「マギウスの翼に、マギウス。そしてウワサと魔女………さらにドッペルですか」
「じょ、冗談だよね? だってその人達って悪い人なんでしょ? なのにみふゆが………」
「少なくともやちよは冗談だとは思ってねえみたいだが」
「…………ええ、ありえない話じゃないわ。あんな結末を変えたい、そう思うものでしょう?」
と、ごんべえを………否、インキュベーターを睨むやちよ。
「へぇ、仕方ないって思うんならなんでマギウスの翼に入ろうとしねぇ? 思い切れてねえ責任転嫁はよせ、結末を用意したのは俺達でも進む為の
チッと舌打ちしながら酒を飲むごんべえ。彼もまたインキュベーターのやり方は気に入らないのだろう。
「………悪かったわね、八つ当たりだったわ」
「………………」
手をヒラヒラと振り気にするなと返す。そのまま片手でういべえを撫でる。
「魔法少女が救われる………ういの偽物も言ってました。何か関係あるんでしょうか?」
「モキュウ!」
「きっとあるとよ」
「じゃあ、私はこれからもウワサを探します」
「キュ!」
ボクも手伝う、と言うように叫ぶういべえ。
「………なあでもさぁ、魔法少女の開放って結局何なんだ? ソウルジェムの穢れを魔女モドキにしてなんの意味があんだよ」
「私も気になる! それが分かればみふゆを連れ戻せるよね!?」
「…………………」
チラリとやちよを見るごんべえ。やちよは無言でごんべえを見つめる。余計なことは言うなと言う意味だろう。
一応彼女がチームリーダー。
「汚いところを見せないように………何時か離れても知らんぞ。いや、むしろ離れてほしいのか?」
「……………本当に、キュゥべえと違って私達の感情を理解しているのね」
「皮肉と受け取っておこう………で? お前達はこれからどうする?」
「みふゆを探すわ。そのためにも、ウワサを追う」
「みふゆを見つけて、止めなきゃだよね! ふんふん!」
と、やちよと鶴乃。
「わ、私もういを見つけてあげなきゃ」
「ん〜? よくわかんねえけどいろはを手伝ったら飯出るんだろ?」
いろはの言葉にフェリシアはマイペースに応えた。
「ウワサが人を襲うなら、無論止めます」
ななかの言葉に彼女の仲間達も同意を示す。
「私は、あんたには借りがあるし………」
「私も手伝いますよ」
「アタシは何がなんだかさっぱりなんだが………まあ、手伝いぐらいしてやってもいいけど」
紗枝、真里愛、ひなのもやる気のようだ。
「ごんべえさんも、ウワサを追うんですよね?」
「ああ。自分はなんの対価も払わず死肉で作られ血で彩られた道を進んで救われようなんて根性が気に入らん」
「気に入らないからなんだ?」
「気に入らないからだ。願いを叶えておいて、ただ魔法少女であるというだけで救われるなんて………」
そこで舌打ちして虚空を睨むごんべえ。明らかに何かを言いかけていた。
「私情だ、忘れろ」
「私情で行動して、私はそれを手伝っているのに?」
「昔契約していた魔法少女達を思い出しただけだ」
「……………そっか。そうだよね、あんたも契約してたんだ」
紗枝が何処かつまらなそうに呟き、真里愛達は首を傾げた。
「ていうか私情なの? だってウワサを倒してたくさんの人助かってるんだよ?」
鶴乃はすごいよね、と目をキラキラさせて腕をぶんぶん振る。正義の魔法少女にでも憧れているのだろう。
「人が助かる、ね。彼奴等は自分達が助かりたいわけだが?」
「あれ、でもごんべえあの人に結構酷いことやってたような」
「犠牲を出してないみたいな顔をしてやがったからな。犠牲を出そうと気にせず進むってんなら、そもそも顔を思い出そうとほっておけばいいものを………ああいう中途半端な女は何時か折れるかもな。いや、今は折れることすら出来ねぇのか」
無色透明のソウルジェムを人差し指の上で弄ぶごんべえ。穢れが消える今、魔女になって終わる事もできない。
「引き続きウワサを追って、製作者を見つけて、んでこのくだらねえ箱庭を壊す。それが俺の目的」
「箱庭……?」
「ドッペルのシステム」
