無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~   作:三毛猫丸

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16話 誘拐事件のその後

「ルーディア!」

 

 

 深紅の少女が俺の帰りを待ちわびていたのか、飛びつくようにして抱擁してきた。

 2歳差という年齢の違いからか、エリスの方が幾分か背が高く、俺の顔は胸の辺りに埋もれる。

 

 まだ9歳でしかないボレアス家のお嬢様。

 しかし、幼いながらも確かな弾力が俺へ安心感を与えてくれる。

 

 

「エリス、貴女が無事で何よりでした」

 

「もう! あなたはもっと自分の身を大事にしなさいよ! 死ぬところだったんだから!」

 

 

 

 至極まともな事を言われた。

 彼女もまた、誰かを心配する良心を得たらしい。

 それにしても……、エリスって良い香りがする。

 

 昨日から風呂に入っていない為か、汗の匂いが強いが、俺の嗜好に合致した甘ったるい香りがそそる。

 

 暴力女のレッテルを貼られたエリスだが、まぁ実際にそうなのだが、少なくとも俺の好みに合った容姿でもあるのだ。

 

 母親のおっぱいを鑑みるに、エリスの将来的な胸部装甲も揉みごたえのある物に仕上がるだろうな。

 ぐへへ、数年後が待ち遠しいぜ。

 

 スケベな妄想をしていると、ギレーヌに『発情するな』と、頭を軽くはたかれる。

 獣族の鼻は欺けまいて。

 

 

「ルーディア、今さら気になったけど血塗れじゃない!」

 

「怪我は完治していますよ?」

 

 

 両腕を切断されたんだ。

 エリスのお古である洋服は、俺自身の血液で赤く染め上げられていた。

 しかも肘の辺りで布が断ち切られてボロボロ。

 乱暴されたとしても、こうはなるまい。

 

 

「そういう問題じゃない! ルーディアは私の家庭教師なのよ! 何も教えずに死んじゃうところだったのよ! 約束を破るつもり!」

 

 

 鼓膜が破れそうな声量に身体がビクッとする。

 ギレーヌもうるさそうにして、顔をしかめていた。

 うん、エリスからすりゃあ、約束を反故にされる寸前だったわけだし、怒る理由にも納得はいく。

 

 てか、純粋に身を案じているのだと、鈍い俺でも分かるよ。

 

 

「では、エリス。お約束します。私はエリスの家庭教師である限りは、絶対に死なないと」

 

 

 考えの末に絞り出した答えは、お為ごかしでしかない言葉を吐いた。

 我ながら都合の良い口から出任せだ。

 

 

「約束なんだからね……」

 

「はい……」

 

 

 でも、納得自体はしてくれた。

 一件落着とは程遠い顛末だが、俺はエリスを守った。

 だから明日からも、この事実を誇りに持って、家庭教師の仕事を全うしてやるとも。

 

 

 

 

 さて、事後処理について語ろう。

 まず執事のトーマスは、サウロスやフィリップに暴力的な尋問を受けて、洗いざらいを吐いた。

 

 横暴なエリスに嫌気が差していたのと、お金に目が眩んだのと、あとはならず者と繋がりがあった事から、今回の事件を計画したのだとか。

 

 で、俺たちからギレーヌを引き剥がした手管についてだ。

 フィリップから至急の呼び出しだと、ギレーヌに嘘の知らせを伝え、護衛は別で付けると話したらしい。

 

 フィリップもまた、外部の人間によって行動を誘導されていた。

 俺たちが出発した後、王都に居るボレアス家次期当主である兄ジェイムズより使者が送られ、ロアの街の政策にケチをつけられたらしい。

 

 その対応で、館を離れており、事件の発生を知るのが遅れた。

 つまり今回の事件は──。

 

『トーマス含める人攫い』

『ボレアス家次期当主ジェイムズ』

『変態貴族』

 

 以上の人間が関わった複雑な騒動なのだ。

 変態貴族ってのは、おそらくダリウス上級大臣辺りだろう。

 噂じゃ、ボレアス家を査察に来た際に、エリスを気に入ったんだとか。

 

 下手すれば俺とエリスはセットで、ダリウスの奴隷にされていたのだろう。

 

