敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079   作:霧島 碧

37 / 48
6-2 残照

 曇り空をわずかに赤く染めた夕日が地平線に隠れる。だが、残照が空の片隅に残っている時刻、オレとサハドはやることもなく洞窟の前に腰を降ろしていた。

オレ達のかたわらに置かれていた監視装置がアラート音とともに赤い光を点滅させる。ハードケースを覗き込んだオレは、そのモニター上でこちらに接近する車両を確認した。

 

「来たようだ」

 

「そうか───」

 

 短い返答とともにサハドが立ち上がる。オレ達は谷の入り口で彼らを迎えるべく、トラックに乗り込んだ。

 

 

 谷の入り口にトラックを止め、その外で待機していたオレ達の前で、ヘッドライトを光らせたSUVが停まった。運転席の窓が開く、助手席にもう一人乗っているようだ。運転席の男が窓越しに声をかけてきた。

 

「あんたエジンバラさんかい?」

 

「いや、わしはケンブリッジだよ」

 

 サハドが仏頂面で返した言葉を聞いた男はニヤリと笑い、ドアを開け車を降りた。

 

「サハドだな、よろしく頼む」

 

 男は名乗りもせずにそう言った。サハドはそれを気にした風もなく言葉を返す。

 

「荷は奥の洞窟に用意してある、確かめてくれ」

 

「ああ───」

 

 そして男はオレを向く。

 

「あんたがギーケイ少尉か?」

 

 小さくうなずくオレに男は小さな声でささやいた。

 

「あとで少佐も来る」

 

「そうか」

 

 

 

「OK、全部そろっているようだな。

 我々は戻るが、別動部隊のトラックが荷を引き取りに来る」

 

 洞窟の前で手にしたリストと物資の照合を終えた男は言った。

 

「時間は予定通り21時」

 

「了解だ、オレ達はこの洞窟前で待機している」

 

 サハドに代わりオレが応えると、男は「取引が終わったらまた会おう」と言い残し、車に乗り込み去っていった。

走り去るクルマを見送ったサハドが、振り向いて言った。

 

「連中がやって来る前に、メシを食っちまおう」

 

「そうだな」

 

 オレにも依存はなかった。

 

 

 

 

 陽が落ちてすでに2時間が過ぎた。

指揮車両の中、ヘッドセットを片手で押さえながら通信担当が報告する。

 

「移動中の監視対象が街道を逸れて砂漠に入っていくようです。」

 

「動いたか・・・・」

 

 アトーレ大尉が表情を動かさずに応じた。

 

「よし、こちらも移動を開始する。

 連中が取引場所に着いたら連絡をよこせ。

 トラックに荷を積み終わったところを強襲する」

 

「了解」

 

「移動だ、目標地点は東の山岳地帯。

 GMは最後尾につけろ」

 

 アトーレ大尉の命令がGMの暗いコックピットに伝達された。

 

「了解」

 

 シルバ軍曹は簡潔に応答し、GMの操作を開始する。片ひざをつく姿勢で待機していたGMは、軽い動作音をコックピットに響かせて夜の砂漠に立ち上がった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。