昔々、或は現在。もしかしたら遠い未来。
この世の隣で、この世ではない場所に、3人の神々が住んでいました。
最初の女神様は膨大な因果を使い、過去、未来、現在から悲しみの結末を消し去ろうとしました。
2番目の女神様は妹達と現代と未来から悲しみを消そうとして、消せない過去の物語も何時か皆に知ってもらおうと記すことに決めました。
3番目は男神でも女神でもなく、悲劇を振りまいていた者達から生まれた魔神。
良くない願い事をして自業自得の末路を送る者達も、悲劇に終わる者達と同じぐらい見てきた魔神は女神様達と違って何もしないまま救われるのは嫌いなので、悲劇に抗えるようにするだけです。
でも、多くの宇宙文明を与えた者にして母である最初の女神様に関わる強い因果と、宇宙で最も発達した文明の知恵を持ち干渉しようとする者達を煙に巻く魔神はとても強く、2番目の女神様はそんな魔神に頼み事をしました。
レコードの管理をし続けることになるとある2人の解放。自分と1人の妹だけが帰れるのではなく、皆で帰れる世界が一つでもほしいと。
魔神はとても面倒くさそうにしてました。
一見すれば悲劇に見えなくはないですが、少女達がやってきたことも事です。でも、当時は記憶を失い己の欲望で動いていても、始まりは絶望に終わる結末に抗うことではあったので、2番目の女神も生まれない時間軸の少女達の最期の抗いに免じて聞いてあげることにしました。
でも、神である3柱が下手に自分達という概念がない世界に関わると世界を滅ぼしてしまうので、魔神はとある存在に目をつけました。
過去の、或は歩めなかった未来を歩む自分。
願いを叶え奇跡を現実のものとする力は未だ健在の魔神は、丁度その地に訪れていた彼に事情を話しました。
無理強いをする気はありません。救う気もないのに救ったところで、そのつけを払うことになるだけであることを知っています。
力を与えるから後は自由にして良いと言うと、それで煩わしい繋がりから解放されるならと了承しました。
そして魔神の力の欠片………『反転』の権能を手にした彼は宇宙全てを解き明かしたかの種族にとっても未知の概念を植え付けられ記憶が吹き飛んでしまったらしい。
ここまで解った? というように首を傾げる顔の見えない女。
「とりあえずあんたが俺を
ガーンとショックを受け紙芝居を持ったまま俯く女。恐らくは女神を象る虚像。ここまで形になるのは、ごんべえの中には魔神の記憶でも混じっているのだろう。
ここの神とやらにはそれを完全に再現出来るだけの力はないようだ。
「てかその場合、ここに来るのは母さんではなく俺では?」
「………………!!」
何やら喜んでいる。もう1人の自分が最近母さんと呼ばなくなったのだろうか?
まあ、母を名乗るのかは何となく想像がつく。自分が自意識を持つきっかけとなった幻聴だと思っていた声の正体が時空すら超えた宇宙の概念であったなら、聞こえたはずなのに記録にも残らないのも納得だ。
心を持つきっかけだというのなら、成る程確かに彼女も『ごんべえを魔法少女にした者』に含まれるわけだが。
「■■■■は■■■ちゃんと■■■■?」
「……………?」
声は届かない。別宇宙の法則にかかわることだから認識出来ないのか、神もどきのウワサでは再現できないからなのか。恐らくは後者だろう。
紙芝居も話は入ってくるのにきちんと描かれているはずの登場人物の特徴が認識出来ないし。
「好きにしていいよ。貴方の人生だから」
「まあそれは、母さんに言われるまでもねえが」
また母さんと呼べば、感極まったのか抱き締めて頭を撫でてくる女神。と、その時……
「ニセモノシスベシモキュー!」
ういべえが女神に飛びかかった。プニン、と肉球が当たる。
「もっきゅい! もきゅもきゅ、もきゅう!」
「ああ、うん。偽物ってのは分かってる」
「もきゅ?」
「少なくともここに残るとは言ってきてない」
普通は言うのだろうが、模造品でも流石は女神。偽りの神の支配など受けないらしい。
「他の皆は………」
