襲いかかる南京錠同士をぶつけ合わせ、時折突っ込んできた南京錠を縛ると振り回し遠心力を加え鐘に叩きつける。ゴォン! と音が響くも砕けたのは南京錠だけ。
「…………すごい」
かえでは魔法少女として強い方ではない。性格が災いして、荒事に向かないからだ。だから何時もももこやレナのサポートに回っている。
そんな二人を後ろから眺めていてから解る。ごんべえと名乗った白い魔法少女の身体能力は、ももこやレナより下。何なら自分のほうがまだ動けるかもしれない。
でも、戦い方が上手い。卓越した技量で使い魔達を翻弄していく。
「え、えい!」
かえでも魔法を使い植物を生やす。高い位置にいる鐘には届かないが、襲いかかってくる使い魔には当たる。隙間を乗り越えようとしてきた使い魔は木に絡めたリボンが塞ぎ、弾き飛ばし別の使い魔に当てる。
「キリがねえな」
「ど、どうしましょうお姉様………」
「取り敢えずやりすご…………お姉様?」
妙な呼ばれ方をしたような、と気にする暇もなく迫る使い魔の猛攻。体に巻き付いた紐を槍のように伸ばしてくる。
「チッ」
「ふゆぅ!?」
面攻撃に対して今のリボンの本数では避けきれぬと判断し、かえでを抱えて別の階段に飛び退く。
「あ、あの………変身しないんですか?」
今でさえほぼ互角に戦っているのだ。変身すれば圧倒できるかもしれないと提案するかえで。だが………
「やり方を忘れた」
無数のリボンを束ね円錐状に囲い、回転させ使い魔の突撃を流す。
『|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/!!|』
「っ!」
鐘が身を震わせると同時に、文字通り音速の衝撃が二人を襲う。
「ふみゅみゅう…………」
「…………」
かえでは目を回すだけだがごんべえは耳と目と鼻から血が流れる。その隙を逃さず迫りくる鐘と南京錠は、しかし不意に動きを止める。
「ふぇ?」
「………どっかで誰かが謝ろうとしてるみてぇだな」
優先すべきは噂通りの行動。何ならウワサとでも名付けるか。口の中に溜まった血を吐き出し、ごんべえ達は後をつけた。
いろはは攫われたかえでのチームリーダーだというももこに合流した。その際噂を否定するももことフェリシアが一悶着あったが真里愛が何とかなだめかえで達の捜索に当たる。
魔女の餌が豊富な人通りが多い場所、あえて人の居ない場所。そこでレナとも合流した。彼女も彼女で解決策を確認しに行っていたらしい。
「解決策!? 何だよそれは!!」
「ちょっ、誰よ此奴等!?」
「前に話したごんべえって奴の知り合いだってさ。ごんべえも攫われたんだ……」
「そう、話すから離れなさいよね!」
「っ!!」
その言葉に大人しく離れるが目は早く語れと威嚇しているようだ。
「もしかして、やちよさんに聞いてきたの?」
ウワサについて調べているのは、いろはが知る限りごんべえとやちよだけ。そしてももこの知り合いのやちよは恐らく彼女達とも面識があるだろう。
「ば、ばっか! ももこの前だから濁したのに!」
「え、あ………ご、ごめん」
「………………」
やちよの名に、ももこが明らかに顔を顰めた。
「ほ、ほら! 信じてくれないかもしれないじゃない!」
「いいや、信じるよ」
「え!? ほ、本当でしょうね。嘘だったら、今度のゲーセンももこの奢りだからね!」
「何だよそのセコい条件。いいよ、ゲーセンどころかアイドルのコンサートも奢ってやる。アタシはやちよさんの言葉じゃなく、レナを信じるだけだからな」
「ふぇ!? あ、ありがとう…………」
「おい、結局何をどうするんだよ?」
二人のやり取りにいろはがごんべえに信じると言われたことを思い出しているとフェリシアが割り込んでくる。
「とにかく、人気のない場所に移動するわよ!」
レナの言葉に従い一同は建設放棄地に向かう。真里愛も別行動の紗枝達に連絡を取りそこに集合することにした。
「さ、ついたけどここで何をどうすればいいんだ?」
「あの鎖の魔女はどっから出てくんだよ!?」
「急かさないでよ。今、心の準備してるんだから………」
