Fate/√  【群像時変】   作:わが立つ杣

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1月31日 夜







第33話 ~当日⑦~ 「閃紅」

 Interlude in

 

 

『私だ、凜。漸く最後のサーヴァントであるアサシンが召喚されたぞ。いよいよ聖杯戦争の開始だ。お前の力を存分に発揮するがいい。私も兄弟子として──―』

 

 つい先程、留守電が入っていることに気がつき、少女のすらりと伸びた指はその伝言を途中で切った。

 

「いよいよね」

 

 お気に入りの真紅のカットソーを着た少女、遠坂凜は湧き上がる高揚感を抑えるように静かに呟く。

 彼女の隣に佇んでいる赤い外套を纏った長身のサーヴァントが軽く頷いた。

 

「ふむ。そうだな。とは言え、これまでも充分に前哨戦があったから、今さらという感は否めないがな」

 

「ほんとよね。0次会が随分と賑やかだったわ」

 

 自分達が直接関わったものだけでも、キャスター、ライダー、バーサーカー陣営との遭遇。衛宮士郎の死。桜の変貌と、その桜に取り込まれていったライダー。そもそも慎二がライダーのマスターだと思っていたら、実際は桜だったというサプライズもあった。

 関わっていないものとしては、新都での度重なる昏睡事件に、双子館の半壊、穂群学園校舎の消失と枚挙に暇がない。

 自分達が把握していない戦闘や事件もきっとあるだろう。

 

「さてと、それでは当面の方針を聞こうか。穴熊を決め込んで漁夫の利を狙うかね?」

 

 自身のサーヴァントは口角を持ち上げて、その精悍な顔にニヤニヤとした笑みを浮かべた。

 

「あんた、その嫌味ったらしい性格なんとかしなさいよね。友達いなくなるわよ」

 

 凜はジトリと()()()()()

 

「ご忠告痛み入るな。マスター」

 

「あたしがそんなことするわけないって、絶対わかってるんでしょう?そういうところ、ちょっと綺礼と似ているわよ」

 

「参謀役は敢えて常識的な選択肢を提示するほうがいい。特にキミのような果断な主君に対してはな」

 

「ああ、はいはい。そういうのいいから」

 

 凜は邪険にするように目を瞑ってひらひらと手を振ったが、再び開いたその瞳ははちきれんばかりの生気と闘志に満ち溢れていた。

 

「なんにせよ待ちに待った聖杯戦争。私が私であるために戦い、そして勝つのよ。その正式開戦。初手からそんな消極的でどうするのよって感じよね」

 

「血気盛んで何よりだ。マスター」

 

 赤のサーヴァントは目を細めて、己が主君を眩しそうに見つめる。

 桜が自身の妹であるという事は、既に凜から伝えられていた。

 今日の未明に、その桜の変貌を目の当たりにした時には、かなりの動揺を示していた。多少、尾を引くかと懸念していたが杞憂だったようだ。彼女は既にいつもの鮮やかさを取り戻している。

 

「だが、実際のところどうする?私の見るところ、現状はかなり複雑怪奇で、かつ中途半端という印象だぞ」

 

「確かにね。『複雑』の最たるものは、間桐家、それからキャスターね」

 

「そのとおりだ。間桐桜のあの変貌は一体何によるもので、今の彼女はどういう存在になっているのか。そして、消えてしまったライダーはどうなったのか、というのが間桐陣営の謎だな」

 

「桜がライダーの真の主だったという点までは、合点がいくんだけどね」

 

 慎二ではなく、桜がマスターだったということについては、凜は納得していた。そもそも魔力のない慎二が使役していたことがイレギュラーだったのだ。

 

「そして、もう一つは衛宮士郎という依り代を失ったキャスターが今どうなっているのか、だな」

 

「普通に考えればとっくに消滅していると思うんだけど、元々、あの二人は正式な主従関係ではなかったみたいだしね」

 

「まあ、曲がりなりにも男と女だ。そういう関係だったということは想像に難くないが、他にも魔力を補充する手段はある・・・もし、生き残っているとしたら、あの魔女であればやり兼ねんな」

