無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~ 作:三毛猫丸
館に入るとギレーヌから執事へと引率は引き継がれた。
ギレーヌは俺の後ろを静かに付いている。
執事から、サウロス氏やフィリップ氏の特徴を聞いておく。
挨拶するに際して、出遅れるわけにはいくまい。
長い廊下には幾つもの絵画が飾られている。
芸術を見る知識も眼も無い俺でも、それらがいわゆる名画だってわかった。
ここの絵を数枚かき集めただけで、一生遊んで暮らせそうだ。
俺の場合は魔術の開発費に投じて10年と持たなさそうだが。
応接室に通される。
二脚あるソファーの内の片方に腰を掛ける。
ギレーヌは部屋の隅に立ち、眼を閉じていた。
しばらくすると、地響きの伴った足音が耳に飛び込んできた。
乱暴に応接室の扉は開かれ、その人物は姿を現したのだ。
「お前がパウロの娘か? ふん、エリス程ではないが悪くない顔立ちだ。それにゼニスによう似ておるわ」
パウロよりも大柄の男性。
全身を筋肉で覆われ、見るものを威圧する力強さを感じられた。
彼こそがボレアス家当主のサウロス氏だろう。
「はじめまして、サウロス大叔父さま。ルーディア・グレイラットと申します」
スカートの端をつまんで、腰をやや落とす。
淑女の挨拶である。
リーリャに付け焼き刃とはいえ、出発直前に礼儀作法を習っておいたのだ。
「ほう、ゼニスに躾けられたか?」
「母と侍女のリーリャから学びました」
「なるほど……。気に入った! お前は我が孫娘エリスと年が近い。相手をしてやれ」
今の挨拶に気に入る要素ってありましたかしら?
それはともかく、孫娘の遊び相手として俺を重用するらしい。
ヤダなぁ、あんな乱暴な娘の相手だなんて。
でも専属の家庭教師としての仕事もあるし、職務放棄は出来ん。
「パウロは人間のクズだが、お前は違うようだな」
「……父さまは、それほどに酷かったのですか?」
サウロス視点のパウロの評を聞きたくなった。
「おうとも! 奴めは、事あるごとに言い訳を連ねおった。やれあれが悪い、やれやる気が湧かん。そんな言い訳ばかりだったわ!」
「なるほど……」
サウロスの知るパウロというのは実家を飛び出すまでの12歳までの期間だろう。
どうやら自分本意のクソガキだったらしい。
「だが儂は奴がノトス家を継いでおればと思うておる。ピレモンの奴と比べれば、パウロの方が余程骨のある男だ!」
ピレモンという男がノトス家の現当主らしい。
となるとパウロの兄弟か?
貴族だし跡継ぎも既に居そうだ。
俺にもまだ見ぬ従兄弟が存在するってわけだ。
「聞いておるぞ、ルーディア! お前はダリウスのクソッタレに狙われたらしいな!」
「はい、そうなんです。この度は、サウロス様の庇護を受けたく参った次第です」
「よかろう! 儂の甥の娘だ。悪いようにはせん」
「ありがとうございます、サウロス様」
「何か困った事があればいつでも申し出ろ。力を貸してやろう!」
「はい、ありがたく存じます!」
そしてサウロスは再び地響きと共に部屋を去った。
エリスが嵐なら、サウロスは地震である。
まぁ、気に入られたようで安心した。
孫娘の方には毛嫌いされているからな。
おじいちゃんである彼から、エリスに口利きしてもらおうかしら?
「やはりサウロス様のお眼鏡に
ギレーヌが安息しながら言う。
「そのようで、私は驚いてますね」
「あたしは信じていたぞ」
ん?
ギレーヌはやたら俺を推してくるな。
もしや、俺の事が好きなの?