「心の準備?」
「少し、気持ちを落ち着かせたいの…」
ふぅ、はぁ、と息を整えるレナ。フェリシアは噛みつかないように真里愛に抑えられていた。
「ま、こんだけ魔法少女が居るんだ。あんまり気を詰めるなよ…………」
「…………うん」
「それで、どうするつもりなのレナちゃん?」
「………謝る」
「謝るだぁ?」
フェリシアが訝しむ中、レナは再び大きく深呼吸をする。
「かえでーー!! 絶交するなんて言って、ごめん! レナも、かえでとももこの、3人のチームに戻りたい! だから、謝らせて!」
「彼奴なんで急に謝ってんだ?」
「いや、あたしにはさっぱり……」
フェリシアの言葉にももこも困ったように返す。レナの真意に真っ先に気づいたのはいろはだった。
「もうしかして、同じ状況を作ろうとしてるのかも」
「なるほど、絶交したあと仲直りしたいと謝罪する。それがあの鎖の魔女のくる条件でしたね」
「謝ればいいんだな!?」
と、ななかの補足にフェリシアも反応する。
「兄ちゃーん! オレも、ごめーーん!!」
「レナ、ちゃんと気付いてたから! 怒ってるの、解ってたから! ほんと、無理やりコンビニに使いっ走りさせてごめん!」
「ええっと………兄ちゃんが席外した間勝手にザリガニ食ったのちっこいキュゥべえのせいにした……のはバレてたし………」
「レナが好きなフルーツタルトがなくて、怒ってごめん! 気を使って、レナが好きなスイーツ買ってきてくれたのに気に入らないからって投げちゃってごめん!」
「兄ちゃんがジャムにしてくれるって取ってきた野苺、オレこっそりちっこいキュゥべえと2、3個食べてた、ごめん!」
「服汚してごめん! お金返さなくてごめん! ペットの餌代だったのに、本当にごめんなさい!」
「……………かえでとかユう子、許さなくても罰当たらない思うネ」
「なんか………うん、なんだろう。フェリシアと一緒に謝ってると、差がね………」
ななかチームの魔法少女二人がなんとも言えぬ顔で二人の謝罪を聴き比べる。
「あと、そのペットのことキモイって言ってごめん!」
「兄ちゃんがちっこいキュゥべえ撫でてたのに無理やり膝に乗ってオレの事撫でさせてごめん!」
「モッキュ! キュモモキュ!」
「でも、爬虫類とか苦手だから今もキモイと思ってごめん!」
「…………あのフェリシアって子が相対的にとってもいい子に見えてきちゃった」
「き、桐野さん! しーっ!」
紗枝も真里愛もレナの傍若無人っぷりに呆れる。というかそのかえでとかいう魔法少女、良く自分から謝ったな。
「ほんと、全部ぜんぶ、ぜーんぶ謝るから、出てきなさいよー!」
「…………私、ここまでされたら凹んじゃうかも」
「普通、そうだよね」
「そのかえでとかいう子、いい子すぎるヨ」
「将来悪い男に引っかからないか心配」
「み、皆さん! その、確かにもう普通に絶交したくなるような人ですけど………!」
誰もレナをフォローできない。
「早く出てきなさいよかえで! アンタ、レナの下僕でしょ!?」
「っ、ぅおい!?」
「命令になってる………」
「兄ちゃーーーん!! ごめんなーーー!!」
「…………フェリシアさんはいい子ですね」
嘗てフェリシアに要注意人物というレッテルを貼ったななかも、今回ばかりはフェリシアに優しくなった。
「だから………だから、出て………来なさいよぉ………」
「レナちゃん」
「かえでの家に行く度、こっそり家庭菜園の果物食べてたのも、やっぱりやっぱり、爬虫類も虫もキモいって思ってたのも謝るからぁ」
まだ出るのか。フェリシアは謝ることなくなってごめんしか言ってないのに。
「全部、後悔してるからあ!」
漸く終わり、変化を待つ。何も起きない? と………
「来たヨ!」
「何だ、この結界!?」
魔女の結界とは何処か違う、現実世界に重ねるように出現した異質な結界にももこが戸惑う。と………
『|ラ↑ン↓ラ↑ン↓ランラ/!!!|』
使い魔ではない、巨大な鐘の姿をした……あれが絶交ルールを破った者が永遠に掃除させられるという階段? さながら絶交階段……………魔女なのか?
