一位人型
二位見滝原
三位いろは
これはワルプルギスの夜が正位置になる前に空から光る羽が降ってきたか巨大な光背が現れ光が降り注いで魔法少女達が強化されてワルプルギスの夜を倒した世界線的な何か。
因みに現場に向かっていたごんべえは宇宙猫になった。
「まどか、あのごんべえって奴はどうしてんだ?」
「へ?」
瓦礫となった街から発見された重火器、火薬反応などからテロの可能性を考慮した調査も終わり(そのニュースが流れた際ほむらは無言で俯いていた)復興活動が始まる見滝原。
学校も暫く休校で、課題が各家に届けられまどかの家にさやかや仁美など、一緒にやりに来た友達の中にごんべえが混じっていなかったことを疑問に思った詢子が問いかける。
制服は間違いなく見滝原中学の服だった。状況が状況なので詳しく覚えていないがそれは間違いない。親に知らせずあっていて、たつやと仲良くなるほど通っていたらしい男友達は顔も見せずに何をしているのか………。
「あ〜、えっと…………ごんべえは、その………」
そもそも見滝原中学の生徒どころか中学生ではないので課題もなにもないのだから、一緒に勉強しに来たりしない。というかマミの家にも帰っていないらしい。本当に、何処へ行ったのだろう?
「本当に、なんでここにいんのよ………」
「………………」
テレビを見ながらシャリシャリとアイスを食うごんべえを睨む小巻。背後で妹の小糸がワタワタしている。
「年頃の一人暮らしの女の家に俺が住むのは外聞が悪いだろ」
「だからってなんで私の家なわけ?」
「被害が少なく生活環境が保証されてるから。それに何もただで住んでるわけじゃねえだろ?」
ふらりと出て行っては、金を持って返ってくる。それを宿代替わりとして渡している。
両親は気が強く将来そういった相手が出来るか不安だった小巻の友達というごんべえの存在をむしろ喜んでいた。冗談じゃない、元々は猫もどきだぞ此奴。
「ていうかあんたどっから金を持ってきてんのよ」
「風見野まで行って、パチンコ」
「………………」
「あれいいよな。玉を狙った場所に当てるだけだ………」
クソ野郎と言いそうになったが此奴だったら玉の重さとかピンの角度とか一瞬で計算して狙い撃ちして大当たりさせそうだと思い直す。
彼からしたら玉を吐き出させる機械でしかないのだろう。
「そんなに俺に居座られるのは嫌か?」
「嫌よ」
「だろうな。だからちょうどいい………マミやキリカだと泊めてくれるだろうが、彼奴等は俺に依存しすぎている」
人と獣の身であった頃ならともかく、人と人の身になった今、だからこそ保たれていた均衡が崩れる可能性がある。
「??」
小糸は何の話だろう、と首を傾げ、小巻が秘密の話だからと部屋の外に出るように言う。しょんぼりしながら出て行った。
「自惚れでもなく彼奴等は俺を好いている。マミは一線を引いてくれちゃいるがキリカは違う。その上で人の形になった俺に向かってこられちゃマミにも影響が出るだろうよ」
ごんべえとしては皮肉に悪口と好かれるようなことはしてないつもりだが、何故か毎回毎回女に好かれる。何故か、などとは言うが一応優しくしてしまってるのが原因だとは解っているのだが、だからといって放置もできない、我ながら中途半端なやりかただ。
「お姉ちゃんとごんさん、何の話してるんだろう?」
気になるが、聞くわけにも行かないので自室でクッションを抱きしめる小糸。スーパーセルと謎のテロにより家を失ったと泊まりに来た姉の知り合い。
保護者はおらず、こんな状態なのだから泊まれる場所は満室。避難所は金に余裕がない人に使ってほしいという理由で友人の家を巡っていたらしい。
ただの友達だというが、二人の間には………信用? 信頼? とにかくそういった深い繋がりが感じられる。もうしかして、姉が大怪我を負った事件の真相を知ってたり
『気になるかい、あの二人が……』
「え?」
自分だけの筈の部屋に響く声。見ると、見覚えのない猫のような兎のようなぬいぐるみがあった。いや、ぬいぐるみではない。動いている………。
『君が知りたいと願うなら、それを叶えることができるだろう。だから僕と契約して──』
「くたばれぇ!!」
人の言葉を解する謎の生物は扉をバンと勢いよく開き飛び込んできた姉に蹴り飛ばされた。床に落ちた生き物を、ごんべえが拾い上げ鋭い歯の生え揃った口を開き食い千切った。血は出ない。
「直に俺の居場所もバラされそうだな。世話になった」
ごんべえはそう言うと窓から外に出ていった。
「お、お姉ちゃん……今の、何…………」
「宇宙一の詐欺師よ。まあ、嘘はつかないけど……………ん〜………ねえ小糸、魔法ってあると思う?」
「私、ごんべえに嫌われたのかしら…………」
と、落ち込みながら言うマミ。なんでもごんべえがワルプルギスの夜襲撃の日以来、戻ってこないらしい。
あの後人型になったごんべえを見て、マミやキリカは一瞬で気付いていた。その後ごんべえは何やら考え込むと何処かへ行ってしまった。
