海外製の潜水艦なったけど周りが危険過ぎて草も生えぬ   作:TS大好き侍

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潜水艦の日記【1】

 ・二日目

 今日は鎮守府だと思われる建物の2階を探索した。今の探索で今記入している新品状態のノートや筆記用具なども発見できた為に二日目だが日記のようなものを付けようと思う。

 

 2階はやはり高所にある影響か被害が最も酷く、昨日探索した一階ほどの成果は得られなかった。しかし執務室は比較的無事であり、窓が大きくなり屋根が吹っ飛んで綺麗な青空が見える程度だった為に探索の成果は大きかった。ついでな気持ちで探していた不正の証拠を示す、裏帳簿のような物も発見出来たからな。そして一番大きかったのがここら一帯を示した海図だ。詳細はまだ分からないが、自分の居場所ぐらいは把握できると信じている。

 

 今日の妖精さんはバレエを踊っていた。

 

 ・三日目

 

 今日はサバイバルの基本である火起こしをした。

 ライターなどの火起こしは無い為に原始的なそれこそよく乾かせた木片と木片とを擦り合わせ、摩擦熱による方法だがあたいはやった。結論を先に言うとその作業すっごく大変だった。火はなかなか着かず、火種に引火すらしない。試行錯誤の末、結局火が安定したのは半日以上も時間がだった後。自分で起こした火を見て達成感と満足感があったのだが、結局今日やるはずだった昨日見つけた海図を分析する事ができなかったのでちょっとションボリ。

 今日はもう疲労で眠く、腕もヘトヘトで疲れ切っているので明日やろうと思う。

 

 今日の妖精さんはフラミンゴを舞っていた。可愛い。

 

 ・4日目

 

 飲料水を作るにはフィルターが必要。

 

 下から布、砂利、砂、小石、灰を容器に投入し濾過する。

 

 その後飲む際には熱処理が必要。

 

 今日は妖精をぶん投げた。

 

 ・八日目

 

 目先の問題を片付けたので久しぶりにこのノートにあった事を書き込もうと思う。

 

 事の始まりは五日目の日の出来事。その日の俺はカンカンカンっと倉庫内にあった風化したガラクタを解体して少しでも資材の足しにしようと考えていた。どうせ放置されて風化したガラクタだし、誰の迷惑にもないだろうと考えていた頃のあたしを殴りたいよ、全く。

 その辺に転がっていたガラクタ、アレは元は艤装や装備だったらしく解体した途端、装備に宿っていた妖精が飛び出して来てさぁー大変。連鎖的に解体してない装備の子まで飛び出て来ててんやわんや。

 なんとか沈め、追い出した後はまるで空き巣にあったかのように荒れまくっていたのだ。一番酷いのが食糧などを備蓄していた場所。一応の考えで備蓄量を確かめ驚愕。なんと蓄えていた飲料水や食料がほぼほぼ全滅していたのだ。

 

 食料に関しては乾パンなどが残っていたが飲料水は完全に枯渇している。その結果に焦ったあたいは予定を繰り上げて急遽水を求めて水源を求め探索。結果、水源である井戸の跡地を見つけたが水量は十分あったが問題は水質。泥が何かで汚染でもされてるのだろう、匂いもひどく色も濁ってて飲めたものでは無かった。だからあたいは鎮守府跡地に残っていた文献を片っ端から読んで濾過装置の作り方を調べ尽くし、数十の歳月をかけて制作した。

 久しぶりに妖精と飲んだ澄み切った飲料水は、美味すぎて三人して泣いた。

 

 

 

 ・九日目

 

 今日は言葉のお勉強だ。どうやら今の私は日本語を外国語、英語などの外国語を日本語と認識しているらしい。

 事の始まりを話すが濾過装置の作り方を調べ出すのに際し、あたいは残っていた文献を片っ端から調べ尽くしたのは記憶に新しいと思う。だが、その際に読んだ記録がどれもこれも内容が解読不可能な言語で書かれていたのだ。それで唯一読めたのが、ゴミ捨て場に残っていた外国語の振り仮名が付いてある古い英語の教科のみと言う。それで日本語が読めない今の状態を認識したあたいはコレはヤバいと思い、今まさに勉強の真っ最中って訳だ。幸い単語や文字が理解出来なくても、何故か文面は理解出来る。コレを生かしてこの教科書を活用しつつ、日本語を覚えよう。

 

 今日の妖精さんは前にぶん投げられた事が気に入ったのか、また投げろと2人揃ってせがんで来た。危ないのでお手玉の要領で回してやった。

 

 ・とうかめ

 

 きょうはあたらしいふぐをつくった。ようせいさんのおかげでいっぱいふくがつぐれだ。うれちかった。

 

 ・十一日目

 

 昨日は覚えたばかりの日本語を使って書いてみた。多分意味は通ってると思う。一応全ては書けてないと思うのです改めて昨日あった事と今日あった事をまとめて書くとしよう。

 これは昨日気付いた事なんだが、あたいのこの服……って言うか水着なんだがこれまでは最初に着てた一着を着回してたんだよ。水着だから風呂に入るのと同時に洗い、上がるまでに乾かしてればなんとかなってたんだが正直言うと辛くなって来てな。それで妖精さんにそこの所を相談した所、工場にあった恐らく装備作成用の機械を使い、昨日回収した鋼材を使って作ってくれたんだよ、新しいのを。それも二着! 

