敗残兵の荒野 Tin Soldiers 0079   作:霧島 碧

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6-4 戦闘 Ⅱ

「チクショウ!またかよ───」

 

 オレは跳び乗ったコックピットで、ザクを起動させながら毒づいた。コンソールに光が次々宿り、モニタースクリーンに情報があわただしく流れていく。調整だけは何度も繰り返したので起動に問題はないが、不具合をパスさせている部分も多い。直したと言っても電子系だけで、駆動系はほとんど手をつけていない。モニターのそこかしこに赤い警告表示が並び、腰の下からは異音が振動とともに伝わってくる。

このポンコツザクでも、連邦の車両群を混乱させることぐらいはできるだろう。───だが、その後は? たとえ1機でもGMの相手は荷が重い。

 

『残弾が少ない───』

 

 オレは右腕に装備する《M-120A1》ザクマシンガンを選択し、《弾倉》の《交換》を指定した。左腕がドラムマガジンを外し、一旦地面に置く。そして、腰背部にマウントしてあったドラムマガジンを外してマシンガンに装着した。こちらのドラムマガジンは未使用で砲弾がフル装備されている。砲弾がローディングされたことを確認してから、オレは地面に置いたドラムマガジンを認識させ《弾倉》を《腰背部》に《装着》し直した。

 ザクマシンガンに、ハンドグレネード──MS用手榴弾が左腰のマウントラッチに3機、近接戦闘用ヒートホークが右腰に1機、これがザクに残っている武装だ。全てを有効に使いシュナイダー少佐達が脱出するための時間を稼ぐ───それが、今のオレに課せられたミッションだった。

 

 コックピットハッチを開放したまま、ザクを洞窟前に移動させる。谷の奥から姿を現したザクを見上げ、シュナイダー少佐の率いる男たちが歓喜の表情を浮かべ腕を振り上げる。突入の指示を受けるため、オレは彼らの手前でザクの片ひざをつく。そのオレにシュナイダー少佐の声がかかった。

 

「すぐに出てくれ!

 時間を稼ぐだけでいい。

 我々が安全圏に脱出したら、キサマも脱出を考えろ」

 

 時間を稼ぐだけでいいという指示だ、オレもそれ以上のことをするつもりはなかった。だが、相手のMSが、簡単にそれを許してくれるとは思えなかった。

 

「了解! 

 突入後マシンガンを使う!

 それを合図に脱出してくれ」

 

「わかった!」

 

 ハッチを閉め、ザクを立ち上がらせると、そのまま谷の出口へ走る。時間が惜しい。ザクの足音を感知されるかもしれないが、かまわずに突き進む───

 

 

 

 ザクが立ち上がり、谷の出口へ走り出した。ジオン軍一行の注意がザクに向き監視の目がそれた、それを感じ取ったサハドは後方の暗闇へと後ずさる。そのまま静かに谷の奥に向かって逃げ出そうとした。

だが────

 

「待て!」

 

 声のした瞬間サハドは走り出す───しかし、それは最悪の選択だった。数歩も行かないうちに銃声が谷に響き、サハドの身体が倒れる。

 

「あ・・・

 ラスル・・・ナディア・・・・

 わしは・・・」

 

 倒れたサハドが最後につぶやいた言葉は誰にも聞こえなかった。

 

「バカが・・・」

 

 サハドを撃った男はつぶやく。

『安全な場所まで脱出したら開放してやるから心配するな』と言ったのは嘘ではない。トラックを徴発したかったのはたしかだが、同行するのがサハドにとって最善だと考えたからこその言葉だった。彼が逃げられるのであれば放置してもよかったのだ。だが、緊張状態の中でサハドは判断を間違え、彼もまた反射的に銃のトリガーを引いてしまった・・・・

 

 銃声が響いたとき、シュナイダー少佐はその現場を一瞥し、何が起きたのかを理解したが、この件を無視することに決めた。

 

「谷の入り口まで進め、そこで待機する!」

 

 思いわずらう余裕はない、今は連邦軍の封鎖を突破するのが最優先事項なのだ。

 

 

 

 谷から出る。すでにザクの姿は連邦の連中にも見えているはずだ。さらにスピードを上げ、谷からできるだけ距離をとる。

 

『こんなもんでいいか?』

 

 モニターに映る後方の谷を見ながら、距離の見当をつけたところでザクを停める。

そして、あらためてこちらに向かってやってくる車両群にザクマシンガンの照準を合わせて引き金を絞る。

120mm弾を連続で打ち出す衝撃が、コックピットをふるわせた。

 