「帰ってきてくれないし……でも、仕方ないのかしら。人の姿になったごんべえを見て私、喜んじゃったの………今まで出来なかった膝枕とか、手を繋ぐとか……で、デートとか………出来るって。今までのごんべえを無視して………酷い女よね、私って」
「あ、あの……そういうこと言われると、人にした私がいたたまれないと言うか……」
こちらに関してはごんべえの思いを無視して契約したし。まどかに至っては口すら聞いてもらえてない。
『彼なら今は小巻の家に居たよ』
「っ! キュゥべえ! って、あ! マミさん!?」
だっと駆け出すマミ。何時の間に居たのか、おそらくキリカらしき影も走り出していた。
「なんか、大変だねごんべえも…………消えて正解だったかも」
「…………………」
「まどか?」
「え、な、何? さやかちゃん!?」
「…………何か悩み事?」
付き合いこそ短いがよく似た少女達と関わってきたさやかが尋ねる。まどかは先程のマミによく似た表情を浮かべる。
「ごんべえ、私が彼を人間にしたこと怒ってるのかなって………」
掴み掛かられて、怒鳴られた。魔法少女は自分の為に願いを叶えるべきだと思っているのに、まどかは他人を、それもそう思ってるごんべえ本人のために願った。いや、自分がそうしたいと思ったから自分の願いだとは言ったけど。
「それは私の勝手な思いだし、ごんべえだって勝手だって言っちゃったし…………」
何千万年も出会いと別れを繰り返してきたのだ。過保護にもなるだろう。それを余計なお世話だなんて、我ながらひどい言葉もあったものだ。
「まどかは、どうしたいの?」
「…………また、仲良くしたいな」
さやかの言葉に偽らざる本音を言葉にするまどか。さやかはそっか、と笑う。
「じゃ、会いに行きなよ。もし嫌われてんなら、もう嫌われることもないんだろうしさ」
「う、うん………そうだね。そうだよ、行ってくる!!」
と、駆け出すまどか。青春だな〜と見送るさやかは、ほむらに目を向ける。
「あんたはいいの? 謝りたいんでしょ、彼奴に…………」
「…………どう謝ればいいのかしら。私が一番、嫌われてたのに」
「……………彼奴が一番嫌いなのはキュゥべえでしょ」
「超弩級の魔女による災害か………また随分、君達の文明は厄介なものを持ってきてくれた」
「違いない」
公秀と将棋を指しながら会話するごんべえ。次の避難場所はここにしたらしい。
「とはいえ長きにわたる災厄級の魔女もこれで終わった。次のが生まれるかもしれねえが、多少時間はあるだろうよ」
「あれだけの被害を生んだ魔女がまた現れるなど、言葉にしてほしくもないのだがね」
ワルプルギスの夜のグリーフシードは現在ごんべえが所有している。ここから生まれるのは舞台装置の魔女ではなく、核であった演劇の魔女だが。
「だから今の所、一発でそうなるのはまどかぐらいだ。とはいえほむらが束ねた一ヶ月が過ぎ因果はほどけ始めたが」
一ヶ月前に急に因果が増えたように、一ヶ月を過ぎれば本来存在し得ぬ因果は消えていった。それでもまだワルプルギスの夜を超えるレベルだが、それも時間の問題だろう。
「お茶が入りました」
「ありがとう織莉子君。君も座ってくれ」
「ありがとな」
お茶を持ってきた織莉子はニッコリ微笑むと公秀に言われたとおりに椅子に座る。
「ごんべえ………さん。改めてお礼を……貴方が小巻さんと一緒に私を止めようとしてくれなければ、私は守るべきものも守れずワルプルギスの夜に殺されていたでしょう」
「気にするな。ワルプルギスの夜の討滅は俺にとっても悲願ではあった」
と、歯車模様のグリーフシードを取り出し眺めるごんべえ。暫く見つめたあとゴクリと丸呑みした。
「お互い借りは無しにしておけ。俺とお前の関係は、それぐらいが丁度いい………そういや、そっちはどうだ? 学園は面倒なことになってるだろ?」
「…………………」
ごんべえの言葉に困ったように微笑む織莉子。
「まさか八重樫せん………八重樫が久臣への冤罪を認めるとは」
その結果、織莉子の取り巻きから蔑む側に回っていた生徒達は掌を返して、家にはマスコミ達が自分達はさも信じていたから詳しく聞かせてくれと押し寄せた。
「あの人は、どうしてそのようなことをしたのでしょう?」
政争で負け、幾つかの罪を暴かれた。それでも久臣の件はバレてなかったのにわざわざ暴露した意味が織莉子達には解らない。
「『美国』の名に執着してたのはあの男も同じだったんだろうよ」
その疑問に答えるのはごんべえだった。
「お前の親父に勝てず、お前に負け………せめて『美国』の一人には勝てたと言いたいのさ」
「……………解らんな」
「お前は名に執着しねえからな」
などと会話しながらごんべえは立ち上がる。
「王手。俺は逃げるぜ」
「?」
と、ごんべえが外に出ていく。
織莉子は何を見たのか窓を開ける。数秒後に人影が飛び込んできた。
