敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079   作:霧島 碧

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2-4 接触

「照明を見つけてきたぞ」

 

「「おお~っ!」」

 

 オレがLED照明のブラケットを持ち上げて見せると、サジとナオが歓声を上げた。

サジとナオの暮らすコンテナに取り付けるため、電気関係のジャンクが納めてある倉庫代わりのコンテナをあさってきたのだ。エレカのバッテリーから引いた直流電流を交流に変換するためのインバーターも探し出してきた。無論、サハドには事前に言ってある。

 

「コンセントを付けて、ちょっとした電気製品も使えるようにしておく。

 ───と言っても、ミノフスキー粒子のせいでラジオやテレビは無理だがな」

 

「「やった~!」」

 

 喜びのあまり二人は踊りだしそうな勢いだった。

マスードのやってきた翌日から、サハドはリストの物資を確保できるかを知る為に、奔走をはじめた。

オレはその間、朝はサジやナオと一緒にエレカで水汲みに行き、昼は二人の住むコンテナに電気配線を行い照明を取り付けた。さらに、ディアに頼まれてシャワールームの配管を直したり────そんな風に時間が過ぎていった。

それはオレにとって、地球に降りてからはじめての穏やかな日々だった。だが、それが長くは続かないであろうことをサジ、ナオ、ディア───そしてオレもよく分かっていた。

 

 

 昼食を食べているとき、車の近づいてくる音が聞こえた。

オレはサジ、ナオ、ディアの3人に『座っていろ』と手で指示して立ち上がり靴を履くと、窓の横に身を隠しながら外をうかがう。近づいてくるのは見覚えのある車だった。

 

『あの車は───』

 

 

「お出迎えとはいたみいるね」

 

 家に入ってきたマスードは、とぼけた声で玄関横に立っていたオレに言った。

 

「出迎えたわけじゃない」オレは不機嫌な声で答える。

 

「お食事中だったかね?」

 

 マスードはオレの背後───広間に並ぶ昼食を覗きこんだ。

 

「うまそうだな───

 ご馳走してくれるかねディア」

 

「あ、はい・・・・

 ちょっと待ってください」

 

 愛想のいいマスードの言葉に、ディアが口元をぬぐって立ち上がろうとする。

 

「まさか、メシを喰いに来たわけじゃないだろうな・・・・・」

 

 オレは広間に上がり、座り込んだマスードを見下ろして言う。

 

「ああ、ラブレターを持ってきたのさ」

 

 マスードは人の悪い笑顔で封筒を取り出しオレに見せる。

その封筒が何を意味するのか悟り、オレは緊張した。

 

「ジオンからか────」

 

 オレの言葉に、驚いたナオとサジが顔を上げ、台所に向かおうとしていたディアが振り向く。だが、オレはそれに気づかずマスードから封筒をひったくると封を切る。広げた紙面に目を走らせ、内容を理解したオレはマスードに向き直る。

 

「何だ、これは・・・・」

 

「さて、何が書かれているのか・・・・

 俺は内容まで知らんのでな」

 

 肩をすくめるマスードの顔にオレは紙面を突きつける。そこに書かれているのは日時と簡単な地図、待ち合わせ場所の指示、それに『独りで来られたし』という短い文章だけだった。マスードは目を寄せてそれを見ると、あいかわらずとぼけた顔で言う。

 

「取り引きの打ち合わせをしたいと言っているんだろう」

 

「そんなことは分かっている。

 なぜオレに関する連絡がない!」

 

「そりゃ、あんたのことは伝えていないからだ」

 

「なに!?」

 

「言っただろう『俺が手配するのは物のやりとりだけで、人のやりとりはしない』────ってな。

 一昨日、サハドが『物資をそろえられる』と連絡してきた、

 俺はそれをジオン側に伝えただけだ。

 あんたのことは打ち合わせのときサハドからジオンに伝えてもらえ」

 

「そんなに悠長なことはやってられん」

 

 一刻も早く軍と合流したいオレは、イライラと部屋を歩き回る───そして立ち止まるとマスードを振り向き言った。

 

「オレも打ち合わせに同行するぞ」

 

 オレは誰よりも自分に対して言いきった。だが、そんなオレを見ながらマスードはのんびりと口を挟む。

 

「やめた方がいいんじゃないか?

 ジオンの連中は今ピリピリしてるぞ」

 

 マスードは言いながら首をふる。

 

「まあ、どうしてもというなら止めんがね」

 

 そこへ、マスードの食事をディアが運んできた。

 

「おお、こりゃうまそうだ」

 

 料理を見たマスードが声を上げ、絨毯の上に座り食いはじめるのを、オレは憮然として見つめていた。

 

 

『やっぱりいなくなってしまうのね────』

 

 ディア、ナオ、サジが気遣いと不安の入り混じった目を向けていることに、そのときクロウは気づいていなかった。

 

 




次回「酒場」
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