家庭教師ヒットマンREBORN! ~Secret BulletⅩ~   作:鵜飼 ひよこ。

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Ⅵth Bullet:嵐の前の雷。

 違和感という程ではないけれど、何か引っかかる。

放課後の掃除当番はバックレたかったけれど、それが出来ない自分。

とにかく掃除を全力で終えて、猛ダッシュでそこに駆けつける。

傍にいるべきボスから、任務以外で離れるなんて、右腕失格だと思いながら。

 

「・・・なんで、アホ牛まで・・・。」

 

 惨状。

そう言える沢田家の居間で、獄寺は偏頭痛がする部位を押さえながら呻いた。

だが、このアホ牛がいるという状態は、今までに何度もあった状況だから、まだいい。

問題なのは・・・。

 

「ファー、ランボ、おやつだよ。リボーンも食べようよ。」

 

 お盆におやつの皿を乗せながら現れたボス。

では、なくファーと呼ばれたこの少年だった。

記憶がない。

というコトになっている少年。

何故、皆、こんな異分子がいて平然としていられるのか?

怪しい事、この上ないではないか。

そう思う。

 

「ところで、このガキ、ファーでしたっけ、十代目。」

 

「ん?ファーがどうかしたの?」

 

 一人、一人に皿を配るツナが獄寺に応える。

今日のおやつは、ボスの母君のホットケーキのようだ。

部屋内にバターと蜂蜜のいい匂いが広がっている。

 

「コイツ、何かおかしくありませんか?」

 

「なにが?」

 

 ボスの優しさと懐の広さは素晴らしい。

だからこそ、その器の広さによって降りかかる火の粉を払うのは自分の役目だ。

獄寺は常日頃からそう思っている。

まぁ、ある意味でそれが暑苦しいとも言えるのだが。

第一、一番火気厳禁なのは獄寺の方だ。

 

「大体、なんでコイツ喋らないんですか?」

 

「いや、喋ってるよ。片言だけれど、日本語。」

 

 獄寺は会話をした事がないから、解らないだけだとツナは思っていた。

 

「じゃあ、母国語は?」

 

「え?」

 

「片言の日本語って、外国人なら他に母国語があるってコトですよね?ボスは一度でもコイツが母国語を話したのを聞いたコトありますか?」

 

 そういえば・・・無い。

片言の日本語は喋ってはいたが、髪と瞳の色が日本人のソレとは違っていたし、難しめな日本語も通じない感があったから。

それだけで、"日本語が不自由な外国人"という認識をツナはしてしまった。

そして、違和感無くそれをあっさりと受け入れた。

獄寺は今、それを違和感として指摘しているのである。

 

「そういえば、ファーって、何処の国の人なんだろ?」

 

「でしょう?それなのに日本語だけ聞いた事があるって、おかしいと思いませんか?」

 

 一理ある。

 

「でも・・・。」

 

「でも、じゃないですよ、10代目。もしかしたら、何処かの組織の工作員かも知れないじゃないですか!」

 

 思わず、声を荒げてしまう。

大袈裟かも知れない。

でも、それは獄寺なりのツナへの心配だった。

自分のボスがそれ程に大事だという。

ツナもそれを理解しているから、例えそれが過剰であっても強く諫める事はしたことがない。

 

「やぃ、獄寺!子分のファーをいぢめるとランボさんが許さないもんねっ!」

 

 急に声を荒げる獄寺の様子に、口の周りをはちみつとバターの油でベタベタのテカテカになったランボが噛み付く。

 

「あ゛ぁっ!アホ牛!テメェは黙ってろ!これはオレと10代目の大事な話なんだよ!」

 

「うるさい!獄寺のうんこタレ!」

 

 頭の中をもさもさとまさぐり、10年後バズーカを取り出そうとしているランボ。

 

「うるせぇのはテメェだ!アホ牛!」

 

 砲身が半分出たところで、獄寺はそのバズーカごと、ランボを盛大に踏みつけた。

 

「ふぎゃっ!」

 

 その衝撃とショックでランボの身体がよろめく・・・当然、その勢いで10年後バズーカが煙を吐く。

"ファーに向かって"

 

「ランボ?!ファー?!」

 

 部屋中に充満する煙。

 

「このアホ牛!場所をわきまえろ!」

 

 そういう獄寺も普段は場所をわきまえずに、所構わずダイナマイトを放り投げるのだが、今はそんな事を突っ込んでいられない。

ツナは慌てて、縁側に向かい窓を開け放つ。

 

「えほっ、みんな、大丈夫?」

 

「目が、目が、回るもんね~。」

 

「10代目こそ、大丈夫ですか?」

 

「ファーは?!」

 

 一番の問題は弾が向かっていたファーだ。

しかし・・・。

 

「・・・いない。」

 

「逃げたのか?」

 

 先程、ファーがいた場所に誰もいない。

ファーの姿さえも。

 

「まさか・・・前みたいに未来に行ったっきり戻ってこれないんじゃ・・・。」

 

 以前の苦しくも哀しい戦いを思い出で、未だに胸が痛くなるツナ。

例え、未来は修正されたとしても、その記憶は、想いはこの胸にある。

 

「ちげぇナ。」

 

「リボーン?!」

 

 喧騒の中でも落ち着きを払っておやつを食べていたリボーンが、フォークの刺さったホットケーキを携えて否定する。

 

「もし、そうだったら、必ず10年後と入れ替わるハズだ。それにもうあんなコトは起こらねぇゾ。」

 

「じゃあ、どうしてファーが消えちゃうんだよ!」

 

「簡単だ。ツナ、オマエもそうだっただろう?」

 

「オレ・・・?」

 

 自分が10年後と入れ替わった時をツナは思い出す。

自分が目覚めたのは、棺桶の中で・・・。

 

「え・・・だって・・・そんな・・・。」

 

「そうだ。10年後のファーは"身体すら残ってねぇってコト"だ。」

 

「う・・・そ・・・。」

 

 10年後のファーは、既に土に還った後・・・。

衝撃に呆然とするツナと獄寺だったが、それ以降さっきのような会話はもう続けられなかった。

その晩、10年後バズーカの効果が切れて無事に戻ってきたファーとツナは(ランボと)一緒に入浴を済ませ。

三人で同じ布団で眠った。

途中、ランボの足に顔面を蹴飛ばされたり、お腹の上でしがみついていたファーの重さに何度も起こされながら。

 

 そして、翌朝。

ツナが起きると、再びファーの姿は無かった・・・。

 

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