無職TS転生 ~異世界行ったら女の子です~   作:三毛猫丸

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6話 友達

 ロキシーが旅立ってから数日。

 胸にポッカリと穴が空いたかのように、気力の抜けた1日を重ねてきた。

 

 しかし、それではロキシーに顔向け出来ぬとして、決心する。

 そうだ、外に遊びに行こうと。

 

 せっかくトラウマを治してもらったんだ。俺も新たな1歩を踏み出さなきゃだ。

 5歳にして公園デビューする心地である。はあ、緊張するわあー。

 

 パウロにでも付き添ってもらうか?

 

 いや、親の脛をかじり過ぎるのも考えものだ。娘に頼られる父親の心境としては嬉しいだろうが。

 

 というわけで、ゼニスから貰った植物辞典を携えて出発だ。

 念のため、外出の旨を伝えておこう。

 

 玄関先で剣を振るっていたパウロへ声を掛ける。

 

 

「父さま、外へ遊びに行ってきてもいいですか?」

 

「構わないが、もう外は怖くないのか?」

 

「ロキシー先生のお陰で、もうへっちゃらです」

 

 

 えっへん、と握り拳で胸を叩いて主張する。

 どうよ、俺だって強くなったんだぜ?

 

 

「感心したよ、あれだけ家から出たがらなかったルディが、自分から言い出すようになるなんてな」

 

「そんな大袈裟な」

 

「親ってのは子どものちょっとした成長が嬉しいもんだ。これで友だちでも連れてきた日には、どれほど喜ばしいことか」

 

「すぐにはムリかもしれませんが、いずれはそのつもりです」

 

 

 友だちを作らなきゃな。なるべく同性の、女の子の友だちが良い。

 性自認は男ではあるが、今の俺くらいのガキんちょは、ヤンチャ盛りだ。

 

 そんな奴らを相手にするのは疲れる。だったらまだ落ち着きのある女の子が望ましい。

 

 この年頃の女の子の遊びと言えば、おままごととか?     

 正直、楽しめる気はしないが、童心に帰るのも大事だ。物は試しって言うし。

 

 

「じゃあ、気をつけて行くんだぞ。夕方には帰ってくると、父さんと約束してくれ」

 

「お約束します。では、いってきます」

 

「いってらっしゃい」

 

 

 足早で進む。一秒でも早く、世界を開拓する為だ。

 子どもの足だから探索範囲はそう遠くはない。だとしても、小さな発見こそが俺の人生の糧となる。

 

 そんな気がして急かされるように小走りとなる。

 道中、村民らとすれ違う。俺の身なりは、この村の生活水準と比較して高い。

 

 程度の良い洋服に身を包み、髪の手入れだって怠らない。

 風呂にも毎日入っている。そんな高貴感漂う女の子。

 一目でパウロとゼニスの娘だと認識したようで、こちらの挨拶にはきちんと、挨拶で返してくれた。

 

 親様々である。ある意味、親の威光ってやつか。うん、それは卑下した考えか?

 

 俺自身の成果だと思っておこう。

 自分から進んで挨拶をしたんだからな。

 

 さて道草を食いながら村を突き進む。気になる植物があれば辞典と見比べる。

 食べられるのか、そうでないかをチェックだ。

 

 ブエナ村は広いが、俺の興味を惹く物は少ない。

 民家だって少ないし、他に見所があるとすれば麦畑くらいだろう。

 

 3日ほど時間を掛けて村を探索し終える。土地勘くらいは養えたはずだ。

 

 目新しい発見こそ少なかったが、これでブエナ村を故郷だと胸を張って言える。

 

 で、いい加減フィールドワークも飽きてきた頃、村の子どもたちが仲良く遊んでいる光景が目に飛び込んできた。

 

 残念ながら女の子は居ない。数人の男の子だけだ。

 年のほどは俺と同い年か1~2歳上。だいたい同年代だ。

 

 遠巻きに見ていると、こっちの存在に気付いたらしく声を掛けてきた。

 

 

「お前、駐在騎士んとこの子か?」

 

「ええ、そうですけど」

 

 

 首肯する。やはり溢れでるお嬢様オーラが人目を惹き付けるのだろうか?

