無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~   作:三毛猫丸

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9話 妹が2人、生まれた日

 吉報だ。

 俺に兄弟が生まれることになった。

 

 というのも、毎夜に渡って子作りに励んでいた両親。

 その成果もあってか、ゼニスの妊娠が判明したのだ。

 

 ゼニスは俺以降、妊娠する気配が無く気に病んでいたようだからな。

 報われたようで何よりだ。

 

 パウロもこの知らせには興奮を隠し切れず、ゼニスを抱き締めていた。

 これこれ、妊婦さんに衝撃を与えちゃいかんよ?

 

 

「ねぇ、ルディ? 貴女、お姉ちゃんになるのよ」

 

「私が姉ですか。感慨深いものですね」

 

 

 グレイラット家じゃ、6年間も年少者だった。

 別に肩身が狭いとか窮屈な思いはしちゃいないが、そうか……、俺にも弟か妹が出来るんだな。

 

 前世では弟が居た。

 赤子の頃にはおしめを替えてやったり、あやしたりもしてやったよ。

 

 でも成長するに連れて兄弟関係は悪化。

 俺が引きこもるようになってからは、兄貴らしいことは何もしてやれなかった。

 

 当時は弟も俺を励まそうとしてくれたっけな。

 その手を振り払って拒絶した時の弟の顔を克明に思い出す。

 

 だから俺は誓おう。

 今度こそ、下の兄弟に誇れる優しい兄貴もとい姉貴になってやるんだと。

 

 

「ねえ、母さま。お腹に耳を当てても、いいでしょうか?」

 

「ええ、好きになさい」

 

 

 まだ膨らみが小さなゼニスの腹部に耳を押し当てる。

 んー、分からん!

 けどここにきっと兄弟が居るのだ。

 

 元気に育ってくれよ。

 生まれてきた暁には、抱っこだってしてやりたいんだ。

 変顔とかして、笑わせてやりたい。

 

 続いてパウロも耳を当てて、次なる子の生命に思いを馳せる。

 感極まったのか、俺を抱擁してきやがった。

 

 まあ、今回ばかりは受け入れてやろう。

 この家族最大の喜びなのだ。

 寛大な精神にもなってやるさ。

 

 と、ここでひとつの問題が浮上した。

 

 

「え、リーリャ! どうしたの?」

 

 

 急な事態である。

 口を手で押さえたリーリャが、その場に崩れたのだ。

 

 体調を崩したのかと判断し、俺も慌ててヒーリングを掛けてみたが──。

 気休め程度にしか効果は表れなかった。

 

 

「リーリャさん、大丈夫……?」

 

 

 悪い病気ではあるまいか?

 この人には世話になっているし愛着だってある。

 家族同然の存在に心配にだってなる。

 

 

「すみません、お嬢様。それと旦那様に奥様……。私、妊娠したようです」

 

 

 は?

 爆弾発言である。

 予告無しに投下された。

 

 まさかの、つわりだった。

 つわりによる吐き気などには、治癒魔術は効力を発揮してくれないらしい。

 

 てか、相手は誰よ、誰なのよ?

 

 困惑したが……。

 薄々その相手に目星が立っていた。

 

 沈黙のまま目をパウロに向けてやると、答えは出ていた。

 この男、顔を青くして震えていたのだ。

 自白したも同然。

 

 後ずさってから、彼は口を開いた。

 

 

「ゼニス……。すまん、リーリャの腹の中の子は……俺の子だ」

 

 

 あるがままを告白した。

 子どもの手前、嘘をつき通せないとして、素直にぶっちゃけたのである。

 

 あぁ、俺も正直に言おう。

 パウロとリーリャが肉体関係を持っていた事は知っていたのだ。

 

 深夜、トイレで用を足して部屋へ戻ろうとした時のこと。

 両親の寝室ではない別の部屋から、男女の盛るような声が聞こえてきた。

 

 我が家のメイド、リーリャの部屋である。

 ビクビクしながら覗いてみると──。

 パウロとリーリャが交わっていたのだ。

 

 素っ裸で絡み合い、濃厚なキスまでしていやがった。

 これには俺も動揺し、見てはならない物を見てしまった気分になった。

 

