敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079   作:霧島 碧

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2-6 酒場

「グッ───」

 

 目の前が一瞬真っ白になり、オレはレンガの床に前のめりに倒れこむ────

扉の脇に立っていた男が、持っていたアサルトライフルのストックで自分を殴りつけたのだと分かったのは後になってからだった。間髪を置かずドアが閉じ、いくつかの銃口がひざをつくオレと、オレの前に立つサハドに突きつけられていた。

オレ達を案内してきた男も、どこからか取り出したナバン62式───ジオン軍の制式拳銃───を手にしていた。

 

「取り引きは一人だったはずだ・・・・」

 

 男がサハドに向けて低い声をかける。

倒れたオレの身体を這い回る手の感触───それは腰の後ろで止まり、探り当てたホルスターの中から拳銃を取り上げる。

 

「M‐71?」

 

「連邦の犬だ・・・・・殺せ・・・・・」

 

 別の方向から聞こえた声がオレのことを指していると気づき、オレは顔を上げ、声を張り上げる────

 

「自分は戦略資源採掘部隊・第10MS中隊 第7小隊所属───」

 

 すべてを言い終えぬうちに何者かの靴がオレの腹を蹴り上げる。

 

「ガハッ!!」

 

 重い衝撃に、意識が途切れそうになる・・・・・・だがオレはきれぎれに申告を続けた────

 

「・・・・クロウ・・・ギーケイ少尉だ・・・・」

 

 床に張られたざらついたレンガの感触を頬に感じながらかろうじて視線を上げる。

 

「ジオン軍人がM‐71など使うものか───」

 

 オレを取り囲む男たちからは敵意の視線しか帰ってこなかった・・・・・

かすむ目の先────カウンターに腰掛けた金髪の男が、物憂げにタバコをくゆらしている・・・・・

 

 

 奥のカウンター席に腰をかけた男は、酒場の狭い空間の中で起こっている騒ぎが、まるで別世界のことのように泰然とした姿勢を崩さなかった。だが、男はクロウの言葉に顔を上げると、首をひねり床にくずおれている男に視線を向ける────

 

「・・・・クロウ・ギーケイ少尉?」

 

 つぶやいたその声は小さく、誰の耳にも届かなかった。

 

 

 オレは冷たいレンガに頬を押し付けたまま、目だけを動かし周囲をうかがう。

全部で10人といったところか?軍服を着ているものはいないようだ。現地人のような服装をしているが、全員が銃器を手にしている。入り口でオレを打ち据えた男はアサルトライフルを持っていたようだが、多くの者が手にしているのは小型の銃器が多い。 サブマシンガン、そして拳銃───ナバン62式、ヴァルタP08を握る者もいる。

 

『クソ・・・・・』

 

 周囲にいる男たちが自分をスパイあつかいしている───それを知ったときオレに湧き起こったのは、笑いの衝動だった。

コンウェル基地の同胞を逃がすためにたった一人で3機のGMと交戦し、荒野を彷徨い、ようやくめぐりあったジオン軍人にスパイ扱いされている不条理とすら言える状況。

───だが、これは活路を開くために利用できるかもしれない。

 

「クッ、ククク・・・・・・」低い笑い声がオレの唇から漏れる。

 

「クハハ・・・アーハッハッハッ・・・・・・」

 

「貴様、何がおかしい!」

 

 目の前にいた濃いあごひげの男がオレの襟首をつかみ、引き上げる。

 

「これが笑わずにいられるか。

 まさかよりによって偽ジオン軍に取っ捕まっちまうとはな!

 オレもヤキがまわったもんだ・・・・」

 

「なに!?」

 

「ケッ!

 ナバンをありがたがって使うジオン軍人がどこにいる!?