 

 

「俺はソマル。なんだよ、仲間に入れて欲しいのかよ」

 

「もしよければ、お願いします」

 

 

 ふてぶてしい態度だな、この小僧。

 しかし俺も大人だ。口の利き方にいちいち目くじらを立てない。

 

 

「ルーディア・グレイラットといいます」

 

「そうか、ルーディア! よし! 今日から俺たちの仲間だ! これからは、お前も遊びに加えてやるよ」

 

 

 お、意外と面倒見が良さそうだ。

 

 どうでもいいけど、取り巻きの少年たちは、チラチラと俺の顔を窺っては顔を紅くしている。

 

 ははーん? 大方、美少女なルディちゃんに見惚れているんだろう。

 髪型だって今日は決めてきた。パウロから貰った魔道具の髪紐でポニーテールに仕上げている。

 

 念入りに櫛を入れてきたから、普段よりも可愛らしさはアップ。

 自画自賛するほどだ。

 

 

「ありがとう、ソマル君!」

 

 

 礼を忘れない。加えて笑顔を振りまいておいた。

 この際だ、友だち作りに性別の選り好みは出来ん。

 ひょっとしたら、ソマル経由で村の女の子とも繋がりを持てるかも。

 

 (よこしま)な考えを交えながら、ソマルたちの誘いに乗ることにした。

 

 

「お、おう……」

 

 

 ん? 急にしおらしくなった。

 

 いや、分かるよ。鈍感系主人公じゃあるまいし、人の好意くらいは察しがつくさ。

 まあ、男は恋愛対象には含まれません。オヤツのバナナと同じです。

 

 

「なにして遊びます?」

 

「鬼ごっこって、分かるか?」

 

「はい、遊び方くらいは」

 

「じゃー、今から鬼ごっこだ。いいな、お前らも」

 

 取り巻きに了承を得るソマル。

 なんかトントン拍子で話が進展していくな。これも美少女の特権ってやつか?

 

 確実に同性からやっかみを受けるパターンじゃん。

 自重しよう。目立たないように。

 

 尤も、ソマルはそれほど容姿が整っているわけじゃない。平凡である意味、慣れ親しみ易い顔立ちではあるが。

 ゆえに女子たちからの要らぬ嫉妬を買う心配も皆無だろう。

 

 さて、ソマル及び他の少年たちとの鬼ごっこ。パウロに鍛えられた体力と脚力を遺憾なく発揮。

 一度も鬼役をすることなく、今日の遊び時間を終える。

 

 ソマルたちの接待プレイなんかじゃないぞ。正真正銘、俺の実力によって手繰り寄せた結果だ。

 

 それなりに楽しめたところで帰宅。門限をきちんと守る人間なのだ。

 玄関先に立つパウロは、心配そうな目で出迎えてくれた。

 

 

「ちゃんと言いつけ通りに帰ってきたな」

 

「当たり前じゃないですか。父さまの言葉は法より重い」

 

「いや、オレは何様だよ。お前はいったい父親をなんだと思っているんだ」

 

「愛するお父さんですよ」

 

「どこで覚えたんだよ、その口説き文句。マジで落とされそうになったぜ」

 

 

 バカなやり取りも日常茶飯事。

 さしものパウロも呆れて苦笑を浮かべる。

 

 

「夕飯が近い。ちゃんと手洗いとうがいをするんだぞ」

 

「はーい」

 

 

 促されて家の中へと入る。無論、手洗い・うがいを忘れずに。

 どうやら我が家の衛生観念はまともらしい。

 

 さて今日の夕飯のメニューは、魔物のステーキ。

 何でもパウロの知人のロールズって人が、お裾分けしてくれたのだとか。

 

 職業は狩人で、ブエナ村の創設期からの古株。村近くには魔物が繁殖しており、狩猟で間引き生息数を調製しているとのこと。

 

 会ったことはないが、機会があれば挨拶しておこう。

 

 

「そうだ、聞いてくださいよ。今日ね、友だちが出来たんです」

 

「へぇ、やるじゃないか。どんな子なんだ?」

 

「ソマル君という子です」

 

「エトん所の(せがれ)のソマル坊か。ヤンチャな男の子だって聞いてるが、そうか。友だちになったのか……」

 

 

 おやおや? 娘の最初の友だちが男の子だからヤキモチですかい?

