性格の悪いインキュベーター   作:超高校級の切望

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俺はお前を泣かせたいんだ

「じゃあ少なくとも、妹の友達の灯花とネムとやらは居たのか」

「はい! でも、二人の居場所までは」

「…………いろはが病院に通っていたのは妹の見舞いだろ? なら、そもそも知り合いですらなくなってるかもな」

「そんな…………」

 

 よほど仲が良かったのか、二人に知らないと言われる姿を想像し落ち込むいろは。

 

「少なくとも環ういの実在の可能性は上げても、手掛かりにはならねぇな……」

「うう………」

「モキュウ」

 

 落ち込むいろはを慰めるように擦り寄るういべえ。

 

「…………本当に、人に寄り添うのですね。その子は」

 

 そんな光景をなんとも言えない顔で見るのはななか達。いろはとも連絡先を交換していたらしく、いろはが連絡して呼んだのだ。

 場所はとあるカラオケの個室。

 

「あれがどういう奴等かは知ってるのか」

「ええ、まあ。ごんべえさんは?」

「ここで言ったら不味いことになるのは解る、程度だな」

 

 と、いろはやかえで達を見るごんべえに成る程、と返すななか。

 

「貴方とは話が早そうです」

「どうだろうな? 俺がいたら、今の仲間は集まらなかった可能性もあるが?」

「………あ、あの……?」

 

 不意に視線を向けられ困惑するかこ。ななかは無言で茶を啜る。

 

「少なくとも、()()()()()()に関しては何も言われる筋合いはないかと」

「違いない。覚悟が決まったガキをガキだからと差別するほど、俺は浅慮じゃねえからな」

「……………」

 

 その割には随分と不満そうだが………。

 

(随分と、優しい方ですね。まだ知り合ったばかりでしょうに………)

 

 かこの魔法少女になった経緯はななかにも思うところがあった。仲良くなった今は特に。自分には今さら後悔する資格はなく、しかしこうしてそれを不快に思ってくれる人が居るのは………

 

「救われるかアホ。責められたところで過去が変わるわけでもねえんだ。喜ぶドMだってんなら別だがな」

「…………貴方は、随分と厳しい方ですね」

 

 と、苦笑するななか。周りは意図を察せなかったのか困惑していた。

 

「それで、皆さんは今後どうするのですか?」

「………私は、噂について調べてみます。ういが関わっているかもしれません。ういを、見つけてあげなきゃ…………」

 

 と、いろは。結局病院でも、ういの情報だけはなかった。ういの存在は、未だに自分の中だけ。だけど………

 

「ごんべえさんが、信じてくれますから……」

「あたし達も信じてるから手伝ってるんだけど」

「え? あ! ご、ごめんなさい! 助かってます、ももこさん!」

「まあいいけどさ………ごんべえ達は?」

 

 と、ももこはごんべえに話を振る。

 

「うわさの調査と、並行して俺の記憶探し。紗枝はまだ雇うつもりだが、真里愛はどうする?」

「私も、手伝えることがあるなら頼って頂戴」

 

 あのウワサを倒した後、真里愛が手伝いをしている学童保育の子が戻ってきたらしい。ごんべえが調査の際話した少女の友人もだ。他にも戻ってきたと噂になっていた。

 もしまた誰かが攫われても、魔女より間に合う可能性があるのだ。

 

「で、でも間に合わない可能性もありますよね………?」

「お前、結構物事をはっきり言うよな…」

 

 ごんべえの言葉にかえでは何故かテレた。

 

「……間に合わない、ですか」

 

 ごんべえとかえでが結界内で見つけた衰弱死体。

 当然、絶交ルールに攫われ死んだ者達は発見されていない。ごんべえが予め死体の幾つかから調べた名は未だ行方不明扱いのままだった。

 

「ま、簡単に人が生き返ったらそれはそれで気持ち悪い世界になりそうだがな」

 

 死者はそれこそ奇跡にでも縋らない限り蘇らない。だからこそ、人は死した者と離別しなければならないのだ。そうしなければ容易く死に誘われる。

 

「…………死に誘われる、ですか。詩的な表現ですね」

「知り合いに作家でも居たのかもな」

「しっかし噂かぁ…………あたしが知ってるのだと、『交差点の踊るおっさん』………」

「それ、学校の不審者メールだったネ」

「うん、ボクの学校にも来てた」

「え? あれ………あはは、ごめん。印象に残ってた」

 

 まあそれもそれで、だいぶ謎だが。

 

「私が知っているのですと、鋭い牙を持ちザリガニや蛇を生で食い漁る白い怪人でしょうか?」

「あれ? 私は金髪の女の子って聞いたような気がしますけど……」

「ああ、それ俺とフェリシアだな。生じゃねえけど」

「…………………」

「ほ()………」

 

