無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~ 作:三毛猫丸
浜辺では俺とエリスが対峙している。
見届け人はルイジェルド・スペルディア。
我らが頼れる兄貴で、時々、小粋なジョークをかますナイスガイ。
予見眼の能力を掌握したと高らかに報告し、エリスとの実戦形式の決闘と相成ったのだ。
やけに好戦的で、妹分に必ず勝とうという戦意を
眼には映らないが、闘気とやらも全開だろう。
そして俺の視界に映るのは、実体とは別の未来の彼女の姿。
未来といっても、ほんの一秒先の少女。
あまり代わり映えしないが、ステップの踏んだ先を読み取れる。
「ルーディアと手合わせだなんて久々ねっ! ギレーヌとの剣術の訓練以来かしらっ!」
「懐かしいものですね。私はほとんど勝てませんでしたし。でも今回はひと味もふた味も違いますから。舐めてかかると痛い目を見ますよ?」
「上等よ! 妹が姉に勝てるだなんて甘い考え、私がへし折ってあげるんだからね!」
言うようになったな、この子ってば。
よし、俺も彼女が増長しない様に一肌脱ごう。
仔犬が狂犬を打ち負かすのだ。
窮鼠猫を噛むってな!
そして互いに木剣を掴み見合って──。
ルイジェルドのGOの合図で開戦。
【エリスが右から木剣を振り抜くと見せかけて、左拳で不意打ち狙い】
未来が読めた。
エリスの左拳を身を竦めて避ける。
従来の俺ならば、今の先制攻撃で1発ダウン。
されど避けられた。
確かな手応えに、俄然、やる気が湧き上がる。
回避されたと見て、エリスは連撃を試みた。
だが、次なる未来も、この右目にはお見通しだ。
【怒涛の勢いで右の木剣、左の拳、右の蹴り、左足で浜辺の砂を巻き上げて目潰し】
小賢しい手を使うものだ。
最後の一手に関しては、北神流染みている。
ウェンポートに到着するまでにまみえた、ルイジェルドに挑戦してきた北神流剣士を参考にしたようだ。
だが怯むつもりは無い。
動作する左太ももに木剣を打ち付けてやると引っ込んだ。
涙眼で後退するエリスは、しかし──戦意を増した。
負けん気だけは強いものだ。
そういった精神が土壇場で粘り強さを発揮するだろう。
【素早い突進で距離を詰め、勢いのままに押し倒してくる】
猪突猛進ってな具合で俺に目掛けて迫る赤い猛獣。
動きは単純。
その場で跳躍し、跳び箱の要領で彼女の背中を飛び越えた。
【エリスは振り向き様に裏拳を打ち込んでくる】
その手を掴む。
そのまま足を掛けて仰向けに転倒させてやった。
快晴による青空を視界いっぱいに入れた彼女は呆然とするも、歯を食いしばって、まだ攻める気でいる。
【立ち上がり様に、俺の腰に抱き着いて馬乗りになる】
見え透いてるぜ、エリス!
バックステップで距離を取り、不発に終わる。
攻撃後の隙を突いて、背中に乗ってやる。
暴れて抵抗するので、お尻を撫でてやると戦意消失。
「私の勝ちですね」
「はぁ……負けたわ。やるわね、ルーディア」
背中から離れて、手を差し伸べる。
俺の手を掴み、立ち上がろうとするエリス。
【手を取ると思わせて、俺のおっぱいを鷲掴みにしようと手を伸ばす。しかし、俺は呆気に取られて避けられない】
ん?
あれ、未来は見えてるのに、避けられる可能性が存在しないよ?
フニョンッ!
エリスの手が未来のビジョンの通り、俺の乳房を掴み、手のひらで揉みしだく。
あ、この子……上手い!