足元から生えてくる階段が巨大な樹木のように絡み合い枝分かれし上空に伸びていく。
『|ラ↑ン↓ラ↑ンラ/!!!|』
『|『』『』『』!!|』
鎖の魔女から生み出される無数の南京錠型の使い魔。狙いは、フェリシアとレナ。
「当たって!」
『|『』『』『』!?!?!?|』
いろはが放った矢が先頭の使い魔に当たり、それが開戦の狼煙となって魔法少女達が飛び出す。
「来たか………」
「ごんべえさん!」
「兄ちゃん!」
「モキュウ!」
と、かえでとごんべえを探そうとしていたレナとフェリシア、後方支援のいろはの下にごんべえが現れる。その腕にはいわゆるお姫様抱っこされたかえでが居た。
「かえで!」
「レナちゃん………」
レナがかえでに向かって走ってきたので下ろすごんべえ。代わりにフェリシアとういべえがごんべえに引っ付く。
「兄ちゃん! 大丈夫か!?」
「モキュウ! …………キュ?」
顔に引っ付いたういべえはぬるりとした感触に気付き、フェリシアもボタッと垂れてきた液体に顔を上げる。
「ああ、大丈夫」
顔が血だらけだった。頭からは今も新鮮な血が、流れ! 怪我を、血!? 怪我、魔女にやられて!! 魔女に!!
魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に魔女に!!!
「アアアアアアアアッ!! あのクソ魔女がああああ!!」
雄叫びを上げながら飛び出すフェリシア。阻む使い魔も間にいる魔法少女も関係ないとばかりに薙ぎ払おうとして………
「落ち着け」
「むぎゅ!?」
無数の白いリボンがフェリシアと階段に絡みつく。蜘蛛の巣に捉えられた虫のようになったフェリシアはジタバタ暴れるも拘束は解けない。
『|『』『』『』!!|』
「むご!?」
「邪魔」
動きの止まったフェリシアを狙う使い魔達は、ごんべえがリボンを振るうと互いに打つかり合い砕ける。
軽く撫でたようにしか見えない動き。しかし武術を嗜む3人の魔法少女は柔術の極地を見た。
「思ったより、混沌としてるわね」
「やちよさん!?」
そして、魔法少女、使い魔入り乱れる光景に遅れてやってきた七海やちよが状況を見て呟く。
「神浜うわさファイルの通り、現実になってしまったわね………」
「何がうわさファイルだ! 魔女の性質が、偶然似ていただけだろ!」
と、やちよに噛みつくももこ。
「いい加減現実を見なさい! 貴方が私を嫌いなのは構わないわ。だけど、それを理由に仲間を危険にさらさないで。曲がりなりにもリーダーでしょ」
「…………………」
やちよの言葉にぐっと固まるももこ。
「それで、敵が狙うルール違反を犯した相手は?」
「俺とフェリシア、後かえでと其処の青いのだな」
「青いのって何よ青いのって!? あんたなんて白いのじゃない!!」
「レナちゃん、お姉様は私を助けてくれたんだよ? 失礼なこと言っちゃ………」
「かえでは黙ってなさ…………お姉様?」
今なんか変な呼ばれ方してなかった?
