無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~   作:三毛猫丸

35 / 59
34話 ドルディアの村での生活

 その日は気絶するようにして眠った。

 俺はまた人を殺したのだ。

 魔物なんかじゃない人間(ガルス)を殺めてしまった。

 俺が手を下さなくとも、彼の命はそう長くはなかった筈だ。

 ウィンドルに胸を貫かれ、数分と経たずに死んでいたことだろう。

 

 しかしその僅かな命の死期を早めたのは、他でもない俺自身。

 それに自分でも解らない気持ちがある。

 

 ルイジェルドごと敵を攻撃出来なかったのに、何故ガルスを巻き添えにして攻撃したのか。

 無自覚に命の優先順位をつけていたのか。

 本心では彼は仲間じゃないから、死んでも構わないと思っていたのか。

 

 そんな自分の汚れた心が、どうしようもなく嫌いになってくる。

 

 彼の死に際の姿が鮮烈に頭に焼き付いている。

 生涯忘れる事の無い、人の死に様だ。

 

 

──

 

 

 翌日、ガルスの遺体を埋葬した。

 荼毘に臥した後に、遺骨を埋めたのだ。

 遺体の損傷は激しく、頭部などが消失していた。

 僅かに残っていた片足部分のみが、彼の存在した証だ。

 ギュスターヴとギュエスは、彼をドルディア族の、ひいては大森林の英雄として語り継ぐ意思だと語る。

 

 彼の遺骨が眠る地には墓石が建てられた。

 俺が土魔術で簡素ながら設置してやったのだ。

 雨季の大洪水に備えて、浸透しないように、念入りに魔力でコーティングを施す。

 ワンシーズン程度なら持つだろう。

 

 ガルスは確かに悪人だ。

 でも最後に目にしたヤツの姿が、俺にとってのガルス・クリーナーという男の全て。

 だからその死を悼んでやろう。

 

 残党についてはほぼ死んでいたが、僅かな生き残りはドルディア村の牢屋に押し込め、雨季が終わり次第、ザントポートの役人へ引き渡すことになった。

 

 

 結末としてはこんな感じだ。

 

──

 

 

 ルイジェルドは己の弱さが招いた事だと、頭を下げてきた。

 ギュスターヴやギュエスも、幼い俺に、仲間殺しを強いたことに心を痛めていた様子だった。

 

 エリスは、ツラい時にそばに居てあげられなくてゴメンと言っていた。

 また彼女を悲しませてしまった。

 ボレアス家での誘拐事件でも、エリスには嫌な思いをさせたっけな……。

 

 だがエリスを責められる理由も動機も無い。

 彼女だって戦えない者を決死の覚悟で守ったんだ。

 事後報告になるが、彼女の下にも密輸組織の手勢が押し寄せたそうだ。

 

 死の恐怖を戦意で誤魔化し、計8人の悪党の命を苦しみながらも刈り取ったという。

 なまじ剣術の才能に恵まれたエリス。

 容易に奪えた命の軽さに困惑しているように見えた。

 

 苦悶の表情の痛ましさに、お互いに抱き締め合って慰めたものだ。

 というか、今も俺とエリスは身体をくっつけて、温もりの交換をしている。

 

 

「私、あんな大きな口を叩いておいて……。ずっと手が震えてるの。人を殺すのは初めてだったから」

 

「私はザントポートで経験しました……。自分で決めた道なのに、その険しさに立ち止まってしまいそうです」

 

「ゴメンね、ルーディア。私はお姉ちゃんなのに、道にも気持ちにも迷ってばかりで」

 

「それでもエリスは()のそばに居てくれるんだろ……?」

 

「うん……」

 

 

 人殺しはこの世界では当たり前のことだ。

 辛いかもしれないが、いつまでも引き摺っていては、明日の我が身すら存続が危うい。

 

