性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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だから、戦える

「兄ちゃん? おい、兄ちゃん!? 何処だよ、返事しろよ!」

 

 叫んでも呼んでも返事は返ってこない。ここには彼が居ない。使い魔に、魔女に連れて行かれたからだ!

 

「クソクソクソォォォ!! 何なんだよあの使い魔!? 何で兄ちゃんだけを!?」

 

 魔法少女だらけの空間に飛び込みたった一人を攫う。おおよそ魔女としても不可解すぎる行動に、かこはまさか、と呟く。

 

「なにか知ってるのか!?」

「え、えっと! その、絶交ルールのウワサに、似てて」

「ウワサだぁ!?」

「ひぅ!」

 

 こんな状況で何を、と激高するフェリシア。慌てて止める銀髪の魔法少女。

 

「落ち着けって、かこに当たっても仕方ないだろ!?」

「だって、だって兄ちゃんが………魔女に、また……魔女が!」

 

 ひりつくような怒気を醸し出すフェリシア。今直にでも何もかもに当たり散らしそうだ。

 

「落ち着いてフェリシアちゃん。あれは、ごんべえも探していたものだから」

「っ! 兄ちゃんが?」

 

 真里愛がごんべえの名を出し固まるフェリシア。

 

「かこ………ごめん。その噂ってやつ、教えてくれ」

「う、うん。えっと………一度絶交した後に、仲直りしようと謝ると、謝ったほうが鎖のバケモノに連れてかれるって…」

「鎖の…………さっきのやつか!」

「それは、魔女なのですか? 特定の行動を取った相手を狙うことがあるにしても、いささか度が過ぎているような」

「ごんべえさんは魔女とは違うと言ってましたが…」

「んな事どうでもいいんだよ! その鎖のバケモノには何処で会えるんだ!?」

 

 ななかと真里愛の会話を遮って叫ぶフェリシア。真里愛は返答に困る。あれは止める間もなくごんべえが行ったこと。自分達ではその後がわからない。

 

「謝ったらってことは、オレのせいなんだろ? オレが、絶交なんて言ったから………だから、兄ちゃんが代わりに謝って…………!」

「それは………だけど、ごんべえはワザと捕まったの。貴方に対しての謝罪も、そっち………」

「だから何だってんだよ!? 兄ちゃんが危ない目にあってるかもしれないのは変わんねえんだろ!?」

「っ!」

 

 真里愛としても攫われた子の身の安全のために参加したため、文句を言えない。

 

「なあかこ! 何か他に情報はないのかよ!?」

「そ、そんな事言われても………あ、その………鎖のバケモノは、魔法少女(私達)には見えるから、他の仲直りしそうな人を探す、とか?」

「そもそも絶交した奴知らねーよ!!」

「……………知ってる」

 

 と、紗枝の言葉に視線が集まる。

 

「いろはちゃんの友達が、絶交して、いろはちゃん達が仲直りさせようとしてるって」

「其奴は何処だ!?」

 

 

 

 

 

 かえでが攫われた。

 レナと口論になり、レナが絶交という単語を使い、数日間喧嘩したままだったがかえでの方から謝ったのだ。

 

「かえでちゃん………」

 

 その結果、連れて行かれた。何が絶交ルール!

 絶交したって、本気で喧嘩したって、また仲良くなれるから友達なのに!

 

「そうだよね、うい………」

 

 ういも友達の灯火とネムが喧嘩し、絶交すると言い出すと何時も間を取り持つ。仲直りさせる。本音で語り合えるから喧嘩するんだ………その機会を奪うなんて、許せない。

 

「いろはちゃん!」

「え? 真里愛さん………と…………」

 

 複数人の少女達。魔法少女だろうか?

 

「おい! 絶交したって魔法少女はどこだ!? 今すぐ謝らせろ! 鎖の化け物を呼べ!」

「え、ええ!?」

 

 金髪の魔法少女が掴みかかってきた。鎖の化け物? この子も探してる?

 

「そいつが謝れば鎖の化け物が現れるんだろ!?」「………いろはさん、実はごんべえが攫われて」

「えっ!? ごんべえさんも!?」

「………も?」

「実は、かえでちゃんも………」

 

 つい先程攫われたばかりなのだ。

 

 

 

 

 

 

「ふゆぅぅぅ!?」

 

 妙な鳴き声(?)を上げながら魔法少女が連れてこられてきた。恐らく絶交ルールを破り謝罪したのだろう。

 

『|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/!!!|』

「ふゆ!?」

 

 カランカラーンと鳴り響く鐘の音に怯える魔法少女。その心の隙間を縫うように入り込む音波。

 

「………掃、除……階段さんを、掃除しぐぇ!」

 

 その首にマフラーが巻きつき引っ張られる。

 

「魔法少女か?」

「ふゆぅ……あれ、私今………」

「戦えるか?」

「ほえ?」

 

 そう訪ねてきたのは、白い魔法少女?

 あれ、何処かで何かを聞いたような? 困惑する少女を他所に私服にしか見えない格好をした魔法少女はその場から飛び退く。

 と、降り注ぐ巨大な南京錠。伸びていく階段の頂上に存在するアーチにぶら下がる鐘が吐き出していた。

 

「な、なに? なんなのぉ!」

「戦えるか?」

「むむむ、無理だよぉ! ももこちゃんも、レナちゃんも居ないのに!!」

「はぁ、使えねえ」

「つか!?」

 

 階段から飛び退き、無数に張り巡らされた白いリボンに掴まる白い魔法少女。リボンが撓み、パチンコのように上に跳ねる。

 

「そこらで転がってる死体になりたくねえなら戦え」

「死体…………ひぃ!?」

 

 漸くあたりに倒れている人影に気付く。蛆や蠅すら居ないこの空間では静かに死臭を漂わせる。

 

「外と比べりゃ死ににくいようだが、それで何日も飲まず食わずで働かせられりゃなあ………」

「ふゆぅぅ…………」

 

 腰を抱き抱えてくれる白い魔法少女に抱きつき涙目になる魔法少女。

 

「戦う理由はできたが、覚悟はできたか?」

「う、うう………これが、絶交ルールなら………レナちゃんも来るかも」

「レナちゃん?」

「自分勝手でワガママで怒りっぽくて人見知りで強がりで人のせいにしてばかりな、私の友達………きっと、私が消えちゃって自分を責めてる。きっと謝る、だから………だから、戦える!」

 

 そう言って杖を構える。無数の植物が地面から伸び、南京錠を弾き飛ばす。

 

「名前は?」

「あ、秋野かえで…です」

「ごんべえだ。手伝ってやる、秋野かえで」

 

 迫りくる南京錠をリボンで絡め逸らす白い魔法少女、ごんべえ。

 

「とはいえ、俺の武器はリボンだけ。決定打にかける」

「ふえぇ!? じゃ、じゃあどうするの!?」

「そうだな」

 

 左右から迫る南京錠。再び白いリボンで軌道をそらし、ぶつけ合わせる。勢い良くぶつかった二匹の南京錠は粉々に砕けた。

 

「此奴等に潰し合わせるか」

「か、かっこいい………」

「あん?」

「お姉さん、って呼んでいいですか!?」

「駄目だ」




牙むき出しのニヒルスマイル

どこから来たごんべえ?

  • 神浜在来種(みかづき荘)
  • 神浜在来種(調整屋)
  • 神浜在来種(ママミ魔法少女)
  • 黒江ちゃんと一緒にくる
  • いろはちゃんと一緒にくる
  • 見滝原からこんにちは
  • 何故か病院を拠点にしてた
  • 何故か人型

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