 

「魂喰いってやつね」

 

「ああ。新都で発生していた昏睡事件の第一容疑者はキャスターだと私は睨んでいる」

 

「その言いぶりだと、あんた、ひょっとしてキャスターの正体がわかってるの?」

 

「いや、流石に材料が少なすぎる。単なる偏見の域を出ない。凜も似たようなものだろう」

 

 当初から凜はキャスターをいけ好かない女として見ている節があった。

 

「そりゃ否定できないわ。だいたいあの女ってば、なんて言うか如何にも大昔の魔女って感じで、しかもそれが()()()()()()()()なんだもの。めんどくさいわよね」

 

 何が楽しくてあんなことしているのかしら、と()()()。 

 

「・・・それはそれとして、『半端』のほうね。こりゃもう私達が得ている情報がねえ・・・イマイチ・・・なのよねえ」

 

「サーヴァントとマスターの組み合わせが判明しているのはバーサーカー、ライダーのみだからな。キャスターを一旦除外するとして、他の陣営がわからないな。正式開戦していない段階で、半分近くの面が割れていると考えれば御の字なのかもしれんがな」

 

「要するに御三家しかわかってないってことなのよねえ。あ、そう言えば魔術協会の参加枠については、誰が選ばれたかは連絡があったわね」

 

「そうなのか。だが、どんなサーヴァントを召喚したかまではわからんのだろう?」

 

「そりゃね」

 

「いずれにせよ、先ずは情報を集めるところからだな」

 

「ええ。でも、いの一番にキャスターの生死の確認よ。生きていそうならその動きを追うわ。衛宮君を失ったから、なりふり構わず一般人を襲い出す危険性も充分あるわ。被害の拡大を防ぐためにも、現行犯で捕捉できたら、その場で止めを刺すわよ」

 

「了解だ。もぬけの殻だとは思うが、一度衛宮邸も確認すべきだな」

 

「そうね。その後で、賭けにはなるけど新都方面に向かいましょう。深山町(こっち)側は遠坂、間桐と面が割れている敵がいるから悪事がバレやすいと考えるでしょうし、これまでの昏睡事件があの女の仕業だとすれば向こう側で味をしめている可能性もある」

 

「同感だ」

 

「・・・あと・・・衛宮君を誰が殺したのかってのもわからないのよね。間違いなく聖杯戦争関係者だろうし・・・・・・わかったところでどうなるもんでもないんだけど・・・・・・ね」

 

 凜としては珍しく歯切れの悪い表現だった。

 衛宮士郎という存在の立ち位置は、彼女からすれば敵でしかない。割り切ってしまえば、その死を歓迎こそすれ悼む必要はない筈だ。

 だが、彼は桜の想い人だった。

 そして何より、【遠坂凜】が多少なりと言葉を交わした同級生の死を損得勘定だけで片付けられるような、『完璧な魔術師』でないことを長身のサーヴァントは知っていた。ましてや、彼女は【衛宮士郎】という少年が紛れもなく善人であったことを、既にわかっていたのだから尚更だ。

 

「今のところ、《穂群原学園の生徒、路上で変死》的な報道は、新聞でもニュースでも流れていないな」

 

「そこは、綺礼がうまく誤魔化しているんでしょ」

 

「残念ながら誰が衛宮士郎を殺したかについては、何とも言えないな。私が昨夜目視できた金色のサーヴァントは、少なくとも容疑者の一人ということにはなるがな。他の参加者達があの付近で活動していなかったという証左はどこにもない」

 

 凜の心情を慮って、混ぜっ返すこともなく、淡々と自身の考えを口にする。

 

「そうよね。実際に桜とライダーも動いていたわけだし」

 

「その二人は逆に衛宮君殺害については間違いなく『シロ』だがな。付け加えると、バーサーカー陣営はイリヤスフィールの『正式開戦までは待機』というスタンスから外れるから考え辛いな」

 

「あの時点ではアサシンは召喚されていない筈だから、あんたの見た金ぴかとランサー陣営が怪しいかな」

 

「そういうことになるな」

 

 ・・・それにしてもいったい・・・

 凜との会話を続けながらも、赤い外套のサーヴァントは全く別の疑問を抱いていた。

()()()()】はどうなったのだ?

