セカイの魔導書と旅をする   作:おにちく

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 なんちゃって戦闘回です



第02話『交戦―Warfire―』

 

 

 日が傾き空を朱色に染める。多くの人は仕事を終える準備をし、気の早いものは既に帰宅しているかもしれない。

 

 木々が生い茂る森の中に一本だけある整備された道は町からだいぶ離れた場所にある為か既に人通りはい。

 

 しかしそこに人影が三つあった。

 

 一つは小さな少女、金色の長い髪が夕日によって煌びやかに輝きまだまだ幼い可愛らしい外見をしている。しかし身体は薄汚れ血の跡があり着ているものはとても服とは呼べないボロボロな布きれだった。体を洗い清潔にして綺麗な服を着せて笑顔を浮かべれば多くの人は微笑ましい気分になるだろう。

 

 その顔は口元を吊り上げ笑っているがそこに有るのは殺意だった。目の前の獲物を狩る獣の如く、相手から目を離さない。

 

 それに対峙するように一組の男女、男の方は長い黒髪をたらし灰色のローブを纏い一冊の本を持っている。まだ若く二十歳前後ともとれる顔は整っている為か女性ともとれるだろうが、つり上がっている蒼い目はあまり愛想がいいとは言えない。

 

 その青年の前に立つ女は青年とさほど変わらない年齢だろうか、同じ灰色のローブを纏っている。銀色の髪を腰まで伸ばし真っ白な肌が夕日を反射している。対峙している少女が可愛いならば此方の女性は美しいだろう。スタイルがよく女性として出るところはきっとりと出ている。

 

 何も持たない手に力を入れ無表情のまま紅い目は少女を見据えていた。

 

 一人と二人はそれぞれ相手の事を知らない。何かしらズレがあったならば擦れ違うだけの関係だったかもしれない。お互いにお互いを知らないまま他人として終わる、それだけの関係にもなれただろう。

 

 しかしそうならなかったのは単純に()が悪かっただけであろう。偶然に偶然が重なった結果、この関係が出来上がった。

 

 少女は殺意を持ったまま二人( 獲 物 )に近づき、二人は少女()を迎撃すべく構えた。

 

 互いに動くことは無く、開戦のきっかけを今か今かと待っていた。

 

 ――そして一陣の風が吹き、戦いの幕が上がる。

 

 

 ××××××

 

 

「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 魔法の射手 氷の15矢!!」

 

 先に動いたのは少女――エヴァンジェリンだった。詠唱により生じた15本の氷の矢が前衛の女――フォーゼ目掛けて飛来する。

 

 エヴァンジェリンの狙いは至極単純だった。前衛を立たせるのであれば後ろの男――クランは後衛の魔法使いだと予想した。そうなれば前衛の女は〝魔法使いの従者( ミ ニ ス テ ル ・ マ ギ )〟だろう。二対一の戦闘では数の利を生かし前衛は相手の詠唱を邪魔するのが普通だ。それをしてこないで後手に回るということはド素人なのだろう。

 

 ならば前衛が動く前に釘付けにする。エヴァンジェリンの詠唱は並の魔法使いよりはるかに早くその魔法は重い。更にこの魔法は回避したところで追尾する。魔法は魔法でしか防げない、故に狙いは前衛の女でありその後ろに控えている後衛の男。後衛が前衛を庇って魔法を防ぐしかない。

 

 あとは防がせ続けて圧倒的な力押しで勝つ。ただの人間に魔力において負けるはずがない。更に空を飛び上空を抑えれば一方的な展開になるだろう。エヴァンジェリンは吸血鬼である自分には圧倒的なアドヴァンテージがあると思っていた。

 

 しかしその作戦は最初から(つまづ)いた。なぜなら――あろうことかフォーゼは氷の矢15本全てを掴んだのだから( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

「なっ……!?」

 

 予想外の行動に驚愕するエヴァンジェリン。しかしそれだけでは終わらなかった。

 

「この程度ですか? 期待はずれですね、お返しします」

 

 退屈そうに言い放つフォーゼ。そして掴まれた全ての矢はそのままエヴァンジェリンに向かって放たれた( ・ ・ ・ ・ )

 

「……くっ……!!」

 

 コントロールが全て奪われた。相手は魔法をコントロールする部分の魔力のみ( ・ ・ )を上書きしてそのまま放ったのだ。

 

 エヴァンジェリンは上空へと飛び追尾してくるであろう氷の矢に構えたが、幸いなことに追尾性能が失われていたようで一直線に飛んで四散した。

 

(なんだ、こいつは……!!)

 

 それは彼女にとって初めての経験だった。こんな巫山戯( ふ ざ け )た奴は見たことがない。相手の魔法を返す、防ぐでも無くすでも返すのだ。しかしそれでも自分が有利であることに変わりがないとエヴァンジェリンは思っていた。

 

()け」

 

 クランが声を発した。いつの間にか彼の周りには蒼い球体が7個浮かんでおり、先の一声でエヴァンジェリンへと飛んでいく。

 

「舐めるな!!」

 

 無詠唱で10本の氷の矢を放つ。飛んできた5個の球体を5本の矢で相殺し御釣りと言わんばかりに残り5本を男目掛けて放った。

 

 しかしその矢はクランの障壁により拒まれ直撃することはなかった。

 

(ん、障壁で防がれた( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )? しまった!!)

