だから、安心して甘えるんです
鉄塔の頂上。
人が立つには命綱が必要であろうそこから、街を見下ろす白い影。
風で靡くマフラーとフード。赤い瞳がキョロキョロと動く。
「………たく、何処行った?」
疲れたように呟くと影は鉄塔から飛び降りた。
パスタが一面を覆いチューブのように集められた金網が足場となった奇妙な空間。魔女と呼ばれる、人を喰らい人には見えぬ異形の怪物が住まう結界の中で、魔女と戦う力を持つ魔法少女、環いろはは魔女を追いかけ駆け回る。
六本足の山椒魚のような魔女は不安になる配色を忙しく変えながら金網の中を動き回る。
時折使い魔が襲いかかり、動きが止まると金網の中から襲いかかってくる。
「くっ!」
クロスボウでは破壊力にかけ金網の構造体を突破できない。かと言って隙間から狙うには魔女の動きが速すぎる。攻撃された瞬間を狙おうとしたいろはは、足音に気付きハッと振り返る。
いろはの頭上を暗い影が飛び越えた。
黒い影はメイスを魔女に叩き付ける。咄嗟に回避したが、金網のチューブは崩れ外に飛び出した魔女は羽を生やし距離を取る。
「っ………あ!」
遠距離攻撃の出来るいろはがクロスボウから魔力の矢を放とうとすると、飛び散る鉄屑の中に魔女でも使い魔でもない影を見つける。猫だ………結界に迷い込んでいたのだろう。
「え?」
その猫を、瓦礫を足場に飛び跳ねる白い影が攫った。白く長い髪に、赤い瞳………性別は、どっちだろう? ここに居るということは魔法少女?
困惑しているいろはとその横の魔法少女に襲いかかってくる魔女。いろはと黒い魔法少女は直ぐに引き返す。
轟音。
魔女が二人が居た場所を押し潰す。しかしギリギリ結界の外に出た二人は変身を解き元いた電車に戻った。
「あ、猫………」
結界内に取り残してしまった。猫を探しているという女の子に、見つけてくる約束をしたのに。
「あ、お姉ちゃん!」
「あ、さっきの………あれ……?」
猫がいる。
嬉しそうな顔で駆け寄ってくる少女の腕には真っ白な毛並みの猫が居た。
「見つけてくれてありがとう!」
「え、あ………えっと」
「白い髪のお姉ちゃんが、桃色の髪のお姉ちゃんからだって………!」
さっきの魔法少女だろうか?
この子に届けてくれたらしい。ほっと一息つくいろは。
「良かったね」
「うん!」
「リボン、リボン、俺のリボン…………」
テッテと走りキョロキョロと辺りを見回す白髪長髪の、中学生ぐらいの年齢の人物。長い髪を時折鬱陶しそうに掻き上げる。
「わー、しろい………」
「ん?」
「おめめあかい!」「うさぎさん?」「なんでまふらーしてるのぉ?」
と、子供の集団が飛び掛かってきた。
「なんだぁ!?」
勝手にマフラーをフワフワしたり髪の毛を触ってきたりフードの中からバールのようなものを取り出したりと好き勝手する子供達。
「離せクソガキども! くそ、何でまいどまいどお前等は懐いてきやがる! おら、飴だ! 散れ散れ!」
飴を取り出しばら撒くと一目散に拾う子供達。疲れたように、というか疲れて肩から息をする。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるか?」
「すいません。悪い子達じゃないんです………その、珍しかったんだと思います」
「白髪なんざちらほらいるだろう。緑とか青とか桃色のが珍しいわ、どんな色素構造してるんだか………」
確かに白い髪の人物は珍しくない。けど、桃色も緑も探せばその辺にいるような? 彼女の知り合いも緑の髪だし。
「その………子供に好かれるんですね?」
「この街に来てから24回目だ。なんで俺が迷子の親探しを………」
ブツブツ言ってるが、要するに迷子に泣きつかれて親を探してあげたと言うことだろう。良い人だ。
「あの、すいません………」
と、他の大人達も謝りに来た。
「気にしなくて良い…………いや、やっぱり気にしようか。二度とこんなことさせるな」
「ねーねー、あめちょーだい?」
「言った側から………」
「はいはい、皆そこまで。お兄さんに迷惑かけちゃ駄目よ?」
と、少女が叱るとはーい、と引き下がる子供達。
「保育士か? 随分若いが………」
「ただのお手伝いですよ。子供が好きなんです………ところで、あの。なにかお探しでしたか?」
「赤いリボン………どっかで見てないか?」
「いえ………すいません、お力になれず」
「いや、いい……こらそこのガキ、にじり寄るな」
「ふふ。子供が大好きなんですね?」
「何故そうなる」
「子供って、意外と鋭いんですよ? 貴方なら甘えても大丈夫だと、そう思ったんだと思います。だから、安心して甘えるんです」
包容力を感じる暖かな笑みを浮かべる少女に胡乱げな瞳を向ける。
「お前実は子供産んで育てた経験あったりしない?」
「……………よく言われますけど、私女子高生ですよ?」
「……………そうか」
と、去ろうとするがマフラーを掴まれた。掴んだのは子供の一人だ。
「あぅ………あの、かみひっぱってごめんなさい。これ………」
差し出してきたのは飴だ。本人に返してるだけ。少女も何と言えば良いのか解らず言葉に詰まる。
「これは俺が渡したんだがな」
「あうぅ………」
「だが謝罪は受け取ってやる」
そう言うとさっさと何処かへ行ってしまった。
「…………なんか、あの人も子育て経験ありそうなんだけどなぁ」
自分のように子供の面倒を見ていたことがあるのだろうか? 飴をたくさん持ってるのは、その名残だったり?
