なあ、【GGO】民よ、…………【EFT】って知ってるかい???   作:ulo-uno

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ふぅ……。

やっと書き終えた……。




第四話

<side ???>

 

 

――――――――――――カサ、カサカサ……

 

空がほんのりと白く染まり夜の帳が無くなろうとしている頃、木々が生い茂る森を二人の男が駆け抜ける。

 

そんな彼等はまるで朝帰りとでも言うかの如く足取りが遅いがその一方で彼らの表情は子供の様に輝いて見えるようであった。

 

「ふぅ……。やりましたね先輩!まさか、こんなにもいい収穫になるとは思いもしませんでしたよ!!」

 

「バカッ!!声が大きい!……だがまあ、これで分かっただろう?例え隠しスタッシュ巡りとは言え時と場合によっちゃとんだお宝も出るんだよ」

 

「すんません、気を付けます。……それにしてもこんなにいい穴場を知ってるんだったらもっと早く教えてくださいよ~」

 

「バカヤロウ……。俺だってこれで稼いでるんだ。……確かにスタッシュ巡りは同業者も多いが時間帯によってはその限りじゃねぇ……。だからこそ時間帯が被るのは避けたいんだ。特に俺みたいな中堅止まりの奴はな」

 

「なるほど……。でも俺もそこまで強い訳じゃないんで先輩と一緒に行動したいんですけど……」

 

「嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか……。まあ、お前が俺くらい戦闘ができるようになってスタッシュの場所をある程度覚えるまでは一緒にいてやるさ」

 

「有難うございます、先輩!!」

 

「バカッ!!だから声が大きいいとi――――――――――――パスンッ……!!!!――――――――――――ッ!?クソッ!!」

 

先輩が声の大きい後輩に再び注意しようとしたその時後輩の頭部を一発の弾丸が過ぎ去る。

 

……クソッ!!やはり、アイツには《Woods》は早すぎたか!!

 

こんな事なら《Customs》にしておけばよかった。

 

そう思うもすでに遅し……彼の後輩は死亡判定が出ておりもう救う事ができない。

 

ならばと思い後輩の落としたアイテムを持ち帰ろうと思うも今の己ではアイテム量の超過で隠れることで精いっぱいだった。

 

彼は今までの経験則から隠れていた物陰から頭を出し自身らを狙ってきたスナイパーのおおよその位置を割り出す。

 

……少しでも違和感わないかッ……?

 

AIMにはそれなりの自信がある。

 

だが、そんな彼であったが暫くそのままの状態が続いたことである思考が横切った。

 

……もう、敵はいないんじゃないか?

 

自身らは2人組……スナイパーからは先程まで後輩しか見えていなかったが撃った後俺の存在に気付き撤退した。

 

それは、恐らくまだ見落としがいるのではないかと言う不安から……。

 

そう思った彼は、匍匐しながら後輩が落としたアイテムの所へと向かう。

 

……なんだ、やはり敵は既にいないんじゃなi――――――――――――パスンッ……!!!!

 

後輩が落とした装備を拾ったところで彼は後輩と同じ運命をたどることとなった。

 

彼が倒れた逆の方向……その先には茂みに身を隠し、じっと彼が倒れた場所を覗いているスナイパーライフルだけを持った男がいた。

 

……YUETU部である。

 

 

 

<side out>

 

 

 

<side 主人公>

 

 

 

 

ふぅ……。

 

今回はかなり手古摺ったな……。

 

そう思いながら俺はDVL-10のマガジンに再び弾を込める。

 

この作業をやれるときにしておかないといざと言うときに使えなくなる。

 

それに今回はこの武器だけ……しかもボディーアーマー、リグ、ヘッドセット、その他諸々何も持ってきていない。

 

あるのはこのDVL-10と緑のインナー、ズボン、弾薬しか入っていない最小限のバックパック。

 

……ん?こんな装備で戦えるのかって?

 

ハッ……戦るわけないだろ。

 

じゃぁ何でこんな装備できてるのかって?

