書き直すことにした
「これで最後っと」
最後の黒羽根の頭部をバールのようなもので、叩き、リボンで拘束して端っこに捨てる。残りは魔女と使い魔。
「ゆま! そっち行ったぞ!」
「てぇい!」
ゆまは幼いながらも中々の資質を持った魔法少女らしく、猫を思わせる可愛らしいハンマーという見た目に反して威力が高い。ぶん殴る度に衝撃波が発生している。
とはいえ子供。いささか戦闘なれしてなさが見て取れる。それを上手くフォローする杏子だが、ヒラリと落ちる『12』の紙。
「だあああ!? 今のアタシが普通に間に合ってたろうが! 何でもかんでも幸運のくくりにしやがって!!」
明らかに運ではなく杏子が間に合っている。しかし幸運水は恩着せがましく幸運を使用したと報告してきて苛立ったように叫ぶ杏子。
「自分が凄いってアピールしたいんでしょ」
激高する杏子に呆れながら熱線で魔女を撃ち抜く紗枝。ごんべえは使い魔をバールの先端でぶっ刺し脚をかけ、引き抜くように肉を引きちぎる。
「結局裏切るでございますか」
「まあ、それならそれで構わないよ。纏めて倒してあげる!!」
「我等が奏でる笛の音に」
「酔いしれると良いよ!」
ピィィと甲高い音が成り響き、音が攻撃となって襲いかかる。
「と…」
「わわ!?」
「落ち着けゆま、見えずとも来る方向がわかれば対処できる」
危うげなく避けるごんべえは慌てているゆまにリボンを絡め引き寄せ、天音姉妹に向かってネイルガンからネジを打つ。
「改造ネイルガン!?」
「なんて危険なものを!!」
使い魔や魔女には効かないが、ベースが人間の魔法少女には牽制ぐらいにはなる。
「魔女達、やってしまいなさい!!」
「やらせないっての!」
ごんべえに迫る魔女を紗枝が焼き払う。結界の要だったのか、結界が崩れる。
「まさかの全滅!? でも………」
「ここに配属されたのは、こここそが私と月咲ちゃんのテリトリーだからでございます!」
「ねー!」
「!?」
音が反響する。
見えない音が、目印となっていた姉妹達とは全く別の方向から襲ってくる。
「っ! おい、これはちょっと厄介だぞ!」
「キョーコ、怪我! ゆまが治すね!」
「おい馬鹿!」
と、杏子に向かい駆け出したゆまを襲う音の衝撃。ごんべえが咄嗟にリボンで引っ張る。
「11………」
「今のもカウントされてんの?」
一本釣りされたゆまを受け取る紗枝は現れた幸運仕様報告の紙に顔を顰める。一日一本だったとしても割に合わないだろう。
「幸運が舞い込むってんならこの音をどうにか出来ねぇのか!?」
「そんな都合のいい…………あったわ、幸運。思い出した」
と、ごんべえがフードから取り出したのは短機関銃。PPSh-41………またの名──
「「…………え」」
「こっちも奏でろ『
ダララララ!! と火を噴くバラライカ。狙いは雑でも問題ない。装弾数71発の鉄の雨が天音姉妹に降り注ぐ。
「わわわわ!?」
「ど、何処でそんなものを!?」
まさかの兵器に魔法少女達も面食らう。魔法少女が人より頑丈だろうと、生身で銃弾を受けられるわけではない。ましてやソウルジェムに当たれば…………
「漸くうるせぇ音が止んだな」
「っ!?」
銃弾を回避した月咲に杏子が迫る。槍が振るわれ笛を構える前に吹き飛ばされた。
「予備動作がいちいち大きいんだよ」
攻撃速度は文字通り音速であろうと、口に寄せ、吹くという動作が必要な以上戦い馴れた魔法少女である杏子には隙さえ出来れば何の問題もない。
「月咲ちゃん!」
慌てて駆け寄ろうとする月夜も明確な隙を晒した。ハッと気づいた頃には周囲に浮かぶ紗枝の仮面。放たれる熱線を回避するも衝撃で吹き飛ばされた。