と、その時だった。結界が震える。
見れば梓みふゆのコピーをやちよが、誰だか知らないが紗枝や真里愛と同じ制服を着た女のコピーを顔色を悪くした紗枝が壊し、鶴乃がフェリシアを男女から離していた。
「放せ! 放せよ! とーちゃんとかーちゃんが!!」
「落ち着いてフェリシアぁ! 偽物、偽物だから!」
あれはフェリシアの両親なのだろう。紗枝ややちよは再会したかった人物を偽物とはいえ己の手で破壊したからかソウルジェムが濁っている。
「ごんべえさん!」
と、真里愛がごんべえの下へ走ってきた。彼女は飲まれた様子も、偽物とは言え再会を望んだ者を振り払いソウルジェムが濁った様子もない。
「…………ジュン君は、本物ならもっと大きくなってるはずですから」
所詮は記憶から作った偽物だと解ったのだろう。
「ごめんなさい由貴さん」
と、紗枝もやってきた。顔色は悪い。彼女も由貴に目を覚ますよう言われたのだろう。
「………ねえ、桐野さん。彼女は、どうして私を知っていたの?」
「!!」
真里愛の言葉に肩を震わせる紗枝。
「私と桐野さんが知り合いだから、それに合わせたって言うようにも見えなかったの。ねえ………ひょっとして、私達って」
「話はそこまでだな」
「…………え?」
再びウワサ結界が震える。先程とは比べ物にならない振動。登ってくる、強大な魔力。
神ヲ謀ッタ其ノ罪、万死ニ値イスルデアロウ
頭の中に直接響く声とともに現れたのは、カエルの足に車輪の付いた子供の玩具を組み合わせたかのような異形。手綱や鞍がついているが、馬には見えない。
『|鮟画碑億蝮騾蜘!!|』
奇妙な鳴き声を上げ車輪を回転させるウワサ。ギャリギャリと音を鳴らし突っ込んでくる。
「どっせい!!」
無防備に突っ込んでくるウワサにハンマーを叩きつけるフェリシア。特大の威力が乗った一撃は、しかし弾かれる。
『|参繰謖還混魅!!|』
「うわ!!」
「フェリシア!」
「世話の焼ける」
ごんべえが白いリボンを伸ばし鳥居に巻き付け網を作る。水路に落ちることなく網の上に落ちたフェリシアに鶴乃が駆け寄った。
「大丈夫、フェリシア!?」
「…………ってんよ」
「え?」
「解ってんだよ!!」
鶴乃の言葉を無視して立ち上がるフェリシア。その瞳に憎悪を宿してウワサを睨む。
「とーちゃんも、かーちゃんも………死んだんだ。そんなこと解ってる! 解ってたんだ! でも、でも……! こんなのないだろ! こんなのあんまりじゃねえか!!」
再び突っ込みハンマーを叩きつけるフェリシア。一発で駄目なら2発、2発で駄目なら3発と何度も何度も殴りつけるがまるで堪えた様子はなく、ポワリとシャボン玉のように鼻提灯を飛ばす。
「ぐあ!?」
パンと弾けフェリシアを吹き飛ばす鼻提灯。立ち上がろうとしたフェリシアは、しかし腕に力が入らないのか再び倒れる。
「な、なんだ……? 体に、力入んねぇ………気持ち悪い」
「まさか、毒!? 鶴乃!!」
「まっかせて!!」
倒れたフェリシアを轢き殺そうと迫るウワサに炎を放つ。無傷で抜けてきたが炎が目隠しになっている間にフェリシアを抱えて跳ぶ。
「全然効いてないよ〜!?」
「願いに対して耐性があるな」
「願いに!? どういうこと!?」
鶴乃の言葉に呟くごんべえ。鶴乃が訪ね返すがウワサが再び迫り蛙の足を叩きつけてくる。
「待って待って! 私わかった、願われる神様と願って生まれる魔法少女! 魔力の質が似てるんでしょ!?」
「そういうことだ。頭の回転が速いな」
「えへへ〜、褒められちゃった」
「なら、どうするのよ!?」
攻撃が効かない仕組みが解ったところで肝心の対応策がわからないのでは意味がない。紗枝が叫ぶ中、ごんべえはふむと考える。
「呪いや穢れだな」
「呪いや穢れって………私達にも、出来るの?」
心当たりがある紗枝が問いかけるもごんべえはさぁ? と首を傾げる。
『|曾駕神錙鹵驅刈藩露!!|』
不愉快な遠吠えを上げるウワサ。と、絵馬のウワサの大群が現れる。逃がす気はないのだろう。
「まあ、此奴等に対してなら俺の出番だな」