 しかし、ダリウスを追及しようにもトーマスの証言だけでは関与を証明出来ず、ジェイムズについても同様。

 たまたま使者のタイミングが重なったのだとシラを切られた。

 

 何でもジェイムズはダリウス寄りの人間であり、父サウロスとも、そりが合わないようだ。

 つまりジェイムズは実の姪エリスを差し出そうとしたのだ。

 そこに俺が想定外の動きをしたことから、計画は破綻したのだが。

 

 以上の説明をフィリップから、俺は受けていた。

 お家騒動に巻き込んだ事を深く謝罪され、今後は街へ赴くとしても、ギレーヌ以外の護衛は許可しないとも話していた。

 

 そしてサウロスなのだが、息子ジェイムズに対して怒りを抑え付けられず、直接抗議に王都へとその身で向かった。

 俺とエリスの帰宅を確認すると、地響きと共にボレアス家の館を飛び出したのだ。

 

 そして今回の一件、解決に尽力したのは全てギレーヌであると、外向きには発表された。

 食客として剣王ギレーヌを招いたと内外にアピールする為だ。

 

 そして俺の存在も、一部には漏れているにしても、他の()()()()()()()に対して秘匿すべく、ただの被害者の1人として扱われる。

 

 政治的駆け引きってやつだ。

 フィリップの話してくれた計画上、俺やパウロの存在をおおっぴらにするのは不味いしな。

 

 

「改めて謝罪させてもらうよ。君をダリウスの手勢から保護する為にボレアス家で預かっていたのに、我が娘エリスの巻き添えにしてしまって、本当にすまなかった」

 

 

 深々と下げられたフィリップの頭。

 その真意の程は知れないが、エリスの父親として頭を下げている。

 なら無下には出来ない。

 

 

「既に謝罪はいただいています。フィリップ様、頭をあげてください」

 

「そうか、すまないね。君にはもう、頭が上がらないよ。例の計画への参加は蹴ってくれても構わない。これ以上、ボレアス家のいざこざに巻き込むのは忍びないからね」

 

「そう言っていただけると助かります。私には荷の重い話でしたから」

 

「ああ、エリスの事は変わらず、君にあげるよ。あの子もまんざらでもないだろうしね」

 

「えぇ?」

 

 

 どこまで本気なんだよ、この人は。

 計画の参加の件も怪しいな。

 

 

「なんであれ、重ねて礼も言わせて欲しい。エリスを救ってくれて、ありがとう」

 

「はい、フィリップ様」

 

「あの子は私とヒルダに残された、たったひとりの我が子だ。もしあのまま連れ去られたとしたら……。笑えない話になっていただろうね」

 

 

 ヒルダの性格から考えると廃人か自殺の二択だろう。

 確かに笑えないな。

 つまり俺はエリスと同時にヒルダも助けたってことか。

 

 

「そうだね。今回の件については、口止め料、迷惑料、謝礼を含めて金貨100枚を受け取って欲しい」

 

「ひゃ、100枚!」

 

 

 おったまげた。

 そんな大金、湯水のごとく俺のような若造にポンポン出しても良いのか?

 それほどまでにボレアス家の財政事情は良好という事なんだろうけど。

 それにしたって、庶民なら何年暮らせるんだよって額だ。

 

 

「君も現金で渡されても困るだろうからね。君の口座に振り込んでおくよ」

 

「あ、はい」

 

 

 この流れは受け取らざるを得ないな?

 つか、この世界にも銀行とかってあるんだな。

 まあ地球でも大昔から銀行は存在していたし、中世ヨーロッパ的文明なこの世界にあっても、なんら不思議ではない。

 

 

 

 

 数日ほど療養の為に休暇を与えられた。

 身体に傷は残っちゃいないが、精神的な傷に対するケアだとかで、ゆっくり休むようにと、フィリップに押し切られたのだ。

 

 その間もきちんと給料は発生中。

 いわば有給休暇だ。

 しかし、まだ一度しか授業という名のエリスとのデートしかしていないのに、申し訳なく思う。

 

 他の諸先生方は歩合給だって聞いたし、俺はかなり優遇されているようだ。

 自分で言うのも何だが、魔術の腕前だけならフィットア領1だと自負している。

 

 他の領地や他国の事情までは知らんから、あえてフィットア領に限定しての感想である。

 

