またもや会話。ちょっと主人公について説明する程度であってもなくてもどうでもいい回
日は沈み静寂と闇が周りと包み込む中、それを否定するかのように光を放つ場所があった。あちらこちらに松明が焚かれ暗闇を照らす。木で出来た多くの建物が集まる小さな集落。
その中でも比較的大きな建物の中、その二階を一人の青年が歩く。足音は小さいが代わりに廊下のあちらこちらから軋む音が聴こえる。木造作りで年代を感じさせるお世辞にも綺麗と言えない部屋の一室に青年は入って行った。
小さな机と椅子とベッドがそれぞれ一つずつの質素な部屋。青年は本を片手に何か小く呪文のような言葉を呟くと本から青白い光が放れると一瞬で消えた。青年は小さな
「助かった助かった。持つべきものは旅の仲間、ってところか」
「何が旅の仲間、だ。笑わせるな」
青年――クランの背後、影の中からエヴァンジェリンが現れジト目でクランを見ていた。
「助け合いって大事だろ、なあフォーゼ?」
「持ちつ持たれつ、ということですねマスター」
肩をすくませクランがフォーゼに同意を求めると本が青白く光ると同時に粒子が流れフォーゼが姿を現し傍に控える。
「しかし資金ゼロで旅をするとか何を考えているんだ……」
「代わりに結界を張ってやっただろ? これでチャラだ」
クランは椅子に腰かけ蝋燭に火を
村が見えた辺りで宿を取ることを決めた。野宿は別に嫌ではない三人であったが折角だからクランが宿に泊まりたいと言い出しそれに賛同するフォーゼ。エヴァンジェリンも特に否定する要素がなかった為その案が可決、そこまではよかった。
しかしクランたち二人は金を持っていなかったのだ。普通旅をするなら資金を最低限持っておくのだがそれすらないクランたちにエヴァンジェリンは激怒を通り越して呆れた。部屋に結界を張るから代わりに金を出せとクランに言い包められエヴァンジェリンが渋々出したのだった。
それからエヴァンジェリンとフォーゼは姿を隠しクランが一人で部屋を取った。クランが代表で部屋を取った理由としては他の二人より適任だったからである。エヴァンジェリンとフォーゼは女性、しかもかなりの美人ときたものだ、何かよからぬことを考える輩に目を付けられては手間だと考えた。
「しかしこんなボロ宿、雨風が
「ああ、なんだそんなことか。安心しろ、部屋はこうするから」
椅子から立ち上がると本を開き魔力を込めるクラン、その様子を
「――
そして木造のボロ部屋は別な世界へと豹変した。部屋は先程の倍以上ある大きさになりフローリングの床、壁には白い壁紙が張られ、天井設置された電球が部屋を照らす。全身を写せる大きさの鏡やテーブル、そしてそれを囲むようにソファーが二つあり大き目のベッドも二つある。冷蔵庫まで完備してある。本来ならテレビなどもあるががこの時代に合わないため削除した。
更に出入口とは別な扉が二つあった。先ほどまでいた部屋の面影は出入口の形だけだろう、それ以外は全く別な物になっていた。
エヴァンジェリンが座っていたベッドはソファーと換わった為、僅かな段差が生じ落ちた腰がぽふ、と音を立た。
「結界、いや幻術!? 違う、なんだこれは……クラン、貴様一体何をした!!」
「別に住みやすいようにしただけだが?」
「取り乱しすぎです吸血鬼。少しは節度を持ってください」
予想外の出来事に取り乱すエヴァンジェリといつも通りの態度のクランとフォーゼ。しかし自分がまったく知らない魔法を目の前で見せつけられたことに対して興味がそそられたのだろう、興奮が止まない。
「だから何をしたか言え! 説明しろ!」
「騒ぐなよまったく。魔導書からデータを引き出して空間を書き換た」
「空間を書き換えた? なんだそれは……」
「そこそこ値段のいいホテルの一室だ、気に入らなかったか?」
「そんなわけは……」
エヴァンジェリンは改めて辺りを見回す。高貴な身分だった
それもそのはずだ、彼女は知らないことだがこの部屋は今の技術レベルより遥か未来の技術でできた部屋なのだから。
「満足そうで何より。あの扉は風呂場に繋がっている、あっちの扉はトイレだ。水に関しては気にするな、浄水された水だから無害だし排水に関してはそのまま浄水場につながるようになってる」