 

そりゃあおめぇ金策の為に決まっているだろう……。(←嘘です)

 

俺だってこんな芋砂の真似なんかしたくないよ。(←嘘です)

 

まさか、この俺が只々YUETUの為だけにこんな事をしているとかそういう理由では断じてない。(←そう言う理由です)

 

……まあ、信じてくれると有難い。

 

さてと、誰も来る様子はないな……取りに行くか。

 

そう思って先程俺が倒した奴らの残していったアイテムを見に行こうとする。

 

バックパックごと落としていってくれていたら大当たり、銃弾の類なら物による、“保険”が掛かっている武器なら返さねばならない。

 

……いや、別に貰って行ってもいいか。

 

だって今の俺《PMC》だし……。

 

そう思い隠れていた茂みから立ち上がろうとする。

 

……?

 

何だ……何か動いたか?

 

再び茂みに隠れて匍匐しながら別の茂みに移動する。

 

もし、今のが本当に何かいたとするならば確実に見られていたと考えた方がいい。

 

戦場では慎重になり過ぎることも時には重要である……例えそれがゲームとは言え。

 

……だが撃ってこなかった事から相手はアイアンサイト、またはSG(ショットガン)HG(ハンドガン)……もしくは反動が大きすぎる物、大穴でナイファーと言ったところか……。

 

先程の場所から十分移動したところで再び茂み越しにスコープを覗く。

 

水や食料、医療キットの類はそもそも持ってきてすらいなかったが既に“調達済み”だ。

 

まだしばらくは此処で粘ることができる。

 

……1……2……3…………全員で5人か。

 

しかし忘れてはいけない、もしかすればまだ見えていないだけで他にもいる可能性は存在する。

 

相手は見る限りでは5人それぞれ見た目こそ違うものの皆顔を隠していること、そしてスコープ越しに目を凝らしてよく見ると確かに見える特徴的な二つの刃が付いているナイフ。

 

「カルト集団か……」

 

……殺れるか?この装備で……。

 

上手くことを運べばあるいは……。

 

此処で突然ではあるがDVL-10と言うSR(スナイパーライフル)について少しだけ開設させていただきたい。

 

DVL-10とはコッキング式のSRで10発のマガジンを装填でき、反動が他のSRよりも少ないため発砲後の弾着確認がし易くなっている。

 

だが、この武器の最大の特徴はサイレンサーである。

 

この、DVL-10は他のSRと違って銃口部への後付けではなくバレルと一体化する事ができるためよりコンパクトにすることができる。

 

また、バレルと一体化することによってその消音性能は同格に存在する他のSRの追随を許さない程である。

 

……カルト集団(奴ら)狩猟領域(テリトリー)にはまだ入っていない。

 

だが、あそこにあるアイテムを取りに行けば間違いなく彼らのテリトリーに入ることになる。

 

俺がリアルでは彼らの雇い主であるとかそんなことは考えから既に除外済みである。

 

そもそもの話こちらが既に彼等と戦うか逃げるかしか考えていない状況だ……平和的に、なんて言葉は不必要である。

 

…………殺るか。

 

現地調達した大きめのバックパックに戦闘に必要ないものは全て入れる。

 

そのバックパックを茂みに残し別のポイントまで向かう。

 

此処からでは木々が邪魔になり過ぎているからだ。

 

……カルト集団……俺がまだ前世で【EFT】をやってた頃にほんの数回しか遭遇したことのないNPC……まあ、今ではもうNPCじゃなくなってるけどな。

 

でもだからこそ柵に引っかかったりするような真似はない……ある意味強化された。

 

……本当にあいつ等元はホームレスだったんだよな?

 

本当はどこかの国の軍人だったり傭兵だったりするとか……いやそれはないか。

 

だって、此処日本だし……そんなもんいる訳ない……よな?