と、ごんべえが絵馬を回避しながらウワサに触れる。瞬間、ウワサの体が解けるように崩れ車輪がカラカラと転がる。
『│根曚張扮和!?│』
「ぎっ!?」
ウワサが叫び身を捩り、絵馬がごんべえの肩に体当してくる。肩の骨が砕けた。
ビチビチ暴れ回るウワサは周囲の馬を急襲し傷を癒していく。
「すごーい! なんで攻撃が通じるの!?」
「願った奇跡じゃなく、機能としてあれに干渉できるからな。ソウルジェム作る時とかの具現の応用……昔神造ろうとして、似たような事やった」
「神?」
「ただの失敗談だ」
今の時代には神に裁かれたということになっている塔の話だ。魔法少女システムより非効率的な永続的エネルギー回収機構。それは人により完成前に滅びた。
「あれはそれ以下。まあ、だからこそ被害の規模も少ないが………と」
ごんべえを脅威と判断し鼻提灯や手下を飛ばしてくるウワサ。
「とは言え触れずに消すのは無理だし、触れても一瞬で消せるわけじゃない」
抵抗されるとああして治る。一度拘束でもしないと。
不意に紗枝が尋ねる。魔法少女の願いの力が効かないのなら、その正反対………魔女の絶望ならば……………。
「魔女は?」
「フェリシアが魔女嫌いだからなあ」
絶対にこじれる要因になる。
とは言えウワサは最早ごんべえを近づける気はないようだ。ごんべえへ襲いかかる手下と無数の鼻提灯。
ごんべえの片足が鼻提灯の粘液に塗れ滑る。
『|▲□■◇△△○\!!|』
「ごんべえ!!」
多少の被弾は覚悟したごんべえ。そのごんべえを突き飛ばす紗枝。咄嗟にソウルジェムは守ったが、高速で飛来した絵馬の群れに吹き飛ばされる。
「紗枝! 何してんだ、俺は死なねえの見てただろ」
「つぅ………そういえば…………しくったなあ。つい」
「……………」
「だって、さ。私が貧乏なの知ってて一緒にしてくれるし…………悪役似合ってないって言ってくれたし。うん、怪我してほしくなかった」
嘗て貧しい、たったそれだけの理由で盗みの濡れ衣を着せられ、誰にも信じて貰えなかった事があった。彼女が仮面を被る所以。
今日に至っては本当に一時的に裏切った。なのに、似合わないと言ってくれた。
「嬉しかった……だから、えっと………お礼には、ならないか」
あはは、と笑う紗枝を見て、ごんべえははぁ、と息を吐く。
「うぇ」
ベロリと伸ばされた舌に転がるグリーフシード。瞬間、噂結界が一瞬で魔女結界に塗り替わる。
赤黒い血の水平線が広がり、無数の鳥居が乱立ししめ縄が蜘蛛の巣のように張り巡らされた結界。
中央に存在する拝殿の鈴がガラガラと音を奏で、御扉が開く。ギョロリと目玉が周囲を見回し、瞬間湖面から飛び出してきたしめ縄がごんべえの腕に絡みつきついでにウワサを捕らえ拝殿に引きずり込む。
ゴバッと大量の血が噴き出し、同時に魔女結界が崩れた。
「っ!」
「ごんべえ!」
ネジ折られた腕を癒しながらグリーフシードを飲み込むごんべえ。鶴乃が慌てて駆け寄る。
「お、終わったの? さっきの魔女は!?」
「あれは俺が扱う魔女だ。俺は魔女使いなんだよ。今はグリーフシードに戻した」
「あー、とりあえずウワサは解決したんだね? やったー! ほら、フェリシアも!」
「ううん…」
ピョンピョン跳ねる鶴乃がフェリシアとも喜びを分かち合おうとする。穢れが溜まって気分が悪そうなフェリシアは苦しそうに唸っていた。
「キュ?」
「あ、ういべえ!」
ごんべえのフードから終わった? と出て来たういべえはそのままいろはの下にかけていく。何時の間に隠れていたのだろう。
「ごんべえさん…………来てくれたんですね」
「ああ。悪いがすぐ帰るがな」
と、回復用のグリーフシードをいろはに渡して、紗枝を抱えて帰ろうとするごんべえ。と…………
「づっ………あああああああ!!?」
「!? フェリシア!?」
フェリシアが苦しげに叫び禍々しい穢が溢れ出し鶴乃を吹き飛ばす。
穢を纏い浮き上がるフェリシア。その腹を突き破り現れた影が穢れを吸い取り形を成す。