 そして休暇中はギレーヌとエリスの剣術の訓練を見学したり、書庫で各種専門書を読み込んだりと、有意義に過ごさせてもらった。

 

 ただ書庫には魔導書の類いは所蔵されておらず、フィリップに問い合わせたところ、わざわざ何冊も取り寄せてくれた。

 お金の事は気にするなと話し、何とも太っ腹なことだ。

 聖級治癒魔術の専門書も含まれており、目的の1つを達成する事が出来た。

 今後、暇を見て聖級治癒魔術を学ぶとしよう。

 

 大浴場でエリスとヒルダの母娘と入浴するなんていう美味しい出来事もあった。

 ヒルダの裸を見れば、将来のエリスの身体の未来図となる。

 

 現在のエリスは、まだ胸は未発達。

 しかし、幼さゆえの瑞々しさには見惚れたもんだ。

 まさか無修正の少女の裸を拝めようとはな。

 ロキシーとシルフィ以来だ。

 

 って、3人の美少女の柔肌を恥ずかしい部分も含めて知っている俺は、十分に変態と言える。

 

 やったね! アスラ貴族にも見劣りしないよ!

 

 そして職場へ復帰。

 まともな授業が開始された。

 生徒はエリスとギレーヌの2名。

 

 2人とも真面目に取り組み、1ヶ月もすれば、読み書きなどはマスターした。

 算術についてはギレーヌはともかく、エリスは知恵熱を出すほどに頭を悩ませている。

 

 何度も親身になって教えてやると、エリスも根気の強さを見せつけ、最低限のレベルだが覚えてくれた。

 買い物くらいなら問題無さそうだ。

 

 そして魔術の授業。

 これについては両者とも、他の教科と比較しても熱心に取り組み、初級の火及び水魔術を1つずつ習得した。

 エリスはたまに詠唱を間違えて不発なんて一幕もあった。

 

 ただ2人とも無詠唱魔術だけは習得不可らしく、諦める結果となった。

 物覚えの良さとか資質も関係するんだろうけど、やはり俺やシルフィのように、幼い頃から魔術を鍛えなければ身に付けることも覚束無(おぼつかな)いようだ。

 

 次に語るべきは剣術か。

 これまで2度も剣士に辛酸を舐めさせられた俺。

 ほぼ初めて木剣を持たされて素振りをさせられる。

 後は木剣を持った状態での走法なども、付きっきりで教えてもらった。

 

 エリスも俺が訓練に参加すると、より一層やる気を出しており、急激な成長を遂げる。

 俺を守れるくらい強くなるのだと毎日のように語っていた。

 

 うーん、エリスのように可愛くて格好良い女の子に、そう言われると女冥利に尽きるぜ。

 

 俺の剣術の習熟度について話そう。

 ギレーヌ曰く、俺に剣神流の才能は感じられないとのこと。

 戦闘に際して、足が竦む癖があると指摘された。

 仮に改善したとしても、才能的に中級程度が限度なのだとか。

 

 普通に生きる分には中級でも、十分に誇れる事だと慰めの言葉を頂いた。

 そして俺は、剣神流よりも北神流の方が向いているとアドバイスを受け取る。

 

 げぇ……。

 よりにもよって俺を苦しめた流派に適性があるとか、どんな罰ゲームだよ。

 あと俺は先天的に闘気を纏えない体質らしい。

 たまにいるらしい、俺のような人間が。

 

 だからパウロやギレーヌのように岩をスパスパ斬ったりは出来ないだろう。

 

 実戦形式でエリスと木剣で打ち合う日々。

 同世代の女の子と切磋琢磨する時間は、俺を幸福感で満たす。

 今のところ、エリスには負け越しているが、10戦もすれば1本くらいは取れるほどに上達した。

 

 ただそれはエリスも同じ。

 俺よりも早い成長速度で腕を上げ、手加減しているとはいえ、ギレーヌ相手にも良い勝負をしていた。

 

 ああいう姿を見ると、俺も負けていられないと俄然やる気が出てくる。

 

 そういうわけで、1日の内、午後は剣術に明け暮れる日々をひたすら続けていった。

 