 と、指で口の端を引っ張り牙のように鋭い歯を見せてくるごんべえ。黄ばみの一切ない真っ白な歯の隙間から赤い舌が覗く。

 

「あわわ………な、なんかいけないものを見てるみたい」

「いや、別に口の中だろ?」

 

 何故か赤くなるかえでにももこが首を傾げた。

 

「………本当に全部牙みたいネ。お前本当に人間?」

「失礼だよ美雨。でも、なるほど………これでザリガニとか食べてたら噂にもなるのかな?」

 

 特にこの神浜という町は噂が広がりやすいし。

 まじまじと異性の口内を見つめるチームメイトにななかが咳払いをする。

 

「我々としても人に仇をなす異形を放置する気はありません。魔女同様、見つけ次第かるつもりです」

「グリーフシードが出ないのが少し痛いけどね」

 

 魔法少女にとっての生命線とも言えるグリーフシード。ウワサは魔女じゃないから、落とさないのだ。と、不意にごんべえが片手を喉の奥に突っ込む。

 

「ぶぇ………」

 

 唾液に塗れた人差し指と中指の間に挟まっていたのは、グリーフシードだった。

 

「え!? いや、なんでもって………それ以前になんでそこにいれてんの!?」

「知らん」

 

 お手拭きでグリーフシードについた唾液を拭き取るごんべえ。

 

「一つはななか達で、一つはももこ達で使え。昨日の報酬だ」

「えぇ………いやまあ、受け取るけどさぁ」

「ちょっと! レナは嫌だからね、人の口から出てきたものなんて!」

「じゃあ、私が使うね」

 

 と、ももこチーム。

 

「グリーフシードはグリーフシードヨ。別にお尻から出て来た訳じゃないネ」

「ま、まあそれに比べたらまし、なのかな?」

「…………使わさせていただきます」

「あ、使うんだ」

 

 と、ななか組。

 

「報酬なら受け取るけど………ごんべえの体ってフードやポッケと同じぐらい不思議だね」

 

 さっきまで色々食べてたのに胃の内容物が一切付着した様子がなかったのを思いだし、首を傾げながらソウルジェムの穢れを吸わせる紗枝。

 

「と、そういえば今神浜にはキュゥべえが…………ういべえ、だっけ? これって回収来てくれるの?」

「キュキュウ(無理だよ)」

 

 紗枝の言葉に首を振るういべえ。後で調整屋にでも届けるか。

 

「ああ、グリーフシードの回収なら俺がやっとく」

「…………また飲み込むの?」

「処理するに決まってんだろ」

 

 ななか組の穢を回収し終えたグリーフシードを受け取るごんべえ。口に含み…………噛み砕いた。

 

「………グリーフシードって噛み砕くもんなの?」

「刺激与えたら魔女が孵るかと………」

「溜まった穢れを『変換』しただけだっての」

「変換………それが貴方の固有魔法でしょうか?」

「だから知らん」

 

 魔法少女の願いで生まれる固有魔法。しかし魔法少女達の魔法はなにもそれだけてはない。回復、念動、鍵開けなど、出来ることは色々ある。ごんべえのこれは、どっちなのだろうか?

 

「……ごんべえさんの記憶、少し興味が湧いてきました」

「そうか………ま、とりあえず話し合いは終わりだ」

「まだ時間あるし、ここはカラオケ………歌うか!」

「え? ええ!?」

 

 ももこの提案に戸惑ういろは。

 歌とかあまり知らない。とりあえず知ってる曲をなんとか歌った。ごんべえは誰かが適当に入れた歌で九十点代出してた。

 

 

 

 

「うう、喉がちょっと痛い」

「モキュウ?」

「………うん、楽しかったね」

 

 帰り道。町から出たがらないういべえだが途中までは側にいてくれるので、会話しながら帰る。と………

 

「モキュ!?」

「え!?」

 

 いきなりういべえが誰かに捕まる。

 

「……………何だ違うのか」

「だ、誰ですか貴方は!? ういべえを離してください!」

「ああ、ごめんごめん」

 

 と、ういべえを渡してくる黒髪の女の子。誰だろう?

 

「ねえ、その子の他にこの町でシロマル見てない?」

「し、しろま……? キュゥべえ達のことですか?」

「そうそれ。普通のと違って、牙が生えてたり桃色が上げた赤いリボンを巻いてたりするんだけど」

「…………いえ、この町ではういべえしか」

「………そっか」

 

 いろはの言葉に肩を落とす少女。すごく落ち込んでる。なんだか申し訳なくなってきた。

 

「あ、あの………なんか、ごめんなさい」

「別にいいよ。君は優しいね! まあ、この町でシロマルの仲間はその子しか見てないし、彼もそのうち現れるかも! その時教えてくれる?」

 

 と、携帯を取り出す少女。感情の浮き沈みが激しい。

 

「私は呉キリカ!」

「あ、た……環いろはです」

「よろしく、いろは!」

 

 

 

 

 

「口寄せ神社?」

「ああ。新しい噂………水名区の何処かにある神社だと」

 

アラもう聞いた? 誰から聞いた?