 ルイジェルドだって、多くの命を奪いながらも、今も必死に生きているじゃないか。

 彼の戦士の誇りの真似事を、拙いながらもしてやろうと思う。

 正義の味方ってわけじゃないが、せめて大切な者を絶対に守る心意でいよう。

 

 

──

 

 

「ではギレーヌは、ルーディア殿の指導のお陰で全うな人間へと成長したということですかな?」

 

 

 ギレーヌの実兄であるというギュエスに、最後に会った際の彼女の近況を語ってみた。

 すると目を見開き、耳をピクピクと微振動させて驚いたような反応を示す。

 

 

「ルーディア殿を疑うつもりは無いが、まさかあの愚妹が……」

 

「ギレーヌはスゴいのよ! 信じないのなら、もうギレーヌの事は何も教えてあげないんだから!」

 

 

 この村で人間語の通じる貴重な相手とあってか、エリスはギュエスに対しては、多少なりとも気を許している。

 ギレーヌに似た顔立ちというのも、心を開いた要因として大きいか。

 妻帯者である彼が、そんなエリスにつけこむロリコンでないことを祈ろう。 

 

 さて、エリスはギレーヌを誰よりも尊敬している。

 師であり、姉であり、友とも呼べる存在。

 会話を重ねる内にギュエスから出てきた発言に引っ掛かりを覚えたらしい。

 小馬鹿にするとかおちゃらけた雰囲気ではないが、彼の侮蔑的な態度に苛立っているようだ。

 

 

「いや、すまない。お二人がそう言うのなら事実なのだろう。誰しも、人生において過ちを犯すのは当然だ。私も恩人であるお三方に矛を向けてしまった前科がある」

 

 

 ザントポートの件をまだ気にしているらしい。

 しかし、間違いを認める姿勢は見習いたい。

 俺は馬鹿だから、学んだつもりでも何度でも間違えがちだ。

 だから失敗も多い。

 

 

「ではギレーヌの事を教えて頂いてもよろしいか? 私はあやつの事を、兄としてしっかりと見てやれなかった。今になって悔いているのです」

 

「ふふん! 聞きたいのなら最初から素直になってれば良いのよ!」

 

 

 得意気にギュエスに対して優位に立ったつもりでいるエリス。

 言うなれば自慢の姉の話を人に語る妹。

 長女ギレーヌ、次女エリス、三女ルーディアという構図が生まれるな、これは。

 

 

「是非、エリス嬢の口からお聞かせ願いたい。今ならば私は妹とも対話したいと考えている。その為には、まずギレーヌの事を知りたいのです」

 

「いいわよ! 一日じゃ語り尽くせないかもね!」

 

 

 その発言は正しく、日を跨いで、ギレーヌの英雄譚が語られた。

 横で聞いていたが、エリス視点のギレーヌの話というのも新鮮さがあって暇はしなかったよ。

 

 

──

 

 

「ルーディア! エリス! もっと色々な事を教えてニャ!」

 

 

 雨季が始まり、地上は大洪水。

 木々の上の町で暮らし始めて早くも1週間が経過していた。

 

 村の空き家を借りて過ごす内に、ザントポートで助けてあげた、トーナとテルセナとは非常に親しくなった。

 そこにエリスを交えて、女の子4人の仲良しグループの出来上がりだ。

 

 それぞれ獣神語、そして人間語が話せないから、俺が間に入って通訳をしている。

 次第に彼女らも片言ながら、お互いの言葉を理解するようになり、日常会話程度なら、会話ペースは遅くとも可能となっていた。

 

 トーナは好奇心旺盛で村の外の話にも興味津々。

 いつか姉リニアーナのように外へ留学したいと興奮しながらも話していた。

 

 犬耳のテルセナは、のんびりした性格だが、意外と食い意地が張っている。

 とりわけ外界の食べ物の話になると、身を乗り出して食いついてきた。

 この場には、テルセナの望む食い物は無いんだけどなぁ。

 