 

 クロウのザクが現れたことに、最初に気づいたのはシルバ軍曹だった。GMは車列の後方に位置していたが、視点が高く、優れた暗視センサーで、先頭車両よりも早くザクに気づいた。

 

「ザク──だと?」

 

 突如、GMのモニターに出現したザクの姿に、彼は躊躇せずヘッドセットのマイクに叫んだ───

 

「前方に敵MS、ザク! 距離3000!!」

 

 それまで一定速度で進んでいた指揮車が急ブレーキをかける。急減速で身体を前方に持っていかれそうになったアトーレ大尉の、不機嫌な声が車内に響く。

 

「───っ、何事だ?」

 

 指揮車のハンドルを握っていた男が前方を向いたまま叫ぶ。

 

「た、大尉・・・敵MS!

 ザクですっ!!」

 

「なに!?」

 

「谷から出現したもよう!」

 

「ひ、左に回避!

 GMを───GMを前に出せ!!」

 

 その命令が伝達される前に、ザクのマシンガンによる攻撃がはじまった。

シルバ軍曹はザクの姿を見た瞬間、左腕のシールドで機体前面を覆い、右腕のマシンガンを構えると同時に、GMの進行方向をやや左に向けていた。マシンガンによるザクとの撃ち合いになったとき、前を走る車列を射線上に置かないためだった。

だが、その配慮は無駄に終わった。ザクの攻撃は、まず前方の車列に加えられたからだ。

その攻撃にわずかに遅れ、GMがマシンガンの応射をはじめる。

 

 

 

 ザクマシンガンの砲声が響くのと同時に、谷の入り口で軽戦闘車に乗ったシュナイダー少佐が叫ぶ。

 

「脱出だ!

 少尉の稼いだ時間を無駄にするな」

 

 シュナイダー少佐の乗った軽戦闘車を先頭に、4台のトラックが次々と谷を出て、戦闘のはじまった場所に向かって突っ込んでいった。

 

 

 連邦の車列を薙ぐように放ったザクマシンガンの先制攻撃で、1台の装甲車が直撃により爆発、至近距離に着弾した120mm弾のあおりを食って2台の兵員輸送車が横転していた。

 

「車両攻撃が優先か。

 ふざけやがって!」

 

 ザクの行動が理解できず、シルバ軍曹はがなりたてる。

前方で直撃した装甲車が赤く燃えている。生き残った車両は混乱の中、進行方向左へ回避をはじめている。だが、そのことでシルバ軍曹のGMは前をふさがれ動きづらくなった。彼らが回避を終えるまで自分が前面に出てザクを抑え、時間を稼がなければならないのに───でなければ、横転したトラックの生存者の回収することもできない。

 

『そうだ・・・あの時も

 ザクはブラッドハウンドの攻撃を優先した・・・』

 

 脳裏をよぎる忌まわしい記憶───シルバ軍曹はGMの位置を変えながらザクに対する短射を繰り返す。今ザクに突っ込めば、味方車両を巻き込むことになりかねない。敵MSとの間に友軍車両を挟んだ状態で自由に動くことができず、彼は焦りはじめていた。

 

 連邦軍はザクの攻撃を回避するべく、北に向かって進路を変えたが、この行動はアトーレ大尉の命令が伝わったわけではなかった。南側が岩山だったために、北に回避するしかなかったのだ。

 

『ザクがいただと?

 最初から・・・・最初から罠だったのか!?』

 

 アトーレ大尉が握り締めた拳を震わせる。偶然の成した状況に過ぎなかったが、彼にしてみれば罠にはめられたとしか思えなかった。ザクマシンガンの攻撃により、前方の装甲車1台が撃破され、兵員輸送車2台が横転したという報告に応じる形で指示を出す。

 

「一時北に距離を取る!

 転倒車両の生存者を見捨てるな!!」

 

 

 連邦の車両が混乱しつつも北へ進路変更をはじめた。MS同士の戦闘に巻き込まれるのを避けるための回避行動としては当然だ。

 

「よし」

 

 オレは《左腕》に《GRENADE》を選択。ザクの左腕が腰のマウントからハンドグレネードを外す間に、オレはGMと車両群を分断できそうな位置に照準を合わせトリガーを引く。その操作に応え、ザクがハンドグレネードを投擲した。

十数秒のタイムラグの後、爆発の閃光が夜の荒野を灼いた。

 

『GMの動きを封じなければ』

 

 オレは少佐がすでに脱出を進めているのを信じて、閃光の中をザクをGMに向かって突進させる。ザクを走らせながら、後方を映す暗視モニターにチラと視線を向ける。映像の奥に、ライトを消した車両が近づいて来ていた───

 

『少佐だ!

