敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079 作:霧島 碧
曇り空をわずかに赤く染めた夕日が地平線に隠れる。だが、残照が空の片隅に残っている時刻、オレとサハドはやることもなく洞窟の前に腰を降ろしていた。
オレ達のかたわらに置かれていた監視装置がアラート音とともに赤い光を点滅させる。ハードケースを覗き込んだオレは、そのモニター上でこちらに接近する車両を確認した。
「来たようだ」
「そうか───」
短い返答とともにサハドが立ち上がる。オレ達は谷の入り口で彼らを迎えるべく、トラックに乗り込んだ。
谷の入り口にトラックを止め、その外で待機していたオレ達の前で、ヘッドライトを光らせたSUVが停まった。運転席の窓が開く、助手席にもう一人乗っているようだ。運転席の男が窓越しに声をかけてきた。
「あんたエジンバラさんかい?」
「いや、わしはケンブリッジだよ」
サハドが仏頂面で返した言葉を聞いた男はニヤリと笑い、ドアを開け車を降りた。
「サハドだな、よろしく頼む」
男は名乗りもせずにそう言った。サハドはそれを気にした風もなく言葉を返す。
「荷は奥の洞窟に用意してある、確かめてくれ」
「ああ───」
そして男はオレを向く。
「あんたがギーケイ少尉か?」
小さくうなずくオレに男は小さな声でささやいた。
「あとで少佐も来る」
「そうか」
「OK、全部そろっているようだな。
我々は戻るが、別動部隊のトラックが荷を引き取りに来る」
洞窟の前で手にしたリストと物資の照合を終えた男は言った。
「時間は予定通り21時」
「了解だ、オレ達はこの洞窟前で待機している」
サハドに代わりオレが応えると、男は「取引が終わったらまた会おう」と言い残し、車に乗り込み去っていった。
走り去るクルマを見送ったサハドが、振り向いて言った。
「連中がやって来る前に、メシを食っちまおう」
「そうだな」
オレにも依存はなかった。
陽が落ちてすでに2時間が過ぎた。
指揮車両の中、ヘッドセットを片手で押さえながら通信担当が報告する。
「移動中の監視対象が街道を逸れて砂漠に入っていくようです。」
「動いたか・・・・」
アトーレ大尉が表情を動かさずに応じた。
「よし、こちらも移動を開始する。
連中が取引場所に着いたら連絡をよこせ。
トラックに荷を積み終わったところを強襲する」
「了解」
「移動だ、目標地点は東の山岳地帯。
GMは最後尾につけろ」
アトーレ大尉の命令がGMの暗いコックピットに伝達された。
「了解」
シルバ軍曹は簡潔に応答し、GMの操作を開始する。片ひざをつく姿勢で待機していたGMは、軽い動作音をコックピットに響かせて夜の砂漠に立ち上がった。