 1日を終えると自室にこもって教材作りの時間だ。

 家庭教師としての本分を忘れず、こうして頭を使っているのだ。

 エリスとギレーヌの学習能力に合わせて、別々のテキスト問題集を作成。

 書き取りノートなども自前で用意し、彼女らの学習環境を整えていく。

 

 さて最近になって由々しき問題が浮上する。

 剣術の時間はともかく、座学や礼儀作法のレッスンなどを毎日のようにこなすエリス。

 

 その彼女が苛立つ事が増えた。

 休む間もなく詰め込みでの学習の日常。

 気が休まらないのは言わずとも分かることだ。

 

 よって俺はボレアス家の教師たちを招集した。

 緊急職員会議である。

 

 参加メンバーは俺、ギレーヌに加えて礼儀作法の講師であるエドナという女性だ。

 ちなみに世界の歴史については、フィリップが気まぐれにエリスへと教えているようだ。

 

 今回は呼び出していない。

 だってあの人、多忙だし。

 

 で、3人で話し合った結果、7日間に1日だけ休日を設けることになった。

 俺としても1日だけとはいえ自由時間が生まれる。

 聖級治癒魔術の習得がまだ途中なので大助かりである。

 

 そして設定した最初の休日。

 俺はエリスと共に街へ散策に出ることになった。

 もちろん、今度はギレーヌが同伴する。

 フィリップが話していたように、今後はギレーヌ抜きでの外出は一切許可しないってことだ。

 

 

「ではルーディア様、くれぐれもエリス様から目を離さぬようお願いいたします」

 

「はい、アルフォンスさん」

 

 

 トーマスに代わる新しい執事のアルフォンスから、金銭の入った袋を手渡される。

 今度の執事は、先代の頃から仕えている執事の1人らしく、繰り上がりでボレアス家の筆頭執事になった人物だ。

 

 サウロスの酒にも時々お供するそうで、素性については完璧にシロだそうな。

 

 

「はやくー! ルーディア!」

 

「はいはい、いま行きますよー」

 

 

 エリスに急かされて、足早に出発することになった。

 久しぶりに訪れる商業区。

 相変わらず人混みは凄く、はぐれないようにエリスと固く手を握りながら歩く。

 

 もしもはぐれた場合、背の高いギレーヌを目印に集合と、事前に取り決めをしている。

 尤も、今回はギレーヌが居るのではぐれたりはしない。

 

 さて、ある店で俺の視線を釘付けにする代物を見つける。

 夜の営みの味方、媚薬が金貨10枚で売られていたのだ。

 

 

「銀行から下ろしてくれば、自腹で買えるよな……」

 

 

 フィリップから頂いた金貨100枚を口座から引き出せば、買えない事は無い。

 これを使えばエリスだって、トロトロのヌレヌレである。

 

 てか、俺は何をエリスと寝る前提でいるのやら。

 女同士の絡み方は百合ゲーで知識としては持っている。

 しかしそれをエリスに強要するのはいただけない。

 妄想に留めておこう。

 

 

「ルーディア、何を見てるのよ!」

 

「わ、わあ!」

 

 

 俺の肩に顔を乗せて尋ねるエリス。

 目鼻立ちがハッキリしていて、クール美人さを余すことなく伝えてくる。

 惚れちゃいそうだよ。

 

 

「媚薬? それ、お祖父さまの部屋で見たことがあるわね」

 

「お、おう」

 

 

 孫娘に何を見られてるんですか、サウロス大叔父様!

 

 確かあの人は無類の獣族の女性好きだ。

 館内を探索中に情事の現場を誤って見てしまったことがあるのだ。

 お相手は、ボレアス家で雇われている獣族のメイドさん。

 

 

「それ、欲しいの? 買ってあげるわよ」

 

「いえ、遠慮します。使い道も有りませんので」

 

「ふーん? じゃあ、別の店に行きましょう!」

 

 

 あまり興味を示さず、エリスはとっととギレーヌの下へ駆け出していった。

 年齢的に下ネタにいちいち反応しないのだろう。

 

 次に本屋へ入店。

 様々な本があるが、ボレアス家の書庫に既に収められているものばかりが目立つ。

 ただ新作の文学書などは、俺の興味をそそる。

 

 価格にして平均金貨1枚。

 エリスに見られないように官能小説を購入する。

 参考までに内容を説明すると、貴族令嬢同士の禁断の愛を描いたラブストーリーだ。

 

 それなりに売れ筋らしく、山積みになっていた。

 いったいどの層の客が買っているのやら。

 って、俺か?