 正直鋼材がどう変化して今あたいが着ている水着の様な姿へと生まれ変わったかすっごく気になるがあの妖精さんがやった事だ、気にしない方が無難だろ。

 そんでお次は今日やった事なんだが、今日は沖まで行って魚を取って来た。サルベージしたコンテナの中にまだ使えるゴムボートがあったのでそれを使い、一日中釣りを楽しんだ。そして魚釣りの結果は大量の一言。

 妖精達と一緒にお魚パーティを楽しんだ。欲を言えば醤油が欲しかったか、な。

 

 ・十二日目

 

 今日は水に対する恐怖心を克服しようと思う。

 サルベージしてる時に気付いたんだが、どうやら俺は艦娘としての潜航能力を使わずに水へと潜る事ができないらしい。これから先、燃料が枯渇して海を生身で漂流する事も考慮して生活しないといけない為にこの欠点は致命的だ。だから今日はこれからリハビリだ。がんばるぞー! 

 

 ・十三日目

 

 みずこわい

 

 ・十四日目

 

 この島? に上陸して今日で二週間。日本語の解読と会得によって回収した海図を読み取り、分析した結果。堂々この島の詳細が分かって来た。

 この場所はフィリピン海にある孤島の一つであり、パプアニューギニアと日本とを繋ぐ補給路の中継地だったらしい。あの大量に港で沈んでいた補給船達や設備がほぼ揃っているのに艦娘用の宿舎が見当たらなかったのにも説明が付く。恐らくだがこの艦娘用の設備は本来、警備として輸送船に同行、ここへ立ち寄った子達用だったのだろう。警備の途中襲撃により傷付いた身体の再生、壊れた装備を新調して艤装の修理を行っていたとしたら色々と納得できる。

 でも、そうすると一つ疑問だな。あの砂浜や目の前の港にも見られる色濃く残る戦闘痕。アレだけの戦闘を行ったはずならば、一つぐらい死体が出てきてもおかしくないはずだ。なのに一体も見つける事ができなかったなんて……不自然過ぎるよなぁ。

 

 今日は妖精がお手玉をせがんで来たのでやってあげた。多分気に入ったのだろう。

 

 あと昨日の事は記憶から消した。つまりアレだ、燃料が枯渇しないよう念入りに計画しようそうしよう。急いでドラム缶見つけなきゃ。

 

 ・十五日目

 

 今日は沖に釣りに出かけて来ようと思う。夜釣りも行う予定なので今日の分は先に────

 

※※※

 

「先に書いておくっと……ニッキーにはこれで良いな」

 

 気まぐれに始めた日記だったけれど、これはやって正解だったな。これまでやって来た事を振り返れるのはありがたいな。既に日記と化しているノートを防水シートへ入れ込み、魚を入れる為に持って行くアタッシュケースへ突っ込んであたいはよっこいしょてな具合で立ち上がる。

 

「さてさて、今日のフィッシングではどんな獲物が釣れるかな?」

 

 正直上手く喋れてるかは不明だが日本語を口ずさみつつ、釣り竿を持とうとした瞬間────何か聞こえた。

 

 

"ピコーン"

 

「ッ!」

 

 特徴的な湾曲しているかのような音、恐らくはアクティブソナーの類だ。

 

「妖精さん、カモーン!」

 

 手招きで遊んでいた妖精さんを艤装に乗せると工房を飛び出した俺は海へと飛び込み即座に潜航、発信源へと舵を着る。理由? そんなのは決まっている、正体を確かめる為だ。

 水上に建設されてある工廠にいて、パッシブソナーを切っていたあたいに聞こえるって事はかなりの出力の物でぶっ放したか、かなりの近海でぶっ放したかのどちらかしかない。この世界の海は言わずもがな危険だ。まだ遭遇した事は無いがソナーをブッパしたのが敵である深海棲艦である可能性もある。だからこそ、俺はあたい自身の安全を確保する為にその正体を確かめなきゃいけないのさ。

 

「ガトークラス、スキャンプッ抜錨するッ! Weigh anchor!!!」

 

 青く広い海の中。静粛に包まれた空間にてあたいは遥か彼方から聞こえる微細な音を拾い続けながら潜航航行を続け、発信源へと向かうのだった。




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