Minecraft ~結月ゆかりのマインクラフト人生~ 作:ライドウ
時間は少し戻って、ゆかりさんが出ていった時。
パタン。
黒パーカーの人、結月さんが部屋から出ていく。
その背中を見て、思わずかつての友人の背中を思い出し…手を伸ばすが、足音は段々と遠ざかっていく。
伸ばした手を戻し、胸元で握り込み...頭を冷静にさせる。
冷静になって、部屋を見渡して...理解する。本当に世界は滅んで、クラフターは私以外いなくなった、ということを...本当に嘘だというのならこの部屋がここまでボロボロのはずがない。
クラフター特有の力*1が働いているはずなのだ。
「えっ、えっとぉ...大丈夫?」
「あっ、はい...ごめんなさい。私のせいで」
弦巻さんに話しかけられて、考えていた頭が切り替わる。
弦巻さんが背負っているバックパックには、Caf-S-3*2や水筒が刺されている。彼女も本当のクラフターならバックパックなんて装備していないだろう。本当に、私はクラフターが滅んだ何万年ってあとの世界に来ている。そう実感できてしまった。
「...冷静になって、わかりました。この世界は本当に」
「うん、ゆかりちゃんの言う通り...ごめんね、こんなことを伝えるなんて」
「いえ、こちらこそ...取り乱してあなたの...その」
言い淀むと、大丈夫。と言って、バックパックをおろした。
すると、バックパックからランタンを外して蓋をとり、床に置く。
そして、その蓋の空いたランタンにお鍋に水筒の水を入れて火をつけた。
「よかったら、何か飲む?と言っても、ココアぐらいしかないけど...」
「いただきます。ココア、好きですし...」
このランタン、すごい利便性があるなぁ。なんて思いつつ、出された小さな座椅子に腰掛ける。
バックパックから、いろいろ取り出す弦巻さんは、鼻歌を歌いつつあれでもないこれでもないとバックパックの中身を漁っていた。
ランタンの火を見て、考える。私は、どうしていつの間にかコールドスリープをしていたんだろう。どうして、私がコールドスリープをすることになったんだろう。
ゆらゆらと揺れるランタンの火を見ていると、心がだんだんと落ち着く。そして、結月さんとスノー君にしてしまったことを後悔する。
結月さんのあの真実を語っていたときの表情は、心苦しそうで...心配してくれたと思うスノー君のあの鳴き声は本気で私を心配してくれていたのだろう。
「...あぁ。私は、なんてことを」
「まあ、急に世界が滅びましたーって言われても、私だって信じないし誰だってそんなバカなってなると思うよ。はい、これどうぞ」
バックパックから取り出したパンを渡しに渡してくれる弦巻さん。
それを受け取って眺めると...『グゥ~...』と私のお腹が鳴ってしまう。
顔を赤くしていると、弦巻さんは微笑んでいた。
「ゆかりちゃんに内緒で買ったシュガートーストだから早く食べちゃって戻ってきて見られたら私怒られちゃうから」
にへへ、とイタズラが成功したときみたいな笑い方をする弦巻さん。
彼女のご厚意に感謝しながら、シュガートーストに口をつける。
甘い、甘くて...おいしい。そして、涙が出てくる。
「みんなは...みんなは、本当にいなくなっちゃったんだ...」
私は生きている。だけど、この研究所に立てこもった他の皆は?
あの苦楽を一時でも共にした人たちは?ひもじい思いをしながら何でもないって言ってたあの子は?
シュガートーストを一口、また一口と頬張ると...それと同じぐらい大粒の涙が私の目から零れ落ちる。
コトリと、私の手の届く位置にマグカップが置かれる。
「大丈夫、ゆっくりと食べていいからね。」
「はい...はいっ」
涙を拭きながら、シュガートーストを食べ...ココアをのむ。温かくて、控えめな甘さがある。
食べ終わるころには、私は涙をいっぱい流していた。ココアも空になっていて...生きているという気持ちが沸く。
「あぁ...うあぁあああああっ」
私は、耐え切れなくなり泣き声を上げてしまう。
それを見た弦巻さんは、そっと近寄り...私を抱き寄せて、頭をポンポンとしてくれる。
彼女の胸を借り、悔しさと後悔を思いっきり吐き出す。
「うっく...ヒック...わたし、わたしはひどいひとです。ごめんなさいっ、ごめんなさいっ!」
「大丈夫、大丈夫だよ...」
私を慰めるように、大丈夫と何度も言ってくれる。
ギュッと、彼女のYシャツを掴み涙を流す。ポタポタと零れる涙は、コンクリートの床を濡らしている。
彼女の優しさに甘え、私は...ただ泣き続けた。
~~~~~
「ごめんなさい...私、そのっ」
「ふふ、大丈夫だよ。ちゃんと着替えは持ってきたから。」
と言って、彼女はYシャツを着替え始める。
「流石に濡れたのを着続けると風邪をひいちゃうからね。」
「うぅ...ごめんなさい」
「気にしないって!むしろ、少しだけスッキリした?」
「......ええ、まあ」
「ならよかった!胸を貸した甲斐があるよ!」