 オレはお目にかかったことがねえよ!!」

 

 偽ジオン呼ばわりされ睨みつける男に、オレは嘲笑を浴びせ、吐き捨てた。

 

 ジオン公国軍の制式拳銃であるナバン62式はトグル式のスライドアクションを採用している。設計者にどういう意図があったのかは知らないが、整備性が悪いうえに、装弾数も少ない。総じてジオン軍人には不評だった。

ナバン62式の数少ない美点が小型であることだ。月面都市防衛司令部───いわゆるグラナダでは、MSのコックピットに小銃を装備しておくことが推奨されていた。しかし、MSの狭いコックピットに小銃を置くことを嫌がるパイロットも多く、代わりというわけでもないが、ナバン62式をサイドアームとしてMSのコックピットに持ち込むパイロットも多かった。だが、それはMSパイロットが宇宙において銃を実際に使う機会が、事実上ほとんどない───ゆえにナバンでもかまわないという消極的な理由によるものだった。

───かつてオレは月において、コックピットの小銃を使用せざるを得ない状況になった。そして、そのとき手に入れた連邦のM‐71を、以後愛用するようになっていた。

 

 オレは彼等を偽ジオンと挑発し、ナバンがジオン軍人にあまり評価されていないことを揶揄した。自分がジオン軍人であるとの主張を逆説的に行ったのだ。

目の前の男にとまどいの表情が見える。オレの言葉に真実を見出したのだろう。周囲の男の中には、自分の手にしたナバンに渋面で視線を落とす者までいる。

 

 カウンターにいた男が立ち上がり、こちらに向かって歩を進めるのが目の端に見えた。

周囲の男達がハッとしたように彼に視線を集中させ、沈黙する。それだけで、彼がこの男たちを率いる指揮官であることが理解できた。

身を引いて道を開ける男たちの前をオレに向かって歩いてくる男。彼はオレのM‐71を取り上げた男の前で止まり、手を差し出す。

 

「よこせ」

 

 その言葉に従い、オレから取り上げたM‐71が差し出され───男の手に渡った。

受け取った銃の値踏みをするように見つめた後、弾倉(マガジン)を外すと残弾を確認し再装填する。セイフティを外しスライドを引いて弾丸をシリンダーに送り込むと、その銃口を見下ろすオレに向けた・・・・

 

「クロウ・ギーケイ少尉と言ったな」

 

 苦悶の中、突きつけられた銃口を前に精一杯にらみ返すオレと、薄いサングラスの下から見つめる酷薄そうな視線が交錯した────

 

「少佐、デタラメに決まっています!」

 

「黙れ!!」

 

 少佐と呼ばれた男は、鋭い声で部下らしい男の言葉を退けた。

そして銃口を俺に向けたままで言った。

 

「どこでこの銃を手に入れた?」

 

「グラナダで・・・・GMパイロットからの戦利品だ」

 

 オレの言葉が意外だったのだろう、周囲の男達が声もなく顔を見合わせる。

 

「オレはもともと月面都市防衛司令部───グラナダの防衛部隊に所属していたMSパイロットだ。

 だが、連邦の反攻作戦に備え、戦略資源採掘部隊の補充要員として地球に降りた」

 

 オレの言葉は周囲の男達を少なからず驚かせたようだった。

もし、オレが本当に連邦のスパイだったとして経歴を詐称するにしても、この答は作為的過ぎる───だが仕方がない、これは本当のことなのだ。

目の前の男は表情を崩さずに質問を重ねる。

 

「107小隊を含む第10MS中隊は全滅したと聞いている、なぜここにいる?」

 

 オレは男が第7小隊のことを107小隊と呼んだことに軽く驚いた。第7小隊に限らず、第10MS中隊に所属する小隊は、たしかに小隊ナンバーの頭に“10”を付けて呼ばれていたからだ。他の小隊との区別を明確にするためだろう。

オレはかろうじて身を起こすと膝をつき、痛みをこらえて答えた。

 

「オデッサに降りた自分は、移動先のコンウェル基地で107小隊と合流する予定だった。

 だが、合流前に連邦の反攻作戦がはじまった。

 107小隊は全滅、コンウェルに到着したのは102小隊の生き残りと、第4整備中隊だけだった・・・・」

 

 オレは続ける───

 

「デニス司令の指示によりコンウェル基地を放棄し、アデンへ脱出することになった。

 だが、その途中に連邦のGM部隊と接触。 

 自分はザクで交戦に入り───そのまま本隊とはぐれた」

 

 窓の少ない酒場は薄暗く、オレに銃口を向ける男の表情は読み取ることができない。それでも男がサングラスの下からこちらを見つめる強い視線をオレは感じていた───男は質問を続ける。

 

「君はザクで移動していたのかね?」

 

「移動はサムソントレーラーだった───」

 

