エヴァンジェリンちゃんペロペロ
第01話『接触―Contact―』
その時のエヴァンジェリンはかなり好戦的だったと言えるだろう。
彼女はつい先程〝正義の魔法使い〟によって魔女狩りと言う名の拷問により死刑を言い渡され殺されかけたのだから仕方のないことだと思う。
十字架に
彼女の足元に火を放たれ、後は焼け死ぬはずだった。自分を〝
結果から言うと彼女は助かりその村は〝ほぼ〟全滅した。彼女が殺したのは〝正義の魔法使い〟とそれに加担する村人の男衆。あの状態で
そして逃亡してる最中出会ってしまったのだ、二人の魔法使いに。
普段の彼女ならば気さくな言葉を一つでもかけてやっただろう、冷静だったのなら彼等に殺意を向けずにいただろう。しかし先の事があり今の彼女には余裕がなかった。襲ってくるものは全て敵であり、また立ち塞がるものも敵だった。
そして自分の殺意に反応し男を庇うよう前に立つ女性もまた殺意を剥き出しにしていた。これだけで十分だった。
――さあ、殺し合いを始めよう。なぜなら私は〝悪の魔法使い〟なのだから。
××××××
クランはどうするか迷っていた。魔法を使わずにのんびりと歩いて近くの村へと向かっていたのだがフォーゼの言葉によりその足は止められた。
「マスター、どうやら村で魔女狩りが行われているようです」
多数の使い魔を制御してその情報を並列化している彼女には常に世界の最新情報を得ている。その結果、今向かおうとしている村での現状が手に取るようにわかる。
魔女狩り。表向きは魔術や悪魔などの常識から外れた存在に頼り人々を惑わす〝悪〟を断罪する行為だとしているが実際はなんてことのない、宗教間の抗争だった。大多数が信仰しているものとは別な信仰をもつもの、それを異端として処罰するためのシステム。
彼にとっては理解しがたいくだらない行為としか思えなかった。
――それが終わって落ち着く頃に村に入れればいいが……
「どうやら処断されるのは吸血鬼のようです」
「あぁん?」
フォーゼの発言に怪訝な顔をするクラン。
吸血鬼。血を吸う鬼であり不老不死。人間と一線を画す化物達の一角。本来ならばそう
しかしその吸血鬼は合ってしまった。捕まえた人間が並はずれていた力の持ち主だったのか、吸血鬼が弱かったのか。
前者なら此方に被害が出ないとも限らない、彼等は本来このセカイの住人ではない上に〝力〟がありすぎる。目を付けられるのは厄介なことになる。
いつの世も〝力〟を持つものは狙われる。その力が自分たちの組織の制御下にあるわけではなく独立していれば尚更。
「どうなさいますか、マスター?」
フォーゼの問いかけに思考を巡らせる。このまま村にいってもいい事は無いだろう、むしろ厄介なことの方が多い。なら答えは一つ。
「別な村に行こう。来た道を戻るのは癪だが丁度対角にある村を割り出してくれ」
「了解しました――距離はかなりますが魔法で転移いたしますか?」
「いや少し早く歩けばいいだろ。あとはそうだな……その村で騒ぎを起こさせろ。処刑の時に吸血鬼を救え、使い魔を犠牲にしても構わない。派手に暴れてくれればこっちには被害はないだろ」
「了解しました、マスター」
踵を返し元来た道を戻る二人。しかしこの時過ちを二つ犯していた。
一つは吸血鬼を助けてすぐ使い魔が消えた為、吸血鬼のその後の情報が入ってこなくなってしまったこと。
もう一つは時間をかけて移動していること。
――そして二人は吸血鬼と対峙する。
××××××
先に気が付いたのはフォーゼだった。後方から一直線に
「マスター、何かが来ます」
「へぇ、何だかわかるか?」
「……どうやら先の処刑を
「お礼を言いにわざわざ来てくれた、と言うわけではないようだな」
意識を集中させ此方に迫る気配を探る。そこからは相手の殺意を強く感じ取れた。
更に魔法で加速しているためだろう、お互いの距離は既に1kmを切っている上相手も此方に気が付いたようだ。接触まで数分もかからないだろう。
「恩を仇で返すっていうのはこういうことを言うんだろうな……」
「……来ます」
クランが呟きながら溜息を溢す。敵がすぐ傍に来たことがわかりクランを庇うようにフォーゼが彼の前に立ち構える。
そして人の形をした何かが前方に降ってきた。長い金色の髪は薄汚れボロ布を纏うその身体はとても小さく華奢なものだったが纏う殺気はその身に似つかわしくない禍々しいもの。
≪蒐集して消しますか?≫
≪いやそれは最後の手段だ。とりあえず捕まえて話を聞こう。それでもダメならやる≫
≪了解しました、マスター≫
念話により互いの意志を疎通さえる。このセカイの吸血鬼に興味があるクランとしてはすぐ消すのはもったいないと思った。最悪の場合は仕方ないとしても対峙しただけでわかる――戦力は圧倒的に此方が上ということに。
それに気が付くことはない血まみれの吸血鬼の少女は獣が餌を見つけたようにニヤリと口を歪ませる。自分は捕食する側だとそう言っているように。
――戦いが始まった。
次は戦闘シーンの予定