために戦う魔法少女がいた。

 彼女の呼び掛けに不自然に固まった魔女は倒され、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 何処かの街で、星座の乙女の名を関する魔法少女達が自分達を救ってくれた少女の成れの果てたる魔女を討つ。グリーフシードとソウルジェムが残された。

 

 

 

 少し先の未来でグリーフシードを独占しようとして破れ、魔女に成った魔法少女の魔女が魔法に貫かれる。グリーフシードだけが残された。

 

 

 とある時代に魔女になる前に死を願う少女を救い出した魔法少女達はその願いを無視して、生まれた人々を救済するために人類を滅ぼしかねない魔女にたった3人で挑む。

 

 

 

 絶望で終わったお前達の物語に続きをやる。

 希望を手に出来るかはお前達次第だ。

 俺は母さんと違って都合のいい救いは用意する気はねえからな。

 

 

 

 

『フフ、アハハ。フフ、ハハハハ! アハハハ!!』

「人任せで悪いが……まあ、お前の母親が、お前を救う方法があるなら諦めないのは知ってるだろ?」

 

 

 

 

 遠い昔。

 まだ石を削り積み重ね家としていた時代。強大な魔女が生まれた。

相対するのはたった一人の魔法少女。

 なんの因果で育てることになったかは忘れたが、それでも自分にとっては娘同然の存在。救う方法があるなら、最後まで抗うまで………。

 

 

 

 ボロボロと体が崩れ、溶けていくワルプルギスの夜。まるでこの世に存在しなかったかのように消えていく。

 

「彼奴がやってくれたようだな…………」

 

 最後に残った歯車が巨大な光を放ち、世界を塗り潰す。

 

 

 

 

 まどかとほむらが気が付けば草木一本生えない大地に立っていた。空は異様に暗く、遠くに地球が見えた。

 

「ここ、は?」

《ごんべえが望んだ新しい法則に基づく宇宙が編成されているんだよ》

 

 何処からか聞こえるキュゥべえの声。

 

《そうか。ほむらは時間を超える魔法の使い手で、まどかは特異点にしてごんべえが資格を得るのに必要な魂を与えた存在………じゃあ、一緒に見守ろうか。ごんべえという存在の結末を………》

 

 星の海の奥に浮かぶ、巨大な瞳。その瞳すら矮小に感じる巨大な体を持った恒星のような………いや、位置を考えれば恒星すら超える巨大な球体。

 幾つもの目が宇宙を睥睨する。

 

《壮大すぎる祈りを叶えた対価に彼が背負った呪いだよ。一つの宇宙を創る願いは、一つの宇宙を滅ぼす呪いを生む………当然だよね》

 

 禍々しい呪いを宇宙に振りまく特大の魔女。いや、何時かのごんべえの言葉を借りるなら、魔王。

 

「そんな………そんなことって、これじゃあ…………」

「………大丈夫」

 

 ほむらが絶望する隣で、まどかはしかし絶望することなく虚空を眺める。ピシリと亀裂が走り、人影が現れる。

 

『俺の願いは抗えば絶望に沈まない世界だ。俺が絶望するってんなら、抗うまでだ………』

 

 

【挿絵表示】

 

 

 長く伸びた白髪を三つ編みに束ね赤いリボンを結んだ着物姿のごんべえ。背に浮かぶ放射線型の光背。

 見た目以上に、浮世離れした神々しい気配を放つ。

 背後の光背が激しく回転し無数の光が魔王を貫き大爆発を起こした。

 

 

 

 

 ごんべえの存在は過去からも未来からも消え去り、その記録も宇宙から消え去った。

 世界から切り離され一つ上の存在へと昇華し概念と成り果てた。誰に認識されることもなく、誰かに関わることも出来ない。

 

『ごちゃごちゃ五月蝿えよ。別に良いさ………しかしまあ、こうして見ると色んな俺が居たんだな』

 

 あらゆる宇宙の自分と融合したことにより、様々な可能性の自分を知ったごんべえ。

 病弱な3人の少女達の話し相手になっていたり、武将とともに燃える寺から脱出し海を渡ったり、調整屋なる生業をしていた少女に監禁されたり、祖母と最期に過ごせる時間を願った少女と共にいたり、性格の悪い売国女と口喧嘩する仲になったり、願いを叶えたい少女が増えるように戦争を増やそうとする少女を引っ掻いたり、いじめを無くそうと極端な方法を取ろうとした少女を止めたり、狐の家族と過ごしたり………。

 まあそのどれもが無かった事になるが。しかし監禁されてる自分が多いような……。

 

『まあいいか………ついでにあっちもやっとくか』

 

 ソウルジェムが砕け、絶望に染まることも希望を手にすることもなく行き場を失った魂達。それらの迎えに行くとしよう。

 

「…………来るのが遅い」

『そいつは悪かったな………見つけたから許せ』

「………どうせ他にも似たような約束をした人達が居るんでしょう?」

『まあ…………』

「…………私が最初みたいだから、許してあげるわ。他の子達がどうするか知らないけどね」

 