「ソウルジェムも濁って来たわね。もう魔力も残ってないでしょ」
「魔法少女の解放だなんだって言ってんだ。
2人のソウルジェムには穢れが溜まっていた。これ以上魔力を使えばソウルジェムは穢れきり、
「おや、意外でございます。知っていたのですね」
「でもこれは、ウチ等にとって好都合」
「ねー」
「あん?」
しかし慌てることなく、むしろ余裕を取り戻した天音姉妹に杏子は訝しむ。
「皆さんとっても幸運でございますね」
「不幸なのに幸運だね。なんたって、神浜が“解放の場である証拠”を」
「その目でご覧になれるのですから」
ゾワリと身体から溢れ出す穢れ。その悍しい気配は、魔女のそれに近い。
やがて溢れ出した穢は形をなし半球のような形を取る。
アクアリウムを包み込んだジャイロスコープ。月咲がポールダンサーのように逆さまにくっついている。
月夜の方はテラリウムで、ブランコに乗っている。
「妹の方だけ負担がでかいな」
ごんべえは逆さまのまま笑う月咲を見てポツリと呟いた。
「さぁ、私たちが思うまま」
「さぁ、ウチらの思うまま」
「全ての雑音から私たちを隔絶せよ!」
「全ての柵からウチらを絶縁して!」
テラリウムから伸びた枝に絡みつく木の実とアクアリウムから生まれたガラス玉が襲いかかってくる。
「ち!」
リボンで受ければ木の実はガラスのドームを形成し植物のようなものが生え、ガラス玉は凍りつくように広がりチェスのポーンのようなものを付ける。
少しでも動きが止まると本体が突っ込んでくる。
「わわ! あう!」
触れたら明らかにまずい弾幕。一気に数が減って行く幸運。
ゆまの近くに落ちる『0』の紙。
「あ………」
バランスを崩したゆまに迫る木の実。リボンで引き寄せ……いや、不幸が発動するだけ。ならばと飛び込むごんべえ。
ユマに手が届いたことで、ごんべえの最後の幸運が無くなる。木の実がごんべえに当たると同時にガラスの球体に覆われ、無数に生えた植物のようなモノに貫かれる。
「ごんべえ!?」
「ごんべえ!」
ゆまと紗枝が叫び、杏子がガラスを破壊する。
「っ! ソウルジェムが………」
砕けたジェムの欠片を見て顔色を歪める杏子。肉体だけなら、或いはなんとかなったかもしれないがこれでは。
「ごんべえ…………? ちょっと、嘘でしょ? ごんべえ!!」
紗枝が駆け寄るが当然反応はない。屍が一つ、その場に転がるだけ。
「っ! 良くも………!!」
「マギウスの意思を理解しないからだよ」
「どうかお引き取りを。我々も、無闇な殺傷をしたいわけではありません。貴方達もまた、救うべき魔法少女なのです」
天音姉妹の言い分に対する紗枝の返答は、熱線だった。
「ふざけんじゃないわよ。何が救済…………友達犠牲にしてまで得る救いなんて、私はいらない!!」
願いにより大切な時間を犠牲にしてしまった紗枝だからこそ放つ本心の叫びに、天音姉妹は目を細める。
「では、仕方ないのであります」
「ウチらの邪魔をするなら容赦は………」
…………カチン
「………え? なに?」
カチンカチンと、音がなる。金属同士がぶつかるような音が反響してカチカチカチカチと地下空間に響く。
「何なのでございますか!?」
ここに機械類などないはず。なのに響く奇妙な音。反響して発生源が掴めない。
「…………頭いった」
「………え?」
聞こえてきた声に振り返る紗枝。杏子も天音姉妹も目を見開いて声の人物に振り返る。
「……………何処だここ?」
立ち上がったのは、ごんべえ。魔法少女の治癒では説明がつかない、時間を巻き戻すように血痕が消え傷が塞がっている。