 

 そしてエリスも何かお気に召した本があったようで、俺に購入を促す。

 アルフォンスから預かっている財布から金貨8枚を取り出して会計を済ませた。

 

 て言うか、高くないかしら?

 タイトルに目を通すと伝記物みたいだ。

 

 甲龍王ペルギウス関連の書籍らしい。

 そういや、実家にも似たような本があって、パウロが読み聞かせてくれたっけ。

 

 やがて時刻は夕刻に差し掛かる。

 

 美しい焼け空に目を奪われていると、雲の切れ目から凄い物が見えた。

 

 

「え、お城?」

 

 

 天空に浮かぶ城が視界に入ったのだ。

 ボレアス家の居城よりも遥かに規模が大きく、荘厳な印象を見る物に焼き付ける。

 

 俺も鮮烈に網膜へ刻み付けられ、年甲斐もなく興奮した。

 

 

「ギレーヌ、あれって?」

 

 

 天空の城に人差し指を差して、ギレーヌへと質問する。

 

 

「甲龍王ペルギウスは知っているな? あれは奴の根城の空中要塞(ケイオスブレイカー)だ」

 

「マジすか、スッゴいすね!」

 

 

 その空中要塞(ケイオスブレイカー)は、アスラ王国の上空を不定期に巡回し、監視をしているのだとか。

 

 ああ、思い出した。

 実家に有った本のタイトルは『ペルギウスの伝説』ってやつだ。

 

 内容も覚えている。

 なんでも魔神ラプラスを封印した三英雄の一人だったか?

 

 しかも存命中で、今もなお、アスラ王家に多大な影響力を持つらしい。

 ここ数百年は干渉すらしてないようだが。

 

 そんなペルギウス談義にエリスも乱入してきて、帰り道も退屈はしなかった。

 いつかペルギウスと勝負をしたいなどとエリスは語り、ギレーヌは冷めた口調で空を飛べるのなら止めはしない、と話していた。

 

 そうだよな、あの空中要塞(ケイオスブレイカー)は読んで字のごとく、空に浮かんでいるのだ。

 風魔術を使っても届かないほどの高高度(こうこうど)

 

 エリスじゃ逆立ちしたって届きようがないのだ。

 

 それにペルギウスは、恐ろしく強い12人の配下を従えているので、挑めば命の保証は無い。

 

 まあ、基本的に英雄ペルギウスは、おとぎ話上の人物と考えるのが吉だ。

 俺の人生で関わる事は、まず無いだろうよ。

 

 エリスも本気では無い……とも言い切れないのが恐ろしい。

 いずれは剣王にでもなって挑みに行きかねないぜ。

 その時は俺が止めてやらねば。

 

 機嫌良さそうに俺とギレーヌの手を、エリスは両手で繋いで歩く。

 俺とギレーヌの間にエリスが挟まる配置だ。

 

 

「エリス、まるで私とギレーヌの子みたいですね?」

 

「ふ、面白い事を言うな、ルーディアも」

 

 

 背は俺が一番小さいけどね。

 

 

「なによー! 2人して私を子ども扱いしてー!」

 

「エリスお嬢様。ルーディアはそれほどまでに、貴女に愛着を持っているのです」

 

「あ、あらそう? だったら、許すわ!」

 

 

 ギレーヌが代弁してくれた。

 あの誘拐事件を乗り越え、それから1ヶ月も一緒に暮らしてきたんだ。

 もう姉妹のような意識を勝手ながら抱いている。

 

 

「エリス、これからも一緒ですよ」

 

「当然でしょ、ルーディアは私の家庭教師なんだから!」

 

「家庭教師じゃなかったら、どうですか?」

 

「じゃなくても一緒に居なさい!」

 

 

 うーむ、これは愛の告白と解釈しても良いのでは?

 いつか『ルーディア、私の家族になりなさい』とか言われちゃったりしてね。

 その時は、謹んでお受けしよう。

 俺もエリスとは家族になっても構わないと考えているし。

 

 夕焼けを背に、俺たち3人は1日を謳歌した。

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