 その場は黙ってUターンしたが……。

 ベッドの上で震えて夜を過ごしたものだ。

 

 さて、避妊なんていう発想すら皆無な世界だ。

 やることをやってしまえば、子どもだって出来て当たり前。

 

 その結果が、この冷えきった空気である。

 ゼニスは自身の懐妊の喜びを忘れ、パウロに歩み寄ると──。

 

 大きく手を振り上げて、夫の頬に目掛けてビンタをかました。

 

 バチンッと大きく響いた音が、事の重大さを知らしめる。

 パウロの片頬には痛々しい手型が貼り付いていた。

 あ、これやばい状況だ……。

 

 この世界に離婚という概念があるのかは知らないが、下手をすればヒステリック気味のゼニスがパウロを背後から刺しかねない。

 

 ある意味じゃ、この世から永遠にお別れとなるのだ。

 離婚より重たい末路じゃねぇかよ。

 

 下半身のだらしない父親は現在、部屋の隅で小さくなっている。

 居心地の悪さゆえ、助けを求めるように俺へとアイコンタクト。

 

 惨めな奴だ。

 追い詰められて娘にまで縋るとは。

 憐れだが、ここで俺に取れる行動は無い。

 

 そして静かに怒気を撒き散らすゼニス。

 怒り心頭なのは言わずもがな。

 

 詰めるようにリーリャへと言葉を掛ける。

 

 

「リーリャ、貴女のことは本当に良く想っていたの。けれど、これは……あんまりじゃない。こんな仕打ち……まだ信じられない……」

 

 

 ゼニスとリーリャは仲が良い。

 俺とシルフィ並に仲良しこよしである。

 

 それだけに裏切られた時の落差は大きいのだろう。

 信じていた相手が、自分の夫と不貞を働いていたのだから。

 その上、不義の子すらお腹に宿している。

 

 寝取られ(NTR)を実際に目の当たりにするとは、俺も虚を突かれた気分だ。

 自分の肉親だと、なおのこと気持ちが重たくなる。

 

 

「それよりも──。お腹の子はどうするつもり?」

 

「申し訳ありません、奥様……」

 

「謝って欲しいわけじゃないの。どうするつもりかを質問しているのよ?」

 

 

 こわっ!

 俺のママ、怖いよ!

 

 母親の恫喝に俺は本気でブルった。

 

 

「……出産した後に、故郷へ戻ろうかと。親の下で子どもを育てようかと考えています。もちろん、奥様の出産をご助力した後のお話です」

 

 

 あくまでもリーリャは身を引く覚悟なのか、努めて冷静な口調。

 しかし、その言葉とは裏腹に、彼女の心の内にどれほどの葛藤が繰り広げられたのか。

 

 

「ムリね……。貴女の故郷はアスラ王国の南部だったわよね」

 

 

 ここフィットア領はアスラ王国の北東に位置する。

 南部への移動ともなれば長旅は必至だ。

 乗合馬車でも1ヶ月は要する。

 

 

「産後で体力も落ちた上に、赤ちゃんを抱えての長旅だなんて耐えれるとは思えないわね」

 

 

 ゼニスの指摘の通りだ。

 あまりに無謀である。

 

 その上、憂慮すべき点が他にもある。

 この国は他国に比べれば治安はマシな方ではあるが、しかし現代日本と比較した場合は事情が変わる。

 

 殺人や強姦など当たり前。

 自分の身は自分で守らなければ生きてはゆけまい。

 

 リーリャは水神流の中級剣士らしいが、過去に負った怪我の後遺症で足が悪い。

 歩行にこそ支障は無いが、赤子を胸に抱きながら悪党から守るなんて無茶だ。

 

 

「奥様が私のことなど考慮する必要はございません。すべて、私の責任なのですから」

 

「本気で言っているの……?」

 

 

 一応、ゼニスも破綻した計画だと考えたのか、否定している。

 

 

「でしたら金銭的な援助をして戴けたら幸いです」

 

「お金の問題じゃないのよ。貴女と、お腹の子の体がどうなのかって、話でしょう? それに私は……貴女をっ……」

 

 

