桐野家から出たごんべえは取り敢えず一泊するために調整屋に向かったのだがみたまは出張らしく、たまたま出会った十七夜と連絡先を交換してから新しく泊まる場所を探していた。
いざとなればインキュベーター姿でどこぞの屋根裏にでも潜めばいいが………。
「あれ、ごんべえさん?」
「お前は、かこ………」
と、不意に現れたのはかこだった。先程このあたりで使い魔の魔力を感知した。恐らく彼女の家周辺に現れた使い魔を倒した帰りなのだろう。
「こんなお時間までウワサ探しですか?」
「いや、新しく泊まる場所を探していた」
「なるほど、新しく…………え、新しく?」
うっかり流しそうになったが、聞き逃せない言葉があったような?
「少し借りてた家を出てきた。今は次の宿を探してる」
「み、見つからなかったら?」
「今日はもうそのへんの公園でいいか」
「……………あの、良かったらうちに来ますか?」
両親は、あっさり泊めるのを許してくれた。金を払おうとしたごんべえに古書店の仕事を手伝ってくれたらいいとのことだ。
明らかに金で解決したかったと顔が歪んだのをかこは見逃さなかった。
「少し下の本読まさせてもらいますんで」
と、ごんべえは本を読みに店の方に向かった。
次の日、かこが目を覚ますと朝食作りを手伝っていた。そして自分の食事が終わると本を読み出す。
「……………ごんべえさんは、本が好きなんですか?」
「嫌いではない。色々、作家とも知り合っていたしな」
「へえ、その人の作品とかもありますか?」
「…………あるな。後で教えてやるよ。今は学校に行く準備をしな」
レジに座り、本を開くごんべえ。手品のように取り出した眼鏡は、魔法か何かで作ったのだろうか?
それにしても、知り合いの作品か。自分も知ってたりするのだろうか?
と、朝は軽く考えていた。
しかし会合にて彼が途方もない年月を生きていたことが解った。
「もしかして、知り合いの作家って今も名を残すような人ですか?」
「シェイクスピアにアンデルセン、夏目漱石、太宰治なんかが有名なところだな」
「…………その人達、見えてたんですか?」
「見せていたんだ。俺は人に関わるのが趣味だからな。何も魔法少女だけが俺の話し相手じゃねえ。何なら信長と過ごしてたこともあるぞ。まああれは帰蝶についていった結果だが」
作家以外にも関わっているのか。ていうか信長って………かこは、恐る恐る挙手をする。
「信長生存説って………どうなんですか?」
「ああ、普通に本能寺で死んだぞ。「たぬきに天下を取られるとは」って笑いながら」
「………たぬ……え、あれ? たぬき?」
金柑でも、猿でもなく?
信長は誰が最終的に天下を取るのか解っていた?
「別に珍しくねえ。長い人間の歴史にゃ時折現れるんだ、ああいう先を見通しすぎる奴。妲己なんかも殺された後三監の乱が起きるよう調整してたし」
まあ俺はこれっぽっちも関わらなかったがな、と何処か見下すような笑みで視線を虚空に向けるごんべえ。何か嫌な事でもあったのだろうか?
「あの………」
もっと色々聞いてみたい、と思ったところでくう、とかこのお腹が鳴る。
「何か夜食でも作ってやる」
「……………すいません」
真っ赤になって俯くかこはごんべえの厚意に甘えることにした。
「…………美味しい」
「そいつは何より…………ん」
かこの素直な称賛に向かいに座ったごんべえも自身が作ったいちごのリゾットを食べ顔をしかめる。
「レシピは完璧の筈…………」
「?」
「昔、これを作った女とその孫のいちごのリゾットの方が美味かった。レシピに間違いはない筈………この違いは一体? 火力の問題?」
「こ、これも美味しいですよ?」
「そうか、それは何よりお粗末様」
そんなやり取りがあった翌日の朝。
噂をすれば影というか、見知った顔がベンチで寝ているのを見つけたごんべえ。
顔だけはまあ、知ってる。顔だけは…………。
「魔法で作った複製だな。他にも幾つか魔法を込めてやがる…………人間、いや、魔法少女でも増やそうとしてたのか? にしてはこの魔力……」
片腕を持ち上げ少女の姿をしたそれを眺めるごんべえ。
「あ、ごんべえ!」
「鶴乃……出前か?」
「うん! で、ごんべえはなんで女の子の腕を木の枝で持ち上げたりしてるの?」
「女の子………」
「あ、もしかして男の子?」
「肉体的にはメスだろうか……まあ起こすか。おい」
と、眠っている少女を揺するごんべえ。
「っ! 爆弾誘拐魔!!」
「爆弾………何?」
「ええ!? 爆弾魔の上に誘拐犯!? 何処何処!?」
少女の謎の叫び声にごんべえが訝しみ鶴乃が慌てて聞くだけで凶悪そうな犯罪者を探す。少女が指差したのはごんべえ達だった。
「私達!?」
「私を閉じ込めて、連れ去ろうとした」