止めてくれ、俺にはロキシーとシルフィの二人が居るんだ。
もう手が塞がっている。
浮気なんてしないよ、パウロじゃあるまいし。
という冗談はさておき、行きがけの会話で親睦を深めた結果、ギレーヌも俺の人となりを知った。
その上で信頼してくれているのだろう。
ありがたいことだ。
そして数分後、次の来訪者が現れた。
このロアの町の町長であるフィリップ氏である。
「やぁ、パウロからの手紙で君の事は知っているよ」
優男の印象を受ける、どこか猫のような男。
父親のサウロスとは違い、それほど身体を鍛えてはいないらしく、細身だった。
と、挨拶しねーと。
「はじめまして、ルーディア・グレイラットと申します」
先程の作法も忘れない。
「あぁ、これは丁寧にどうもね。私はフィリップ。この町の町長さ」
知ってるよ、廊下で執事がそう話してたし。
「それにしても父上に気に入られたようだね。たいしたものだ」
「いえいえ、サウロス様の寛大なお心に甘えてしまっただけですので」
「ふふ、謙遜を。しかし、見れば見るほどゼニスにそっくりだ。血筋もあってダリウス上級大臣に狙われるというのも頷ける」
褒められてんだよな、これ?
素直に笑顔で反応しておく。
「さて、話を詰めようか。君にはウチで家庭教師をしてもらう。それは知っているね?」
「はい、父よりそう聞いています」
「うん、よろしい。で、そこに居るギレーヌ。そして私の娘のエリスを指導してもらいたいんだけど──」
少し溜めるフィリップ。
「もう知っているかもしれないが、エリスは乱暴な子でね。もう会ったよね?」
「ええ、元気のある御息女でしたね」
「もしかして殴られた? だとしたら、すまない」
頭を下げるフィリップは誠実な人間のようだ。
そして愛娘のじゃじゃ馬ぶりに手を焼いているようにも思える。
俺としても対策を打ちたいが──。
「仲を深めるには寝食を共にすると良い。この内、就寝の場は別にするとして、食事の場くらいは私が後日、設けよう」
先んじてフィリップが提案した。
そうか、ボレアス家はパウロの嘆願に折れて俺を受け入れたので、俺がエリスから遠ざけられようとも、追い出すつもりはないのだ。
で、何かしらの仕事をフィリップも、率先して俺に回したいってところだな。
「ご配慮、感謝いたします」
「そう畏まらなくとも良いよ。この先数年間は、ルーディアはボレアス家の一員だ。私も我が子同等に扱おう。どうだい? 試しにお父様と呼んでみるのは」
これは人間として試されているのか?
真に受けちゃダメそうだ。
「いえ、お戯れを。私の父はパウロ・グレイラットだけですので」
「君を受け入れて正解だったようだ」
何やらお気に召したようで。
「ひとまず今日の所は休みなさい。君の部屋を手配しておいた。食事も運ばせる。家庭教師の仕事は、君が我が家に慣れてからで構わない。それに、中々エリスも取り合ってくれなさそうだしね」
「何から何までありがとうございます、フィリップ様」
「私も君を気に入っているからね。父上の気持ちが、この数分の会話で理解出来たよ」
そしてその場はお開きとなった。
執事に俺にあてがわれた部屋へ案内してもらう。
用件がある場合は、呼び鈴を鳴らせばメイドさんが駆け付けるとのこと。
そして夕食として運ばれてきた食事を終え、ベッドの上で横になる。
思えば一気に環境が変化したものだ。
女の子に生まれてきた次くらいに驚いている。
あぁ、リーリャの妊娠騒動も捨てがたい。
「頑張んなきゃな……」
パウロもきっと力を蓄える為に鍛練を続けるだろう。
剣の聖地から派遣された剣聖以上の指導者によって。
剣聖以上ってことは、ギレーヌと同じく剣王が送られる可能性もあるんだよな?
だとしたらパウロは、その扱きに堪えられるのか?
いや、娘の俺が信じてやらなくてどうすんだ!