 許せないという言葉を言いそうになったが、咄嗟に口を(つぐ)んだのだろう。

 キュッと口を閉じて堪えている。

 

 裏切られたとはいえ、身内だ。

 死ぬことまでは望んでいないのだろう。

 

 しかし、許せない気持ちもある。

 怒りと友情のせめぎ合いで、ゼニスも混乱しているらしい。

 

 憎いが、自分から離れていくことも嫌だ。

 迷いが生じるが、答えは出ない。

 堂々巡りってわけか……。

 

 しかし、どうしてリーリャだけが責任を取らなきゃいかんのだ。

 責めるべきはパウロの方ではないのか?

 

 仮にリーリャが誘惑したのだとしても、パウロが手を出したという事実は覆らない。

 妻帯者であるパウロは、その誘惑を拒否するべきだったのだ。

 

 だから話は拗れてしまったし、解決が難しくなった。

 

 肝心の俺の親父は、いまこの場においては役立たずだ。

 いまもゼニスに意見しようとするも、睨まれて身動きを取れずにいる。

 

 だったら──。

 この場で発言権を持つのは俺だけだろう。

 

 

「母さま──」

 

「なあに、ルディ?」

 

 

 俺に対しては優しく接してくれている。

 神妙な面持ちから母の慈愛に満ちた笑みに変わる。

 

 だが、実状は重苦しい話題で持ちきりだ。

 

 

「リーリャさんを……。いえ、リーリャを追い出さないであげてください」

 

 

 言ってやる。

 パウロが言わないのなら、俺がこの場を仕切って切り抜けてやるのだ。

 

 

「き、急にどうしたの?」

 

「せっかく私に兄弟が出来るというのに、どうして追い出しちゃうんですか? リーリャは、なにか悪いことをしたのでしょうか?」

 

「それは……」

 

 

 言い淀むゼニス。

 子どもに面と向かって不倫されたなどと説明できまい。

 

 俺はリーリャには恩がある。

 皿を割った時に庇ってもらったし、日々の生活の上でも世話してもらっている。

 

 そして何よりも──。

 

 御神体(ロキシーのパンツ)の存在を知っているにも関わらず、両親に黙ってくれているのだ。

 

 詳細を語ると、普段であれば神棚にて、厳重に保管してある御神体。

 その日、俺は新魔術の研究に行き詰まっていたことから、癒しを求めてロキシーの存在を渇望する余り、使()()した。

 

 その後、研究作業の途中で散らかっていた部屋に御神体は埋もれ、部屋の散らかり具合を見かねて掃除にやって来たリーリャに発見されてしまったのだ。

 

 リーリャの手にあるソレの出所を問われ、素直にロキシーの物だと答えた。

 盗んだわけじゃないから、何もやましいことはないのだ。

 

 ただ、リーリャはともかく、両親はこれをどう思うのだろう?

 きっとドン引きするのではと、不安になった。

 

 ただ心の支えだという事実だけは、彼女も理解してくれたようで、無言で返却してくれた。

 パウロ達にも内緒にしてくれたようで、事なきを得たわけだ。

 

 だから俺はリーリャを見捨てない。

 恩を返したいからだ。

 

 いいや、もうひとつ理由がある。

 

  取り零しの無いよう、命を救済すること──。

 

 以前、俺が抱いた目標だ。

 その対象には、これから生まれてくるであろう赤ちゃんも含まれるのだ。

 

 

「リーリャは家族です。家族なのにバラバラになるなんて嫌ですよ……」

 

「ルディ……。お母さんもそんなつもりは……」

 

 

 ゼニスはハッとした顔でオレの言葉に耳を傾ける。

 リーリャもまた、意外そうな顔でこちらを見つめていた。

 

 

「私はリーリャの居ない家なんて想像したくもありません」

 

「それは……。同じ気持ちだけれど……」

 

「母さまの本当の気持ちを話してください。許せない気持ちも理解できます」

 

 スラスラと口から出る説得の言葉。

 ここまで饒舌なのは、俺がそれほどまでにリーリャに恩を感じている証拠か。

 

 

「母さまはどうしたいのですか? リーリャのこと、大好きなんでしょう?」

 