「その歯車…………お前、まさか本当にごんべえ!?」
「? 杏子に………ゆま? 本当も何も俺はごん………なんだこの姿」
ガリガリと頭をかき、己の姿を見回すごんべえ。鏡で顔を見たわけではない。服装を気にしているように見えない。まるで、今の形を不自然に思っているかのよう。
「ソウルジェムが、直った!?」
「うそ!? そんなことある!?」
「……………何だ、あの気持ちの悪い姉妹は」
「きも──!?」
突然の暴言に固まる天音姉妹。ごんべえは言葉の通り気持ち悪そうに二人を睨んでいた。
「お前、記憶戻ったのか………」
「記憶……? あー………神浜に入って先輩達と縁が切れて、テンション上がって町を駆け回った後108の部族の喜びを表す踊り踊ってたらビルから落ちたところまでは覚えてる」
「何やってんだお前!?」
本当に何やってんだこいつ。たまにゆまやタツヤと一緒に子供向け番組の踊りを踊っているの見たことはあるが。
「…………ごんべえ?」
「………お前は…………ああ、紗枝か」
どうやら記憶喪失だった間のことも覚えているらしい。
「記憶がはっきりしてきた。あのキモい姉妹は天音姉妹………敵か」
「キモいって言った!?」
「いくらドッペルを纏っているからと言って、その発言は些か度が過ぎるでございます!」
「? そのガキの工作がなんだって? 俺が気持ち悪いって言ってんのは、仲良しのフリをしてるからだ」
ドッペルというらしい魔女モドキを子供の工作と言いきったごんべえは呆れたような目を向けた。
「絡み合った魔力に因果。お前等自分達の仲を願ったな? ならその時点で、相手に一切の不満を覚えなくなっただろ? 仲が良いから? 認めあったから? アホが、願いで心が歪んだからだ。自分達は仲良くなれねぇと自分達で決めつけ先輩の口車に乗り、永遠に偽りの絆に酔うガキ共なんて気持ち悪い以外に言葉があるか?」
気のせいか、目つきが悪くなっている気がするごんべえ。その発言に天音姉妹の顔が歪む。
「余計なお世話でございます!!」
「余計なお世話だよ!」
「おっと………」
飛んでくる攻撃を避け、距離を取るごんべえ。己の姿を確認しながら、真っ白な琵琶を取り出す。
「……………見てくれだけか」
そのままぶん投げ迫ってきたガラス玉とぶつかり合う。
「逃がしません!」
「取り消させてやる!」
迫る樹の実とガラス玉。身体能力が人を超えた魔法少女でも、この弾幕を避け続けるなど不可能。ごんべえはんぇ、と舌を突き出す。その上に転がる、牙模様のグリーフシード。
『■■■■■■■■!!』
空間が塗り替わり、咆哮が響き渡る。音圧で樹の実とガラス玉が吹き飛ばされた。
「な、なあ!?」
「魔女!?」
荒野の魔女結界。無数に散らばる折れた十字架に、朽ちた石の家。
中央に座すのは王冠を被った竜の魔女。古の時代、歴史に大きな影響を与えた魔法少女が変じた強大な魔女だ。
「魔女使い!?」
魔法少女の中には稀に催眠魔法や洗脳魔法、或は調教を行い従える事がある。だが、それは当然魔法少女に御せる程度の魔女の筈。
「
『■■■■■■■■■!!』
グロテスクな見た目が多い魔女の中でも形の整った暴竜は尾についた鉤爪を振るう。天音姉妹のドッペルが砕け、濁流の如く迫る火炎がウワサごと2人を飲み込む。
「もういいぞ」
ポン、とごんべえが魔女に触れると魔女の輪郭が崩れグリーフシードに吸い込まれていく。倒された、とは違う。
卵から生まれた鶏が卵に戻るように、因果が反転し卵に戻る。口に放り込み飲み込んだごんべえは改めて杏子と視線を合わせる。
「……………なんだ今の」
「あたしが知るかよ」
