いつ失踪するか分からないですが、タングステンを溶かせる目で見て行って下さい。
追記
途中まで多視点ですが、7話あたりで辞めてます。
1:出合いと予感
「ああ、そんな事もあったかな。あれは、そうだ…まだ変わっていなかった時代の事かな。」
この世界には、能力というものが存在する。
能力は人々に時に希望を、時に夢を与えてくれた。
だが、能力という存在は誰にとっても有益と言う訳ではなかった。
何故なら、能力を持つ人間と能力を持たない人間がはっきりと区別されているからだ。
能力は生まれ持って手にする力だが、極稀に能力を持たない人間が生まれる。
そして、その無能力者として産まれた者には過酷な運命が待っている。
それが、能力者との圧倒的格差だ。
しかし、能力者内でも能力の格差は存在する。此等の格差社会が構築されていったのは全て、能力の強さを専用の機械を使って、能力値という数値で表せるようになってからだ。
わかりやすく言うと、
無能力者は能力が無いので能力値は0
普通の能力者は300程が平均
強い方で1000
世界レベルで強い部類に入るのは3000
と、こんな感じだ。
今出てきた数値、能力値と言うのは世界中で使われている能力の強力さ、『レベル』を示すもので、その数値は専用の機械を使って測られる。
この能力値は様々なことを決めるのに便利だが、問題があった。
それが、先程も言った様にレベルを基準とした格差だ。
しかも質が悪いのは、政府等はこのことを分かっていながら大きな動きは見せないというのだ。
その理由として政府は、無能力者の数が少ない事や今の状況での打開策が殆ど無い等の事を言っているが、恐らくは政府側の人間も無能力者を毛嫌っているのだろう。
そんなだから、レベルが0の人間はとても生きづらくなっている。
そして、俺こと
_______________
「伊理、お前レベル0なんだってな?」
「…」
「おい、無能力者の分際で無視するんじゃねえよ。レベル0なんだから無能力者なんだろ?だったら大人しく言う事聞いてろよ。」
机を蹴られた。しかも能力で指先に高温の水蒸気を創り出して脅してくる。
「わかったよ…」
「分かったんなら早く購買行って来い。遅過ぎんだよクソが。」
「じゃあ何がいいんだ?」
「知るか。お前が選んでこい。」
「え、だったらお金は…」
「お前が払え。」
俺の金銭問題も考えてほしい。
「分かった。」
「分かったんなら早く買って来い。」
俺は席を立ち、素直に購買で昼食を買ってくる。
その後は自分の分の昼食を食べ終え、残りの授業と、もう聞き飽きた帰り際の能力についてのアレコレを聞き終え、今日は学校に残る理由も無いため特に何も無く帰宅しようとしていた。
それにしても、もう既に俺のレベルの話が広まっているとなると、明日からが憂鬱になる。
実はこの学校に入ったのはつい最近だったりするのだが、此方では苛めも何も無く過ごせるのではないか、と少しだけ希望を抱いていた矢先、これだ。学校側が告口でもしたのか、生徒間で既に俺のレベルの事が広まっていた。
これからどうしようか。
そんな事を考えていると、不意に帰宅途中だった自分の視界に2つの影が飛び込んでくる。
一方は見た目的に自分と歳が近いであろう少女、もう一方は…
「何だ? あれ…」
機械的なフォルムの人型の何か。但し全体的に配色が暗く、金属質の外骨格のような物の隙間から見えるグロテスクな肉面が不気味に蠢いて気色が悪い。
しかし、人型なだけであって知性的なものなどは殆ど感じられず、本来人間に在るべき器官も、ところどころ見当たらない。