 心配には及ばない。ソマル坊とやらは俺の、眼中に無い。

 俺の心の中心に居るのはロキシーだけなのさ。

 

 

「まあ、なんだ……。家に連れてくるなら、なるべく女の子にしてくれ」

 

「父さまがそう言うのなら、そうします。なんていったって、父さまの言葉は法より重いですから」

 

「まだ言うか、ルディ」

 

 

 から笑いしつつも頭に手を乗せて、髪をクシャっとされる。

 口ではノリが悪いが、なんだかんだ相手をしてくれる。

 

 良い父親じゃないか、パウロよ。だから俺はパウロを父親として尊敬しているし大好きなんだ。

 

 

 

 

 

 親子の団らんの時を過ごし、夕飯も戴き、次の日。

 

 昨日、ソマル坊と出会した辺りに向かうと、待ち構えていたかのように少年たちはたむろしたいた。

 

 

「ルーディア! 今日は面白い遊びを教えてやるよ!」

 

「へえ、それは楽しみですね。ワクワクします」

 

「魔族退治って遊びなんだけどよー!」

 

 ん? 魔物退治ではなく魔族退治とな?

 

 聞き間違いでなければ、けしからん話だ。

 魔族にはロキシーのような素晴らしい神の如き存在だって居るのに。

 

 問い質してみるか?

 

 

「それはどういった遊びなんですか?」

 

「まあ、待ってな。もうすぐだからよー」

 

 

 いまいち理解が及ばない。だが待てと言われたんだ。    

 忍耐強く、いくらでも待ってやる。

 

 数分ほど、その場で待機していると、フードを被った子どもが歩いてきた。

 

 バスケットを大事そうに抱え込んで、視線は下げがち。

 歩く速さは、さながら牛の歩みといったところか。

 

 その怪しげな子どもが現れた途端、ソマル達は一斉に畑の泥濘(ぬかるみ)へ素足で入ると、泥玉を作り始める。

 

 いや。まさかなぁ……?

 

 悪い予感は的中する。

 なんとソマル達は、うつ向いた子ども目掛けて泥玉を投げ出したのだ。

 

 悪い意味で度肝を抜かれた。

 

 

「ちょ、なにやってるの!」

 

 

 慌てて制止する。

 

 

「ルーディアもやってみろよ。コイツ、魔族だから村から追い出さねーと!」

 

「そーだそーだ、ソマルに続け!」

 

 

 この行為は、明らかにイジメだ。

 よく知っているぞ、俺にも経験があるのだ。被害者側としてだけど。

 

 まったく、気分が悪くなるよ。

 俺はこういう連中が大嫌いなんだ。

 

 大勢がよってたかって痛めつける。される側の苦しみは、今でも覚えている。

 

 見てみぬフリを出来んね。

 

 

「ソマル君。イジメはいけませんよ。人にされて嫌なことは、他の誰かに絶対にやっちゃダメなんです」

 

 

 加害者であるソマルたちへ説得を試みる。ダメ元だ。子どもがまともに人の話を聞くとは思えない。

 

「なんだよ、お前も俺たちの仲間だろ? 魔族の味方をすんのかよー!」

 

「味方がどうかの問題じゃないと言っているんです」

 

「せっかく仲間にしてやったのに! もう謝っても仲間に入れてやんねー!」

 

 

 こっちから願い下げだわ。

 さて、この小僧たちは標的を俺へと変えた。フードの子──おそらく少年は困惑した様子で状況を観察していた。

 

 

「くらえ!」

 

 

 いじめっ子たちによる泥玉の雨。

 ふふふ、でも俺には当たらんよ。パウロとの特訓の日々は、今この時に活かされる。

 

 左右にステップ、上下にジャンプしたり屈んだりと、軽快に避け続けた。

 

 

「くそっ! 女なんかに負けるもんかよ!」

 

 

 あら、聞きましたか? このご時世に性差別ですわ。魔族への偏見といい、時代遅れな奴も居たもんだね。

 

 

「そんなんじゃ、私には永遠に当たりませんよ? 出直して来たらどうですか」

 

「うっせー! 余計なお世話だっ!」

 

 

 つい煽ってしまった。やる気を出させてどうすんだよ。

 

 とはいえ、もう数分も回避ゲーに励んだら、奴らも飽きてきたようで、攻撃の手を止めた。

 

 

「覚えてろよ、ルーディア! お前とはもう絶交だ!」

 

「はい、2度と話し掛けてこないでくださいね。目障りなので」

 

「くそ! バーカ! ブース!」

 

 

 捨て台詞と同時にソマルたちは何処へと消える。

 

 ふう、なんとか追い払えた。あの手の輩は根に持つからな。

 今後はソマルたちに目をつけられないように注意せんとな。

 

 

「そこの君、怪我とかしてないか? 荷物も平気?」

 

 

 散々、泥を投げつけられて服の汚れてしまった少年へと安否を問う。

 

