Minecraft ~結月ゆかりのマインクラフト人生~ 作:ライドウ
あかりちゃん、覚醒の時です。
「アアアァァァァ...」
「あっ、あぁっ!?つ、弦巻さん!!お、起きてください!!ゾンビっ、ゾンビが!!」
弦巻さんの体を揺さぶり起こそうとするが…弦巻さんはピクリとも動かない。当然だ、拳大の石が頭に当たったらクラフターだって暫くは動けなくなる。
そうしてる間でもゾンビはゆっくりと一歩一歩確実に近づいてきている。
「う、うぅ…こっ、来ないでくだしゃい!!」
震える足で何とか立ち上がり、なんとか声を出し、ゾンビに向けてナイフを向ける。
足どころかナイフを持つ腕すらブルブルと震えてしまい、切っ先が左右に揺れている。なんなら、極度の緊張のせいで視界すらぐらついている状態だ。
心臓がバクバクと大爆音で鼓動し、息が段々と浅く早いものになっていく。
「きっ、来たらしゃ、さしますよ!?いいんでしゅか!?こ、このナイフ、とっても鋭いですよ!!」
パニックになりながらひねり出した言葉、もちろんアンデットを相手に言っても無駄なことはよくわかっている。それでも私は、震える腕でナイフを構え...震える足で立っている。
そして、自身の常識が...それらは【やってはいけないこと】だと警鐘を鳴らす。
一般市民クラフターとしての一般常識が、【ナイフをおろして通報して、警察にすべてを任せよう】とささやいているのだ。
(け、警察なんて呼んでも来るわけないのにっ)
そんなことを考えながら、ナイフを構え続ける。
一歩、一歩...間違いなくそのゾンビと私の間合いはじりじりと詰められていく。
だけど私は、怖くてナイフを構えることしかできない。勇気を振り絞って、このナイフで相手を突き刺すという行為に恐怖している。
「ほっ、ホントに刺しますよ!?と、止まってください!!」
無駄だと分かっていても言葉を発してしまう。
それでも相手は止まらずに近づいてくる。
「うっ、うあああああ!!」
やけくそになり、目をつむりながらナイフを突き出し突撃する。
すると、ザシュッという嫌な肉の音と...腐っている嫌な臭い、そして手の感触から、本当に刺してしまったということを理解する。
これでどうか倒れてほしい...そう思いつつ、目を開けると。
「アアアァァァァァァ?」
何かしたのか?と言わんばかりにこちらを見下ろしてくるゾンビ。
生気の無いドロリとした腐った目が私を見つめている。
「あっ、あぁぁ!?」
恐怖に負けて、パニックになりながら後ろに後ずさる。そして弦巻さんの腕に足をかけて転倒してしまう。
しりもちをつくけど、それ以上に目の前の恐怖から逃げようとする本能が働いていた。
し、死んじゃうんだ...私も、弦巻さんも。そう考えると、ゾンビが鋭い爪の生える右腕を振り上げる。
「い、いやっ...来ないで、殺さないでぇっ!!」
怖くて涙が出てきてしまい、悲鳴を上げる。
殺される、殺されて食べられる、このゾンビに二人とも!
まだ、結月さんとスノー君に謝ってないのにっ。
皆のお墓を、まだ作ってないのにっ。
そして何より、まだ...まだ...
生きたいっ!!
~~~~~
唐突に、頭から冷や水をぶっかけられたように頭が冴える。
全てがスローに感じ、ゾンビが振り下ろす腕までもがゆっくりと降ろされる。
......弦巻さんのCaf-S-3が使える。
咄嗟に、弦巻さんの手からCaf-S-3を奪い取り、
≪パァーン!!≫
ゾンビの振り下ろしている腕に向け発砲する。
私たちに振り下ろされようとした腕は、Caf-S-3の発砲した弾丸が着弾し粉々に粉砕される。
そして、そのできた一瞬の隙を狙い...Caf-S-3を投げ捨て立ち上がり、さっき突き刺したナイフに右手をかける。
「...シッ!」
ゾンビに突き刺さったままのナイフを右向きして、切り裂く。
「アアアアアアアア!!!」
やはり、相手は腐った肉だからか簡単に切り裂かれ、大きく後退する。
振りぬいたナイフから、ゾンビの汚らしい血がポタポタと滴り落ちている。
その血が付いたナイフをビッと払うと、床にビチャリと血が落ちる。
「フフフ...アハハハッ」
そこまでして、私の口から笑いがこぼれる。
今の一瞬で、私は...