「そのサムソンに乗っていた者───

 いや、同行者全員の名前を言いたまえ」

 

「───?」

 

 何を確かめようとしているのだろうか?男の意図が読めないながらも、オレはサムソンと、それに同行した整備兵を思い出そうとした。

 

「ハーヴェイ・ウェイド軍曹───」

 

 思い出しながら一人一人の名を上げていく。フルネームを知らない者も多かった。

 

「────そして、ハリー・オード軍曹とクルツ・シフェール三級整備兵」

 

 最後の名をオレが口にすると取り巻く男達がかすかにざわめき、その中にささやく声が聞こえた。

 

「・・・・クルツ・シフェール?」

 

「おい、こいつは・・・・」

 

 何が彼らを動揺させているのだろうか?クルツの名を最後に言ったのは、サムソンに同行していた人間の中で、彼だけがコンウェル基地の所属だったからだ。それ以上の意味はなかった。

 

『こいつらはいったい・・・・??』

 

 思考をめぐらすオレの前で、銃を構えた少佐がオレを見下ろして言う。

 

「最後の質問だ────」

 

 サングラス越しであるにもかかわらず鋭い視線はオレを刺すようだ。

 

「君はクルツ・シフェールから最後に何と言われた?」

 

「────!?」

 

 それはまったく予想外の質問だった。

質問の意図が理解できないオレは、言葉を発することができないでいた。そのオレに、鋭く問いかける少佐の声────

 

「答えろ!

 出撃する君に、シフェールは何と言った!?」

 

「あの時、クルツは・・・・・」

 

 オレは少佐と呼ばれる男を見上げ、つぶやいた。

トレーラー脇に立つクルツが、ザクに乗り込もうとするオレを見上げ、叫ぶ光景がよみがえる。風の中でクルツが叫んだ言葉が脳裏に響く────

 

 「帰ってきて下さいよ、ギーケイ少尉!

  待ってますからね────約束ですよ!!」 

 

「『帰ってきて下さい、ギーケイ少尉・・・待っている・・・』とクルツは言った」

 

 自分で口にした言葉だったが、それはまるで他人の声のようだった。

 

「『約束ですよ』と言ったのに───

 それなのにオレは、約束を・・・守れなかった・・・・・」

 

 やり場の無い想いとともに吐き出した言葉は震え、握りしめたこぶしが床を叩く───

 

「チクショウ!!」

 

 クルツは──、彼等はアデンにたどり着くことができたのだろうか?

果たすことのできなかった約束───、生死すら定かでない仲間達───

つかのま沈黙が暗い酒場を支配する・・・・

 

 

 顔を伏せるオレの頭上から、静かな言葉が投げかけられた。

 

「約束はこれから果たせばいい───」

 

 少佐だった────

その意外な言葉に、オレは顔をあげる。

少佐は銃を左手に持ち替えた。そして身をかがめ、オレに向かって右手を差し出す。

 

「コンウェル基地と第4整備中隊の兵は宇宙に帰ったぞ。

 むろんクルツ・シフェールもな・・・・」

 

「な───!」

 

 信じられない言葉に、オレは愕然として少佐の顔を見上げる───

少佐はその差し出した手でオレの腕を握り、グイと立ち上がらせた。

言葉の無いオレに薄く微笑むと、少佐はオレから視線を外し周囲を見回しながら背を向け、数歩距離をとる。

そして次の瞬間、声を張り上げた。

 

傾 注(アテンション)!!」

 

 ならず者としか見えなかった男達が、いっせいにかかとを鳴らし姿勢を正す。オレも痛む身体で反射的に背筋を伸ばしてしまった。少佐は向き直るとオレの目を見つめ、よく通る声で続けた。

 

「自らの身体を盾とし、同胞を救った英雄に対し────」

 

 短く言葉を切り少佐は言った──

 

「敬礼!」

 

 少佐と男達が一斉にオレに対し右手を挙げる。

軍服を着用しているものは一人もいない。だが、彼らは確かにジオン軍人だった────

一瞬、眼に映る男達の姿に戸惑いながら、オレもまた口元を引き締めると少佐に向かって答礼した。

張り詰めた空気の中、ひとりサハドだけが身を落ち着ける場所がなく、おろおろとうろたえていた。

 

