感情力学──特殊な特殊能力──   作:LeIkaF

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投稿に10日以上掛かってるのヤバいっすよ…

ま、生活リズム整えたんでこっからはもうちょいマシになる…筈です。


7:不安感と喉の渇き

 …………あのおっさんと別れてから数分程歩いたのだが、僅かにではあるが、後をつけられているような気配を感じ始めている。確証が有る訳でも無いが、そうとしか言えない何かがあった。

 もう直家に着く頃だから、気付いている事を悟られないようにしながら、速やかに帰宅しよう。

 

 

 

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 何か得体の知れない気配を感じながら自宅に戻っためめか、玄関にあがって家の戸を閉めた瞬間に、安心感が濁流の如く押し寄せて来た。

 

「(ふぅ~、……なんだかよく判らないままでは有ったけれど、かなり疲れてしまったなぁ。どうもならなくて良かった。無事に家に帰って来れただけでここまで安心するなんて事は、是迄の人生でも今回ほどだろうな。)」

 

 一息つき、靴が最低限しか置かれていない質素な玄関から、無駄に長く感じる廊下を通って、リビングに入る。

 

「あ、伊理君おかえり。……何かあった? 顔色悪いけど。」

 

 そういえば、櫛文を家に置いたまま外出したんだった。

 

「お前、まだ居たのかよ。」

「いやぁ、この家に一人残されたって事に気付いた途端、凄い焦っちゃったよ。どうしとけば良いのか解らなくってね。」

 

 その結果、待機を選択した訳か。

 そこで俺は、一つだけ気になることがあった。

 

「態々待ってまでして、何か用があるのか?」

「特にこれと言って。」

 

 …予想通りと言えば予想通りの返答だな。というか──

 

「用が無いならもう帰ってくれないか?」

 

 ──これ以上此処に居られても面倒臭いのだ。さっさと帰ってほしい。

 

「う〜ん、まあ別に良いけど、まだ16時だよ?」

「だからって、俺の家に居ても何かあるかよ。」

「確かに。」

 

 という事で、櫛文には帰ってもらおう。

 

 

 

__________

 

 

 

 

「(う〜ん? ここの問題だけ全く持って意味が解らないな。)」

 

 大量の紙類で散らかった机の上に半ば無理矢理置いた煎餅を咀嚼嚥下しながら思う。

 

 現在の俺は、櫛文が居なくなったため、課題を進めている。

 まあ、正直に言えばこのペースなら全然余裕なため、これ以上進める必要性は余り無い。言ってしまえば、夏休みの前半には全ての課題が終わるような勢いで進めているので、夏休みにやりたい事などが然程無い俺にとっては、必ずしも良い事という訳でもないのだ。

 

 それでも課題を進める理由が、一つだけある。それは、今日の家への帰り道で感じたあの視線に起因する。

 今落ち着いて考えてみると、あの視線はタイミングからして、橋で出会ったあのおっさんの所属する組織のものの確率が高いと思われるだろう。

 本来であれば、もう昔のような事が起こるのは懲り懲りなので大人しくしておきたかったのだが、向こうから何かしてきたのなら話は別だ。

 それに、視線の正体がそれらとは関係が無い第三者という可能性は十全にあり得る。いや、そちらの可能性の方が高いまであるか。なんたって、もし第三者でなければ、俺を追い始めるまでの時間が短過ぎるからだ。

 

 ここからは俺の推測が混じるが、普通であれば、一度上層部に次の指示を出すように要請してから、指示を受けて次の行動を敢行するだろう。

 だが、もしそうであれば、俺の後をつけ始めるのが早すぎると思うのだ。

 確かに、単純に考えれば気配を感じ始めたのが数分後であるため、それくらいの時間があれば指示出しを受ける事ぐらいはできたかも知れない。だが、それはあくまで俺が動いていなかった場合だ。

 俺はその間も今居る自宅に向かって歩き続けていたため、指示を待っていてはある程度の距離の差が発生する筈だ。しかも、この周辺は住宅街ときた。それ即ち、指示を受けた時には、俺の姿は視えなくなっていたということだ。

 当然、そんな事をしていれば、見失う確率も必然的に上昇する。

 

 しかし、是等はあくまで一つの可能性であって、もしも気配がこちらを翻弄する為の罠であって、実際にはもっと即座に追跡を初めていたり、おっさんが探知に長けた能力を保有していたりする場合は、話が全く変わってくる。

 だが、それでも現状最も有り得る説というのは、第三者の介入となるだろう。

 

 これらの事から、視線の正体は第三者ではないかと考えた。

 

 しかし、一方で新たな問題も発生する。それが、第三者が何者なのかが判らないということだ。

 

「(しかしまあ、こればっかりはいくら考えても仕方がないか。)」

 

 なんの手掛かりも無しに存在すると思われる第三者を考察したところで、大して事は発展しないだろう。

 

 翻って、もし何か有った時のために、課題は余裕を持たせて進めているという訳だ。

 まあ、やはり最善は何も起こらない事なのだが。

 

 

 

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 そんな事が有ってから早三日目。特筆すべき事もそれ程無く、自分の心配が杞憂だったのではないかと思えてきた頃だ。

 その日も俺は適当に時間を潰して過ごしていた。

 

 学校があった時は時間を短く思えたのに、長期休暇に入った途端、悠久のように長く感じる。そんな経験は誰しもがあるだろうが、かくいう俺も、現在進行系でその状態に陥っている。

 