 

謎は深まるばかりである。

 

っと、……戦闘前によそ事はいかんな。

 

例え、中身が違うとはいえ前世と同じかそれ以上の強さになっているカルト集団……彼等と戦うと言うのによそ事ばかり考えていたのでは万が一にも勝てる訳がない。

 

……よし、十分に射程圏内……あいつ等が漁っているところを――――――――――――

 

「そんなに熱心に何を見ている?……後ろがお留守だぞ?」

 

「ッ!?―――――シィッ!!」

 

 

 

――――――――――――パスンッ……!!!!

 

 

 

「ッ!?ととと、……やはりなかなかやるな。こんな奴が大企業の社長とは信じ難い。……なぁ?タルコファー」

 

「おいおい、……ゲーム内(此処)じゃぁリアル(向こう)の話はタブーだぜ?Zhrec(司祭)?」

 

向き合う二人……タルコファーとカルト集団の司祭(ボス)《Zhrec》だ。

 

Zhrecと呼ばれた男は先程のタルコファーのSRを至近距離で受け赤いエフェクトを映し出していた。

 

だがそんなことも気に掛けずに悠然とそこに構えていた。

 

「此処でやり合おうってか?その武器じゃお仲間が気付いてくれないぜ?」

 

彼……Zhrecの持つ武器AS-VALは消音性能の高い武器……それもDVL-10と同じく銃口ではなくバレルそのものがサプレッサーとなっている。

 

これが前世なら彼の部下も気付けたかもしれないが生憎とここは【GGO】である。

 

EFT(あの頃)】とはまた性能が異なるのだ……悲しいことに。

 

「気付いてもらう必要はない。……既に彼等も気付いている。が、そのうえで“儀式”は俺一人でやる」

 

「ハハハ……。これは厄介なことで」

 

全く厄介な……。

 

此処でナイフを使ってくるとは。

 

そう思い俺はM-2 Swordを取り出す。

 

「ほう……。俺相手に近接武器か……。よほどのご自身があるようで?」

 

「バカ言え……。苦渋の策だよ。俺が、お前相手にこの距離でSRで挑むほど俺も馬鹿だと思うのか?」

 

「サブを忘れたお前が言えたことか」

 

ウグッ!?

 

事実だからなんも言えねぇ……。

 

全く……痛いところを突いてくる。

 

「まあ、そもそもここでカルト集団(お前等)会うこと自体予想外なもんでなッ!!」

 

軽くけん制を兼ねてM-2を横に払う。

 

この時やってはいけないことは体を前傾姿勢させることだ。

 

もしそれをやってしまうと――――――――――――

 

――――――――――――シュッ!!

 

Zhrec(相手)の持つナイフの範囲圏内になってしまうからだ。

 

もしこれが【GGO】内に出回っている()()()ナイフや光学近接武器(フォトンソード)なら多少範囲圏内に入ってしまおうがこのM-2でゴリ押しすれば勝てる。

 

このナイフにはそれだけの性能(スペック)がある。

 

だが、Zhrec(コイツ)……いや、カルト集団(こいつ等)が持っているナイフは例外だ。

 

Cultist's knife

 

その刃に切り付けられた相手に“不明な毒”を付与する言ってしまえば“属性武器”。

 

一回でも喰らうと問答無用で毒状態になると言うハッキリ言ってヤバい武器。

 

これだけでもそれを戦闘の途中でもらう事がどれだけ危険なことか分かるだろう。

 

そんな武器をカルト集団内最強(コイツ)が使うとか……マジでぶっ壊れなんだよなぁ……。

 

 

 

――――――――――――ガキッ!!!!

 

 

 

……え?

 

今何をしたコイツ……?

 

自身の武器のリーチを生かして戦える間合いを維持していたのに()()()()()()()()()()だと?

 

…………まさかコイツッ!?!?

 

「気付いたようだな……。やりやすかったぞ……お前の武器を()()()()()()()()。もしこれが斧の類であれば勝敗は分からなかっただろうな」

 

……嵌める?

 

……。

 

そう言う事か!!

 

コイツ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のか!?