「モキュ!」
「いいや消すね。何もせずに救われたいなら、そもそも奇跡なんざ願わなきゃ良い」
多分ういべえがドッペルと言うソウルジェムの浄化機構だけは残そうとでも言ってごんべえが断ったのだろう。
「そもそも奪い取ったところで人の命をたっぷり吸った腐肉の救済装置だぞ。そんなもので魔法少女が救われた、めでたしめでたしなんてなるか。失敗して犠牲が無駄になるのが目に見えてる」
「モキュウ………」
「一度は簡単に奇跡を手にしたんなら、次ぐらいは絶望から希望を手にするために自分の力で抗うべきだ」
「キュッキュ! モキュ、キュウ?」
「………そいつは他人の死体で出来た救済装置に喜ぶのか?」
「モキュ………」
良く解らないが、ごんべえの勝ちで話し合いは終わったらしい。
「当面俺達の目的は同じ。情報を逐一交換しようぜ。それと、ウワサを討伐するなら俺を呼べ」
「魔女でない以上、取り合いにもならないとは思うけどどうして?」
「ななか達には説明したが、ウワサの核となってる魔法少女の魂の欠片の回収」
「魂の欠片?」
「存在を実体化させるために命を削ってんのさ」
かと言ってそれを回収できるのはごんべえぐらい。別に命を削らせて死なせてしまってもいいのだろうが………
「…………?」
ごんべえの視線にいろはが首を傾げ、それでも見つめられ気恥ずかしそうに顔をそらした。
「……………」
『具現』のウワサ。『変換』のドッペル。そして、探知できない『回収』は既に呪いに変質していると見ていいだろう。魔法少女の魔法でも、インキュベーターのシステムですらない為ごんべえでも探れない。
さて、では呪いに変質した『回収』の持ち主は誰か?
もしそれを救う方法があるとしたら、それはどんな手段か?
「あ、あの……ごんべえさん? その、私の顔になにかついてますか?」
「…………色々面倒な因果の上に生きているなと」
「……………?」
「まあ良いさ。そろそろ解散するか………紗枝は真里愛とひなのと話すんだったか?」
ごんべえの言葉に3人を除いた魔法少女が立ち上がる。ごんべえも立ち去ろうとして、紗枝が服の裾を掴んだ。
「……………ごめん。一緒にいてくれる?」
「……………」
ごんべえはういべえをいろはに渡すと座り直す。
他の魔法少女達は出ていった。
「………漸くアタシが呼ばれた訳もわかるのか。で、本当になんでだ? 繫がりなんて、それこそ同じ学校の魔法少女ぐらいしか」
「会いたい人の偽物が出るウワサの神社で、桐野さんの会いたい人が私達を知ってたの」
「? まあ偽物だし、桐野の記憶と混じったんじゃないか?」
「それにしては、妙に具体的だったの」
放課後の4人とか、グループチャットや共有ノート。やけに具体的だったのだ。
「…………私の願いが関係してるんです」
「桐野さんの?」
「………私達3人は………いいえ、私達4人は、知り合い………友達でした」
桐野紗枝は学校でも有名な名家のご令嬢。分け隔てない優しさを振りまく文武両道のお嬢様。
だけどそれは、偽りの仮面。それを知っていたのは、3人の生徒。演劇部の舞台作家………そして、由貴真里愛と都ひなの。
紗枝が仮面を被らず素のまま接することが出来る、常に張り詰めた気を抜ける、唯一の集まり。だけど、その気の緩みがきっかけで、家庭教師をやるはずだった女子生徒に自分が貧乏であることがバレた。
貧乏だからと言う理由で、人間性を否定され聞く耳も持たれず仕事がなくなり、それどころか自分の秘密が学校の全員に知られかねない事態になった。
「だから私は、願ったんです。学校のみんなが知る私を良家のお嬢様にしてって………」
皆。そう、皆だ。
その結果あの子はお嬢様である桐野に恐れ多いと話しかけなかったことになり、あの集まりそのものが消えた。
「私が、無くしてしまったんです。大切だった、あの時間を……」
「…………………」
「………………」
無言が続く。俯く紗枝が恐怖からか、無意識にごんべえの手を強く握った。
「…………は〜」
「っ!!」