「様はやめろ。あと男だ俺は」
「……………………………え?」
「まあ、魔法少女なら女って思うわよね…………魔法少女?」
「行き着く先を思えば魔法少女だろ」
「っ、貴方は………」
と、ごんべえの発言にやちよが顔色を変え………
『|ラ↑ン↓ラ↑ン↓ラ↑ンラァァ/!!!!|』
「くっ、うああ!?」
「あぐ!?」
「つぅ!?」
と、絶交階段が魔力の篭った音を奏で、レナ、フェリシア、かえでが頭を抑えて苦しみだす。
「な、何だ!? なんで3人だけ!?」
「絶交ルールを破った奴しか洗脳できないみたいだな………そっちの青いの、認識を変えろ」
「なんでワタシの魔法知ってるネ?」
「…………みたら解った。俺の固有魔法なのかもな」
訝しみながらも魔法を発動する青髪の魔法少女。3人に対する洗脳音波が途絶えた。
「お前平気カ?」
「あの程度の魔力に侵されるほどチッポケな魔力はしてないからな。それに獲物がいなけりゃ逃げるだろ」
言外に、魔法少女としてかなりの資質を持ったフェリシアよりも高い魔力を持っていると言っていた。
「フェリシア」
「おう!」
「俺をあいつのところまで飛ばせ」
「………え? でも、兄ちゃん怪我して………」
「あ? ああ………」
と、曼荼羅模様の魔法陣が現れ傷も破れた服も血の痕も全部元通りにする。
「でも……」
「殴ってくるって約束してるからな………死にはしねえよ」
「だけど、兄ちゃんまで魔女に………! そんなの、やだよ!!」
「…………わかったよ。じゃあ、道を作れ」
「それなら、まあ…………」
今もなお階段の大樹を伸ばしながら上空に移動する喧しく鳴り響く鐘。無尽蔵に放たれる使い魔は一体一体大したことなくとも、きりが無い。
「真里愛!」
「ごんべえさん!?」
と、真里愛に駆け寄りながら手を伸ばす。意図を察した真里愛が手を合わせ、魔力を受け取る。
「これなら!」
ごんべえが蜘蛛の巣のように張り巡らせていたリボンに触れ魔力を流す真里愛。鐘の近くのリボンから大量の水が吹き出し階段の大樹が砕けた。
「フェリシア! 紗枝!」
「任せて!」
「おうよ!」
フェリシアと紗枝が主を守ろうとする使い魔達を吹き飛ばし、落下してきた絶交階段と接敵するごんべえ。拳や指に白いリボンを巻き付け、魔力を込める。
「落ちろ」
『|!!?!?|』
殴られた衝撃で落下速度が加速する。地面に激突した絶交階段は再び浮き上がろうとするが、既に魔法少女の間合い。
紗枝が投げた2つの仮面が半透明の巨人を呼び出し、光線を放つ。
『|!!?!?!!?|』
「白椿!!」
半身を犠牲になおも逃げ延びようとした絶交階段を、ななかの剣技が切り裂いた。
「兄ちゃん兄ちゃん、本当に大丈夫か? 手の骨バッキバキだったじゃん!」
「もう治った」
と、骨が砕かれたはずの手でフェリシアの頭を撫でるごんべえ。
「………男の人…………男の人?」
かえではそんな姉とか母親とかと形容できそうな笑みを浮かべるごんべえに首を傾げていた。
「まあ、髪伸ばしてるし女に見えるよな」
「その理屈でいうと髪の短いあきらは男になるぞ?」
「ボクは女の子だよ!」
「女の子、という呼び方が本当女の子してるな………髪を伸ばしてるのは…………知らん。まあリボンで纏めりゃ問題ない」
「知らんテ」
自分が髪伸ばしている理由を知らんと一蹴するごんべえに呆れる
「あ、そうだ。なあごんべえ」
「ん?」
「過去を調べたいなら、調整屋に行ったらどうだ? ソウルジェムに触れる際に色々見れるらしいぞ?」
「………そうか」
試して見るとしよう、と紗枝達を引き連れその場から去るごんべえ。フェリシアもまたな〜、と去っていた。
「神浜ミレナ座」廃墟。