「ラルフ・シュナイダー少佐だ。

 少尉、よく生きていてくれた」

 

 礼を解いた少佐が、おろした手でオレの肩を掴み、笑みを浮かべる───

 

「おい、手当てをしてやれ───」

 

 背後にいる男に指示を出し、少佐は慣れた手つきでM‐71の弾倉(マガジン)を外す。そしてM‐71をデコッキングして薬室の弾丸を取り出し、その弾丸を弾倉に戻す。最後に弾倉を再装填するとセイフティをかけた。

少佐はそのM‐71を黙ってオレの手に押し付けた。それを受け取ったオレは、酒場のテーブル席に座り頭の傷を治療されることになった。

 

 

 男達の一人が治療中のオレに声かけてきた。

 

「すまなかったな、大丈夫か?」

 

「あ?・・・ああ」

 

 戸惑いながら応える。どうやら先ほどオレを銃で殴りつけた男のようだった。

その男に続き、他の者も近づいてくる───

 

「あんたがボウヤの言っていた少尉か?

 よく生きてたな」

 

「歓迎するぜ、少尉」

 

「ボウヤが喜ぶぜ」

 

 口々にオレに声をかけ、無遠慮に肩や背中を叩いていく。

オレは状況が分からず混乱した───

 

『これはいったい・・・・?』

 

 説明を求めて少佐に顔を向ける。

彼らがサハドと取引の相談をはじめる中、少佐は男達の一人に調達物資の打ち合わせについて指示を与えるとオレに近づいてきた。そして酒場の隅にある階段を視線で示す。

 

「外の空気を吸わないか、少尉。」

 

 

 

 階段を登った先はそれほど高くない屋上だった。

乾いた風が吹き抜けていく────

シュナイダー少佐は大きく伸びをすると、低い壁によりかかり胸ポケットからタバコを取り出した。

 

「少尉、知っているか?

 貴様とクルツ・シフェールは、アデンではちょっとした有名人でな───」

 

『?? ────なぜだ?』

 

 困惑するオレの表情を楽しむかのように少佐はタバコに火をつける。そして空に向かって煙を吐き出すと話しはじめた。

 

「貴様と別れて3日後に

 コンウェル基地の兵はカイロ基地の哨戒部隊と接触した」

 

「!」それは初めて知る情報だった。驚くオレを見ながら少佐は続けた。

 

「コンウェル本隊は哨戒部隊のサポートを受けて、紅海沿いにアラビア半島を南下。

 2日後にアデン宇宙港へ到着した」

 

「そうか!無事たどりついたんだな?」

 

 喜ぶオレを見て、少佐が意味ありげに笑う。

 

「ああ───

 そしてその翌日、アデンで脱走騒ぎが起きた」

 

「脱走?」

 

「クルツ・シフェールがサムソントップでアデンを脱走した」

 

「な───!?」

 

 

 唖然とするオレにシュナイダー少佐の説明は続いた。

それによると宇宙への帰還待ちでごった返すアデン宇宙港から、ホバーを使い脱走したサムソントップは、宇宙港周辺で稼動していたドムにより追跡を受け、取り押さえられた。

───運転席から引きずり下ろされたのはシフェール三級整備兵だった。拘束されたシフェールは、脱走とスパイ容疑をかけられ、憲兵隊の取調べを受けることになった。その憲兵隊からの要請で、シュナイダー少佐の部下が取り調べに同席したらしい。

取調べで彼は主張した───

 

『オレ達が生きてアデンにたどり着けたのは、ギーケイ少尉のおかげだ』

 

『ギーケイ少尉の捜索を要請したのに取り合ってもらえなかった』

 

『ギーケイ少尉は生きている。自分は少尉を迎えに行かなきゃならないんだ』

 

『少尉は帰ってくる!約束したんだ』

 

 

「あ───」

 

 やっとオレは、少佐が酒場で口にした質問の意味を理解した。

──少尉、君はクルツ・シフェールから最後に何と言われた?──あれはオレが本当にクロウ・ギーケイ本人であるかどうかを確認するための質問だったのだ。

 

「そういうわけだ、彼は少尉を探すために脱走したんだ」

 

「あの・・・バカ・・・・・」

 

 オレは片手で口を覆った・・・・

 