 

 

 

 

「さやかああああああ!!」

 

 杏子の槍が西洋甲冑で身を包んだ人魚の魔女を貫く。

 

「惚れた相手に告白もしてねえんだろうが! きちんと想いを伝えてから絶望しやがれ!!」

『■■■■■■■!!』

 

 槍を振り抜き、魔女の体を破壊する。どす黒い血と魔力が吹き出し魔女の体が崩れていく。残されたのはグリーフシードと青いソウルジェム……。

 杏子がソウルジェムをさやかの手に置くとソウルジェムが溶けるようにさやかの中に吸い込まれていく。

 

「っ! は、あ………! あれ……?」

「美樹さん…………良かった」

「手間かけさせんなよ、たく…………」

「………ごんべえ」

「ごんべえ………」

 

 マミと杏子が目を覚ましたさやかに駆け寄る中ほむらとまどかが呟いた名に、3人が首を傾げる。

 

「まどか、ほむら………?」

「ごんべえって…」

「誰のこと?」

 

 

 

 

 河川敷で地面に絵を描く幼い少年。猫なのか兎なのか良く解らない生き物を、少女がジッと見つめる。

 

「ごおべ! ゆまー、ごおべ!」

「ごーべ?」

「あい!」

「そう、上手だね」

 

 仲良く話す少年達に近付くのは制服姿の少女二人と私服の少女。

 

「よおゆま、待ったか?」

「キョーコ!」

「まろか、ごおべ!」

「うん。そっくりだね」

「………本物はもっと嫌味な笑みを浮かべてるわ」

「もう、ほむらちゃんってば………」

 

 ほむらの言葉に呆れたように笑うまどか。たつやは謎の生物の下に自分も描く。サイズ比からして、どうやら猫ぐらいの大きさの生き物のようだ。

 

「お前等の言ってたごんべえって奴か………あたしにはキュゥべえにしか見えねえけど」

「そうね。見た目はそっくりよ。でも、嫌味だらけで優しいのか優しくないのか解らない…………性格の悪いインキュベーターだったわ………」

「そ、そんなことないよ……………」

「いいえ、嫌な奴よ。謝らせても、お礼を言わせてもくれないんだもの………」

「ほむらちゃん……」

 

 

 

 

『ふぅん………成る程ね。確かに君達の話は仮説として成り立つ』

 

 たった二人だけしか知らない既に終わった世界の話。彼の行いが誰に知られることもないのが嫌で、話してしまったまどかとほむらの言葉にキュゥべえはそう返す。

 仮説………あくまでも仮説だ。証明のしようがない。

 証明ができなければ、それは二人の中にあるただの物語だ。

 

『まあ確かに、魔女化の際に燃え尽きた筈の魂が何故再生されるのか、その原理は僕達にも解明できてない……でも、精神疾患を患ってたとはいえ僕達の同族が宇宙の寿命を削ってまでこの星の人間に尽くすとは考えられないかな』

「この星にしか魔女が生まれないだけよ。他の星で魔法少女システムを構築すれば、きっとそこでも同じことが起こる」

「ごんべえだもん。きっと見逃してくれないよ」

 

 ほむらとまどかの言葉にふーん、と興味ないのか何かを考えているの解らない反応をするキュゥべえ。

 

「鹿目さん、暁美さん、そろそろ行きましょう?」

「マミさん! 杏子ちゃんは?」

「明日はゆまちゃんの運動会だから、今日は早めに寝て明日に備えるって」

「………あの子、どんどんシングルマザーになってきてるわね」

 

 魔女の存在は未だ世界に刻まれたままだ。それら全部無くすほど、ごんべえの性格は素直じゃない。でも、彼が残した道は絶望に抗う術を魔法少女達に与えた。

 魔女になった少女を、少女に戻せるようになった。その為には魔女になっても抗う強い意志と、魔女を倒してくれる誰かと、条件はあるが………。

 

「でも、抗えるなら……」

「最後まで抗いましょう。都合のいい救いを用意してくれる神様はいないのだから……」

「あはは。確かに、ちょっと性格悪いかも………」




エターナルごんべえ(魔神ごんべえ)
神の座へと至り概念となったごんべえ。
第一の円環の理の影響により生まれた第三の円環の理。
その特性は魔女から少女への変化の反転。
抗った者達のみ魔女から少女に戻れる。戻ったあとはソウルジェムは体に吸収されただの少女になり二度と契約はできない。
魔法少女をやめるためにわざと魔女になった場合は100%失敗する。

どこから来たごんべえ?

  • 神浜在来種(みかづき荘)
  • 神浜在来種(調整屋)
  • 神浜在来種(ママミ魔法少女)
  • 黒江ちゃんと一緒にくる
  • いろはちゃんと一緒にくる
  • 見滝原からこんにちは
  • 何故か病院を拠点にしてた
  • 何故か人型
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