敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079 作:霧島 碧
「メシだってよ」
手を振るディアの声に、オレはサジとナオの背中を叩き二人をうながす。
「へへ───」
ゴシゴシと涙をぬぐったサジが、ナオが、笑ってオレを見上げる。
オレはサジ、ナオと一緒に家に向かってヤードを歩き出す。
───途中、オレはヤードの一角に並べられたジャンクに気づき、足を止めた。
『こいつは────?』
そこに積み上げられていたのは、小型の作業用エレカだった。
サハドは暗くなってから帰ってきた。
「おかえりなさい」
「食事にしてくれ」
声をかけるディアに顔を向けるでもなく応えるサハド。
「できていますから、すぐ───」
広間に料理が並べられ、食事がはじまった。今日はサミとナオも一緒だ。
「いっただきまーす!」
サミとナオの元気な声で食事ははじまった。
「────で、どうだったんだ。
ジオンと接触できたのか?」
料理を口にしながらオレはサハドに問いかける。
「それほど簡単に連絡がつくなら苦労はせん。
コネを持っていそうな人間に内密で依頼をしてきただけだ」
サハドの答えは素っ気ない。だが、それはそうだろう───
連邦のジオンに対する反攻作戦後の状況を考えれば、簡単にジオンに接触できるとは、オレにも思えなかった。
「まあ2,3日中には何か言ってくるだろう。気長に待て」
「そうか────」
オレは言葉を切り、話題を変える。
「ところで、ヤードに作業用エレカが何台も積んであったが
あれは何か使い道があるのか?」
「うん───?」
サハドが、何を言い出すのかと視線を上げる。
「あれは南にあった農業試験施設で使われていたエレカだ。
戦闘で施設が放棄されたので回収してきたんだが───」
「売る予定とかはないのか?」
「ああ───」
「それなら、1台直して使えるようにしてもかまわんな」
サハドはいぶかしげに眉を寄せる。
「あんなもの直してどうする?
施設内で使う小型エレカだ、
回収してきたものの、走行距離が短くて売り物にゃならん。
施設では、太陽電池の充電ポストがそこら中にあったから使えただろうが───」
「ほう、太陽電池パネルも積んであったが充電ポストのものか。
そいつも使えるな────」
「バッテリーをフルに充電しても、一番近くの街まで往復できるか怪しい。
放置していたエレカだ、使っている途中で故障することだってある」
サハドがあきれ声でオレを見る。
「朝、水を汲みに行くには充分だろ?」
オレは料理を口に運びながらこたえる。
「え!」
食事をほおばったままサミが驚きの声をあげ、台所のディアがふりむく。
「エレカ直してくれるのかい?
クロウにーちゃん!」
「ああ、やることもないしな」
「「やったー!」」サミとナオが顔を見合わせ歓声を上げる。
「よかったわね」
会話を聞いていたディアがチャイを運んできた。
「でも、直せるの?」
「ごあいさつだな───」
オレは苦笑した。
「空間作業機の整備資格だって持ってるし、モビルスーツの評価試験もやってたんだ。
内燃エンジンの車は無理だが、エレカぐらいどうにでもなる」
エレカの状態はざっと確かめておいた。状態のよい車をベースにして、壊れた部分は、他の車から使えそうな部品を外して交換すれば、稼働させるのにたいした手間はかからないだろう。
「好きにしろ────」
サハドがあきらめたように言う。
「ワシは明日、別の街へ行ってくる。
ガレージにあるフォークリフトや工具は適当に使っていい。
だが、ガレージや、この家の前で作業するな。
表から丸見えだからな。」
「わかってるよ、その辺はうまくやる」
オレははしゃぐサミとナオを相手にしながらこたえた。
『こいつら、いつの間に仲良くなりやがった・・・・・』
いつの間にかうちとけているオレ達を、サハドは不審げな目で見つめていた。
次回「エレカ」