それ故に、闘う艦娘は美しい   作:パイロット

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お久しぶりです。

お待ちいただいてたのかどうかはわかりませんが
頑張って書いてきたので良ければご覧ください。




敗者の光

「まったく……なんなのよアレ……。」

 

工廠にて明石が独言つ。

素材などは同じものを使っているはずなので、完全に未知の技術だろう。

それにしてもエネルギーや実弾を遮断するバリアを展開するなど、かつて協力してくれた霧の艦隊のクラインフィールドのようなものだろうか。

 

「詳しいことは全然教えてくれないしなぁ。」

 

トレーズと言ったか。

あの提督は秘密が多すぎる。

出自もわからない、年齢も……まぁわからない。

そんな人が未知の技術を用い、作戦もベター。

 

「予感がするわねえ、楽しくなる予感!」

 

 

 

-------------

 

 

着弾とともに消失していく弾。

展開された電気フィールドはそれらを完全に消し去ってしまった。

 

「なんだこの技術は……?」

 

長門は戸惑ってしまうが、すぐに前を向き直す。

システムや技術は全くわからないまま使うことに不安はあるが、今は戦場だ。

 

「攻撃には転じられないのか!?」

 

どうやら完全に守ることしかできない装備で、また出力的にも常に展開できるわけではないようだ。

 

「……っ、まぁいい。次弾装填までの時間があれば再展開はできる。」

 

「な、なるほど……安心できる装備ですね。」

 

「複数艦隊を相手にしなければ鉄壁だね、長門さん!」

 

無線で連絡を取り合う。

艦隊全艦がこの技術には戸惑っていたのだ。

 

「蒼龍、飛龍、ひとまず敵艦隊の撃退を……。」

 

「もう終わってるよ、鳳翔さん!」

 

敵艦隊は大破とはいかないが、全艦中破以上の壊滅状態。

一艦隊相手に時間をかけすぎてしまったが、何とかなったと言ったところか。

それでも引くことはないのが深海棲艦の恐ろしいところだが、これ以上相手をしても仕方ない。

 

「こちら長門。提督、聞こえるか。」

 

この一連の流れの間、一言も言葉を発しなかったトレーズに連絡をとる。

 

「……こちらトレーズ。あぁ、聞こえているよ。そのまま戦線を維持していてくれたまえ。」

 

「……このままでは夜戦に突入することになるぞ。」

 

戦艦や航空母艦のみの現在の艦隊では、夜間に戦闘を行うことはできない。

そのことを知らぬわけではないだろう。

 

「目的は達せられた。君たちが一人も失われることなく戦線維持することができればある意味勝利といっていいだろう。」

 

「それは……叢雲たちの方で……。」

 

彼女らの知りえぬ、提督の作戦が成功したと言うことか。

それらが成功すれば見えてくるものとはなんだ。

尋ねたいが、言葉が紡げない。

呂律が回らなくなってくる。

前が見えなくなってくる。

長門はそれらがそうなってることに気づかなかった。

それなのに音がクリアに聴こえてくる。

 

「君が勝者とならずに戻ることを祈ろう。」

 

それからトレーズからの通信は切れた。

それすらも長門は気づかない。

 

(勝者……とならず……?我々は勝たなくてはいけない……のでは……勝つ……?勝つとは……?敵を倒す……敵?敵は?)

 

「長門さん!どうしました!?」

 

長門は急に立ち止まり、その場にうずくまる。

鳳翔、飛龍、蒼龍は長門を心配し減速はするものの、止まることはせず通信にて呼びかける。

そうこうしていると段々と日は沈んでゆく。

ここからは敵艦隊の時間だ。

 

「長門さん、止まらないで!まだ敵艦はいるんだよ!」

 

「一体何が!?」

 

(なんだ……何が見える?何が聴こえる……?爆発……光……?これは……あぁ、これは……あの光だ……人の生み出した狂気の光……。私の敵……長門の敵は……この光か……?ならば生み出すのは……ヒト……人間は……敵なのか?)

 

「敵……敵は倒さないと……。」

 

長門はゆらりと正面を見据える。

そこには必然的に前を行くことになってしまった鳳翔たちがいた。

拳を握りしめる。

その目はまるで、ここじゃない世界を見つめてるようで……。

 

(アレは敵だ。敵を倒して、全部倒せば、戦争を終わられられる。)

 

エンジンの起動音が響く。

後ろから接近している場合、いまのスピードなら空母にはすぐ追いつくだろう。

なにかに導かれるように、長門はまっすぐと前を見据えた。

 

【目的を見失うな】

 

「!?」

 

まるで脳内にトレーズの声が響いた気がした。

 

(目的……?私の目的は……。)

 

敵の殲滅か?戦争での勝利か?

いや、違う。

そう、違うのだ。

方法はそうかもしれない。

やらなければ倒されるのかもしれない。

そうではないはずだ。

かつて彼女に乗艦した人たち、彼女を造った人たち、皆がそう考えたはずだ。

 

(愛する人々を……守りたい。守るために……この力を使う。)

 

戦うためだけじゃない。

そうだ、今は人になったのだ。

人なら自分で決めて良いはずだ。

 

「何のための砲だ。何のための拳だ。……私はビッグセブン、長門級一番艦!長門だ!」

 

長門が正気を取り戻した瞬間、胸の緑色の光るユニットが、煌々と輝きを放つ。

 

「そうか……ルークス!共に守ろう!」

 

その瞬間、長門の目にはまるで敵艦からの全ての攻撃のルートが見えていた。

 

「敵艦の魚雷が来ます!」

 

夜間の魚雷は察知もしにくい。

もう間も無く着弾してしまう。

 

「ルークス展開!」

 

水中に飛び込むユニットたち。

その電気フィールドは、魚雷を誘爆させていく。

 

「敵艦が諦めるまで、こちらは完全に守りきってやろう。それが今の最大の目的だ!」

 

「さっすが、長門さぁん!」

 

「助かるぅ!」

 

長門の後ろに回り込み、ハイタッチをする飛龍、蒼龍。

それらを見ながらも考え事をする鳳翔。

 

「……まるでわかっていたように……やはりトレーズ様には何かある……?」

 

そうして、何度かの波を越え、勝利することはなかったが、

彼女たちは無傷で帰投することができたのだった。

 

-------------

 

その半日前。

トレーズは二人に通信を行なっていた。

 

「さて、叢雲、皐月。君たちには、正面海域に出現する深海棲艦を捕縛してもらいたい。……撃沈したように見せかけて、だ。」

 

「……捕縛?」




艦隊同士の戦闘を描くのはなかなか難しいですね。

一つの問題が解決したら、日常パート的なのも考えてますので良ければ応援お願いします!

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