「それで私のところに来たのねぇ。う〜ん、確かにごんべえ君は可愛い顔立ちだけど男の子だしねぇ」
「そうか、ならいい」
「あらあっさり。冗談よぉ、ほらほら、ケーキでも食べて」
「……ケーキ」
マスタードソースと蜂蜜、七味唐辛子が乗ったチーズケーキをしばし無言で見つめるごんべえ。
「いただきます」
ピリリとしたマスタードの辛さとそれとはまた別の七味の辛味。それが蜂蜜の甘さとチーズの酸味、チーズケーキの甘みと混じり……………
「ごんべえ君?」
「………………」
「フリーズしてる」
新しい情報を更新しているパソコンみたい、と呟く紗枝。未知の味に脳の処理が追いついていないのだろう。
数秒後、復帰したごんべえは無言でチーズケーキを完食した。
「美味しかったかしら? みたま特製チーズケーキ」
「……………いや、不味い」
「あらぁ?」
不思議そうに首を傾げるみたま。まあ味の好みは人それぞれよねぇ、と何故かごんべえが少数派のようにした。
「それじゃあ、行くわよ?」
と、ごんべえのソウルジェムに触れるみたま。
(それにしても、不思議なソウルジェム…………)
普通色がついているはずのソウルジェム。色がないとしても、それは白という色がついているものだ。ごんべえのソウルジェムは正真正銘の無色。ガラスや水晶のような透明度。
(前々から気になっていたのよねえ)
男の魔法少女………少女?
まあとにかく男でありながらキュゥべえと契約して魔法の力を得たごんべえ。しかも今回は本人きっての過去を覗いてほしいとのお願い。気兼ねなく覗ける。
魔力を同調させ、流し込み…………
みたまの意識は一瞬で膨大な情報に飲み込まれた。
町の歪みに晒され、心が荒んだ少女が居た。
何もかも信じられず、深く絶望した。だから現れたキュゥべえに願ったのだ。
「私は神浜を──」
『願うまでもねえ実現可能なくだらねえ願いなんざ俺に叶えさせるんじゃあねえよ』
…………………あれ?
願いが遮られた? いや、そんなはずはない。そもそも『彼等』がそんな事をするはずが………。
『復讐したいんだろ? 彼奴等の苦しむさまが見たいんだろ? 協力してやるよ、八雲みたま』
そこからが早かった。
『彼』に手伝ってもらい、水名女学院はみたまがそうされたように世間に後ろ指を指され、そこに通うというだけで負のレッテルを貼られるのを嫌い生徒は次々やめていき、みたまを嵌めた生徒は責め立てられ当時の文芸誌の出版社の信頼は下落。
掌返したように信じていたという生徒達はウザいが、それだけ。
「………ふ、ふふ。あは、あはははは! こんな簡単なことなのねぇ! 勝手に真実に尾ひれを付けられて、責められて、ちょっと前の私みたい!」
いい気味だ、と思った。妹をいじめようとしていた連中は先に晒してやった。自分達がやろうとしている事を、他の誰かにやっていたことをやられて世界一不幸とでも言うような顔をしていたのをみてザマァ見ろと思った。
「ふ、あはは…………はぁ………」
自分が生きていた世界の狭さを知った。大東の誇り? 希望。知ったことか、どうでも良い。
「ねえ、■■■■」
『あん?』
「本当にどんな願いでも叶えてくれるの?」
『…………対価を知って、それでもなお叶えたいというのなら』
「じゃあ………」
「そこまでだ」
声が聞こえる。
聞き覚えのあるような、初めて聞くような声。
「まさかこっちを覗いてくるとは。いや、別の世界とはいえお前との関係性を考えればありえなくもない、か?」
誰だっけ? この人は、誰だろう。
貴方はだぁれ?
「俺か? 俺は■■■■………理から外れ、理となった■■………《そいつ》を送り込んだのも俺。■■■先輩の頼みでな。あとあのガキどもがうるさい」
何の話だろう?