 凜は自分のことを【セイバー】だと思っているが、実際は【アーチャー】だ。

 召喚された直後に

 

『あなた、セイバーよね?』

 

 と問われたので、YESと答えた流れでそのままになっている。

 他愛のない悪戯のつもりだったし、敵陣営を多少なりと混乱させられるかと思ったのだが、今さら白状したら凜にどういう反応をされるのか・・・怒られるのがちょっと怖い。

 いずれにせよ、凜はセイバーが自分だと思っているが、自分はそうでないことを知っている。

 そして何より本来【衛宮士郎】が【セイバー】を召喚することを自分は知っている。

 金色のサーヴァントと戦っていたのは、おそらく召喚されたばかりのセイバーだったのではないか。そしておそらく金色のサーヴァントに敗れた。

 セイバーが敗れた後に止むを得ず離脱しようとした衛宮士郎が殺されたという流れか。あるいは、何らかの理由で柳洞寺方面に向かっていたところをまとめて襲撃されたか。

 いずれにせよ、セイバーは・・・

 

「既に消滅したと考えるのが自然か・・・」

 

 微かに呟きが漏れる。

 

「え?なに?」

 

「いや、なんでもない。とにかく、衛宮士郎殺害の犯人探しは興味深くはあっても、重要ではない。そろそろ行動を開始しないか、マスター?動き始めが早いに越したことはないだろう」

 

 誤魔化す意図も含まれていたが、事実でもある。

 今は18時。

 この時期では既に夜と言って差し支えない時刻だ。

 他の陣営が本格的に動き出す前に、先んじて行動したほうが良い。

 

「OKよ」

 

 凜から覇気のある声が発せられ、彼女は紅茶を飲み干した。

 

「行きましょう。セイバー」

 

 マスターが席を立ち、扉へと向かう。

 彼女から迸る英気は鮮烈で、眩しいほどだ。

 守護者たる無名の英霊は扉をその主の後ろに続く。

 

「了解だ。マスター」

 

 当初から、凜に対しては記憶が混濁しており自分自身の正体はわからないという体にしている。

 実力の一端は校庭における三つ巴の時に見せているが、バーサーカーには圧倒的な力を見せつけられており、彼我の戦力差は歴然としていた。

 それでも、彼女が自分をサーヴァントとして、相棒として信頼してくれているのが充分にわかっていた。

 それが心地良く、また誇らしかった。

 あの【遠坂凜】が自分を認めてくれているのだ。

 これから彼女の宿命とも言える戦いが本格化し、自分はその傍らで全力を尽くすことができる。

 そのことがしがない英霊である自分には誇らしかった。

 目的としていた『衛宮士郎の殺害』は結果的に果たされた。

 本当は自分自身の手で成し遂げたいという拘りがあった。

 それに、衛宮士郎の遺体を見た瞬間の、どうしようもないほどに虚ろな感覚は未だに消化しきれていない。胸の中に生じたこのしこりは、ずっと中途半端に引っかかったままになっていて、気持ちが悪いが今は気にしないようにするしかない。

 いずれ、時間が解決するだろう。

 今は己の成すべきことを成すだけ。

 全身全霊でサーヴァントとして、彼女の剣となり、弓となって駆け抜けるだけだ。

 こうなってしまえば自身の正体を明かすことも特段の支障はないのだ。時が来たら伝えよう。

 ポケットの中に忍ばせた宝石に触れ、その感触を確かめる。

 無機質で冷たい筈のその大切なそのペンダントに、自身の昂揚が伝わっていく。

 ・・・熱い・・・

 

「どうやら、()()()()()()()()()()()()()()()・・・」

 

「え?・・・なに?」

 

「いや、なんでもない」

 

 男は、今の表情を相手に見せないように顔を伏せる。きっと、とんでもなく()()()()()顔をしているだろう。

 

「さあ行こう。凜」

 

