家庭教師ヒットマンREBORN! ~Secret BulletⅩ~ 作:鵜飼 ひよこ。
ツナは廊下を激走していた。
途中、先生に見つかりガミガミと怒られる運の無さを発揮しつつ。
『悪いケド、ここで待っててね?言ってる事わかる?』
流石に授業をサボるワケにはいかなかったから、そう男の子、ファーに告げて待たせてあるのだ。
サボってリボーンに罰を与えられるのだけは勘弁だったから。
と、いってもリボーンは学校に着くなり姿を消してしまったが。
かといって何処かで監視されてるともいえなくはない。
「早く行かないとっ。」
昼休み。
待たせるのも可哀想だ。
ファーを待たせている校舎の外れ、焼却炉のある方面へ。
「おー、なかなかやるのなー。」
「ん?」
ツナの行く先から聞き慣れた声が・・・。
「山本?」
「おー、ツナ~。」
Yシャツを脱いでTシャツ姿になった山本が手を振っている。
その手にはグローブとボールが。
「そんじゃ、いくぞー。」
手に持ったボールを振りながら、構える。
もう一方には・・・。
「ファー?!」
小さい体に不釣合いなグローブをはめたファーが、ばっちこーいと言わんばかりに両手を挙げている。
グローブをはめた二人、そしてボール一個。
どこをどう見てもキャッチボールだ、うん、キャッチーボール・・・?
「キャッチボール・・・って、山本!」
ツナが声をかけた時には、既に山本の手からボールは離れ、剛速球としか表現しようがない速度で吸い込まれるようにファーの頭部に。
「ファーっ?!」
猛ダッシュで、蹲ったファーに近寄る。
山本は、手加減という言葉を知らない。
特に野球に関しては。
結果の脳天直撃。
「あぅぅぅ。」
頭を抑えたまま唸り声を上げるファーの頭を撫でるツナ。
「うわっ、デッカいタンコブ。」
ぷっくりと額の上が真っ赤に膨れている。
「あはは、悪ぃ悪ぃ。大丈夫か?」
ツナとファーの横から覗き込む山本だが、言葉と裏腹に謝意が感じられない。
もっとも悪気も感じられないが。
「山本~、相手は年下なんだから手加減しないと。」
「ん?なんでだ?手加減は相手に失礼だろ?」
何がいけないんだと、本気で思っている笑顔。
(こういう性格だった・・・。)
この場合は、相手に失礼とかそんなのは関係ないというのに・・・だが、これが超山本理論。
「大体、何でファーとキャッチボールを?」
「いや、暇そうにしてたからな。たまたま落ちてたボールに興味満点って顔だったから、つい。」
ついで全力剛速球を投げるものなのだろうか?
(ものなんだろうな・・・。)
「野球やった事がないなんて、人生の半分以上は損してるぜ?」
山本の成分は半分以上が、野球で出来ています。
某、有名薬品のフレーズがツナの頭に過る。
「じゃなくて!初心者だったらちゃんと手加減だよ!手加減!」
大事なので2度言ってみたが、きっと彼の頭には残らないだろう。
それでも、無駄な足掻きとして言うだけは言ってみる事にする。
「おぅ。」
明快で明確な返事。
返事だけは良いのだが、どれだけ頭に残った事やら。
「見た事ないヤツだと思ったけど、ツナの知り合いだったのか?」
「あ、うん。知り合いというか・・・。」
そういうワケではないのだが、知っているという意味では知り合いだ。
だが、詳しくし知っているワケでもなく、知っていると言えば現状名前だけ。
「ん?そっか。」
言葉を濁すツナに詳しい理由を聞く事なく、全てを了解する。
したような振りをする山本。
「そういえばツナ、メシは食ったのか?」
「え?あ?うん、まだだけど。」
待たせては悪いと思って、昼休みになり次第ここに来たのだ。
当然、腹は減っている。
「なら、ファーだっけ? オレが見ておくからメシ食ってこいよ。」
「え?悪いよ。」
「オレはもう食ったから大丈夫だ。」
にかっと白い歯が眩しい。
「あ、うん。ゴメン。宜しく。」
ツナは来た時と同じか、それ以上の速度で走り出す。
自分が面倒を見ていたのを山本に丸投げする事は、どうかと思ったからだ。
早く食べて戻って来なくては。
走り去るツナの背中はそう語っている。
「あー、相変わらずなのな。」
相変わらずはどちらのだろうか?
聞いたら、10人が10人突っ込みそうな台詞である。
「ん?」
頭を抑えたまま、ツナを見送る山本を見上げる視線。
「・・・また野球、やりたいか?」
「・・・うん。」
コクリと頷く。
「あはは、そっか。じゃ、その前に休まないとな?オマエ、疲れてるだろ?」
ツナは気づいていなかった。
このファーという子供は何処をどうやって学校に来たがわからない。
ここに来るまで相当疲労しているように山本には見えた。
本当に、ツナといると色んな事が起きて飽きない。
それに・・・。
自分を見つめる視線。
めげないヤツは大好きだ。
そう思った山本は、ぽんぽんとファーの頭を軽く叩いた。
腫れた額ごと。
「あぐぅ。」
「あ、悪ぃ。」
やっぱり学習能力の問題と言っていいレベルなのだろうか。