 

マジかよコイツ……【EFT(あの頃)】よりも確実に強くなってる……いや、強くなってるどころの話じゃねぇ、此処まで来ればこれはまるで“進化”だ。

 

「トリックが分かったようだな?だが、此処まで来るのには苦労はしなかったぞ?なんせ、新参者のナイファーで練習した(練習には事足りなかった)からな」

 

「なるほど……。可哀そうなことで」

 

「ハッ!そんなこと思っていないだろう?……まあ、時間も時間だ。……そろそろ“儀式”も終わりとしよう」

 

マズいな……。

 

ゲーム(世界)は違えども【GGO(此処)】でも素手なんて殆どダメージなんてあって無いようなもんだ。

 

M-2を奪われた時点で俺の近接手段はほぼ失われたに近い。

 

それを分かっていてZhrecは俺にゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「そう言えばZhrec。……俺がさっき何を言ったか覚えているか?」

 

「いまさら何を……」

 

相手との幅約1m……どちらかが行動(ワンアクション)を起こせばやりようによっては状況が変わる位置。

 

そのラインで俺はZhrecに声をかける。

 

……そこで足を一旦止めこちらの様子を伺うか……そうでないと困る。

 

「俺は言ったよな?……()()()()()()()()()()S()R()()()()()()()()()鹿()()()()()()()?()って」

 

「ッ!!」

 

肩を支点とし、後ろに背負っていた(マウント)していたDVL-10を素早く構える。

 

Zhrecも直ぐに詰め寄ってきていたがそこはDVL-10(コイツ)の銃口が頭に来るほぼ直線の位置!!

 

だが、それは奴も理解していて下に避けてさらに詰めようと強く踏み込む。

 

……だよな、お前ならそうするだろうな。

 

Zhrecは俺から見るに根っからのナイファーでもある。

 

既に距離を詰めている以上武器の持ち替えは無理と判断したことだろう。

 

ならば、一発目を避けそのうえで二発目を撃たせないその姿勢になることは()()()()()!!

 

先程の位置であれば奴の頭とほぼ直線の位置だった銃口が奴の眉間と丁度直線的に向き合う。

 

Zhrecもそれに気付いてさらに深く姿勢を取ろうとするが――――――――――――

 

 

外さねぇよ?

 

 

 

 

――――――――――――パスンッ……!!!!

 

 

 

 

DVL-10から放たれた弾丸は銃口から出ると真っ直ぐにZhrecの眉間に吸い込まれた。

 

その弾丸を受け倒れたZhrecにこう言い放つ。

 

「さっきの質問の答えだが……如何やら俺は馬鹿だったようだ」

 

その言葉を聞き届け彼は無数の破片(ポリゴン)となって散っていた。

 

「で?……そこで見ているお前等はどうするんだ?……って、いねぇし。どこ行ったんだあいつ等?」

 

教徒がいた場所や辺りの茂みに目を凝らすも何もいる気配はない。

 

如何やら既に帰っていたようだ。

 

「まあ、いいか。……それはそうと…………ハロウィンの借りは返したぜ、Zhrec(司祭)?」

 

既にいなくなった場所を見てそれだけを呟く。

 

「さて、俺もそろそろ帰るとしますかね」

 

もう絶対に《Woos》じゃYUETUなんてしねぇ……そう固く俺は誓ったのであった。

 

いつもの起床時刻まで残り1時間……それに気付くことなくログアウト。

 

彼の悲鳴が聞こえるのはもう少し先である。

 

 

 

<side out>




この度は、この様な小説を読んで下さり誠にありがとうございます。

更新が遅くなり大変申し訳ございません。

(。´・ω・)ん?何でこんなに更新が遅くなったのかって?

全部チーターがいけないんだ……あいつ等壁越しにずっと撃ってきて……。

後はCoDで凸砂極めてたり…………。

おっと、そろそろヘッショ抜かれそうなので退散するよ!

あ、それと司祭の話は3割真実。

実際にDVL-10で近距離ヘッショをまぐれで出したことがある。

筆者自身も物凄く驚いた。

…………まあ、その後に他のPMCに集団リンチかまされたけど……。

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