人の血 鬼の血   作:かにかまとかにたま

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二話

 

禰豆子が自我を取り戻す前のこと……

 

「おいこれ竈門禰豆子じゃねーか、派手に鬼化が進んでやがる」

 

()()()()()()妹を守らねぇでどうすんだ、普通兄弟ってのはそういうもんだろ」

 

宇髄のその言葉はもちろん、炭治郎に向けてのものである。しかしもう一人、それを聞いていた者がいた。

 

「ぐずり出すような馬鹿ガキは戦いの場にいらねぇ、地味に子守――」

 

言い切らないうちに、ただならぬ気配を感じて宇髄は振り返る。

直後、建物が崩れ落ちた。

 

 

 


 

 

 

「禰豆子!時間がない、走りながら説明するから聞いてくれ!」

 

「さっき善逸がお前に血をくれたから、今は一時的に理性を保てている。それでも、また大きな怪我をしてしまったら、それを治す為に力を使い、飢餓状態に戻ってしまうだろう。

もしもお前が、血肉を(くら)いたいと感じ始めたら……それ以上は戦うな、絶対にだ……!」

 

「俺たちの仲間は、さっき会った善逸と伊之助の他にもう一人、柱の宇髄天元さんだ。白い髪で背が高くて、左眼の周りに化粧をしているから、すぐに分かるはずだ」

 

 

 


 

 

 

「んだこのボムボムしたやつ!?近づけねぇぞ!!」

 

「……禰豆子ちゃんの手前、カッコつけて迷わず引き受けたけどさあ!?助太刀!?ムリムリ!!今度こそホントに死んじゃうよぉお!!!」

「じゃあオマエ今すぐ寝ろ!!」

「こんなとこで寝たら死ぬだろ!?バカなの!?」

「寝れねぇなら代わりに絞め落としてやるぜ!!」

「話通じてないんですけど!?」

 

「ボンボンしてたのが止んだな……行くぞコラ!!」

「いやあああ!!」

 

 

 


 

 

 

「こうしている今も、俺たちはジワジワ勝ってるんだよなああ」

 

「それはどうかな!?」

 

攻撃が止んだのを見計らって、伊之助は声高らかに現れる。

後ろに、震える善逸を連れ立って……

 

「俺たちを忘れちゃいけねぇぜ!!」

「忘れててほしい、死にたくない……!」

 

さらに続けて炭治郎と禰豆子が、宇髄の前に降り立った。

 

 

 

「――何で妹まで連れて来てんだ!?」

「何で禰豆子ちゃん連れて来ちゃったんだよ!?」

 

「私も戦います……!」

「戦える!?さっきまで暴れ散らかしてたお前が……」

 

違和感の正体に、宇髄はすぐに気付く。

 

「……おい待て竈門禰豆子、お前何で普通に喋ってんだ?」

 

その質問に、炭治郎が代わりに答えた。

 

「……宇髄さん、善逸が禰豆子に血をくれました。おかげで今は落ち着いています」

 

 

 

「善逸テメェ!?鬼にエサやってどうすんだコラ!?脳みそ爆発してんのか!?」

「そんな言い方ないでしょォ!?禰豆子ちゃんに失礼でしょうがあ!!!」

 

 

 

「うるせえなあ……何人来たって、幸せな未来なんて待ってねえからなあ」

 

 

 

(こっちの人が宇髄さん、そしてあっちは……鬼……!)

 

「竈門禰豆子、来ちまったもんは仕方ねえ……ただし次はねぇぞ……?」

「……はい……!」

 

「……さて、勝つぞお前らァ!!」

「勝てないわよ!頼みの綱の柱も毒にやられてちゃあね!」

「余裕で勝つわボケ雑魚がァ!」

 

「こいつらは三人とも、優秀な俺の継子だ!逃げねぇ根性がある!」

「フハハ!まぁな!」

「今すぐ逃げ出したい……!!」

 

「妹の方も、人を食わねえ根性がある!」

 

「そしてテメェらの倒し方は俺が看破した!同時に首を斬ることだ、そうだろ!?」

 

「分かったところで、意味ねえよなあ」

「そうよ!夜が明けるまで生きてた奴はいないわ!長い《夜》はいつも()()()()()を味方するから!だからまずは……」

 

 

 

 

 

「裏切り鬼の分際で、アタシを散々痛めつけてくれたアンタからよ!!」

「っ!!」

 

伸びてくる帯を、禰豆子は後ろに飛び退いて躱す。

 

(身体が軽い……これが鬼の身体……)

 

「逃がさないわよ!」

「禰豆子!」

 

思わず飛び出しかけた炭治郎だったが、自制する。

 

(間違いなく、こっちの男の方が強い……!宇髄さんは毒を食らっている、ここは俺がやらなければ……!向こうは禰豆子を信じるんだ……!)