自分がどうすればいいのか思案していると、此方に気が付いたのか少女の方が俺に向かって──
「助けて下さい!」
──と言ってきた。
ってこっちに走って来んのかよ。強制戦闘かよ。でもまあ、ここで彼女を置いて逃げれば後味が悪いし…
「…仕方が無い、か。」
気になる事はいくつかあるが、もうあまり深く考えない事にした。
そんなことより、
「もうこうなったら使うか。」
俺は、自分を知る人物の前では決して使わない能力を使った。
瞬間、その何かは俺に殴り飛ばされた。
「え。」
女の子が驚いているが気にしないで俺は次の行動に移る。
吹っ飛んでいったなにかを、建物に当たる前にそのまま空中で停止させた。
そして、そのままそいつを固定した。
「大丈夫だったか?」
「え…? あ、……はひぃ!」
__________
私は、突然現れた化け物から必死で逃げていた。
この化け物が一体何なのかや、なぜ自分が追われているのかなど気になる事はかなり有るものの、今はそれを考えている暇はない。
追いつかれたらどうなるのかわからない以上、一刻も早くこの化け物から逃げなければいけない。
走っていると、向こうの曲がり角から人が歩いてくるのが見えた。
私は、助かりたい一心で叫ぶ。
「助けて下さい!」
その人は、一瞬だけ考える様な素振りをしてから何かしら呟き、次の瞬間には化け物に殴りかかっていた。
化け物は吹き飛び、建物に当たる直前で中途半端な姿勢でピタリと止まった。
何が起きたのか判らない。
この人が助けてくれたことに変わりはないのだけれど、それでも不安になってしまう。
そこに、彼は言ってきた。
「大丈夫か?」
_______________
「え、…あ、……はひぃ!」
しまった! 動揺して変な声が出てしまった。
ヤバイ奴だって思われてないよね?!
「えー、っと、まずは落ち着こう?」
「あ、はい。」
宥められてしまった。
「じゃあまず、単刀直入に訊くけど、どうしてああなってた?というかあれ何?」
やっぱり、そこを訊くか。
「うーん、2つとも判らないとしか…。」
「そう、…か。まあいい、取り敢えず俺はもう帰る。じゃあな。」
「あ、それなら名前だけでも訊いても。」
「? 何でだ?」
「いえ、自分を助けてくれた人なんですから、名前だけでも知っておきたいな、と。」
「そういうことね。別に隠したりしてる訳でもないからいいよ。俺は伊理 豹差だ。」
「あ、私は
「ご丁寧にどうも。それじゃあ俺はこれで。」
「はい。ありがとうございました!」
「いやいや、大丈夫よそんな。じゃあな。」
彼は化け物を抱えながらこの場を後にした。あの化け物をどうするつもりなのだろう。
私は特に今行く宛もないので、ストーカー紛いな事をしているのを理解しつつ付いて行く事にした。
_______________
足が重い。相変わらず俺は能力を使った反動がでかい。
俺以外のやつは幼少の頃から能力を使っていたから身体が能力に順応して反動なんて殆ど来ないのだろうが、俺は違う。
昔は色々とあって、自分が能力を使うと周りに迷惑が掛かる事を早々に知った。
だからそれからは能力を使わなくなっていった。
だが、今回の様な場合は仕方が無いと思う。
それに一つ気になる点もあった。この化け物が一体何だったのかだ。
正直あまり関わりたくないのだが、こいつみたいな奴が他にも潜んでいるとしたら今回のような事がまたあるかもしれない。
そうなれば最悪俺の能力が知れ渡る可能性があるのだ。
絶対にそれだけは避けたい。
「そうと決まれば、家に帰ったら早速此奴について調べないとな。」
今後の方針は一先ずこれでいいかな?