胸部よりジワジワと押し寄せる快感に足は脱力し、砂浜に尻餅をついてしまう。
「詰めが甘かったわね! 私の逆転勝利よ!」
勝利宣言しながらも、淫靡な行為を止めようとしないお姉ちゃん。
腰砕けとなった俺は、されるがままで唇の端から涎が垂れる。
「ま、負けました! だからもう止めてっ!」
敗北を認めると、ようやく彼女は手を離し、快楽地獄から解放された。
卑怯とは言うまい。
北神流剣士の方が、よほど汚い真似をするのだから。
彼女の作戦勝ちだ。
気持ち良かったから、俺も恨みは無い。
性感にはめっぽう弱い俺である。
「ご馳走さま、ルーディア! ナイスおっぱいね!」
「いやぁ、お粗末様でした……」
ま、負けちゃったよ。
予見眼の強みを、最後の最後で手放してしまうとは、痛恨の極み。
「うん、この感触は忘れないわ! 初めてルーディアの胸を、まともに揉んだかも!」
謎の感動に身体を震わせるエリスの表情は、アスラ貴族特有の変態的笑顔だった。
恍惚として口の端は上がり、赤毛の少女の闇を視る。
かの清廉潔白なド変態王族のアリエル王女も、こういう
「ほう、エリス。お前も腕を上げたな。この1週間の成果を、よく形にしたものだ」
「でしょ! あんたのお陰よ! ルーディアの胸も揉めたし、言うこと無しね!」
俺の胸を景品扱いされてるようで悲しい。
この身体はそう安くはないぞ。
エリス相手だから多少は値引きしてやったが。
「ルイジェルドさん的にはレディーのボディにタッチするのはアリですか?」
「勝てれば問題なかろう。それにルーディアとエリスの仲だろう?」
以前、彼には俺とエリスは将来を誓い合った間柄だと説明している。
自ら外堀を埋めてしまったわけだ。
「まぁ、勝てずとも、この眼がどこまで通用するのかは把握出来ました。収穫はありましたよ」
「お前は既に魔術師として完成している。その上、近接戦でここまで立ち回れるのなら、成長はあったと言える」
「その言葉で、よく実感しましたよ」
負けこそしたが、強くはなれた。
予見眼と魔術を組み合わせれば、格上にも渡り合えるだろう。
ただし防戦に徹する事を前提に。
こうして俺は予見眼を自身の武器として正式に加えた。
ちなみにルイジェルド相手にも模擬戦闘で試してみたが、技量に差があり過ぎて未来の分岐が10近くにも分かれていた。
どんな行動を取っても負ける未来は覆らず、エリス以上の壁を思い知らせる結果に終わった。
──
ラトレイア家の捜索願いの件について、確証を得た。
つい先日になって、冒険者ギルドにも捜索依頼が貼り出されていたのだ。
依頼主はラトレイア伯爵家夫人クレアの名義となっていた。
俺のお祖母ちゃんはクレアという名前なのか。
血の繋がった肉親なのに初めて知ったよ。
ゼニスとノルンの捜索依頼が貼り出されていない状況を鑑みるに、既に保護されているのか?
うーん、そうとしか考えられんな。
ひとまずグレイラット家の内の2人の安否を知り、ホッと胸を撫で下ろす。
プルンッ、胸が揺れる。
しかし、ラトレイア家はどうやら魔族に対して強い偏見を持っているらしい。
確か魔族排斥派なんていう派閥に属しているのだとか。
冒険者ギルドを介して、ラトレイア家に連絡を繋いでも、ルイジェルドだけは置き去りなんて事もあり得る。
よって、ガルスを頼るしかない。
さて、次の行動だ。
密輸人ガルスとの交渉である。
番犬のルイジェルドを先頭に立たせ、真ん中に仔犬のルーディア、背後に狂犬のエリスという並び。
俺は2人に守られるようにして、密輸組織の根城へと向かう。
倉庫には1人の男の姿しかなかった。
根城とか話してた割には物寂しい雰囲気だ。
「よお、来たな」
「ルイジェルドさんの件もありますし、業腹ながら貴方を頼らせて頂きます」
「あぁ、仔犬のルーディアは兄貴分と共にミリス大陸へ渡れる。俺はラトレイア家から大金を得られる。Win―Winの関係ってワケだ」
裏を掻かれるって事は無さそうだ。
胡散臭い男だが、金が絡めばキチッと仕事をするタイプの人間だと判断する。
ルイジェルドも同意見のようだ。
「ところで何故、お一人なんです?」
「そりゃあ、嬢ちゃんの案件を独り占めする為さ。他の奴らはバカだぜ? 組織の生業である奴隷取引きにかまけて、嬢ちゃんのような大金の絡む話には鈍いんだからな」