 よし、これなら───』

 

 オレはザクを走らせながら背部メインスラスターを最大出力で点火する。Gがかかり、身体がシートに押し付けられる。右足で大地を蹴り、ザクは低空を一気に跳躍した。

連邦の車両の直上をかすめるようにして───

 

 

 ザクの投擲したグレネードの閃光で、GMのモニターは一時的に表示不能状態に陥っていた。シルバ軍曹も閃光により目をこする。

そして、シルバ軍曹が回復したモニター上に見たのはこちらに向けて、急接近してくるザクの姿だった。シルバ軍曹は、とっさに左肩からこちらに向かってくるザクに向けてマシンガンを連射する。何発かは当たっているはずだが、接近するザクの勢いは衰えない。

そのときシルバ軍曹は見た。急速に接近するザクの肩アーマーに、白く塗装された102-4という数字を───

 

『なんだと!?』

 

 次の瞬間、ザクがGMに激突した。

 

 

 オレは、GMにダメージを与える目的でショルダーアタックをかけたのではない。体当たりにより時間を稼ぐことこそが狙いだった。

人間同士であっても、不意にタックルをくらえば、状況を認識し、体制を立て直すのに時間がかかる。そして、タックルをかけた方がダメージは少なく、早く立ち直ることができるものなのだ───MSと、そのMSに搭乗するパイロットであってもそれは同じだ。

オレは、GMに向かって左肩のアーマーからタックルをかけた。GMのマシンガンが火を噴き、被弾の衝撃と轟音がコックピットを震わせるが、ザクの突進を防ぐことはできなかった。

 

 

 GMはシールドを前面に押し出し、ザクの体当たりを受けた。だが、背部スラスターによる加速まで利用したザクの質量を受け止めることはできなかった。衝突し、はじきあう2機のMS。衝撃がGMのコックピットを突き上げ、シートベルトに固定されたシルバ軍曹の身体を翻弄する。

重い轟音を響かせて二体のMSが荒野に倒れ、巻き起こる砂煙が周囲の視界をさえぎる。

 

『我々を連邦に気づかせないためか───』

 

 シュナイダー少佐は車の助手席から前方の戦闘を見つめていた。さきほど起こった爆発と閃光は、ザクのグレネードだろう。その直後、ザクは背部スラスターを使い突進した。

少佐にはクロウが苦しい戦いを行っているのが手に取るように分かった。

 

「後ろはついてきているな!?」

 

 少佐が後方に怒鳴る。

 

「4台とも大丈夫です!」

 

 ルーフに据え付けられた機銃を操作している男が、後方をついてくる4台のトラックを見て報告を返す。

 

「このまま突っ込む!

 ためらうな、少尉の作った脱出口をこじ開けてやる!!」

 

「了解───」

 

 ハンドルを握る男が不敵な笑みを浮べた。

 

 

 オレは倒れたザクを起こしながら、敵MSの位置を確認する。GMが立ち上がろうとしている、距離40メートル───だがオレの方が早い!

 

「しめた!

 今ならGMにとどめを───」

 

 その時、いやな金属音とショックが、下方からオレの尻に響いた。同時に、立ち上がろうとしていたザクがバランスを崩す。

 

『───!?

 やっちまった!』

 

 体当たり、あるいは転倒の衝撃か、それとも敵マシンガンの被弾によるものか───モニターの警告は、左ひざ関節部のトラブルを示していた。 だが、このぐらいの被害でもぎとった有利な状況を手離す気はなかった。オレはザクの左ひざをついた姿勢でマシンガンを構え、引き金を引く。

 

 

『あの時のザクか!』

 

 体当たりによる衝撃に耐えながら、シルバは自分の前にいるザクが、あの日小隊を襲撃したMSだと悟っていた。

できるだけ早く戦闘態勢を回復しなければならない。GMを完全に立ち上がらせようとせず、シールドを前に立てての射撃姿勢を取ろうとした。だが、GMがマシンガンを標的に向けるよりも早く、ザクのマシンガンが火を噴く。そのザクの銃撃にわずかに遅れ、GMのマシンガンが火を吹いた。

マズルフラッシュが、暗闇に対峙する二体のMSを浮び上がらせる。

 

 