 さて、ここで特筆したいことが一点。

 トーナもテルセナも、やたら俺やエリスに対して距離感が近い。

 何気ない瞬間に身体を密着させてくるのだ。

 本物の犬猫みたいである。

 

 種族の特性なのか、テルセナは俺たちとそう年も変わらないというのに、おっぱいが大きい。

 トーナは微乳程度だが、テルセナはとにかく膨らみがスゴい。

 

 今の俺よりも確実に巨乳だな。

 ロリ巨乳の称号はテルセナに譲ろう。

 彼女にこそ相応しい。

 

 水浴びも専ら4人一緒。

 真っ裸の年頃の少女たちが、素肌を隠すこともなく恥部を晒している。

 イヤらしい言い方だが、俺にとっては眼福だ。

 

 エリスなどはチラチラと俺の胸に視線を向けては逸らす。

 仕返しにこちらからは、エリスの胸をガン見してやった。

 堂々としていた方が、変態っぽさは薄れるというものだ。

 

 そんな下らない争いの最中、俺とエリスの両方から発情の匂いが漂っていたらしく、テルセナに冷めた眼で見られた。

 

 対称的にトーナはそういった方面には疎いらしく、無邪気に俺とエリスのおっぱいに顔を埋めて、じゃれついてきた。

 

 その光景に心惹かれたのか、顔をしかめたテルセナも、我慢しきれなかったようで、パフパフ大会に飛び入り参加。

 

 爛れた日々を過ごしたもんだ。

 エリス、テルセナのそれぞれの胸の感触を、俺は忘れない。

 トーナのちっぱいも俺好みだ。

 成長したらギレーヌくらいの豊胸にはなりそうだが。

 

 

──

 

 木の上に築かれた町を散策する。

 アテもなく歩くというのも悪くない。

 しかし、俺の後ろにはエリスかトーナが必ず引っ付いてくる。

 テルセナは、トーナの後ろにトコトコと付いてくるような感じだ。

 ただ、テルセナは俺の胸の弾力にゾッコンのようで、昼寝などをする際には、必ずと言って良いほど添い寝してくる。

 それも俺のおっぱいを枕にして。

 

 見た目は純粋無垢でおっとりしてそうな顔をしているのに欲望に忠実な子だ。

 きっとテルセナはムッツリスケベだ。

 

 4人で歩いていると、ギースと道ですれ違う。

 彼も村を救った功労者という事で、それなりに歓待されている。

 村の男衆とは酒やギャンブルと、付き合いが盛んのようだ。

 

 

「よお、ルーディアにお嬢。それにドルディアのお姫様たち」

 

 

 そういえば、トーナはデドルディア族長の孫娘で、テルセナはアドルディア族長の孫娘。

 本家本元であることから、つまりはお姫様だ。

 俺とエリスも人間性はともかくとして、貴族の血を引いてるからお嬢様。

 いわば、高貴なる子女のコミュニティである。

 

 

「ギースさんはここでの生活を満喫していますか?」

 

「おう、楽しんでるぜ。ドルディア族ってのはギャンブル好きな癖に、ちょっとしたイカサマにすぐ引っ掛かるから、チョロいもんよ!」

 

「うわっ! 悪い人ですね? 通報した方が良いですか?」

 

「軽い冗談じゃねえか! ちゃんと節度を持ってギャンブルに勤しんでるぜ?」

 

 

 賭博に節度ってあるのか?

 

 

「そんなことよりルーディア。折り入って頼みがあるんだが」

 

「イカサマの片棒を担ぐつもりはありませんよ」

 

「そうじゃねえって。雨季が過ぎたらミリシオンまで同行させてくれねえか? 聖剣街道を通れば魔物こそ出ないが、一人の時に山賊とかに襲われちゃあ、たまらねえ」

 

 

 聖剣街道とは大森林を真っ直ぐに走る整備された街道だ。

 首都ミリシオンまでひたすら続いているので、道に迷うことは、余程の方向音痴でない限りはあり得ない。

 