仲間を小馬鹿にした言い様。
たぶんガルスは、意図的に俺の身柄の発見を伏せて、ラトレイア家の捜索依頼を引き受けた旨を秘匿しているのだろう。
「ミリス大陸にゃあ、大森林っつう深い森がある。俺は森の抜け方にも心得があってな。ミリス神聖国首都ミリシオンまで、最短ルートで送ってやれる」
「それは素晴らしい。どうやら貴方を頼って正解だったみたいですね」
「だが、雨季が近くてな。そうなると森の中は3ヶ月もの間ずっと大洪水だ。ミリス大陸ザントポートに到着後、段取り良くいけば、その足で大森林を抜けちまって雨季を回避出来る。ルート次第だがな」
雨季のタイミングによっては、旅程に響くと。
「あぁ、ついでと言っちゃ何だが、一つ仕事を頼まれてくれねぇか?」
「仕事? 聞くだけ聞きましょうか」
「感謝するぜ、仔犬ちゃんよ」
その二つ名は、止めて欲しい。
可愛いけど、強さとか威厳を感じられない。
本題に入る。
なんでも、次の出航で運ぶ密輸品の中には、政治的に不味い代物が含まれるのだとか。
密輸品ってのは奴隷だ。
金に目の眩んだ身内の愚かな行いで、公僕に目をつけられ組織が壊滅させられる事態を防ぎたいらしい。
そうなれば、おまんまの食い上げだ。
ただ組織の人間であるガルスが、表立って奴隷を解放するのも角が立つ。
よってデッドエンドの強さを見込んで、代わりに奴隷を解放し、家まで送り届けて欲しいのだとか。
事情は理解した。
奴隷商を生業にしている事実にモヤッとするが、彼にはルイジェルドの密航を頼む立場にある。
今回ばかりはルイジェルドにも正義心を抑えてもらおう。
「出航日は2週間後だ。それまで、くれぐれも組織の人間に見つからねえように頼むぜ。大金をバカな奴らと山分けなんて勘弁だからな。その分、仕事の方はキッチリやらせてもらうからよ」
俺の顔を隠す為か、どこぞの民族が被ってそうな仮面を渡された。
聞けば
効果は面識の無い相手に対する人物の認識阻害。
姿が見えなくなる訳ではないが、他人からは俺がルーディア・グレイラットであると認識が出来なくなるそうだ。
エリスやルイジェルドには効果は発揮しない。
先日出会い、今も交渉するガルスにも同様。
「そうやって仮面を被ってると、マジもんの
「11歳ですよ。あとそれはセクハラです」
胸の発育はよろしいが、身長に関しては年相応だ。
現状の俺はロリ巨乳体型なんだよね。
「もう4、5年もしたら食べ頃に育つな」
「死ねっ……」
下品な男だ。
嫌悪感を露にして抗議する。
「おっと、すまねぇ。俺の癖みたいなもんでね。ラトレイア家に籍を連ねる令嬢に手を出すなんて、恐ろしくて出来ねえや」
「あんたねぇ! ちゃんと謝りなさいよ! 気分悪いわ!」
エリスも異議申し立てる。
そうだよ、誠心誠意を持って謝罪しないとだよ。
「ボレアス家の嬢ちゃんにも捜索願いが出てるぜ? 尤も、アスラ王国まで送り届ける暇も義理もねぇがな」
「ふん! 自分で国に帰るわよ! ルイジェルドだって居るんだし!」
怒り心頭のエリスも、ボレアス家の話を持ち出されて更に気を害したのか、それっきり黙り込む。
「あまりこの子たちを悪く言うな。俺とて、貴様に手が出ないわけではないぞ?」
「そいつは悪かったよ。スペルド族の旦那に暴れられちゃあ、北聖の俺でもひとたまりもない。まだ死にたくはないんでね」
「なら行儀良くする事だ」
「なるほどねぇ、スペルド族の悪名ってのはガセらしい。子煩悩にも程があるぜ、旦那」
思わぬ場面でルイジェルドという男の魅力が伝わった。
ガルスのような小悪党に知れた所で、なんら恩恵は受けられんけど。
交渉は完了した。
予告された2週間後まで、極力、宿で大人しくすることに決めた。
仮面を着けてるとはいえ、不測の事態に備えておく。
気晴らしに散歩くらいはさせてもらうとしよう。
──
宿で引きこもり生活を送る間、とある研究を進める。
王級治癒魔術についてだ。
これまでの旅では、まとまった自由な時間を確保出来ずにいた。
ゆえに今こそが好機。
バーディガーディより聞いた不死魔族特有の魔力の性質と、ボレアス家に居た頃に完成しかけていた魔力の配列パターンを組み合わせてみる。