「好きよ……、でも、だって……」

 

 

 もう一押し──。

 

 

「私はリーリャのことが大好きです。お腹の子も楽しみにしています。そんな私から……2人を取り上げるおつもりですか?」

 

「ち、違うのルディ! お母さん、そんなつもりじゃなくてっ!」

 

 

 もう十分なんだろうが、保険として、もう一捻り加える。

 

 

「実はですね、いつかの晩。父さまが、リーリャを脅迫している場面を見てしまいました」

 

「それ、詳しく」

 

 

お、食いついてきたな。

 

 

「詳しいこと私にもさっぱり。ですがリーリャの弱味を握っているように聞こえました。バラされたくなければ、股を開けとかなんとか」

 

「ちょっとあなた! 娘になんて事を聞かせてるのよ!」

 

 

 激昂したゼニスは、しょぼくれているパウロの頬を打った。

 本日2度目のビンタである。

 今やパウロの両頬には手の平の跡が紅く浮かんでいた。

 

 で、パウロの様子は……。

 身に覚えの無い証言に困惑しつつも、何かしらの決心をしたようで──。

 

 

「バレちまったもんは仕方がねぇ! そうだ、オレはリーリャを脅して無理やり抱いた。何か文句があるか? なぁ、ゼニスよ」

 

 

 なんと、俺の偽証に乗っかってきた。

 これは好都合。

 後はパウロに任せて、成り行きを見守るとしよう。

 

 

「オレは()()()家の籍を捨てたが、元来女好きの一族の血を引いてんだ。色々と溜まってたんでな。手近な所にリーリャが居たから、美味しく戴いてやったんだ」

 

 

 演技なのは分かるが、ちょいとヒドイ物言いじゃないか?

 まあ、これくらい言わないとゼニスを誤魔化せないか。

 

 

「最低……」

 

 

 一呼吸置いてから──。

 ゼニスの拳がパウロの鼻先にめり込んだ。

 見事なグーパンを受けて仰け反ったパウロは、鼻血を噴き出しながら昏倒する。

 

 

 哀れ、パウロ。

 そして嘘ついちゃってゴメンね?

 

 

「ごめんね、リーリャ! 私ったら事情も知らずに貴女を追い詰めてしまって」

 

「そ、そんな……。旦那様は何も悪くなくて、その……奥様は被害者なのです」

 

「こんな男、庇うことないのよ。安心なさいね、貴女はずっとここに居なさい。子どもをきちんと生んで育てなさい! これは雇い主としての命令よ!」

 

「奥様……」

 

 おぉ!

 懐が深いぜ、俺のママは!

 

 

 リーリャは涙ぐみ、ゼニスに抱き締められていた。

 やっぱり2人の関係は、こうでなくては。

 

 床で伸びているパウロを置き去りにして、事後処理はトントン拍子で進行していく。

 リーリャの雇用は継続。

 子どもは、我が家の子として育てることに決まった。

 養育費もグレイラット家持ちだ。

 

 最終的に、リーリャはパウロ・グレイラットの第二婦人として対外的には扱われることになった。

 

 リーリャ・グレイラット──。

 

 名実共に、今日この日にリーリャは俺の家族になったのだ。

 

 やったね、ママがもう1人増えたよ!

 

 

 

 

 

 そして後日談。

 妊婦を2人抱えたグレイラット家。

 母体に負担をかけるのは不味いので、俺が家事を手伝うと申し出た。

 

 シルフィとの時間を削る必要があった為、上級魔術の指導は、しばらくお預けとなる。

 本人には承諾を取れたが、そこだけは彼女に申し訳ない。

 後日、何かしらの埋め合わせをしないと。

 

 それと、パウロの発言は口からで任せであることを、ゼニスはちゃんと理解していた。

 それとなく言質は取っておいたのだ。

 

 あの場では、パウロだけでなくゼニスも演技していた。

 というのもゼニスも、リーリャを許す為の口実が欲しかったのだろう。

 そこに俺の機転と、パウロの男気ある行動。

 彼女にとっても願ってもない話だっただろう。

 

 父と娘の絆が織り成した奇跡だ。

 

