敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079   作:霧島 碧

10 / 48
1-8 ジャンクヤードⅡ

「メシだってよ」

 

 手を振るディアの声に、オレはサジとナオの背中を叩き二人をうながす。

 

「へへ───」

 

 ゴシゴシと涙をぬぐったサジが、ナオが、笑ってオレを見上げる。

オレはサジ、ナオと一緒に家に向かってヤードを歩き出す。

 ───途中、オレはヤードの一角に並べられたジャンクに気づき、足を止めた。

 

『こいつは────?』

 

 そこに積み上げられていたのは、小型の作業用エレカだった。

 

 

 

 サハドは暗くなってから帰ってきた。

 

「おかえりなさい」

 

「食事にしてくれ」

 

 声をかけるディアに顔を向けるでもなく応えるサハド。

 

「できていますから、すぐ───」

 

 広間に料理が並べられ、食事がはじまった。今日はサミとナオも一緒だ。

 

「いっただきまーす!」

 

 サミとナオの元気な声で食事ははじまった。

 

「────で、どうだったんだ。

 ジオンと接触できたのか?」

 

 料理を口にしながらオレはサハドに問いかける。

 

「それほど簡単に連絡がつくなら苦労はせん。

 コネを持っていそうな人間に内密で依頼をしてきただけだ」

 

 サハドの答えは素っ気ない。だが、それはそうだろう───

連邦のジオンに対する反攻作戦後の状況を考えれば、簡単にジオンに接触できるとは、オレにも思えなかった。

 

「まあ2,3日中には何か言ってくるだろう。気長に待て」

 

「そうか────」

 

 オレは言葉を切り、話題を変える。

 

「ところで、ヤードに作業用エレカが何台も積んであったが

 あれは何か使い道があるのか?」

 

「うん───?」

 

 サハドが、何を言い出すのかと視線を上げる。

 

「あれは南にあった農業試験施設で使われていたエレカだ。

 戦闘で施設が放棄されたので回収してきたんだが───」

 

「売る予定とかはないのか?」

 

「ああ───」

 

「それなら、1台直して使えるようにしてもかまわんな」

 

 サハドはいぶかしげに眉を寄せる。

 

「あんなもの直してどうする?

 施設内で使う小型エレカだ、

 回収してきたものの、走行距離が短くて売り物にゃならん。

 施設では、太陽電池の充電ポストがそこら中にあったから使えただろうが───」

 

「ほう、太陽電池パネルも積んであったが充電ポストのものか。

 そいつも使えるな────」

 

「バッテリーをフルに充電しても、一番近くの街まで往復できるか怪しい。

 放置していたエレカだ、使っている途中で故障することだってある」

 

 サハドがあきれ声でオレを見る。

 

「朝、水を汲みに行くには充分だろ?」

 

 オレは料理を口に運びながらこたえる。

 

「え!」

 

 食事をほおばったままサミが驚きの声をあげ、台所のディアがふりむく。

 

「エレカ直してくれるのかい?

 クロウにーちゃん!」

 

「ああ、やることもないしな」

 

「「やったー!」」サミとナオが顔を見合わせ歓声を上げる。

 

「よかったわね」

 

 会話を聞いていたディアがチャイを運んできた。

 

「でも、直せるの?」

 

「ごあいさつだな───」

 

 オレは苦笑した。

 

「空間作業機の整備資格だって持ってるし、モビルスーツの評価試験もやってたんだ。

 内燃エンジンの車は無理だが、エレカぐらいどうにでもなる」

 

 エレカの状態はざっと確かめておいた。状態のよい車をベースにして、壊れた部分は、他の車から使えそうな部品を外して交換すれば、稼働させるのにたいした手間はかからないだろう。

 

「好きにしろ────」

 

 サハドがあきらめたように言う。

 

「ワシは明日、別の街へ行ってくる。

 ガレージにあるフォークリフトや工具は適当に使っていい。

 だが、ガレージや、この家の前で作業するな。

 表から丸見えだからな。」

 

「わかってるよ、その辺はうまくやる」

 

 オレははしゃぐサミとナオを相手にしながらこたえた。

 

『こいつら、いつの間に仲良くなりやがった・・・・・』

 

 いつの間にかうちとけているオレ達を、サハドは不審げな目で見つめていた。

 

 

 

 




次回「エレカ」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。