 本来なら、ガルスの案内で別ルートを使い、最短時間で大森林を抜ける予定だったが……。

 彼はもうこの世には居ない。

 まぁ、その別ルートというのも雨季の洪水を回避する迂回路としての最短ルートだ。

 出発日こそ大幅に遅れるが、通常時であれば、大人しく正規ルートを選んだ方が移動自体は楽なものである。

 

 

「構いませんけど、出発日に寝過ごしたら置いていきますからね」

 

「ひっでぇな、これでも俺はルーディアの命の恩人だぜ?」

 

「恩人でも5分前行動を心掛けて下さいね。社会人の常識ですよ」

 

「いや、どこの常識だよ」

 

 

 現代日本の常識です。

 社会人という言葉よりかは、労働者という単語の方が、この世界では馴染みがあるか。

 

 

「とにかく頼むぜ。置いてきぼりはまっぴら御免だ」

 

「わかってますよ。両親の旧友で、それも私にとっての恩人にそんな仕打ちはしませんから」

 

 

 その場でギースとは別れ、仲良しグループで村の散策を続ける。

 今の会話は人間語で行われていたが、トーナの様子が何やらおかしい。

 断片的にだが、俺とエリスがいずれこの村を発つ事に感づいているっぽい。

 

 

「にゃあ、2人とも村を出ていくつもりなのかニャ?」

 

「まだ出ていきませんよ。雨季の間は、滞在しますよ。それに、この村は居心地が良いですからね」

 

「よかったニャ! 明日からもずっと一緒ニャ!」

 

 

 無邪気に勢いのまま抱き着いてくるトーナ。

 その行動を羨んだエリスが、そばで無防備でいたテルセナを自らの胸の中に手繰り寄せる。

 

 俺とトーナ、エリスとテルセナというカップリングの完成だ。

 お互いの目がある中で、白昼堂々と浮気というのは、やけに興奮する。

 

 

「ち、違うからね! 私の一番はルーディアだからね!」

 

 

 弁明を開始するエリスが微笑ましい。

 解ってるぜ?

 俺にとってのナンバーワンは、いつだってエリスさ。

 トーナとは遊びでしかない。

 エリスだってテルセナを戯れに抱いているに過ぎないのだろう。

 

 

「すんすん……。ルーディアもエリスも、またエッチな事を考えてるの?」

 

 

 鋭い嗅覚で嗅ぎ付けたテルセナの指摘に肝を冷やす。

 監視されているようで窮屈な思いだ。

 だがテルセナさん?

 貴女、かまととぶってますけどエリスの抱擁に満更でもない顔をしてらっしゃいますね。

 人の粗ばかり言うテルセナは、エリスにお仕置きとばかりに、ことさらに胸に顔を押し付けられた。

 

 エリスのおっぱい、そろそろDカップに到達しつつあるか?

 彼女も14歳の誕生日が近いしな。

 ますますの女性的成長が望める。

 その過程を間近で観察させてもらおう。

 

 

──

 

 

 2週間が経過。

 雨期の最中でも、水に流されてきた魔物が村に出現する。

 村の子ども達が襲われそうになる一幕があった。

 ドルディア族の戦士の警備の眼とて完璧じゃない。

 間隙を突いたように現れた魔物を、ちゃちゃっと魔術で退治してやる。

 

 おかげで俺は、村のケモ耳幼女達からヒーローとして崇められて大人気。

 対抗心を燃やしたエリスも、トーナとテルセナにカッコいい姿を見せるべく、多くの魔物を屠った。

 張り切りすぎてポッキリと折れなきゃ良いが。

 

 しかし、俺の目から見ても彼女の雄姿には惹かれるものがあったな。

 思わず『キャー抱いて!』等と口走ったら、その日の晩には抱き枕にされて暑苦しかった。

 挙げ句に頬擦りとかされたし。

 獣族の子どもの距離感を、エリスも獲得してしまったのか……。

 うーん、最高!