自身を叱責し、入浴する事で気分転換を図る。
入浴と言っても桶にお湯を張って布でゴシゴシと擦るだけだ。
この館には大浴場があるかもしれんが、来たばかりの俺が使わせてもらえるとも思えない。
いや、俺を気に入ったと話す、サウロスやフィリップにお願いをすればあるいは。
うーん、やっぱりそこまで図太くはなれんよ。
手際よく入浴を済ませ、メイドさんによって用意されていた寝巻に着替える。
なぜかサイズがピッタリだったことに驚く。
はぁ、今日は一日中馬車で移動した上にエリスに顔面を殴られた。
サウロスたちとの面談は問題無く終えられたが、気の休まらない日だった。
ベッドに仰向けになり、眼を閉じれば1分とせずに意識は途切れた。
翌日の朝。
顔を洗ってから呼び鈴を鳴らすと、獣族のメイドさんが洋服を準備してくれた。
少し古いが、貴族の子女向けの衣類。
どうやらエリスのお古らしい。
格好だけ見れば、俺もこの館に住むお嬢様だ。
一応、俺もエリスの親戚なんだよなぁ。
さて、今日の1日の行動を語ろう。
フィリップから、この館の中であれば自由に歩き回って良いと言われている。
さすがに彼やサウロスの私室は常識的に考えてNGだろうが、許可を得たからには探索をさせてもらおう。
そして第一目的地は書庫である。
実家の書斎の所蔵数は、たったの5冊と少ない。
ゼニスに誕生日に送られた植物辞典を含めても6冊だ。
診療所から借りてきた治癒魔術の専門書は、とっくに返却済みだし。
そういった理由から、知識を求めて大貴族様の書庫に足を運びたいと思う。
で、書庫の正確な場所がわからず、館内をさまよっていると──。
胸元の大きく開いたドレスを着た、おっぱいの大きな女性と出くわした。
顔立ちや真っ赤な頭髪から察するに、十中八九、エリスの母親だろう。
名前はたしか、ヒルダだったか?
「あら、貴女は」
「はじめまして、奥様。ルーディア・グレイラットといいます」
「ええ、夫から貴女の事を聞いているわ。大変だったそうね」
何やら同情的な視線を向けられる。
たぶん、誘拐事件の話を耳に入れたのだろう。
「いえ、サウロス様やフィリップ様の配慮で、こうしてボレアス家へ迎え入れてもらえました。奥様にも気に掛けて戴いて、感謝しております」
「わたくしに対してそんな敬語は必要ないのよ。他人行儀ではなくて?」
「これは失礼を」
ふむ、見た目はツンとした感じだが、話してみれば母性溢れる女性だ。
人は見かけによらないんだな。
エリスは外見に
「ところでウチの娘がルーディアに暴力を振るったって聞いたのだけれど、怪我はないのかしら?」
「ええ、加減してもらいましたので。ほら、殴られた跡とか無いでしょう?」
嘘ですよ、奥さん。
あの娘さんは全力で殴ってきました。
自前の治癒魔術で治しただけですのよ。
「それでもごめんなさいね。あとでわたくしの口から叱っておくから」
「お気になさらずに。あれはエリスお嬢様なりのスキンシップだと私は考えていますので」
「強がらなくていいの。ほら、いらっしゃい」
強がりなのだと勘違いされたままヒルダの熱い抱擁を受ける。
これは──おっぱい!
ゼニスやリーリャと同等以上の女性的な部位に、俺の顔は沈んだ。
息がしづらいが心地好い。
書庫はもうどうでも良い。
今日はずっとここに居ます!