 遠坂凜のサーヴァント【エミヤ】は、マスターの肩を軽く叩いた。

 

 

 Interlude out

 

 

 E' turn

 

 

「早速、動き出したわね。あのお嬢さん」

 

 キャスター(マスター)が座卓に置いていた水晶球を掲げた。

 彼女が各所に放っている使い魔のうちの一匹の視覚を通じた光景が映し出されている。

 

「ああ、遠坂っていう女魔術師か」

 

 食器を洗い終えたオレもそれを覗き込むと、鮮やかな赤いコートを羽織った少女が屋敷の玄関を出るのが映し出されていた。

 キャスター(マスター)の話では、かなり勝ち気な性格らしい。映像が少し遠めで表情まではわからないが、キビキビとした動きが印象的だ。事態を静観するというよりは、積極的に動くほうを好むのだろう。

 

「どこに向かうかだな。こっちに来る可能性もあるよな」

 

「ええ。方向的には間桐邸に向かったわけではないもの。元々彼女は(わたくし)に敵意を持っていたし、サーヴァントのほうはあなたに殺意を持っていたから」

 

「イリヤが立ち去った後だったのは、タイミングが良かったのか、悪かったのか・・・」

 

「どうかしらね。バーサーカーを目にしたら、向こうは戦わずに退くことになったでしょうから、それだと()()()()()を達成できないわね」

 

「そうだよな。じゃあ、ここで迎え撃つのか?なんていうか・・・かなり、しんどいと思うけど」

 

 オレは懸念の意をマスターに示す。

 心配の種は二つある。

 勿論、一つ目はオレ自身がまるで役に立たないだろうってことだ。

 

「大丈夫よ、坊や。私も今、ここで戦うつもりはないわ」

 

「そうか」

 

 オレはほっと一息つく。

 二つ目の懸念はキャスター(マスター)の状態だ。

 彼女はあまり表に出さないようにしているが、おそらく魔力がまるで足りてない筈だ。元々、昨夜からの戦いで消耗しているうえに、オレに魔力を供給している。

 この状態で、優秀な魔術師と真当なサーヴァントのペアを相手にして勝てるなんて、到底思えなかった。

 

「だとすると撤退・・・というか、脱出・・・かな」

 

「ええ。一度、ここを空けるわ」

 

「『一度』ってことは、ここにまた戻ってくるのか?」

 

「そこは状況に応じてということになるわね。私の拠点が移った、或いは私自身消滅したと多くの敵に思われれば、またここに戻ることも考えられるわ」

 

 とにかくオレ達の状況は複雑で、イレギュラーてんこ盛りだ。

 衛宮士郎が死んだこと、衛宮士郎がサーヴァントとなったこと、キャスターがマスターとなったこと、それらの情報を各陣営がどこからどこまで知っているかで、オレ達への警戒度や対応は変わってくるだろう。

 

「わかった。何にせよ急いだ方がいいな。あの二人がここに着くまで、それほど時間はかからないぞ」

 

「そうね。でも、工房から最低限の道具は持ち出さないと」

 

 マスターが母屋に若干の仕掛けを施した後、外に出たオレ達は土蔵へと向かった。オレには用途のわからない怪しげな石だの薬品だの、草花だのを見繕って持ち出す。

 

「防御結界も解いておくわ。私が中にいないと充分には効力を発揮しないし、ここがもぬけの殻だと思わせた方がいいもの」

 

 そう言って、マスターは外壁づたいに一回りした。これまたオレにはよくわからないが、結界のポイントを解除しているようだった。

 

「さあ、行きましょう」

 

 正門を潜ったところでマスターが立ち止まる。

 

「・・・・・・」

 

 振り返った彼女は屋敷を少し眩しいものでも見るような目で、じっと見ていた。

 

「どうしたんだ、マスター?」

 

「いいえ、なんでもないわの・・・行きましょう。私は霊体化するわ。急いでここを離れましょう」

 

 何かを振り払うように、正面を向いた彼女は言葉どおり霊体化した。

 

「そうだな」

 

 暗くなった路地に出ると、オレは新都方面へと向かうべく駆け出した。

 