「ごんべえは何処!?」
「ごんべえ!!」
マミとキリカだった。織莉子が外を指差すと直ぐに出て行った。
「あ、あの………ごんべえここに来ませんでした?」
「貴方も?」
そして申し訳無さそうなまどかもやってきた。
「まあ、貴方にとっても恩人だし……それだけじゃないものね」
「?」
「だって、ごんべえのあの姿鹿目さんの願いでああなったのでしょう? 私はてっきり、鹿目さんの好みなのかと」
「………………へぇ!? ち、違いますよ! その、ごんべえが人間だったらこんな顔かなぁって思ってたただけで、だからその………!!」
顔を赤くしてワタワタと慌てるまどか。改めてごんべえの容姿を思い出し、心当たりでもあったのだろう。
「わ、私! ごんべえ探して来ます!!」
「で、こっちまで逃げてきたと?」
わは〜、とごんべえの髪をいじるゆまを離しながらごんべえに呆れたように言う杏子。頭につけられたリボンを取りながらごんべえはああ、と答える。
「大変だね、あんたも。何ならこっちに住むか? 金を稼ぐ方法なんていくらでもあるだろ、あんたなら。ゆまの面倒見てくれんなら一緒に住んでやってもいいぜ?」
「家族ごっこは暫くする気はねえんだ」
「かぞ………? っ!? ば、馬鹿言ってんじゃねえ! であたしとあんたが!!」
「? キョーコ、どうしたの?」
「お前の親にならないか誘われたから断ったところだ」
「ごんべえ………ゆまのおとーさんになりたくないの?」
と、何処か悲しそうな顔をするゆま。
「…………まあ、暫くはな」
「…お前」
杏子もワルプルギスの夜となった魔法少女との関係を思い出し、ボリボリと頭を掻く。
「彼奴等も、今のあんたとの距離感図るためには時間がいるだろ。取りあえず、どっか適当な街に行ったら?」
「…………それが一番か。まあ下手したらさらにやばい状況にもなるが、まどかの安定を考えるなら見滝原と離れた場所がいい」
その夜。たつやは目を覚まし体を起こす。
父を起こさぬようにそっとベッドから出ようとして、バランスを崩す………
「と………」
「ごおべ! あ、しー?」
「しー、だ」
慌てて口を抑えるたつやに、落ちそうになったたつやを支えたごんべえは人差し指を立て口元に持っていく。
「この家じゃお前と何気に過ごしてたからな。お別れを言うぐらいの義理はあるだろ」
「またあえるー?」
「…………そうだな。その時のお前が、俺をイマジナリーフレンドにしてなかったらな」
そう言って頭を撫でるとたつやは気持ちよさそうに目を細める。
たつやを抱え、ベッドに戻しシーツをかけてやる。
「ごおべ、またね」
「ああ、また」
そう言って部屋を出ると、まどかが居た。
「よお」
「う、うん………あの、行っちゃうの?」
「まあな。色んな意味で身の危険を感じる」
「うぇひひ………そっか。なんか、寂しくなるね」
「一、二年ぐらいしたら顔を見せてやるさ。マミ達にもそう伝えておけ」
「………うん。またね……また、絶対会おうね」
まどかに手紙を預け、見滝原を出たごんべえ。
金などいくらでも稼げるが、見た目中学生のごんべえでは宿を長くは利用できない。居候先を探すにしても、余計な善意で通報される可能性もある。
「となるとやはり事情を理解してくれる魔法少女の家に住むのが一番手っ取り早い」
要するに、何時も通り。
「こっから適度に離れて魔法少女が多いのは…………神浜にするか」
魔法少女の数が異様に多く、故に互いに支え合う状況。この街でなら変な依存もされまい。
ごんべえは早速、次の住処を求め歩き出した。
なお、マギレコ書く際に人型となってもこのごんべえではありません
どこから来たごんべえ?
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神浜在来種(みかづき荘)
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神浜在来種(調整屋)
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神浜在来種(ママミ魔法少女)
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黒江ちゃんと一緒にくる
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いろはちゃんと一緒にくる
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見滝原からこんにちは
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何故か病院を拠点にしてた
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何故か人型