「私、私は一般市民で収まるようなクラフターじゃなかったんだ!!あは、アハハハハッ!!」
ナイフを持ったまま、手を大の字に広げて思いっきり笑ってみる。
先ほどまで警鐘を鳴らしていた一般常識は沈黙し、震える手足もなりを潜め、煩かった心臓も元通りの鼓動になっている。
そして、大きく息を吸うと大量の腐臭と共に脳に空気が行きわたる。
右手のナイフを逆手に持ち、ゆらりと体勢を低く構える。目を見開き、相手の動きを一つも逃さないようにする。
「アアア...アアアアアアアア!!!」
私にやられたことに腹を立てたのか、左手を私へと伸ばしながら走ってくるゾンビ。
だけど、動きが凄く遅い。
そのゾンビの動きに合わせ、右ステップ。
足元に偶然落ちている鉄インゴットと何か研究に使えないかと持っていた木の棒を使い、大型ナイフを
それを右手のナイフと交換し、弦巻さんから借りたナイフは左手に逆手で持つ。
私を見失ってキョロキョロと周りを見渡すゾンビに、右手の大型ナイフを振り下ろす。
「対戦、ありがとうございました♪」
グシャッという嫌な音ともに、ゾンビの頭が縦に真っ二つになる。頭を潰されたゾンビはうめき声のひとつも上げずに倒れる。
始めてみるグロテスクな光景だけど、なのになぜだろう...何も感じない。
そこまで考えていると、私に後ろからもう一体別のゾンビが飛び掛かってくる。
そのゾンビの攻撃から身を屈めることでかわし、そいつの胴体に左手のナイフを突き刺そうとした次の瞬間。
≪パァーン!!≫
先ほど私が撃った時と同じ乾いた発砲音が響く。
私に飛び掛かったゾンビの頭は綺麗に撃ち抜かれて吹き飛ばされており、倒れていた弦巻さんはライフルを構えてため息をついていた。
「まさか、助けた女の子がサイコパスだったなんて信じたくないよ」
「サイコパスじゃありません。私には、天性の!戦いの!才能が!!あったってだけです!」
やれやれといった表情の弦巻さんにそう弁明する。
弦巻さんはハイハイ、と言わんばかりにライフルを杖代わりに立ち上がる。
すぐさま駆け寄り、立ち上がる手伝いをして借りていたナイフを返す。
「うわっ、ゾンビの血だらけ。汚いなぁ...」
「ごめんなさいっ勝手に使って」
「あーうん、大丈夫。さっきのサイコパスって言葉は撤回するよ。ごめんね」
「もう!」
プンプンと軽く怒ると、弦巻さんは私の頭を撫でる。
私のことを撫でれば解決すると思われてそうだが、以外と私は撫でられるのが好きだ。
そんなことをしていると
ズガーン!!!
「キュオオオオ…」
「「っ!?」」
家から響く、轟音と振動、そしてスノー君と思わしき鳴き声が聞こえてくる。
そして、意識した上の階から感じるのは...重々しく禍々しい気配。
「...あかりちゃん、行ける?」
「余裕です。弦巻さんの方こそ、危ないんじゃないですか?」
「マキでいいよ。まあ、肩を貸してほしいなぁって」
そういう弦巻さん...いや、マキさんはCaf-S-3を杖代わりにして立っているが、確かに少しだけフラフラとしている。大型ナイフをインベントリにしまい込み、マキさんに肩を貸す。
「ごめん、ありがとう。」
「あのココア、また作ってくださいね?」
「いくらでもつくるよ、上に行こう...ゆかりちゃんが心配」
その言葉に頷き、ゆっくりと階段を上り始める。
頭に受けたダメージが酷いのか、少しだけ肩で息を吸って痛みを抑えようとしている。
だけど、目だけは諦めずに死んでいなかった。
...そして、階段を上り終えた私たちの目に飛び込んできた光景は...
「キュッ...キュオォォォォォ...」
「機体...が、限界に...近い......か」
ボロボロのスノー君?と、私の作った大切な相棒『フェルグ』が倒れ伏す姿と、
「アアァァァァアアアアアアアアアッ!!!!」
「やぁああっ!!」
ボロボロながらも、巨大なゾンビにただひとり立ち向かう結月さんの姿だった。
『旅ウサギ』結月ゆかり
体中が血だらけでボロボロだが、一人奮戦している。
愛用の棒が折れてしまいそうで、少しだけ意識が遠のいている。
弦巻マキ
頭に当たった瓦礫のダメージが意外と大きく、少しだけ意識が飛びそうになってる。しかし、そんな状態でも射撃の腕は衰えないのはさすがである。
『最後のクラフター』紲星あかり
元一般市民クラフター、現スーパー戦闘マシーンクラフター。
戦いにおいて、ゆかりを凌駕する戦闘センスを持つが戦闘経験がないためかなり荒々しい戦い方をする。大型ナイフを瞬時にクラフトしたのは、頭に浮かんだかららしい。
『堕天使の子孫』スノー
近距離戦を挑み、とりついたのだがその直後に掴まれて床に叩きつけられ大ダメージを負った。しかし寝れば回復する。
『機械の狼』フェルグ
5話ぐらいでようやく名前が登場した機械の狼。
既に中破状態だが、クラフター特有の超技術で作られてるため美味しいお肉を食べれば回復する。
ジャイアント
すごく、つよい。知ってるかい?こいつ実はこの世界じゃ通常スポーンなんだぜ?確率は(0.3%)でスポーンするけど、出たら出たで一国を滅ぼす程度の強さを持つんやで。