最初の1週間で詠唱文の大きな枠組みが出来上がった。
聖級と王級の中間に位置する治癒魔術、その雛型が完成。
魔力の制御の工程を、頭と身体に叩き込み、短縮化を進める。
残りの1週間で、無詠唱化に成功。
ただし自己流ゆえに、王級には一歩及ばない。
四肢の欠損については限定的ながら対応可能となった。
具体的には、消失した四肢の再生自体は可能。
けれど現状の俺では、身体から枯渇する程の魔力と、三日三晩に渡る治癒魔術の発動が必須条件。
無論、その間は多大な集中力が必要不可欠で、他の魔術なんて、まずは使用出来ない。
あとは自身の肉体にしか作用しないという、最大のデメリットが生じた。
他者の欠損を癒せないという事だ。
ピーキーな性能だ。
魔神ラプラス相当の魔力総量を保有していても、魔力枯渇というリスクが付随しているのだ。
その上、発動から完了までに3日間という期間。
そもそも魔力枯渇からの完全回復には、更に時間を要する。
これからも続く長旅では、大きな足止めとなってしまう。
中途半端な体調で旅を再開すれば、何かしらのアクシデントに足下を掬われる。
なんともお粗末な仕上がりだが、今はこれで妥協しておく。
本格的な研究の続行は、アスラ王国へ到着してからになりそうだ。
とはいえ、通常なら大規模な魔方陣を用いての発動か、100節以上の詠唱及び複数人の治癒術師をかき集めてようやく発動する王級治癒魔術。
それをたった1人で無詠唱発動可能な時点で、十分に破格と言えるだろう。
ひとまず、暫定的に『自己流王級治癒魔術ノーブルヒーリング』と名付けておく。
──
期日を迎え、深夜の内に密輸組織にルイジェルドの身柄を引き渡した。
元々、俺1人でルイジェルドを預けに行く予定だったが、心配性のエリスが半ば強引に付き添ってきた。
姉を自称する彼女は、妹離れには、まだまだ時間が掛かりそうだ。
翌朝、バーディガーディより贈られた運搬トカゲを売却。
品種としては最高等級だったらしく、ルイジェルドの渡航費には遠く及ばないまでも、それなりの額にはなった。
買取り業者曰く、このまま市場に流すのはバーディガーディの面目が立たないとかで、リカリスの町へと引き渡すそうだ。
俺が一筆して礼と謝罪の手紙を添えさせてもらった。
魔王様から賜った品を一年ほどで売却するのも、不義理だと感じたしな。
そして人族である俺とエリスは、当初の予定通り、正規の手段で渡航便に乗船。
あとはミリス大陸ザントポートに到着後にルイジェルドを密輸組織から引き取り、奴隷を解放するだけだ。
──
1ヶ月ほど前に完成したばかりの帆船。
処女航海という触れ込みだ。
船内も新品同然で清潔感にあふれている。
だが、俺の膝を枕にして仰向けになるエリスは、苦し気に喘いでいた。
船酔いだ。
彼女は人生で初めて乗る船に、全くと言っていい程に、耐性が無かった。
船に揺られること5分程度で体調不良を訴え、桶の中に胃袋の中身を吐き出してしまう。
仕方無しに、久方振りの
別に身体を密着させる必要は無いが、心細そうにするエリスを放って置けず、膝枕をするに至ったのだ。
これも妹の役目なんですよ。
苦しさゆえに衣服のボタンを開け、胸元を曝け出すエリスは、実に扇情的だ。
浮いた汗に視線を縫い止められ、ペロッと舐め取ってしまった。
うん、しょっぱい。
エリスは怒らない。
船酔いでダウンして、俺の変態行為にすら気に留める余裕を失っている。
憐れな……。
先日、おっぱいを揉まれてしまった仕返しとばかりに、彼女の胸をつついてやった。
うん、無反応だ。
しかし弱みに付け込むというのも卑劣な行い。
誠実をモットーとする俺は猛省し、エリスの頭を撫でる行為へと切り替える。
「うぅ……。ルーディア……。私、死んじゃうのかなぁ……」
「らしくないですよ。いつもの貴女なら、死ぬなんて言葉は使わないはず」
「本当に死んじゃいそうだから……仕方がないじゃない……」
ありゃりゃ。
これは心が折れかけている。
「ヒーリングをかけてよ……」
「既にかけてます。船酔いの症状を和らげる事は出来ても、船に乗っている限りはすぐに再発しちゃいます。いたちごっこですよ」
「ねぇ……助けてよぉ……。なんでもするから……」