「なん、だ………おま…………ぁえ?」
瞳を細め、気を失うフェリシア。そうしてそれは、完全に形をなした。
「なにこれ、魔女!?」
腸のような長い身体。分銅の腕。コンクリートミキサーのような顔には空っぽの瞳が金の睫毛を瞬かせる。
「ドッペル?」
「貴方、なにか知って………」
ごんべえの背で紗枝が呟きやちよが反応するが……
『■■■■■■■■■■!!』
「!?」
ボトボトと泥の涙を溢しながら叫ぶドッペル。今はそれどころではない。
地面に分銅の蹄を叩きつけると同時に無数の棘が生える。
空中に逃げた魔法少女達に空洞の瞳を大きく見開く。ゴボッと泥が溢れ…………
『■■■■■■!?』
銃弾の雨が降り注ぎドッペルの顔が明後日の方向に向けられる。
「ティロ・フィナーレ!」
極大の閃光がフェリシアから生えたドッペルを撃ち抜く。ドッペルが消えたフェリシアが落下し、慌てて鶴乃が滑り込む。
「セーフ!!」
「フェリシアは大丈夫なの!?」
やちよも駆け寄り、フェリシアのソウルジェムを確認する。砕けていない。どころか、穢れが無くなっている?
「神浜には人に化ける魔女がいるのね」
と、降り立った人影がフェリシアに銃を向ける。
「ひょっとして貴方が助けてくれたの? ありがとう! でも待って、フェリシアは魔女じゃないよ!」
「……………」
銃口をフェリシアに向けた魔法少女に鶴乃が慌ててお礼を言いながらフェリシアを庇う。
ごんべえは新たに現れた人影………金髪の魔法少女に視線を向けた。
「………何だお前、マギウスの翼とか言う奴等の仲間か?」
「…………!」
ごんべえの言葉に魔法少女は目を見開く。
「…………そのマギウスの翼というのは、聞き覚えがないわね」
「そうか………」
「………………色々聞きたいことはあるけれど、そういった雰囲気でもなさそうね」
少女は銃を消しその場から立ち去った。
「…………はぁ〜…………戦いになるかと思った」
「そうなったら厄介だったな。彼奴は強いぞ」
「え、ごんべえさんお知り合いだったんですか?」
と、真里愛が驚く。まるで初対面のように接していたのに。
「………………」
ごんべえは一瞬だけ遠くを見る。
「少し調べて欲しい事があったからな。俺の知り合いと思われると困る」
「ああ……じゃあ、後で伝える時に謝ったほうがいいですよ?」
「伝えるも何も、俺は既に『マギウスの翼について調べろ』って言ったつもりだが」
「………………伝わってるんですか?」
「彼奴ならあれで伝わる」
そう言うと紗枝を担ぎ直すごんべえ。
「あ、あのごんべえさん! グリーフシード、ありがとうございました」
と、いろはがグリーフシードを持って走ってくる。穢れがだいぶ溜まったそれを、ごんべえは口に含み噛み砕いた。
「!?」
「うええ!? 何してんの!? お腹すいたなら私が万々歳で食べさせてあげるからペッしてペッ!」
初めてその光景を見るやちよと鶴乃は驚いていた。
「穢れのエネルギーを宇宙に捨てただけだ」
「エネルギーの回収? それって………」
「記憶を思い出した。俺はインキュベーターのごんべえ………数多の名を持ち、お前等猿どもに言葉と知恵と文明を与えた物。今後とも宜しく」
そのまま何かを尋ねられる前に夜の闇の中へと姿を消した。
参拝の魔女
その性質は祈願。
昔々。国の為に奇跡を願い妖魔と戦う少女達の里ありけり。
訪れた偽神に誑かされた若き巫女は里を捨て、地位を捨て、名を捨て、国を見て、この世界に神などいないことを知る。
この魔女は人々の願いが叶うことを祈りながらも神がいない故に自らが神になろうとして、しかし救えない現実から目を背けるように参拝者を殺してしまう。
神の姿を知らぬ魔女は自分の姿は神に見えないと常に思い、人目のある拝殿の外に出ることはない。
扱いにくいけど扱いやすい魔女。
ごんべえを傷つけるけど真っ先に狙うので仲間が襲われる前に対処可能。
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