「おまけにデニス司令とコンウェル基地の兵、

 さらには第4整備中隊からもクルツ・シフェールの処罰軽減

 ならびにあんたの捜索嘆願書が上がってきたそうでな───」

 

 少佐はおもしろそうな顔でオレに語り続けた。

 

「自分が直接クルツ・シフェールとデニス司令の事情聴取に立ち会った」

 

「それで───」

 

「ん?」

 

「クルツはどうなったのですか!?」

 

「ああ───」

 

 勢い込んで質問するオレに、少佐は気を持たせるように間を置くと言った。

 

「あんなバカは地球に置いておけない。

 さっさと宇宙に帰ってもらうのが一番だ───そうは思わんか?」

 

「・・・・・・」オレはきっと呆れた顔をしていただろうと思う。

 

「しかし、あの整備兵は強情でな・・・・」

 

 少佐の愉快そうな顔はとどまるところをしらない・・・・・

 

「地球に残ってあんたを探すと言ってきかんのだ───」

 

 思い出すとおかしくてたまらないといった表情だ。

 

「仕方なく憲兵大尉が説得したそうだ

 『少尉の捜索は我々が行なうから、先に帰って待っていろ』とな」

 

「なんてこった・・・・・」

 

 オレはそれ以上の言葉が出てこなかった。

コンウェル基地の兵、そして第4整備中隊が宇宙に帰っていたという事実は、たしかに朗報ではあった。だが、まさかそこまで予想外の事態が起こっていたとは・・・・

 

「そういうわけでクルツ・シフェールは他の兵と一緒に

 シャトルの貨物室(カーゴスペース)に押し込んで宇宙に返した。」

 

「シャトルの貨物室(カーゴスペース)・・・・・・?」

 

「多少はペナルティを与えねばならんのでな───」少佐はシレッとして言った。

 

「一人でも多くの兵を本国に返さねばならん。

 手段は選んでいられない。」

 

 そして少佐はオレに向き口元を緩める。

 

「心配するな、シャトルは連邦のパトロール艦による臨検をやりすごして

 ジオン艦と接触したという報告が入っている」

 

「フゥ・・・・・」───オレは安堵のため息をついた。

 

「少尉がGMと接触した付近をカイロ基地の偵察機に探させたらしいが、

 見つかったのは大破したホバー車輌とGMだけで、君のザクは見当たらん。」

 

「約束はしたものの、連邦の眼がうるさいうえ

 あまり人手や時間をかけるわけにもいかなくてな───

 捜索はまるで手がかり無しで打ち切らざるをえなかったらしい」

 

 少佐はやれやれといった調子で両手を広げた。

 

「そいつは面倒をかけましたね」

 

「気にするな───少尉が見つかってボウヤに恨まれずにすむ」

 

 そう言って少佐は短くなったタバコを投げ捨てる───

 

「しかし、随分と慕われてるじゃないか───少尉」

 

 その言葉に皮肉の響きは無かった。だがそれはオレにとって複雑な記憶を呼び覚ました───

 

「どうなんですかね・・・・・・」

 

 オレは自嘲に顔を歪め、硬い声で言った。

 

「ほう?」

 

 2本目のタバコに火をつけながら、少佐がこちらに興味ありげな目を向ける。

 

「デニス大尉も言っていた。

 『ギーケイ少尉がコンウェルにいたのは偶然だ。

 彼は本来、我々に対し何の義務もないのに、命を懸けて戦ってくれたのだ』とな」

 

「そいつは感動的な話ですね────軍の広報が聞いたら大喜びしそうだ。

 でもそんなにいいもんじゃありませんよ」

 

 オレは苦笑いして空を仰ぐ────何から話せばいいだろうか? 

 




 いつも読んでくださってありがとうございます。

 次回より、地球に降りたクロウ・ギーケイがコンウェル基地に到着し、そのコンウェル基地で何が起きたかが描かれる新章に入ります。
(序章の前に何があったのかという物語ですね。)
 それにあたり今まで投稿した部分の見直しと修正を行いたいと思いますので、来週1週間は新規投稿をお休みさせていただきます。

 修正と言ってもちょっとした書き足しぐらいで、わざわざ読み直さなければ理解できないような変更はありませんので、そこはご安心を。

 次回「コンウェル基地」

 次回投稿は2月21日(月曜日)を予定しています。
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