 連邦のMSは大型のシールドを標準装備している。オレの体当たりで破損しているとしても、マシンガンで撃ち合ってダメージを与えるには少々厄介だった。オレは短射しながら、シールドに隠れたGM本体から、マシンガンの照準を移動させる。GMがマシンガンを持つ、右腕に───

 狙った場所に吸いこまれた弾丸が暗闇の中で火花を上げ、相手の射撃が止んだ。

腕、もしくはマシンガン自体がいかれたのだろう。

 

「少しだけ、持ってくれ───」

 

 バランスを取りながら慎重にザクを立ち上がらせ、《HEATHOWK》を選択、《左腕》に《装備》を指定する。左腕が右腰に装着されているヒートホークを掴みとり、作動させる。

 

 ヴゥゥン・・・・

 

 左腕を通して放電の唸りと振動がコックピットに伝わってくる───一連の動作の間に、オレはザクをGMに向って突進させていた。

 

 

 トリガーを引いても射撃できない!おそらくマシンガンにダメージを負ったのだろう。

ザクが手にしたヒートホークに鈍く光る刃が形成されるのが見えた。そのままこちらに接近してくる。だが、ザクには何らかのダメージがあるのか動きがおかしい───

 

「役に立たんのなら」

 

 シルバはザクのヒートホークを左腕のシールドで受けるのと同時に、マシンガンを放り捨てる。ヒートホークが火花を散らし、シールドを切り裂き、食い込む。

 

「キサマのせいで俺の部隊は───」

 

 叫び、頭部ガトリングガンをザクに向かって発射する。火線がザクの頭部をかすめる。ザクがたじろぐように後ろに下がる。わずかでも時間が稼ぐことができればそれでいい。シルバはマシンガンを捨てた右腕で、背部ビームサーベルを抜き放つ。暗闇に放たれたビームの刃が2体のモビルスーツを闇に浮かび上がらせる。

 

 

 ヒートホークがシールドに食い込んだ直後、GMが頭部ガトリングガンを発射した。その轟音の前に声が聞こえたように思ったが、あれはGMパイロットの声だったのだろうか?オレはザクをわずかに後方に引く。その時、GMの右腕が上がるのが見えた───

 

『まずい!』

 

 オレはとっさにザクを後退させた。形成された光る刃が、たった今ザクがいた空間を切り裂く。ビームサーベルだ。

マシンガンを短射しながら、ザクを後退させる。ビームサーベルとヒートホークでは、間合いと威力に圧倒的な差がある。いったん距離を取り、マシンガンで・・・・

だが、それはすでに無理なことにオレは気づいていた。マシンガンの弾丸が残り少ない。すでにFCSモニター上で、残弾を示す数字が赤く点滅している。

 

「ならば───」

 

 オレは残弾すべてを一気にGMのコックピットに向けて撃ちつくす。

───不安定な左ひざのせいか、残念ながら火線はGMを逸れる。オレはわざと引き金を引きなおす動作を1度ザクにさせた。GMパイロットは気づいただろうか?オレは、弾切れのマシンガンを《投棄》すると、ヒートホークの《装備》を《左腕》から《右腕》に変更し、握りなおす。

投げ捨てたマシンガンがどのあたりに落ちたかを頭に焼き付けながら・・・・

 

 

 ザクがマシンガンを捨てた。

 

『弾切れか・・・これでお互いマシンガンなしだ』

 

 コックピットで、モニターの光がシルバの凶暴な笑みを浮かび上がらせる。こちらもだが、ザクもまたダメージを負っている。そのうえ、ヒートホークよりもビームサーベルのほうが有利なのは明らかだ。

 

「ならば───」

 

 GMが破損したシールドを捨て、ビームサーベルを大きく構えザクに迫る。

 

 

 GMはビームサーベルの有利を確信し、力押しで斬りかかってきた。オレはGMの動きを予測しつつ、思うように反応しないザクを左右に振りながら後退し、ビームサーベルの光跡をかわす。

2度、3度とかわす内に、GMのビームサーベルを振るう動きはラフになっていく。

 

「よし!」

 

 GMがビームサーベルを大きく振りかぶった瞬間、オレは右足でザクを低く前方に跳躍させた。オレは伸ばした右腕のヒートホークですくい上げるようにして、ビームサーベルを振り下ろすGMの手首を切り飛ばした。

直後、ザクの機体がGMと激突する。激しい振動と金属音に身体を揺すられながら、《GRENADE》を《左腕》に選択する。それに応答し、ザクの左腕が腰のラッチからハンドグレネードを取り外す。

 

 

 2体のMSが激突する激しい衝撃、『目の前にあのザクがいる!』その敵に対しシルバは叫んだ。

 

「なぜ地球へ降りてきた!?