 

 気が付いた時には遅かった。フォーゼは既にエヴァンジェリンの真下に迫り殴りかかっていた。

 

「くっ、このっ!」

 

 エヴァンジェリンは障壁を展開し防ぐ。馬鹿力ではあるがなんとか防ぎ切った。その反動でフォーゼはそのまま地面へと押し戻される。しかし――

 

「これは……!」

 

 フォーゼと入れ違いに2個の蒼い球が、先ほどエヴァンジェリンに向けて放たれず温存していたものがここで来たのだ。

 

「この程度で……!」

 

 エヴァンジェリンは先のフォーゼからの攻撃で障壁はだいぶ削られてしまった為、受けるのは危険と判断した。驚きこそしたが幸いなことに(かわ)せる程度の速度だったので身を捻りそのまま脇を(かす)め球はそのまま天高く昇って行った。

 

(今ここで決めるしかない……!)

 

 フォーゼは落下中でありクランも魔法を放ったばかり。この隙に一気に決める。エヴァンジェリンは覚悟を決め大量の魔力を込めた。

 

「終わらせてやる! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ氷精 闇の精 闇を従え 吹雪け 常夜の氷雪……」

 

「気をつけろよ、空から降ってくるぞ( ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 クランは自分の真上( ・ ・ )に障壁を展開していた。エヴァンジェリンは自分の攻撃に対する防御ではないことに疑問に思いクラウの言葉で詠唱を止めてしまった。そして気が付いた。自分の上から何か( ・ ・ )が降ってくることに。

 

「(なんだ、これは!)……闇の吹雪!!」

 

 培われた勘により魔法を自分の頭上へと放つ、そしてそれ( ・ ・ )は落ちてきた。大量の鉄の矢( ・ ・ ・ )が周りに降り注いだ。

 

 フレシェット弾。弾の中に矢状の弾体を大量に詰め込み上空で爆発させそれを辺り一面へ降らせる。

 

 先程クランが放った魔法の球はまさにこれである。大量の鉄の矢を圧縮した空間を作りそれを外側から魔法で覆っていたのだ。だから敢えて躱せる程度の速度( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )で放ったのだ。

 

「くぅ……」

 

 エヴァンジェリンの表情が歪む。必殺のつもりで撃つ魔法を自分の防御の為に使ってしまった。更にこの程度の矢であれば吸血鬼である自分が負うダメージはそこまで深刻ではなかったと。

 

(まて、あの男は自分の上に障壁を張っていた。じゃあ、あの女は……!!)

 

 エヴァンジェリンが放った魔法により彼女の頭上の鉄の矢は全て消し飛んだ。つまり彼女の周囲及びその真下は安全地帯( ・ ・ ・ ・ )になっていた。背中に嫌な汗が流れるのを感じつつも振り返った。

 

 そしてエヴァンジェリンの背後( 最 も 安 全 な 場 所 )にフォーゼはいた。

 

「チェックメイトです、吸血鬼」

 

 フォーゼはエヴァンジェリンの頭を掴みそのまま地上へと落下、顔面を地面に叩きつけた。

 

「がはっ!!」

 

 衝撃に思わず声が漏れた。しかし――

 

「舐めるなぁぁぁぁ!!」

 

 エヴァンジェリンはフォーゼを力任せに吹き飛ばした。仮にも吸血鬼であるエヴァンジェリンはこの程度ではまだ終わるわけがなかった。

 

 フォーゼは吹き飛びはしたもののたいしてダメージを受けてなかったが距離が開いた。そしてエヴァンジェリンはクランとフォーゼに挟まれる形になった。

 

(なぜあの男はまだ頭上に障壁を張っているのだ……まさか!)

 

 エヴァンジェリンは未だ障壁を解かないクランに疑念を覚えそしてハッとした表情を浮かべフォーゼを見た。彼女の立つ位置はちょうど鉄の矢の範囲外であった。そして先ほどエヴァンジェリンが躱した球は2個( ・ ・ )

 

「二度も、同じ手に引っかかると思ってるのか!」

 

 それに気が付いたエヴァンジェリンは駆け出した。鉄の矢が振る前にクランの障壁を消すか叩けば彼は鉄の矢( 自 分 の 策 )によって自滅する。最悪自分は鉄の矢でダメージを受けてもどうにでもなると。

 

 だが――

 

「ああ、普通( ・ ・ )そうするよな。そして終わりだよ」

 

 クランが呟き、そして降ってきたのは――()だった。

 

「きゃああああああああああああ!!」

 

 人にとってはただの水だが吸血鬼や魔族にとっては猛毒、つまり聖水だった。2個目の球の中身は大量の聖水。それが滝の如くエヴァンジェリンに降り注いだ。

 

 エヴァンジェリンは自分の身体を自分で抱きしめていた。死に至りはしないでも聖水の毒でショックを受け叫び身動きが取れなくなっていた。

 

「お前の負けだ、吸血鬼。今は眠れ、安らかに」

 

 クランは指先に魔力を集中させ彼女の額を一突きした。そして吸血鬼の真祖――エヴァンジェリンは意識を失った。

 

 





 エヴァにゃんがだいたい酷い目にあってます。でも可愛い

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