 

 

 3週間が経過。

 この短期間でエリスは獣神語を、トーナとテルセナ達は人間語をほぼマスターしてのけた。

 読み書きはまだ未熟だか、もはや会話で俺の通訳の世話など必要あるまい。

 話しているなかで判明した新事実。

 トーナとテルセナは意外と耳年増であり、ガールズトークの話題も、アダルトな方面へと転換していった。

 

 俺らと過ごす内に、幼い女の子らしからぬ知識を蓄えてしまったらしい。

 今では村の男の子よりも、人族の女の子に対しての方が、魅力を感じるとのこと。

 変な性癖を植え付けてしまったか……。

 ドルディア族宗家の雲行きが怪しくなってきた。

 

 だが、この百合文化の輪を世界に広めて行こう。

 ガールズラブを布教するのだ。

 ミリス教と真っ向から対立しないように根回しをしておこう。

 あぁでも、ミリス教の教義に同性愛が禁忌等とは記されてはいまい。

 暗黙の了解というやつだ。

 

 汝、一人の伴侶のみを愛せ──。

 それとも、一人の相手を愛すべし、だったかな?

 字句などは多少異なるが、そんな具合の内容だ。

 同性の相手ならば浮気にはならない判定でよろしいか?

 

 

 1ヶ月が経過。

 俺らの過ごす家にトーナとテルセナが入り浸り、寝食までをも共にし始めた。

 ルイジェルドにも甘えるようになり、頭を撫でられると喉をゴロゴロ鳴らしてリラックスしていた。

 いやまぁ、比喩表現だが、まるで実の父親に対しての態度であった。

 

 

「トーナにテルセナと言ったな。この子らと仲良くしてもらっていること、感謝する」

 

「にゃあ! あたちらの方が仲良くしてもらってるニャ!」

 

「そうだよ、ルイジェルドさん! ルーディアとエリスのおかげで、毎日が楽しいもん!」

 

 

 父親目線のルイジェルドは、まるで俺とエリスのことを我が子同然に扱う。

 彼としても、これまでの人生でこれ程までに長く、子どもと行動を共にした事は無いはず。

 戦士としての使命とは別に、身内のような情が湧いたのだろう。

 そりゃあ嬉しい。

 今日からルイジェルドの事を、お兄ちゃんではなくお父さんと呼んであげるべきか?

 

 

「ルイジェルドさんはまるで私たちのお父さんみたいですね?」

 

「悪くはない響きだ……。俺にそう名乗る資格は無いだろうがな」

 

「何よ、ルーディアの言葉を否定するつもり?」

 

「いや、素直に受け取っておくさ。しかし、懐かしい言葉を耳にしたと思ってな」

 

 

 過去に思いを馳せているようだ。

 彼は不器用ながらも息子さんとは深い親子愛で結ばれていた。

 そんな記憶の断片を時々語ってくれる。

 

 優しい笑みを浮かべて、ギュスターヴの下へ酒の付き合いに赴くと言って、家を出ていった。

 去り際の彼の背中は寂しそうではあったが、空虚なものではない。

 俺の思い違いでなければ、その背には俺とエリスという子どもがしっかりと背負われている。

 そんな気がしてならなかったのだ。

 

 

 1ヶ月半が経った。

 ちょうど雨期の折り返し地点である。

 雨脚はまだ強い。

 湿気も強い。

 そしてエリスの性欲も強い。

 

 この頃のエリスは、沐浴の際に鼻息を荒くして、舐めるような視線で俺の裸体を眺めてくる。

 彼女の祖父サウロスも、獣族のメイドに対して性豪だったが……。

 

 孫娘のエリスにもその素質があったらしい。

 尤も、彼女の興味の対象はルディちゃん()

 寝込みを襲われないように警戒する日々だ

 約束はしているのだ。

 俺が15歳を迎えるまでは手を出さないと。

 これでいてエリスも律儀な人間だから、約束を破る事はないと信じよう。

 信頼って大事よね?