 

「う、うん……平気」

 

 

 平気じゃなさそうだ。

 今にも泣き出しそうなか細い声で、見ているこっちが不安になる。

 

 件の少年の顔を見る。泥を被って色々と台無しになってはいたが──。

 

 うわっ! すっげぇ美形の少年だ。

 

 同い年くらいか? 女の子みたいな顔立ちをしているな。正直な話、一瞬ときめいた。

 ロキシー以来の衝撃だ。

 

 

「荷物は良さそうだけど、服が汚れてるな。よし、私が綺麗にしてやる」

 

「え……どうやって?」

 

「とりあえず、向こうの用水路まで移動しよう」

 

 

 少年の手を取って移動する。掴んだ手の感触は、まるで女の子のように小さくてスベスベ。

 

 なぁ、君って本当に男の子なん? どうも何か引っ掛かるんだよなぁ。

 

 漫画とかでよくある展開としては、最初は男の子だと思って接していたら、後々、実は女の子でした! って判明する的な?

 

 ひとまずこの少年を清めねば。性別云々を気にし過ぎて、優先順位を間違えるなよ。

 

 自分にそう言い聞かせて、火魔術と水魔術の混合魔術を発動させる。

 手のひらには適温のお湯が生成され、少年の体を洗い流していった。

 

 

「ん……」

 

 

 嬌声(きょうせい)が漏れる。いちいちセクシーなのよ、君ってば。

 

 

「うーん、服の方はここじゃ洗うのは厳しいな」

 

 

 最低限、泥は落としてやったが見栄えはよろしくない。

 ただ、先程よりは幾分マシか。

 少年は綺麗になった己の体を見下ろすと、キョトンとした表情で、今度は俺に視線を向ける。

 

 

「あ、ありがと……」

 

「どういたしまして」

 

 

 礼をきちんと言えるなんて、親の教育がよろしいのだろう。

 お姉さん、感心しちゃうわ。

 

 改めて少年の面貌を確認する。一目で気づいた、少年が苛められた理由に。

 

 彼の頭髪は、エメラルドグリーンだったのだ。

 たしか多くの人々に忌み嫌われているスペルド族の代表的な身体的特徴。

 

 額には赤い宝石こそ見当たらないが、一見して魔族扱いする子どもも存在することだろう。

 その筆頭がソマル坊たちだ。

 

 他に少年の容貌で目を惹くものは、ツンと尖った長い耳。

 ファンタジー物での定番であるエルフ耳が、彼の頭の両側についていた。

 

 はえー。この世界に、エルフって居たんだな。彼の美形である理由に納得する。

 

 

「あのさ、嫌なことを聞くけど、君は前々からアイツらに嫌がらせされてたの?」

 

「う、うん……。ボクの髪の毛がスペルド族みたいだって……。村の子たちが、からかってきて……」

 

 

 あれはからかうとかのレベルを逸していると思うのだが。

 しかし生まれついての髪の色だけで差別とは。世知辛い世の中である。

 

 俺だけはこの少年の味方でいてやりたいもんだよ。

 なんつーか、かつての自分を見ているようで、ほうっておけない。

 

 

「大変だね、君も。他人事みたいで申し訳ないけど、今までよく耐えてきたな」

 

「そ、そうかな……?」

 

 

 自分に自信が持てないらしい。

 あれだけの仕打ちを受けてりゃあ、そりゃ卑屈にもなるか。

 ますます、看過出来んな、この状況を。

 

 

「ちなみに種族は? あぁ、つらいなら話さなくても構わないんだぞ」

 

「よく分かんないや。でもお父さん自身は長耳族(エルフ)のハーフだって言ってた……」

 

 

 ふむ、ってことはこの子はクォーターエルフっていうやつか。

 にしては耳が長いところを鑑みるに、隔世遺伝で強く特徴が出てきたのだろう。

 

 

「お母さんは獣人族が少し混じってるって……」

 

「そっか……。よく話してくれた、良い子だ」

 

 

 獣人族というのはよく分からないが、ケモ耳とか尻尾の生えている感じの種族だろう。

 そっちの特徴は現れちゃいないようだ。

 

 

「ご両親は優しくしてくれる?」

 

「うん、とっても」

 

 

 ほう、そいつは良かった。

 外で苛められて泣きそうになっても、両親の存在が支えになっていたのか。

 