口寄せ神社のそのウワサ

家族? 恋人? 赤の他人?

心の底からアイタイのなら

こちらの神様にお任せを!

絵馬にその人の名前を書いて

行儀よくちゃーんとお参りすれば

アイタイ人に逢わせてくれる

だけどだけどもゴヨージン!

幸せすぎて帰れないって

水名区の人の間ではもっぱらのウワサ

キャーコワイ!

 

 

「とまあ、イドバタ共が語っていた」

「メンバーは?」

「ななか達はななか達で噂を調べてるみてえだし、いろはと合流して4人………フェリシアも雇うか? 俺がまたああいうのに関わってると知ったら騒ぎそうだし」

 

 戦力的には申し分ないだろう。後は変身の仕方でも思い出せれば良いのだが………。

 

「………ねえ」

「ん?」

「調整、できるのよね?」

「出来るぞ」

「じゃあ、やって…」

 

 と、ソウルジェムを突きつけてくる紗枝。

 学園では良家の娘……というイメージを定着させ、隙を見せぬために学外の相手にも本当の自分を明かさなかった。魔法少女としての武器が仮面なのは、なかなか皮肉が聞いている。

 

「あんたは、全部知ってるでしょ?」

 

 本当の自分を隠すために調整を避けてきた。しかしごんべえは現在桐野家の居候で、家の事情を知っている。

 

「解った」

「これは神社調査の前払いってことでいいから」

 

 他人には頼らないと決めている。だから、これは公平な取引。そんな紗枝にごんべえは呆れたような目を向ける。

 

「ガキが無理に大人になろうとしてるのは、何時見ても苛つく光景だな」

「あんたの感想なんて知らない。それに、別に無理してないし」

「そりゃそうか。無理してるなんて言ったら、両親が頼りないって認めちまうからな」

「…………さっきから、喧嘩売ってんの?」

「そう感じるか? そうなのかもな…………ああ、そうだな。俺はお前を泣かせたいんだ」

 

 睨みつけてくる紗枝にごんべえは鋭い歯を覗かせ笑う。

 

「────。残念、あいにく買う気はないわ」

「なんだつまらねえの」

 

 現在、月の収入その半分以上をごんべえに頼っている。それを思い出し仮面を被り直す紗枝にごんべえはつまらなそうに言う。

 

「まあいいさ。なら前払いってことにしといてやる」

「っんぅ………」

 

 ごんべえがソウルジェムに触れ魔力を同調させ、流し込む。なんとも言えぬ感覚に呻く紗枝。

 

「はい終わりっと。じゃ、また明日な」

「ええ」




ごんべえ 無変身ver
初期レアリティ✩✩✩ 最大✩✩✩✩☆
属性ダーク
タイプサポート
ディスク構成
Accele×2 Blast縦×1 Charge×2
コネクト「受け取れ」
☆3与えるダメージUP[Ⅴ]& 確率で拘束[Ⅵ]
☆4与えるダメージUP[Ⅵ]& 確率で拘束[Ⅶ]
☆5与えるダメージUP[Ⅷ]& 確率で拘束[Ⅸ]
マギア「レガーレ・ヴァスタアリア?」
✩3敵全体を確率で拘束[Ⅶ]&AcceleMPUP(全/2T)
✩4敵全体を確率で拘束[Ⅶ]&AcceleMPUP & ダメージUP(全/2T)
✩5敵全体を確率で拘束[Ⅷ]&AcceleMPUP & ダメージUP(全/2T)
ドッペル?
「■■顕現」
敵全体に大ダメージ&確定で呪い&確率で拘束[Ⅶ]
(口寄せ神社編で登場予定)

変身の仕方を忘れているごんべえ。


ごんべえ胃袋
消化用とグリーフシードを保管するための2つがあるのでは? ともっぱらのウワサ!


ごんべえは素直な子供が好き(本人は別にそんなことはないという)なぶん、大人になろうとしている子供は嫌いです(本人曰く苛つくだけ)。
大丈夫最強ちゃん? 泣かされない?

どこから来たごんべえ?

  • 神浜在来種(みかづき荘)
  • 神浜在来種(調整屋)
  • 神浜在来種(ママミ魔法少女)
  • 黒江ちゃんと一緒にくる
  • いろはちゃんと一緒にくる
  • 見滝原からこんにちは
  • 何故か病院を拠点にしてた
  • 何故か人型

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