 

 

 2ヶ月が過ぎた。

 

 最近になって聖獣様が我が家に現れるようになった。

 普段は村の奥で手厚く世話を見られているようだが、毎日散歩の時間を使って、俺の下へと足繁く通っているらしい。

 

 貴重な自由時間を割いてくれている事実に感謝を。

 

 

「ごきげんよう、聖獣様」

 

「ワン!」

 

 

 ワンちゃん特有の忙しい呼吸音と、派手に揺れる尻尾。

 見た目は仔犬なのだが、縮尺が異様に大きい。

 ちなみに俺の二つ名も仔犬だけど、おっぱいが大きい。

 意識してなかったけど、俺と聖獣様は共通点があったようだ。

 

 このワンちゃんが懐いてくる理由も、そこにあるのかもしれない。

 頭やら顎を擦ってやると、腹を魅せて転がる。

 うむ、可愛らしい。

 どの世界でも犬と言う生き物は、人間に癒しを与えてくれる。

 

 

「聖獣様はルーディア殿にお心を許しているご様子。貴女様にも、聖獣様を良くして頂いて感謝しております」

 

 

 聖獣様の世話係の1人、ラクラーナという女戦士が迎えに来た。

 どうやら自由時間の終わりが近いようだ。

 

 

「聖獣様はこうおっしゃっています。ルーディア殿は救世主のお母上になるお方だと。いえ、お父上と表現すべきなのでしょうか? 判断しかねます」

 

「はぁ……そうですか」

 

 

 救世主が一体何なのかは知らないが、俺の子孫が将来、英雄にでもなる預言か何かかしら?

 まあ、犬様の言うことだから本気にはしちゃいないさ。

 

 

「おわっ……!」

 

 

 このワンちゃん、あろうことか俺のまたぐらに鼻先を突っ込んできた!

 そこに救世主とやらは居ないよ?

 

 

「失礼、ルーディア殿! 聖獣様も悪気は無いのです」

 

「え、えぇ。解っていますよ? 突然の事に驚いてしまっただけです」

 

 

 数秒ほど聖獣様は匂いを嗅ぎと取ると、キョトン顔で首を傾げる。

 いや、だからそこに救世主は居ないの!

 

 

「ルーディア殿は人族の女性でいらっしゃいますよね?」

 

「そうですが?」

 

「貴女が将来授かるお子を大切になさって欲しいと、聖獣様はおっしゃっています」

 

「もちろん、子が生まれたのなら可愛がりますよ」

 

 

 俺が男と女のどちらと結ばれるのかと言えば、おそらくは後者の女性だろう。

 しかし現実的に人族の女性同士で子を成すことは不可能だ。

 それこそ魔大陸に転移して間もない頃に、ルイジェルドから耳にした特殊な魔族の体質を獲得しなきゃあり得ない話だ。

 

 この世界の不妊治療の解決手段として、いずれは研究を進める予定ではいるが──。

 聖獣様の言葉は話半分程度に受け止めておこう。

 

 ま、不死性を追い求める中で、あわよくばって感じだ。

 どうも俺は女性しか愛せない女らしい。

 だからエリスとの愛の結晶だって欲しい。

 時間と努力を費やす価値はあるだろう。

 救世主云々とか抜きで挑戦してみるか──。

 

 そして残りの1ヶ月もトーナ達と遊んだり、聖獣様と戯れたりして過ごす。

 その間も俺の胸の成育は留まる所を知らず、目測ではあるがDカップへと至る日の近づきを予感した。

 

 これもエリスが寝惚けたフリをして、俺の胸を揉み続けた成果だ。

 あまり大きくなられても困り者なんだが……。

 その後、村の女性らに新しいブラジャーを新調して貰った際に、改めて測定したところ──。

 

 12歳になるまでにまだ半年以上もあるというのに、俺のおっぱいは正式にDカップ認定されてしまった──。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。