__________
「あぁ~~、疲れた〜。」
家に着いてまず一言目がこれだ。
そのまま俺は家でやるべき事を一通りやって、来訪者が来ていないかをインターホンを介して録画された映像で確認する。
「ッ……!!??」
そこには驚くべきものが表示されていた。
「(この人はあの時の…!)」
つい先程帰宅中に助けたあの人────櫛文咲見が映っていた。
「(撮影された時間は俺が家に着いた後……! これは最悪、自分の能力の存在が知られる可能性になり得るじゃねえか…!)」
しかし時間が経った今では流石にもういないだろうという事は理解っているので、運に任せるしか無い。
「(何事も起こらないことを祈りつつ、今日はやる事を終わらせてから直ぐに休もう。)」
一日にあまりにも不安要素が増えすぎた。化け物について調べるのは明日にしよう。
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御世辞でもよく眠れたとは言えない睡眠を終えてから、着替や朝食を済ませて、やっと一日が始まったような気がした。
昨日は厄日だったが、今日からはまたいつも通りの生活に戻れるのではないかという一縷の希望に賭けながら登校する。
だが、どうやら神は俺を嫌っているようだった。
〜朝の
「突然ですが、転校生を紹介します。」
転校生と聞き、三者三様の反応をするクラスメートたち。
「せんせー! 転校生って女子ですかー?」
「先生! どうして急に転校生が来たんですか?」
「HR、………急な転校生、………女子かどうか訊く男子生徒、……………うっ頭が……!」
教師が騒ぐ生徒達を宥めてから、廊下で待機しているという転校生を呼びに行く。
「今日からこのクラスに配属される櫛文咲見さんだ。皆仲良くしてやってくれ。」
「(ふざけんなよ?)」
今おみくじを引いたら大凶が確定で出ると思う。
自己紹介のようなものが一旦終わり(その間櫛文は結構な回数こちらをチラチラ視ていたが)、座席が何処になるかという話になった瞬間だった。
そこは先程とは対称的に、遥か遠く、それこそ町中の蚊の睫毛の落ちる音すら聞こえるのではないかと思えるほどの静けさに包まれた。
「(変わり身が途轍もなく早いな、俺のクラスメートは。)」
呆気に取られていた教師が漸く意識を思考と言う名の海から引きずり出し、席を発表する。
「席は、………豹差の隣、一番後ろの窓際3番目か……。」
教師も含めたこの場にいる全員から憎悪の込められた視線を向けられる。
しかも所々無意識下なのかは知らんが何人か能力が滲み出てしまっている。あっちで炎、こっちで雪塊、あちらの方では青色の刃。能力の配色に対して少しだけ綺麗だ、なんて思ってしまったのは秘密だ。
教師が生徒の能力使用に対して何も咎めていないのは、自分も気が付いたら発動していたからだ。しかも生徒にバッチリ見られていた。
「(全く、俺だって好きでこんな状況になってる訳じゃねーってのに。)」
しかし、同じ転校生である俺の近くというのはどうしようもない。
転校生の席は後付なのだから、俺の席の隣だというのは至ってまともな事なのだ。
__________
その後はほぼほぼいつも通りのHRが始まり、教師が話をしている間に櫛文に口留めしておかなければと判断し、その旨を彼女に伝える。
「昨日ぶりでいきなりだけど、俺に能力が在る事は他の奴に黙っておいてくれないか?」
「はっ、はい。昨日ぶりですね。どうしてですか?」
「いや、まぁ、……それは、なんというか、………兎に角そういう事だ。黙っててくれないか?」
「いえ!私は昨日助けて貰った恩もあるので、それならそうしますよ。」
「有難う。本っっ当に助かる。あ、それともう一つ。敬語取ってくれない?もうクラスメートなんだし。」
「そういう事ならもう敬語外しま……外すね?」
「あぁ、ありがとう。」
HRが終わってからクラスメートの連中に俺の悪態を吹き込まれていたが、一瞬呆気に取られただけで俺の能力の事は自然と隠してくれた。
次回へ続く………
この小説に目を留めて下さり、有難うございます
評価や感想、ダメ出しなど、お待ちしています。
修整点は随時修整します。
アドバイスもどしどし送りつけて下さい。参考にさせて頂きます。