「軽い気持ちでなんでもとか言っちゃダメです。世の殿方には、今のエリスのように弱ったところを狙って、肉体関係を迫る不逞の輩だっているんですからね」
「お母様みたいな事を言うのね……」
「ママと呼んでも構いませんよ?」
「イヤよ、ルーディアは私の妹なんだから。それに私のママはお母様だけよ」
そこは譲らないのか。
弱っていても頑固さは健在だな。
しかし、こんなにも弱々しいエリスを見るのは久しぶりだ。
リカリスの町へ到着したばかりの頃も、ホームシックを発症して大変だった事を思い出す。
俺も慰めるに当たって、足りない頭をフル回転させたものだ。
「到着までしばらく掛かります。気休め程度ですが、ヒーリングはずっと掛けておきますので、堪えてくださいよ」
「うん、わかったわ……。陸に到着したら……。たくさん甘えさせてよね……」
「了解です」
幼い子どもに帰ったエリスの頭を撫で続ける。
──
5日間にも及ぶ船旅を終えて、ミリス大陸の港町ザントポートへと到着。
陸に上がってもすぐには復調せず、グロッキーなエリス。
動ける様子の無いエリスを背負って宿を探す。
大森林ではもうじき、3ヶ月にも及ぶ雨季が続くとかで、上等な宿は既に宿泊客で埋まっていた。
選り好みは出来ん。
よって貧困街にある安宿を取る事にした。
どのみちガルスの案内ですぐにザントポートを発つのだ。
程度が低くとも問題あるまい。
荷物番をエリスに任せて、ルイジェルドを引き取りに行こう。
念の為、ガルスより受け取った
これでトラブルに遭遇しても逃げちまえば足がつくことも無い。
一番は穏便にいく事だが、これから奴隷を解放せにゃならん。
いわばトラブルを自分から起こしに向かうのだ。
ルイジェルドと合流さえしてしまえば、対処も楽勝だろうけどな。
そしてザントポートの郊外──とは言っても海沿いの小高い丘に建てられた古びた小屋に到着。
扉をノックして、ガルスより伝えられた合言葉を唱える。
すると人相の悪い男が応対。
ルイジェルドを引き取りに来た旨を伝えると、地下への隠し階段へと通される。
内部は洞窟になっていて、小一時間ほど歩いた先には森が広がっていた。
築年数何年だよって感じの大きな屋敷が視界に飛び込んできた。
どうやらここにルイジェルドと、ガルスの話していた奴隷が捕らえられているようだ。
男に先導され屋敷に入ると、幾つもの牢獄が並んでいた。
中には──子どもが居た。
獣族と耳長族の子どもだ。
大森林に暮らす種族達である。
泣きわめく1人の少女に腹を立てた密輸組織の男の1人が、手酷い暴力を振るっていた。
くそ……。
見ていて胸くそ悪い。
おそらくあの子ども達が、ガルスの話に出てきた奴隷だ。
後で必ず助けてやる──。
そう心に決めて拳を握りつつ、怒りの感情をひた隠しにする。
ルイジェルドと合流するまでの辛抱だ。
道中には、メチャクチャでかい犬も捕らえられていた。
ついでだし、後ほどあの犬も助けてやろう。
そして到着。
ルイジェルドの収監される檻の扉が開く。
密輸人に早く引き取って帰れと急かされた。
てめぇ……。
後で覚えてろよ……?
さて、ルイジェルドだが……。
殺気立っていた。
ズタ袋を頭に被せられていたが、隠し切れない殺意が屋敷中を駆け巡る。
この旅で経験したことの無い憤怒。
仲間である俺ですら膝が震える。
あぁ、分かるさ。
ルイジェルドは義憤に駆られているのだ。
額の生体センサーで捕まった子どもの存在を察知し、今すぐにでも救出に走りたいのだろう。
「ルーディアよ。早く拘束を解け……」
「分かっています……奴らを
「無論だ。子どもを殺すような外道は……皆殺しだ。既に1人、奴らの手に掛かり、命を落とした」
そうか……俺はまたしても間に合わなかったのか。
「では拘束を解きます……」
「お前は気に病むな。全て俺の手で片付ける。お前は子ども達の解放を頼む」
「はい……」
ズタ袋を取り、後ろ手に縛っていた縄を解く。
ルイジェルドに三叉槍を手渡し、彼の背中を見送る。
これから彼は、密輸組織を言葉通りに皆殺しにするのだろう。
俺は殺人に加担してしまった……。
だが止まれない。
殺人を忌避していても、今の俺とルイジェルドは同じ想いを共有しているのだ。
「
子ども達を救うべく、行動を開始する。