「まあどうせ忘れる記憶だ。ただ、これだけは覚えておけ。そいつを誰かに調整させるな。縁を通して俺の記憶の一部を覗き込んで、他の記憶に飲み込まれ流される。今回助けてやるのはサービスだ」
「………………あれ?」
「なにか見えたか?」
「あ、えっと……………ごめんなさい。何も見えなかったわぁ」
「………う〜ん。ごんべえ君、他人に調整させるのやめたほうがいいかも。ひょっとしたら何か見たのかもしれないけど、頭痛い」
今日は店じまいにするわぁ、と頭を抑えながら呟くみたま。
「俺のせいなら、家まで送ろうか?」
「あら相変わらず面倒見のいい。大丈夫よ、ごんべえ君が送り狼になる方が不安だし………」
「そうか」
みたまが笑ってみせると世話になった、と立ち上がるごんべえ。
「調整に来なくても、お話ぐらいはしてくれると嬉しいわぁ」
「そうだな、暇な時に顔を出してやるよ」
ごんべえはそう言うと紗枝と真里愛を連れ外に向かった。
「…………?」
ごんべえの隣を歩く二人を見て、みたまは何故か妙な胸の疼きを感じた。
『君が来てくれて助かるよ』
神浜市の境界にて、キュゥべえが金髪の魔法少女にそう語りかける。
「貴方が神浜市に入れないからって、彼を連れて行ったっきりだもの。彼に何かあれば直ぐに伝えるんじゃなかったの?」
『同期出来ないだけじゃ彼になにかあったと判断するには弱かったからね。事実彼は神浜市の境界を超えても意識を保ち、嬉しそうに走っていったよ。『自由最高』と連呼してたね』
何だそれは、と少女は眉間にしわを寄せる。
「……………彼は神浜市でも活動できるのね?」
『そのようだね』
「貴方達が意識を保てない理由は何なの?」
『たかが街一つ分の問題だよ? 態々調べる必要があるのかい?』
キュゥべえは不思議そうに尋ねてきた。
「私が知っておきたいのよ」
『………………どうやら魔法少女の魔法により、端末との同期が不可能のようだ』
「あら、あっさりね」
『ボク等に干渉してくるのなら、観察できる。観察出来れば理解出来るのは道理だろう?』
「…………………」
『彼に影響が出ないのは謎だけどね。彼も結局は、僕等との同期で生まれたバグでしかないはずなんだけど』
「彼を不死にしている願いは、そうだと認めなかったんでしょうね。ただ…………少なくともこの町には貴方達を敵と認識する魔法少女がいる」
『そういうことになるのかな。昨今の魔女、魔法少女の移動を鑑みるに組織だった動きだと思う。彼も無事だといいんだけど』
と、銃声が響きキュゥべえの頭が弾け飛ぶ。
『何故怒るんだい?』
「思ってもないこと言うからよ。まあ、神浜の異変については調査してあげる。先に飛び込んだ彼女が、なにか掴んでいるといいんだけど」
■■■先輩
■■■■の先輩。先輩呼びは彼女に何時もくっついてるやかましいガキに強要された。
■■■
■■■■の母。
何百万という時を何万通りも体験した息子を甘やかそうとしたが構いすぎたのか最近無視される。反抗期の微笑ましく見守っていたが後輩の■■■ちゃんとは話しているのを見て嫌われているのではと不安になってきた。
■■■■
3人目の■■の■。一番後輩。
ただし■■の■に至るまで過ごした時間は最多。先輩にある頼まれごとをしたが性格がひねくれているのであくまで先輩の頼み事が叶うかもしれない可能性を送り込んだ。
どこから来たごんべえ?
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神浜在来種(みかづき荘)
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神浜在来種(調整屋)
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神浜在来種(ママミ魔法少女)
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黒江ちゃんと一緒にくる
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いろはちゃんと一緒にくる
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見滝原からこんにちは
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何故か病院を拠点にしてた
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何故か人型