ある意味じゃ女体の神秘という知識を得て、ご満悦な俺が解放されたのは30秒後。
廊下を行き交う獣族のメイドさん達に生暖かい視線を浴びせられたけど気にしない。
俺もたった1日でボレアス家に馴染んだってことだ。
「ところで奥様。書庫の場所をお尋ねしたいのですが」
「それならわたくしが案内します。付いてらっしゃい」
「奥様に感謝を」
ホント、優しいね。
慣れない土地で不安だったが、エリスを除けばボレアス家の人々は総じてが好意的だ。
サウロス、フィリップ、ヒルダの3人に加えて、食客待遇のギレーヌ。
俺、ここでもなんとかやっていけそうだ。
数分後、書庫に到着すると先客が居た。
ヒルダの夫であるフィリップだ。
「おや? ヒルダはルーディアを気に入ったようだね」
「だってこの子、こんなにも小さいのに親元から離されたのよ? 不憫でならないわ!!」
「あぁ、そういう……」
何か暗い過去があるのか、途中で言葉を切った様に聞こえた。
そういやぁ、フィリップは貴族の割に子どもが1人しか居ない。
跡継ぎ問題もあるし、男子が生まれるまで粘ると思うのだが。
この館じゃエリスくらいしか見かけていないし、不可解だ。
あぁ、俺の親も中々子宝に恵まれずに悩んでいたっけ。
俺とノルンが生まれるまでに6年の空白期間があるわけだしな。
まあ、正確なところは分からんし、家庭事情など人それぞれである。
さて、俺の疑問を解消するように、フィリップは耳打ちしてきた。
「ボレアス家じゃ、次期当主以外の家で生まれた男子を差し出さなければいけなくてね。ウチも本来ならエリスに兄と弟が1人ずつ居るんだ」
その後も詳細が語られた。
権力争いの防止策であり、かつてはアスラ貴族全体で似たような風習があったのだとか。
つまりあれか?
ヒルダが俺を気に掛けているのは、親元を離れることになった自身の子どもの姿に重ねてのこと。
うーん、なかなか重たい話である。
こちらとしてもヒルダには優しく接してやりたいものだ。
「そういうわけだから、時々で構わない。私の妻の相手をしてやってくれ。エリスの件といい、押し付けてばかりで申し訳ないね」
「そんな! 謝って戴かなくともいいですよ」
美人だし、おっぱいもデカいし、第3のママとしてヒルダを受け入れよう。
てか、俺のママ達は、ゼニスとリーリャも含めて、全員巨乳である。
俺やノルン、アイシャも将来は巨乳に育つだろうし、運命レベルで、おっぱいに縁があると思うよ。
「ねぇ、ルーディア。貴女はどんな本が読みたいのかしら?」
どうやらヒルダはまだ俺と過ごしたいらしい。
良いぜ、奥さん。
俺で良ければお相手つかまつろう。
本来の目的としては聖級治癒魔術の専門書を探すつもりだったが、ここはヒルダに合わせて子ども向けの文学書に対象を変更する。
子どもにもある程度理解出来るように内容を要約された『アスラ王国建国記』や『人族と獣族の歩み』などを選んだ。
時折り、文字が解らないフリをしては、ヒルダに質問してみると、パァーッとした桜満開の笑みで教えてくれる。
きっとあの乱暴者のエリスも、この母親相手には従順になることだろう。
昼頃まで書庫にこもり、ヒルダの私室で一緒に食事を摂ったりと充実した時間を過ごせた。
本心から母親同然に思えるほど甲斐甲斐しく世話を見てくれて、故郷を離れた寂しさも和らいだというもの。
俺の去り際にもギュッと抱き締めてきて、心底この人を大切しようと決意する。
俺も情に絆され易い人間だこと。
ところかわって、夕暮れ間際の中庭。
エリスとコンタクトを取るべく歩いていると、木剣同士のぶつかり合う音が鳴り響いていていたので足を止めた。
もしやエリスかと期待したからだ。
視線をやれば、ギレーヌとエリスの姿。
模擬戦闘の最中らしく、こちらの存在には気付いていない。
いや、ギレーヌは獣耳がピクリとこっちに向いていたから、気付いているようだ。
剣王ゆえの感知能力か、はたまた獣族の種族的な性質なのか、あるいは両方なのか。
いずれにせよ、エリスは俺に見られているとも知らず、爽やかな汗を流していた。
長い赤髪がカーテンのように
こうして見ると様になるんだが、実態は理不尽に暴力を振るうワガママお嬢様である。
と、ここでギレーヌが一歩踏み込んだかと思えば、木剣はエリスの手を打ち据えていた。
エリスは木剣を落とし、無防備を晒す。
そうなればなす術も無く、ギレーヌの容赦ない胴への一打が炸裂した。
防具を着用しているので怪我はしないまでも、エリスの子どもゆえに小柄な身体は、いとも容易く衝撃で吹き飛んでいた。
着地を取れず、地面をゴロゴロと何回転かしてから、ようやくその勢いは止んだ。
「エリス、受け身を取れなければ敵の追撃を受け、無様に命を散らすぞ」
「わかってるわよ!」
いや、あんさん何もわかってなさそうですやん。
ていうか、剣術の指導中はギレーヌもエリス相手に敬語は使わないようだ。
オンオフの切り替えが上手いらしい。
「っ……! あんた、昨日のっ!!」
「ああ、覚えていてくれたんですね」
やっと俺の存在に気がついたようだ。
鋭い眼光が身体を貫く。
「名前は言えますか?」
「エリスよ!」
「いえ、そうではなくて。私の名前をです」
「……知らないわよ!」
むむ!