 その後の数ヶ月は忙しかった。

 家事を手伝うと言い出したのは自分だが、不慣れな為か、あまり要領よくはこなせなかった。

 時間の経過でマシにはなってきたが、身重なリーリャにフォローしてもらったりと、俺は半端者。

 

 ゼニスにも結局、『貴女にも出来ない事ってあるのね?』なんて言われたよ。

 以前、料理を習った際にも、失敗ばかり重ねていたことから分かるように、基本的に俺は不器用なのだ。

 

 そして迎えたゼニスの出産日。

 お腹の子が逆子であると発覚し、急遽、村に住む婆さんに応援を要請した。

 

 俺とリーリャもサポートし、どうにか元気な赤ちゃんが生まれた。

 性別は女の子で、グレイラット家の第2子にして次女だった。

 

 その後、状況も冷めやらぬ中、今度はリーリャが産気付いてしまった。

 いわゆる早産である。

 

 場は騒然としたが、家長であるパウロが率先して動いた。

 リーリャを抱えて別室のベッドへ横たえると、村の婆さんや俺に指示を出した。

 出産に関しては門外漢のパウロだったが、俺の生まれた時と、先ほどのゼニスの出産で慣れたらしい。

 

 魔術で産湯を作ったり、体力の消耗の激しいリーリャへ治癒魔術を施したり。

 俺にやれることはなんでもやった。

 

 出産の痛みに耐えるリーリャの手を握ってあげると、彼女は苦しいだろうに、必死に俺へ笑顔を向けてきた。

 こんな時にまで気丈に振る舞わなくても良いのに。

 

 

「リーリャさん、頑張って! もう少しで生まれますから!」

 

「ルー……ディア……おじょ……うさま……。そばに……」

 

「はい! 私はここに居ますから! だからファイトです!」

 

 

 いま出来ることは元気付けること。

 握った手を介して常時、ヒーリングを発動する。

 

 やがてリーリャは痛みを堪えきって──。

 

 グレイラット家の第3子である三女が誕生したのだ。

 

 1日に2人も妹が増え、一気に我が家は賑やかになる。

 家族の男女比率も更に偏って、パウロの立場も落ちてしまった。

 浮気をした男のレッテルを貼られ、前以上にゼニスに尻に敷かれている。

 

 紆余曲折を経て生まれてきてくれた妹たち。

 名前は? と、ゼニスとリーリャに聞いてみたところ、どうもまだ決めかねているらしい。

 

 というのも、妹たちの名前を俺に決めて欲しいそうだ。

 此度の騒動を丸く収めた最大の功労者として俺を扱っているのだとか。

 

 そういうわけで命名権を譲られた俺は、妹たちの名付け親という栄誉を得る。

 

 

「ルディ、貴女が決めてちょうだい。この子もきっと喜ぶと思うの」

 

「そうですねぇ、迷います」

 

 

 数分悩んで思い浮かんだ名前をゼニスの娘に与える。

 

 

「ノルン──というのはいかがでしょう」

 

「ノルン! 良い名前ね!」

 

 

 次女:ノルン・グレイラット──

 

 

 そして次はリーリャの子。

 

 

「ルーディアお嬢様。貴女にこそ、この子の名前を戴きたく存じます」

 

「はい、では──」

 

 

 また考える。

 大切な妹の名前だ。

 それこそ一生を左右するほどで、責任重大。

 考えに考えた末に……。

 

「アイシャ──なんてどうでしょう」

 

「素晴らしい名です、頂戴いたします」

 

 

 三女:アイシャ・グレイラット──

 

 

 ノルンとアイシャ。

 俺の名付けた妹が2人、こうして生まれた。

 

 一時は家庭崩壊寸前まで陥ったが、最終的には家族の結束は強まった。

 家族も増え、これから増々賑やかな生活が待っていることだろう。

 

 そうだ、シルフィにも抱っことかさせてやろう。

 彼女は一人っ子だから、きっと喜んでくれるハズだ。

 

 それに色々と、妹たちとやりたいことが思い浮かぶ。

 いっしょに遊んだり、おやつを食べたり、魔術も教えてやりたい。

 

 さあ、明日からどんな毎日が待っているだろうか?

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