「………閉じ込め? 貴方、ここで寝てたよ」
「そりゃもうぐっすりと」
「私、このパターンは知ってるんだ。でもだめ………お腹ペコペコ」
「ああ、こりゃ…………寝ぼけてるね」
お腹に手を添えぼんやりフラフラな少女に鶴乃はなんとも言えない視線を向ける。少女はスンスンと鼻を鳴らし鶴乃の持つ岡持ちに視線を向けた。
「いい香り! その岡持ちには爆弾じゃなくて、パイナップル入りナイス豚が入っていると見た!」
「ないす豚………」
「…………どうして知ってんの?」
「いただきー!」
と、岡持ちごと酢豚を奪い取ろうとする少女だったがごんべえが足を払いひっくり返し怪我しないようにそっと下ろす。
「???」
何が起きたか理解できず困惑する少女。
「………ぅ」
「ん?」
「およ、どうしたの?」
「うぅぅ………うええええん! お腹空いたよぉぉぉ!!」
「………まさかの泣き落とし。はぁ、寝起きの悪いあなたは誰なの?」
と、鶴乃が泣き出した少女に尋ねる。
「私……? 私は…………──ず、み…………かずみ! 私、かずみだよ!」
「…………………」
「?」
ごんべえがはぁとため息を吐きかずみと名乗った少女の頭に手を置く。不思議そうに首を傾げる少女。
「腹が減ってんだな」
「うん!」
「じゃあ何か奢──」
「はいはい! 万々歳なら特別にただで食べさせてあげるよ!」
ごんべえが適当な店を探そうとした時、鶴乃が手を上げ叫ぶ。
「でも出前に向かわなきゃいけないので、先に店で待ってて!」
「本気か? 何処の誰とも知らないガキだぞ?」
「ごんべえだって面倒見ようとしてたじゃん」
「俺は…………こいつによく似たガキを知ってるからだな」
「私は最強だから困ってる人を見捨てないの!」
ふんふん、と元気に応える鶴乃。
「損ばかりの人生だな」
「損得じゃないよ! こういうのはね、心の問題っていうか………私がしたいからするの!」
「………そうだな。そういう人間、俺も何人も見てきた。自分の不利益を顧みずに誰かに手を差し伸べちまう人間を」
「鶴乃ちゃんが目指す最強もまさしくそれなのだ!」
へへん、と胸を張る鶴乃を見て、ごんべえは呟く。
「薄気味悪いガキだな」
「──────へ?」
サラリと吐かれた言葉に固まる鶴乃。
「ああ、何人も見てきた。だから解る………確かにお前は善良だろうさ。だが彼奴等とはまるで違う。だってのに………いや、今はいいか」
ヒョイとかずみを抱えあげるごんべえ。お腹空いたとワンワン泣き喚くかずみに向かって手を向ける。何もない。一度握って手を開くと色とりどりの飴玉が転がっていた。
「飴!」
かずみは包み紙を取り口に含む。ん〜、と幸せそうな笑みを浮かべた。
「先に店に向かってる」
「あ、え………ま、待って! さっきの、どういうこと? 私、何か怒らせた?」
「……………」
不安そうに見つめてくる鶴乃に、ごんべえは目を細めた。
「怒ってねえさ。俺は
「むぐもぐ………顔見てるじゃん?」
「言葉の綾だ」
ごんべえの好きな人間の文化
『食事』
インキュベーターの母星には存在しないから。因みに基本なんでも好きだが数十年前あった少女の「いちごのリゾット」はまた食べたいと思っている。
マミの遠足について行った際たまたま近くを通りかかり、彼女の孫に作ってもらった。因みに先輩より早く向かえば孫の手料理が食えるがその後先輩のセールスにより孫が魔法少女になり死ぬ。先輩より後だと魔法少女について説明し、彼女はチームを作らず友達を治すために奇跡をつかった魔法少女とコンビを組む。
こっちでは、どうだろうね。
『物語』
インキュベーターの母星には存在しない。
基本的に何でも好むが過去の作品のマイルド化には思うところがあるらしい。
『ゲーム』
一部はただ金を稼ぐためだけの作業だが運ではなく人の思考が絡むゲームは好む。
まあ最終的には勝つから電子ゲームの方が好み。家庭ゲームしかたしなめなかったが最近はゲームセンターなどに通う姿が目撃されている。クレーンゲームで子供にとって上げる優しいお兄さんのウワサとは無関係と本人は言っている。
インキュベーター大百科
妲己
元々知能が高い狐(ごんべえ曰く種の進化のきっかけになるタイプの突然変異)。
腹の毛皮を取るためだけに家族や同胞を殺した人間に報復するために契約。
願いにより人に紛れ込むために人の思考や記憶を読み取る。これは固有魔法というよりは動物と話したいと願った者が魔法とは別に動物と話せるようなもの。固有魔法は別に存在する。
どちらのお父さんも好きだが強いて言うなら話が会う高い知能を持ち付き合いも長く、最期に会いに来てくれた方のお父さんが好き。
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