 何人殺せば満足する!?

 隊長も、ロベルトも、グレイも、キサマのせいで!!」

 

 

 今度は確かに聞こえた。正面にいるGMパイロットの声だった。だが、その言葉の意味を考えるより早く、オレは左腕のグレネードを目の前の標的───GMの首関節にねじ込んだ。

おそらくGMパイロットは何をされたのか分かっていないだろう。そのまま左肘でGMの胸部を殴りつけ、ザクをGMから引き離すと、自ら地面に転がるようにして距離を作る。恥も外聞もあったものではない。グレネードの閃光がはじけたとき、オレのザクはその爆発に背を向けていた。

オレは、白い閃光の中で探していた───

 

『確か、もう少し先───』

 

 探していた物がモニターに映り、FCSがそれを認識した。オレのザクはいざるようにして目的の物を《右腕》に《装備》する───先ほど捨てたザクマシンガンだった。

 

『トラブルはないか・・・?』

 

 外見だけでは分からない。弾切れの《弾倉》を《交換》する、ドラムマガジンは地面へ転がり落ちるにまかせた──左腕が腰背部の《弾倉》外し、取り付ける。

残弾が少ないので、出撃前に交換したドラムマガジン───1ヶ月前の戦いで使用し、残った砲弾だった。

FCSのモニターは砲弾が《装填》されたことを表示した。

 

 

 ザクがくず折れるようにして、GMから離れた直後、衝撃は爆発音とともにいきなり頭上から降ってきた。何が起こったのかわからない。シルバは声にならない声を上げる。大きな衝撃だったが、GMのオートバランスは機体をよろめかせたものの、倒すことはなかった。

コックピット内で火花が次々と跳び、モニターの多くがブラックアウトした。爆発による金属片が頭をかすめ、血が首筋をつたう。

 

「ええい、どうした!

 目の前にヤツがいるんだぞ!!」

 

 レバーを動かしても、機体は鈍い反応しか返さない。

 

「生きているセンサーは?」

 

 残っているサブセンサーの表示でザクの位置を探り、機体を向ける。そして、彼がモニター上に目にしたのは、片ひざをつきマシンガンを構えるザクの姿だった。

 

『そのマシンガンは・・・・』

 

 

 GMがぎこちない動きでこちらを向き、足を踏み出す。ねじ込んだグレネードの爆発で首は不自然に曲がり、よろめき歩く姿はゾンビのようだ。オレは、そのGMの胴体中央───コックピットに向けて、マシンガンの残弾をすべて叩き込む。

GMは成す術なく、夜の荒野に沈んだ。

 

 

 

 火線が走り、GMが倒れる。指揮車から降りてその光景を見ていたアトーレ大尉は、信じられない思いで双眼鏡を目から外した。

GMとザクがもみあいになり、ザクが崩れるように離れたときは、シルバ軍曹がザクを撃破したと思い歓声をあげそうになった。だが、直後GMに発生した閃光に続いたのが今の光景だった。

ザクが立ち上がる。機体のあちこちが破損したぎこちない動きだったが、アトーレ大尉が遠目にそれを読み取ることはできなかった。そのザクのモノアイがこちらを向いた───

彼は屈辱に顔を歪め、宣言する。

 

「待機地点まで一時撤退する───」

 

 装甲車もGMもない、敵にはザクがいる───すでに、クロウのザクにも戦闘を継続する能力はなかったが、アトーレ大尉には知るよしもないことだった。

 

 

 

 何とか立ち上がらせたザク、そのモノアイで敵車両群の位置を探る。そして彼らが戦場から遠ざかっているのを知った。

 

『シュナイダー少佐達は・・・?』

 

 すでに見当たらない───脱出できたのだろう。

モニター上に、仰向けに横たわるGMが映る───オレの脳裏に、つい先ほど聞こえた声が響く。

 

───なぜ地球へ降りてきた!?

   何人殺せば満足する!?

   隊長も、ロベルトも、グレイもキサマのせいで!!───

 

「オレのせい───?」

 

 オレは動かないGMを見つめる。

 

『1ヶ月前に戦った部隊の生き残り?

 まさか───』

 

 そんな偶然があるものだろうか───

 

 考えても答えは出ない。それよりも、オレはオレ自身のことを考えなければならなかった。

 

 

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