「(夏休みになった時に警戒すべき事ってのは、これよりも大きなものは無いぐらいだよなぁ。休みが沢山あると思っていたらいつの間にか終わりかけていた、なんて事は割とざらにあるし。だからといってやるべき事を早々に終わらせた場合も、あまりに長い暇な時間に苦しめられる破目になるのだからな。)」

 

 但し、知り合いが大勢いるやつは例外だが。…………因みに、この手の話題で精神的ダメージを受ける事は無い。昔は普通に哀しくなったりしたが、なんせ、独りだった時間が長過ぎたため、哀しく思う事は無くなった。そう、哀しく思う事なんて無いのだ。

 

 話を戻すが、暇を潰す方法なんて幾らでもあるにはある。しかし、態々それをするのも面倒なので、時計でも眺めて時間が経つのを待つことにする。

 

 

 

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 気味が悪い程に完璧な周期で、全く同じ音を繰り返し部屋に響かせる、つまらない時計。大した意味合いも無くそれを只々漠然と眺め続けて、どれ程の時間が流れたのだろう。そう、ふと思った。

 此処に在る時計の鳴らす音を、不快に思えるようになるまで聴き続けた。それだけでもかなりの経過を感じさせられるが、何より、自分の喉の渇き具合に驚かされる。その所為か、普通に生活していたのであればとても味わないであろう、何とも言えない苦さを持ったものの存在を、味蕾が報せてくれている。

 

 喉を濡す(うるおす)ために、半覚醒状態の意識を起こして、立ち上がろうとする。途端、脚がふらつく。

 足元を視ようと目線を床に落としたが、眼の焦点が合っていないのか視界がボヤけてしまっており、うまいこと確認することができなかった。

 

 仕方がないので、力の入り切らないこの体に鞭を打ち、なんとか顔を洗いに洗面所に移動しようとする。

 不幸中の幸いといったところか、手で身体を支えれば重心を保って歩行する事はできた。

 

 其儘壁伝いに洗面所まで移動した時には、視界はある程度開けてきた。途中で時間を確認しておこうとも考えたが、まだ思考がうまく回らないため、一先ず後回しにした。

 洗面所の戸に付けられた取手を掴み、体重を掛けて下方に腕を動かし捻る。

 カチャリ、と、小さく金属音を鳴らした戸を向こう側に押し退け、足元に在る高さにして数cm程度の段差を越えて中に入り、洗面器に向かって歩を進める。

 

 洗面器に注いでいた視線を徐に上げて、壁に掛けられた鏡を覗いた。しかし、数瞬掛けて首を持ち上げて視えた自分の顔は、霧でも掛かったかのようにぼんやりとしか視えなかった。

 それを大して気にせずに再び視線を洗面器に戻し、蛇口の取手を上げる。

 

 水道から蛇口を介して出てきた水を両手で掬い、顔を洗う。顔に冷水を掛けた刹那、思考がクリアになってゆくのを感じた。

 その後もニ、三回程冷水を顔に被ると、随分と意識がはっきりとしてきた。

 

 隣の壁に取り付けられた金具に掛けられたタオルを手に取り、水に濡れた自分の顔面に何度も押し付ける。

 若干の湿り気は残っている儘だが然程気に留めず、大半の水をタオルに吸取らせたあたりで元の位置に戻し、踵を返して廊下に出る。

 一歩を踏み出す度に小さく軋む音を出す床を踏み締めながら、居間へと引き返す。

 居間へと繋がる戸を開いたら中に入り、周囲を一瞥して眼が冴えてきた事を再確認する。

 

 続いて喉の渇きを抑える為に台所に行き、棚に仕舞ってある硝子製のコップを左手で鷲掴みにすると、空いている右手で棚を閉じる。

 コップを持った儘右方向に二歩程度移動し、其処に在る蛇口の下に水を受けれるようにコップを移動させ、蛇口の取手を捻る。そうして出てきた流水をコップに並々と注ぐと、再度取手を捻って水の放流を留める。

 其儘コップを口元まで運び、少しずつ口に流し込んでいく。

 そうして水を全て胃に収めた時には、口内でしていた苦味は消え、喉も潤っていた。

 

 

 

__________

 

 

 

 

「(本当、此処が『第2の大陸』で良かった。他の大陸だと水道水は飲料水として機能しないって聞くしな。)」

 

 『第2の大陸-27の都市』───それが、俺の住んでいる此の街だ。

 

 地球上に全部で11或る大陸、其れ等は全て第○の大陸という名称で統一されている。

 名称の○の部分には大陸番号が入り、大陸番号は、其の大陸が何番目にできた大陸なのかで決まる。早い段階でできた大陸は若い番号、遅れてできた大陸にはその分大きい番号が割り振られる。

 因みに、大陸と陸続きになっていない孤島などは未だに所有権が判然としていない儘だったりするが、政府はそれどころじゃないようだ。まあ、能力を使った犯罪を防ぐのは至難の技だろうしな。

 

 そして、大陸一つにつき30の都市が割り振られており、全ての都市が様々な特徴を持っている。……らしい。

 ……正直に言うと此処、第2の大陸から出た事が無いので他人から聴いた話なため、信用し過ぎない方が良いかも知れないが。

 実際問題11*30は330だから、少なくとも3,4つ程度の街は特徴が被っていそうなものだしな。

 

 

 

 

次回へ続く………




途中の謎の描写はやりたくなってやりました。後悔はしてない。

評価や感想、ダメ出しなど、お待ちしています。

修整点は随時修整します。
アドバイスもどしどし送りつけて下さい。参考にさせて頂きます。
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