最低限の説明だけしてエヴァンジェリンの対面のソファーに座るクラン。それを見たフォーゼはどこからかコップと急須を出しお茶を三人分テーブルに置きクランの隣へと座る。
エヴァンジェリンはこの空間を書き換えた魔法についてもっと詳しく聞きたかったがそれより先に気になることがあった。
「しかしいくら結界を張っているからといってこんなことして大丈夫なのか?」
「ああ問題ない、誰もこの部屋には来ないから安心しろ。この部屋や俺らに対して誰も関心を示さない。それに襲撃者は村に入った時点で気が付くしな」
「ん? 結界は宿に張ったんじゃないのか?」
「いや、違う。あれ村全体に張ったんだ」
「はぁ!? なんでそんなことを」
「そっちの方が効率いいだろ。魔力なんてどうせ掃いて捨てるほどあるからな」
「お前は……」
規格外すぎる存在に頭を抱えるエヴァンジェリン。知らない魔法を使い自分を手玉に取るだけの実力を持つ自称旅人。一緒に旅をすると言ったが相手のことが何一つ知らなかった。だからストレートに聞いたのだ。
「なあ、お前らは何者なんだ?」
「別のセカイから来た旅人だ」
「別な世界? 魔法世界の住人か?」
「魔法世界? そんなのがあるのか。そっちの情報は詳しく知らんな……」
エヴァンジェリンから聞きなれない単語を聞いたクランは興味をそそられたがそれはまた後、今はちゃんと説明することにした。
「とりあえずさっきの質問の答えだが文字通り別なセカイから来たんだよ、前にいたセカイが崩壊してな……」
クランはアルハザードと呼ばれるこことは違うセカイの住人であること。そのセカイは貿易し良好な関係を築いていたはずの別のセカイに裏切られ崩壊を余儀なくされたこと。結果、そのセカイの全てを収めた魔導書を持って次元を渡りこのセカイに来たこと。
エヴァンジェリンにとっては夢物語ではあったがそれならば今までの事を考えるとはある程度説明がついてしまい納得する。
「そしてフォーゼはこの〝アルハザードの書〟の管制人格だ」
魔導書をエヴァンジェリン見せ紹介されたフォーゼは一礼する。
「最後に俺のことだが……見た目こそ人間と変わりはないが中身は別物と思ってくれてればいい」
「どういうことだ?」
眉を
「簡単にいれば俺はアルハザードにいた十二種族、より正確に言えば十五ノ二種族の〝血〟を、この世界でわかりやすく言えば人間や吸血鬼、竜、魔族、神と言った連中の〝血〟を継いでいる。本来であれば尤も濃く継いだ〝血〟の種族の見た目、両親の関係だと幻想種か聖神種になるはずだったんだが遺伝子の不思議で人間型になった」
「混血の突然変異というわけかな……まったくどこまで規格外なんだ、お前は」
「別に不便はないから問題ない。尤もこの世界で見た目は人間でよかっただろう、種族差別が酷いようだし」
「……っ……」
その言葉に口を
「そう言うこともあって俺は人外に対して差別意識はない、だから安心しろ。敵対すれば別だがな。とりあえず風呂でも入って寝ろ。俺も疲れたから寝る」
浴室への入り口を指差し促すクラン。ああ、とエヴァンジェリンは
「ベッドはどっちを使えばいいんだ?」
「なんだ、一緒に寝ないのか?」
「おまっ!?」
「冗談だ、無理矢理は嫌いじゃないが旅の仲間にそんなことはしない。どっちか好きな方を使え、俺たちは空いてる方を使う」
クスクスと笑うクランと顔真っ赤にするエヴァンジェリン。彼女は自分がからかわれたことに気が付き怒りながら大股で歩きだし浴室へと入って行った。
その様子を見届けた後ふと隣に座るフォーゼへと視線を向けた。そこにはテーブルに残された手つかずの二人分のお茶を淋しそうに見つめる姿がありクランは溜息をつき自分とエヴァンジェリンの分を飲み干したのだった。
余談だが初めて入ったお風呂をとても気に入ったエヴァンジェリンは先の怒りは忘れ就寝まで上機嫌だった。
エヴァにゃんはいじられ処女かわいい。次からは別章に進みます。なお魔法世界へ行くのはまだ先な模様、しばらくオリジナルgdgd展開