ニヒヒと笑いながら新しいYシャツを着る弦巻さん。
釣られて私も、少しだけ笑う。
「あの、お二人は...いつから旅を?」
気になったことを弦巻さんに聞いてみる。
随分と手慣れた様子だから、長く旅をしているのだろうか。
「そんなにしてないよ?まだ故郷から旅立って1日くらいかな。」
「えっ、つい最近旅を始めたってことですか?」
「そうそう、ゆかりちゃんが昨日泊まった村の狩人さんからここの場所を聞いたらしくてね。探索とお宝狙いでって聞いたけどね。」
Yシャツを変えた弦巻さんは、テキパキとかたずけを済ませバックパックにまとめる。
たびを始めたばかりだという割には、やる事はかなり手慣れている。
それに少しだけすごいなぁと思い、いまだに明るく照らしてくれているランタンを眺める。
「元々、私...旅に出るなんて思いもしなかったんだ」
「えっ?それって、結月さんが無理やり?」
「ううん、私が旅についてきたのは自分の意思でもあるから、ゆかりちゃんのわがままって一概には言えないなぁ。」
「...どうして、旅に?」
「ゆかりちゃんが、知らないところで死んじゃうのがいやだったから。」
そう言って彼女はCaf-S-3を取り出し、整備をしだす。
その銃が必要ということは、この世界には...私たちの世界のように敵対する存在がいるということだ。
...それを考えると、少しだけ怖くなる。
「もちろん、私だって...死にたくなんてないよ?でもそれ以上に、大切な親友が知らない場所でいつの間にか死んでいた。なんてのは嫌だから。」
「そう、なんですね。」
「...ごめん、あかりちゃんにこんな話は酷だよね。」
「いいえ、みんなにもう会えないのは...悲しいですけど、みんなきっと私に生きて欲しかったんだと思います。だから、私はもう悲しみません。」
「...強いね、あかりちゃんは」
そこまで会話したところで、
≪ズドンッ!!
「きゃっ!?」
「っ!?」
弦巻さんが私に覆いかぶさり、まもってくれる。
しかし、私たちに襲い掛かったのは先ほどの振動と多少の土埃だった。
「い、今のは何ですか?」
「...結構大きかった......っ!!ゆかりちゃんが危ない!!」
弦巻さんがライフルを持って部屋から飛び出す。
私は、座椅子をしまい、彼女のバックパックを拾って追いかける。
だけど、コールドスリープしていた私の体は、急激な激しい運動ができるはずもなくすぐに息切れしてしまう。
私に気づいたのか、弦巻さんが戻ってくる。
「大丈夫!?」
「はぁ...はぁ...なんとか」
息を整える私と、私を心配する弦巻さん。
その直後、上の階からとある声が聞こえる。
「キュオォォオォォオオオオオオオオオッ!!!!」
「えっ......スノー君の声がここまで?」
(今の声、間違いない...ディザスタースクアローの力を覚醒させた!?)
息を整え、一歩進む。
弦巻さんは、私が進むことを止めずCaf-S-3を構えて、同じ歩幅で歩いてくれる。
階段を上り始めると...
「ひっ...あ、アンデット!?」
「...大丈夫、動かない。けど、念のため」
弦巻さんが近づき、その死体にナイフを突き刺す。
...どうやら本当に動かないみたいだ。一安心し、再び上がる。
そこには、大量のアンデットがピクリとも動かず横たわって山を作り上げていた。
「...すごい数。どういう事なんだろう。ゾンビやスケルトンは村とかでも襲う時じゃない限りこんな数、集結しないのに。」
「もしかして、私が起きたからなのでは...」
「...どういうこと?」
「昔から、クラフターは生命エネルギーが非常に高くて...それで多くのアンデットに襲われやすい体質なんです。」
「...ならそれだね。急いで、上の階に行こう。きっとゆかりちゃんはそこに」
弦巻さんがそこまで行ったところで、私に再び覆いかぶさる。
その次の瞬間。
ズガンッ!!
ズガンッ!!
ドゴォンッ!!
バキィッ!!
連続して、強い衝撃と土埃が襲い掛かる。
しばらくすると、ガツン!という音ともに、弦巻さんが倒れる。
「つ、弦巻さん!?しっ、しっかりしてください!!」
どうして?!と慌てて周りを見渡すと、拳サイズの瓦礫が頭に当たったみたいだ。
それで驚いて意識を手放してしまったみたいで...で、でもここには敵はいないからきっと大丈夫。
彼女の腰脇にぶら下げてあるナイフを借りて、一応護身の手段を手に入れる。
でも大丈夫、てきはぜんぶしんで
「アアアァァァァ...」
声がした方向にゆっくりと振り返ると、そこには...一体のゾンビがいた。
弦巻マキ
カウンセラー上手、今回は運悪くこぶし大の瓦礫が頭に当たり気絶。
『最後のクラフター』紲星あかり
ナイフを持ってお決まりのフラグを立てて成立させたドジっ子天才少女。
今まで、喧嘩したどころかナイフを持ったことすらない。
立ち上がったゾンビ
スノー君の咆哮で偶然、別のゾンビをクッションにしていたがしばらくの間気絶していた。(そこ、アンデットが気絶するの?っていう疑問を持たない!!)