 

「二人とも、禰豆子を頼む!!」

 

(思えば、禰豆子と言い合いになったことなんて、ほとんどなかった……禰豆子の本音を……俺は……負けるわけにはいかない!)

 

 

 

 


 

 

 

 

「動きも遅い、力も弱い……拍子抜けね。さっきのは何だったの?まぐれかしら?」

 

屋根の上、長く伸びた帯に巻かれて、禰豆子は全身を締め付けられている。

 

「返り血を浴びてまた燃やされたら堪らないし、距離をとったままバラバラにしてあげる」

 

巻き付いているのとは別の帯が、鋭く伸びていく。

 

「――禰豆子ちゃん!!」

 

落雷のような音が響き渡り、伸びた帯が切り裂かれた。

 

「禰豆子ちゃん……!」

「……すみません……」

 

禰豆子は、左足の膝から先を切り落とされていた。傷口がミシミシと異様な音を立てている。

 

「さっきに比べて再生が遅いじゃない、アンタもう力を使い果たしたの?」

「そっちの不細工でも食って回復すれば?まあアタシだったら絶対イヤだけど、不細工だし」

 

「禰豆子ちゃんは、そんなことはしない……!」

「お前は黙ってろ、不細工が私に話しかけていいとでも?(コイツ……刀を抜いて、また鞘に納めてる……?)」

 

善逸は構えたままで、堕姫の目を見た。

 

「何?その目?またその目……あの時と同じね、怖くて震えてるくせに、見栄張って庇って……みっともないわね」

 

「ね、禰豆子ちゃんに……そ、それと、怪我させたあの子にも、……あああ謝れ……!謝れよ!」

 

堕姫は何も答えない。

 

「――親分を置いてくんじゃねえ!!」

 

伊之助が合流して、刀を構える。

 

 

 

 

 

前触れもなく、堕姫の額が割れて、目が現れた。

 

「どいつもこいつも……さっさと死になさいよ!」

 

宙を漂う帯が速さを増して襲いかかり、さらに続けて、どこからともなく血の刃が飛んでくる。

 

絶え間ない攻撃を避けるのに必死で、三人は反撃に転ずることができない。

 

堕姫に近づくほどに攻撃の密度が上がる中、堕姫からの距離は近い順に、伊之助、善逸、禰豆子となっていた。

 

 

 

「特に血の刃はやべぇ!!掠っただけでも死ぬってのを肌で感じるぜ!」

 

言うや否や、刃が禰豆子を掠める。肩をザックリと切られた彼女は、さらに距離をとった。

 

「大丈夫か!?」

「禰豆子ちゃん!?」

 

「……はい!」

 

(毒があるといっても、私にはあまり効かないみたい……それでも、これ以上傷を受けるわけには……!)

 

 

 

「死ぬ!!死ぬ!!嫌ぁあああ!」

「オイ!?」

 

(紋壱(もんいち)のヤツ、起きたまんまだからか、ビビってうまく動けてねえぞ……!いも子も攻撃を見切れてねえ……!クソ!!どうする!?)

 

(遠い、近づけない……!このままじゃ私、足手まといだ……!)

 

 

 

――禰豆子が突然、真っ直ぐ駆け出した。

前の二人を追い越して、堕姫に向かっていく。

 

「禰豆子ちゃん!?」

「オイどうした!?危ねえぞ!?」

 

 

「ど素人のアンタが、術も使わずに何のつもりよ!?」

 

大量の帯が禰豆子に迫る。

 

――不意に禰豆子の身体が小さく縮んだ。

そのまま、隙間を縫うように近づいていく。

 

「(子供の姿?攻撃が当たらない……)ちょこまかとウザったいわね!!」

 

血の刃を飛んで避けた瞬間、その一瞬、帯の攻撃が禰豆子に集中する。

 

「俺たちも行くしかねえ!」

「禰豆子ちゃぁぁあん!!!」

 

伸びきってから折り返して禰豆子を狙う帯を、二人が叩き切る。

禰豆子はその援護を受けて、ギリギリで相手の懐に潜り込んだ。

 

「そんな小さな足で蹴るつもり!?笑わせないで!!」

 

 

 

「――血鬼術、爆血!!」

 

 

 

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