 くっ、前世を思いだす。

 俺もツラい経験から塞ぎこんでいたが、あの時の両親はずっと歩み寄ってくれていた。

 その手を払いのけてしまった過去は悔やんでも悔やみきれない。

 

 

「じゃ、行くか。どこかへ向かう途中だったんだろ? 送るよ。1人だと、またアイツらが戻ってきたら危ないし」

 

 

「え、良いの? ボクなんかと一緒に居たら、今度はキミも苛められちゃうよ……」

 

「へいき、へっちゃらッ! こう見えて私は騎士の子どもなんだけどね、そこそこ鍛えてあるんだ」

 

 

 もし次にからんできたら、今度は避けるだけじゃなく実力行使させてもらうさ。

 暴力は嫌いだが、俺には魔術がある。

 使い方さえ誤らなきゃ、怪我をさせることもあるまいて。

 

 

「これから、お父さんに弁当を届けに行くんだけど……」

 

「よし、私に任せたまえ。お姉ちゃんが、君を守ってやろうじゃないか」

 

「キミとボク、同じくらいの年だよね?」

 

「私は5歳。君は?」

 

「ボクも5歳……」

 

 

 やっぱり同い年か。将来有望よね、この子ってば。年端もいかぬ時点でこの美貌。

 嫉妬しちゃうわ? というのは冗談だ。

 

 彼も見た目で悲しい思いをしてきたわけだし、外見で羨むのは酷な話だ。

 

 

「そういえば君の名前は? 私はルーディア・グレイラット。気軽にルディって呼んでくれ」

 

「ル、ルディ……。えへへ」

 

 

 彼の身の上からすると、同年代で名前を呼び会える

相手なんて初めてだろう。

 なにやら照れ臭そうに、耳の裏をポリポリ掻いている。

 

 

「ボ、ボクはシ、シル……フ……ィ……エ……ット」

 

「え、なんて? シルフ?」

 

 

 細々とした声。かろうじて聞き取れたが、そうか──シルフか。

 風の精霊のようで、彼の美形にお似合いだ。

 

 

「よーし! 出発進行ー!」

 

「お、おー……!」

 

 

 控えめな掛け声。何はともあれ、今後はシルフと一緒に居よう。

 放っておけないのもあるが、シルフは心優しい子だ。俺も変に気を遣わなくても良い。

 

 

「ボク、同性の子とこんな風に一緒に歩くのは初めて」

 

「同性?」

 

 

 何を言っているのやら。

 俺は生物学的には女だぜ? そしてシルフは男の子。

 

 まさか俺を男だと見間違えたのか? これでもゼニス譲りの容姿に自信があったんだがなぁ。

 ちなみに髪の色は茶髪でパウロ似だ。

 

「私、女だぞ」

 

「え、知ってるよ?」

 

 

 話が噛み合わないな。

 まっ、細かいことは受け流そう。

 

 

「実は私も似たようなもんだよ。友だちが出来たの。人生最初の友だちってシルフだし」

 

「友だち……? ボクなんかで良いの?」

 

「なんかって、随分とネガティブな考えだな」

 

 

 悲しいことばかりだと、明るい話題にも消極的にもなるか。

 よっしゃ、今日から俺がシルフの光になって照らしてやろう。

 

 

「これからはいっしょに楽しくやろう。実は私って、長いこと家の中で過ごしててさ。1人だと、心細いんだ。だからシルフが友だちで居てくれるなら嬉しいよ」

 

 

 忌憚(きたん)なく話す。

 

 

「ボクも……。ルディがいっしょだと嬉しい」

 

「そうか、相思相愛だな!」

 

「そうし、そーあい?」

 

 

 一方通行の気持ちじゃなくて安心した。ソマルん時は盛大に失敗しちまったし、戦々恐々としていた。

 

 ちなみにソマルたちはフレンドとしてはノーカンだ。消し去りたい過去である。

 元より1度遊んだだけの薄い関係だったしな。

 

 俺の初めてはシルフが貰ってくれた。

 

 初めてってのは友だちって意味だぜ? 他意はない。

 

 

「お父さんに紹介してくれよ。ボクの友だちですって」

 

「うん、するよ。ルディ!」

 

 

 あらま、もう懐いちゃってるよ。

 

 はぁー、俺も罪作りな女だわ。純情そうな少年の心を弄んじゃって。

 

 なんであれ、今日という日に俺とシルフは友だちになった。

 人生の転換期とも言える。

 

 見ていてくださいよ、師匠!

 

 このルーディア、必ずやシルフを幸せにしますから!

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