神浜市。
そこに来てから、不思議な夢を見るようになった。知らない女の子が病室にいて、自分は彼女がベッドの上で食事をしたり本を読んだりするのを眺めている。でも、彼女が何かを言ってきても、声が聞こえない。触れ合えない。
そんな夢をよく見る。その夢の正体を探るために、神浜市へと足を踏み入れた。あの夢の正体を、知らなくてはならない。そんな予感がするのだ。
不思議な夢に、関わっているであろう
大体どの辺り、かは解るのだが。
「もう一度、探ってみよう………」
と、再び魔女の魔力を探知する。やはり近い………と
「違う!? すぐそこに居る!」
時間を掛けすぎた。
早く帰らないと母親に怒られる。急いで確認しないと、と気配を追うと魔女の結界を見つけた。
「…あれ、先に誰か入ってる?」
魔女以外の気配を感じ、余所者の自分が入ってもいいのかと迷う。しかし、魔力の乱れから苦戦している事が解る。
「いけない! 助けないと!」
いろはは直ぐに結界に飛び込んだ。
そこで出会った小柄な魔法少女。
なんとか二人で逃げ出せたが、襲ってきた使い魔達はいろはの知る使い魔よりも強かった。しかし助けた魔法少女いわく、これでも弱い部類なのだそうだ。
神浜の外から来た魔法少女には危険だから帰るように言われてしまう。
「心配してくれてありがとう。でもね、私まだ帰れないんだ………」
「え、でも本当に………」
信じてくれないのかと不安そうな顔になる魔法少女に、自分は小さいキュゥべえを探しに来たことを伝える。
「………見たことあるよ」
「ホント………!?」
「う、うん。最近ね、この街ってあのキュゥべえしかいないから………」
「私ね! その子を探しに来たの!」
「ふぇえ!?」
前に一度だけ見たが、何処にいるのか解らないのだ。
「あ、えっと……それなら急いだほうが良いよ!」
「え?」
「さっきの結界にいたと思う! 見間違いじゃ、なければだけど………」
「ええ!?」
さっきの魔女の結界を探るいろは。当然といえば当然だが、既に魔女は逃げていた。でも………手掛かりは見つけた。
「教えてくれてありがとう! 私、さっきの魔女を追ってみる!」
「でも、慎重にね……あの小さいキュウべぇ、警戒心が強くてすぐ逃げちゃうから………」
「うん! 解った、ありがとう!」
「私こそ、助けてくれてありがとう!」
「………リボン、リボン………くそ、あのガキめ」
「………あの、何か探しているんですか?」
魔力の波長を追っていたら人気のない場所で白髪の人物がなにかをさがしていた。老人かと思ったら自分と同い年ぐらいだ。不自然なほど白いのに、染めたわけじゃないのが一目で解るほどの純白。
ここには魔女がいる。危険だから避難させたい。
「ああ、実は………」
「!?」
と、そこでいろはは顔をあげる。魔女の反応が強く………いや、違う。これは、向こうから!?