余計、嫌われてしまったかな?
しかし、へこたれる事もなく、再トライだ。
「では改めて。ルーディア・グレイラットといいます。私はエリスお嬢様の親戚です」
「なにあんた? 私の従姉妹かなにか?」
今度は怒鳴らずに、質問で返してきた。
「又従姉妹というやつです。エリスお嬢様の祖父サウロス様と、私の父方の祖母が兄妹とのことで」
「あ、そう! 興味ないわね!」
うーん、手応え無しかぁ。
こいつは手懐けるのに苦労するぞ。
「あっ! そういえばあんたっ! お母様に告げ口したわねっ! 叱られちゃったじゃないのよ!」
顔を真っ赤にして怒りをぶつけてくる。
ちょっと怖いが、退くつもりはない。
「間違ったことをすれば叱られるのは当然です」
「うるさいわねっ! 全部あんたが悪いんでしょう!」
ここで喧嘩っ早さが出たのか、殴り掛かってきた。
雇い主のお嬢様だから、迂闊に魔術で撃退なんて真似は出来ない。
じゃあ、大人しく殴られとく?
いや、またヒルダ辺りに叱られて仕返しされかねん。
避けるのも火に油を注ぎそうだしなぁ。
「ギレーヌ、どうにかしてください!」
ここは頼れるギレーヌの姉御に任せよう。
「エリス! ルーディアを殴ったら、1週間剣術の訓練は無しだ!」
「っ……! チッ……」
鼻先まで迫った拳はすんでのところで静止。
ギレーヌの一喝に救われた。
「もうあんたっ! いったいなんなのよ!」
「エリスお嬢様の家庭教師ですが?」
「勉強なんてしなくても良いじゃない!」
「必要です。無学ではきっと将来、困る場面に直面します」
「だあぁぁぁっ……! うるさいって言ってんでしょ!」
自身の髪を掻き毟ってクシャクシャにするお嬢様。
いかん、手の施しようが無いぜ。
ギレーヌも困った風に、溜め息をつく。
「部屋に戻るわっ!」
「ちゃんと汗を拭くんですよ。放置すると風邪を引いちゃいますから」
「余計なお世話よ、バカ! 間抜け!」
捨て台詞を俺にくれると、駆け足でエリスは立ち去った。
地面に転がった木剣が嵐の過ぎた後を比喩してる様に思える。
「何て言うか……。エリスお嬢様って、問題児ですね?」
「あぁ。アレを従えるのは至難だぞ」
「ですね。前途多難ですよ、まったく……」
トホホ……。
ギレーヌやヒルダのお陰で殴られるリスクは減ったものの、先のおもいやられる惨状だ。
手綱を取るどころか、こちらが馬乗りされて拳の連打をされかねん。
気長にやっていくしかないのか?
俺も魔術の方面で伸ばしたり、ギレーヌから最低限の剣術を学んだり、今後忙しくなるってのに。
肩にのし掛かる謎の疲労感にウンザリしながらも、一度、部屋へと戻ることにした。
途中、メイドさんからフィリップの約束してくれた
俺も心して臨もう。