「まあ、なんか手伝いの手際がいいし、気が合うなぁとは思っちゃいたが………成る程なあ」
「友達だったのね、私達。だから、またすぐ仲良くなれたのね」
「……………信じてくれるんですか?」
「信じるってか、納得できる部分が多いと………ああ、いや、うん。信じるよ」
「私達って、桐野さんのことなんて読んでたの?」
「…………名前」
ポツリと恥ずかしそうに呟く紗枝。二人の彼女の名を反芻する。
「…………紗枝。うん、なんかしっくりくるな」
「そうね……でも紗枝ちゃん、どうしてすぐに話してくれなかったの?」
「…………また気の抜ける場所を作って、バレるのが怖かった……また家族を追い詰めかねないと思ったら、怖かったんです」
「じゃあ、どうして今…………」
「………我が儘を言えって、言ってくれる人が居たから」
恐怖とは違う理由で、ごんべえの手を握る手に力を込める。
「………あの放課後の時間は、私の記憶にしかない時間で……こんなの、ただの我儘だけど………本当の私と、また友達になってください!」
「ん、わかった」
「ええ………こちらこそ、よろしくね、紗枝ちゃん」
「仲直り………とは違うか。関係修復………改善。まあ、何はともあれおめでとう」
「ありがと」
帰り道。ごんべえと二人で歩く紗枝はごんべえの言葉にお礼を行った。
「全部が全部不当を働いてたわけじゃないから、チャラになったわけじゃないしウチが貧乏なのは変わらないし、何なら学校でだって仮面を被り続けるつもりだけどさ……………ほんのちょっとだけ、我儘言って生きてみるよ」
「そうか」
「それで、さ………」
と、紗枝は口籠る。
「お父さんも、お母さんもさ………あんたのおかげで目が覚めたって言ってたし。怒ってないから………またウチに──」
そこまで言いかけ携帯の着信音が響く。
「と、悪いな………もしもし、かこか? ああ、今夜はカレーか、解った。ああ、材料買って帰る」
そう言うと通話を切った。
「…………かこって、夏目かこさん?」
「ああ、今は彼奴の家に住んでる」
「…………………ふーん」
マギウスの翼達の本拠地、ホテルフェントホープ。
その鍛錬場に無数のリボンが絡みつき蜘蛛の巣よりも雑多に伸びていた。
そんなリボンに腰掛け紅茶を飲む魔法少女。
「ふぅ………これで実力は示せましたか?」
「う、ぐ………」
「つぅ……」
リボンに縛られ、或いはただ引っ掛かり呻く白羽根達。黒羽根を指揮する隊長格達は、たった一人の魔法少女に手も足も出なかった。
「別にマギウスの御三方に合わせろなんて言いません。ただ、白羽根? それにして欲しいんです。自由に動き回るには地位が必要でしょう?」
「貴方が、間者ではないという証拠もなく地位を与えろと?」
「あら、私が間者なら、ここまで入られた時点で同じじゃないかしら? 翼のトップは塞ぎ込んで、他の主力は私一人の相手にならない」
或いはマギウスの御三方が出れば違うかもしれないが、彼女達が出る時点でマギウスの翼は敗北したと同然。
「まあ、経験の差と……私には魔法少女の戦いを誰よりも見てきた師匠がいましたからね。他の魔法少女よりは強いつもりですよ」
神浜の魔女は強い。それに対抗できる、神浜の魔法少女も強い筈だという驕りをあっさり覆した魔法少女………強い。これでまだ調整を受けていないのだから、とんでもない。
「…………白羽根となり、お前は何を望む」
「さあ? 勧誘されるまま入ったけど、まだ目的のための手段を聞いていませんから」
だから色々教えてくださいね?
と、魔法少女………巴マミは微笑んだ。
「一緒に紅茶でも飲んでお話ししましょう」
叛逆の物語でも使った列車砲とかも分身とかも使用して一方的かつ、重症者を出さなかったマミさん。やっぱ目茶苦茶強いよね。
ごんべえはね、人類の愚かさや馬鹿さ加減は嫌っていても愚かで馬鹿な人間が嫌いってわけでもないんだよ。
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