「に、逃げてください!」
しかし叫ぶには遅く。二人纏めて結界内に囚われた。無限に広がる砂丘、木のよつな柱に、巨大なスコップやフォークのようなものが落ちて、遠くにはジェットコースターのレーンのようなもの。砂の城も乱立している。
(いけない! 魔女の魔力に当てられちゃう!)
まだ入ったばかり、直ぐにこの人を外に出さなくては! そう振り返ろうとしたいろは。と
「………あれ? 使い魔が、来ない?」
襲ってくるかと思った使い魔は来ない。不思議に思いつつも、彼を外に運ぶ猶予ができたと思うことにして、使い魔よりも無視できぬ存在に気付く。
「キュ?」
「いたぁ!」
小さいキュゥべえがそこに居た。直ぐに駆け寄ろうとして慌てて立ち止まる。警戒心が強いのだからゆっくり近づかなければ………。
「………あれ?」
と思っていたら向こうから近付いてきた。警戒心が強いんじゃ………?
「やっぱお前か」
「モキュ!?」
と、横から伸びてきた手が小さいキュゥべえを掴むと、体に巻き付いていた赤いリボンを取る。
「キュー! モキュウ!」
「これは俺のだ。人のもんを勝手に取るんじゃねえよ」
「キュッキュ! キュウ、モキュ!」
「甲斐性? 勝手についてくるお前に世話を焼くか………」
「………え、なんで………」
魔女の結界の中で、平然としている。キュゥべえも見えてる。じゃあ、この人も魔法少女? と…………
『✩▼△ポッポー!』
複数の球体が繋がり巻き貝の触覚を持った蟻のような使い魔が襲ってくる。
『シュ■▼ポッ!』
「何この数!?」
しかも一匹や二匹ではない、大群だ。まさか、自分が追いかけてきたのに気付いて、待ち伏せを!?
『■▼◆◇✩ポーッ!!』
「くぅ!」
球体の体がバラバラになり襲いかかってくる使い魔。いろはがなんとか回避し魔力の矢を飛ばす。
『◇△◆シュポ!』
「!? こっちからも………!?」
しかし別方向から襲いかかってくる使い魔。
「ふうぅぅ!!」
咄嗟にガードするも吹き飛ばされる。体が痛い、足が重い。一旦外に出なくては。幸い、白い魔法少女が小さいキュゥべえに関わっているとことがわかった!
『■✩▼シュッポッポー!』
「あ……」
と、目の前に迫る使い魔の頭。回避、防御、どちらも間に合わない!
「ゥアアア!」
「モキュ! モキュウ!」
「無茶を言うな。俺にこの数の使い魔相手に戦う力があるか」
バールのようなもので飛んでくる使い魔の体を叩きそらす。腕が痺れてきた。精々が平均的な魔法少女並みの身体能力しか持っていないのだ。平均より強い魔女や使い魔の相手などできるはずもない。
と、無数の槍が飛んできて使い魔達を貫く。同時に砂埃が舞う。
「キュキュゥ!?」
「よし、逃げるぞ……」
長い髪を後頭部に集め、赤いリボンで纏める。
ポニーテールとなった白髪の人物は木から吊るした小さいキュゥべえを睨む。
「人のもんとるな………次やったらお前を飯にするからな」
そう言いながら一斗缶に木々の枝を入れ燃やし、ザリガニや蛙、蛇やネズミを焼いていく。
ある程度焼けてきたらずらし、フライパンを取り出し餓死させたコオロギを焼き始めた。その姿は、紛うことなきホームレス。
「モキュゥ………」
「…………ほらよ」
パーカーのポケットから取り出したチョコ棒を口に突っ込んでやる。サクサクと食い始めた。
「あの女は知り合いか?」
「キュウ?」
「そうか、なら
「モキュ!」
「何がおかわりだ、知能は獣並みか?」
???
背中に赤い丸がある白いパーカーを着て先端に金色の輪っかが2つついたマフラーを巻いた性別不詳。
ホームレスなので虫とか蛇とか食ってる。金が無いわけではなく、菓子を購入しているが主に子供をまくために使用。小さいキュゥべえに懐かれている。理由は不明。
つい最近ザリガニ焼いてたら金髪の少女に絡まれたことがある。
どこから来たごんべえ?
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神浜在来種(みかづき荘)
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神浜在来種(調整屋)
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神浜在来種(ママミ魔法少女)
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黒江ちゃんと一緒にくる
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いろはちゃんと一緒にくる
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見滝原からこんにちは
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何故か病院を拠点にしてた
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何故か人型