「『回収』とも違う………『具現』が近いか? いや、一番近いのは『変換』……」
だがそれとも大きく異なる。己の所業に首を傾げながら、改めて天音姉妹を見つめる。
「取り敢えず、あの二人どうする? 殺すか?」
「え…」
「おいごんべえ! ゆまの前で物騒なこと言うんじゃねえよ。だいたいそういうのは証拠残らない魔女の結界とかでだな………」
ごんべえの提案に固まる紗枝と呆れつつも殺害に関しては拒否する姿勢を見せない杏子。
「ッ! せめて、月夜ちゃんだけでも!」
「月咲ちゃん!? 何を言っているでございます!」
「だって………!」
「どっちも殺すに決まってんだろ。報復してくるのは解りきってんだから」
かばい合う2人を見てごんべえは面倒臭そうに言う。
「奇跡に縋り得た絆で仲良しこよしで過ごしておいて、その対価を払いたくない…………までなら、まあ事前説明がねえからいいけど他の誰かに払わせようなんて考える奴に慈悲をかけるか」
「っ!!」
「ああ………でもそうだな。これからは心を入れ替えて関係ない奴を巻き込まねえってんなら考えてもいいぜ?」
「し、しかし………魔法少女の解放のために………!」
「どうしたって、犠牲は…………」
それは仕方のないことだと、解っている、それでも自分達は、という態度にごんべえは目を細める。
「関係ない奴つったろ? お前を慕う後輩とか、家族とか………お前の人生に絡んでる奴等を食わせろよ。知り合いに魔女に食わされるんなら、死の瞬間に生む絶望は魔女のいい栄養になる」
「「………………は? ──!!」」
言葉の意味を理解した二人はふざけるなと叫ぼうと口を開き、叫ぶ前にごんべえが蹴り飛ばす。
「月夜ちゃ──あぐ!?」
「何怒ってやがる? お前らが散々してきたことを、身内でやれって言ってるだけだろ? ああ、それともまさか自覚してなかったか? 遠くの出来事とでも思っていたか? んな訳ゃねえだろ。お前達が、この町でやってきた………別にそいつ等の恨みを晴らしてやる気はねえけど、繰り返すってんならムカつくが」
杏子と同じ形の、しかし純白の槍を生み出すごんべえ。
「いっそ開き直って私達の幸せの為に他人なんか知るかとでもいえば良いのに。そんなに自分が悪党に落ちるのがいやか?」
ごんべえは呆れていた。己がやっていることが悪党である自覚を持ちながら、罪悪感を感じてるから悪じゃないと己に言い聞かせる子供に………その子供の我儘に、人死が出ている事実に。と、その時………
「…………!」
回転しながら飛んできた巨大なチャクラムに気付き防御するも、咄嗟の対応で体勢が悪く吹き飛ばされる。
「二人とも、無事ですか!?」
「み、みふゆ様!」
「ごめんなさい、フクロウ幸運水のウワサが………」
現れたのは白髪の魔法少女。女性と言ってもいい年齢の魔法少女は二人を庇うように立ちはだかる。
「また新しい魔法少女か……」
「お二人が世話になったようですね。ですが、これ以上はやらせません!」
決意に満ちたその瞳を見て、ごんべえはキッチンに湧いたゴキブリを見るような目をした。
変更箇所
固有武器
武器の再現は出来るけど能力、魔法の再現は出来ない。笛はただの笛だしリボンは銃にならない。
暴竜の魔女
その性質は誇負。
嘗て偉大な聖女と共に戦ったことと所属していたドラゴン騎士団に強い誇りを持ち、しかし最早それは何処にもいない事に気付かない。
再び彼女達を見つけるために、再び彼等に見てもらうために、魔女は今日も己の強さを知らしめる。
ごんべえ
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