 

 Interlude in

 

 

()()()()、あなたの見立ては?」

 

 衛宮邸の正門までやって来た凛は、実体化した己がサーヴァントに確認した。

 

「張られていた防御結界が消えているな。勘みたいなものだが、中に人の気配はないな」

 

「ってことは、キャスターはもうここにはいないでしょうね」

 

 二人は校庭での戦闘の後、この屋敷に防御結界が張られていることを確認済みだった。

 それが今はない。

 

「言うまでもなく油断は禁物だがな。先に私が入るとしよう」

 

 タンッ

 

 軽く跳躍したセイバーは、屋敷を囲む外塀の瓦へと着地した。

 

「問題ないな」

 

 中の様子を窺いながら、視線だけでマスターについてくるよう促す。

 

「オッケー。んじゃ私も、っと」

 

 タンッ

 

 と、セイバー同様身軽に跳んだ凛だったが。

 

 ガラガラガラガラ!

 

 自身のサーヴァントの隣に着地した瞬間に、けたたましい警報が鳴り響いた。

 

「んげっ!?」

 

「ああ、これは探知用の結界だな」

 

「なんで、あんたには反応しなかったのよ!?」

 

「心が清廉かどうかが判断基準らしいな」

 

「んなわけないでしょうがっ!!ってか、その基準だと、心が清らかな人間に反応する結界ってことになるわ!」

 

「気にするな。この結界はこの敷地そのものに時間を費やして定着させたもので、屋敷に主がいなくても作動するものだろう」

 

「万一、キャスターがどこかに隠れていたら侵入がバレたわね」

 

「奴が本気で結界を張るならこんな喧しい形で警告したりはしないな。自分だけに警報が伝わるように細工をするだろう」

 

「なんにせよ予定どおり中の確認だけはしましょう」

 

「了解だ。マスター」

 

 二人は敷地の中心部に佇む建物へと向かった。

 

 

 

「やっぱりもぬけの殻ね」

 

「そうだな」

 

 広い母家内をひととおり見て回った二人は居間へと戻ってきたところだ。

 

「一応、こんな物は見つけたが・・・」

 

 セイバーの手には、色褪せたハードカバーの本が握られていた。

 

「うちの図書室の本ね。【誰でもわかるギリシャ神話】か・・・」

 

 凜は本の裏表紙に【穂群原学園 図書室】と押印されているのをチラリと確認する。

 

「小僧なりに、それぞれの陣営が召喚していた英霊を調べていたということだろうな」

 

「そうね。実際にバーサーカーはヘラクレスだったものね」

 

「そうだな」

 

 男のほうは他にもギリシャ神話に縁のある英霊がいると推測していたが、今は特に言及しないことにした。所詮、想像の域を出ない。

 

「ここは、ごく最近・・・いや、端的にはついさっきまで使われていたようだがな」

 

 居間から続いている台所へと赤のサーヴァントが移動する。

 シンクラックにはかなりの数の食器やコップが並べられているのが、目に留まる。

 

「あなた、目敏いわねえ・・・」

 

「しかも、一人分ではないな」

 

 セイバーが手にした湯飲みには、まだ水滴が残っていた。

 

「どういうことかしら?衛宮君が死んで、残ったのはキャスターだけでしょ。そもそも彼は一人暮らしの筈だし」

 

「来客があった、くらいしか思いつかないな」

 

「衛宮君宛の来客があって、それにやむを得ず応対したのかしら」

 

「その線もゼロではないが、聖杯戦争の参加者が来て何らかの交渉を持ちかけたのかもしれん。なんにせよ、考えるための材料が少なすぎるな」

 

「そうね。想像の域を出ないけど、キャスターは思っているよりも健在かもしれないわね。警戒したほうが良さそうだわ」

 

「特に報道はされていないが、夜中に魂喰いをしていたのかもしれん」

 

「だとしたら、今夜もやる可能性があるわね」

 

「他に補給源がなければ、あの魔女は躊躇しないだろう」

 

「あまりのんびりしていられないわね。早めに新都に向かいましょう」

 

「了解だ、マスター。他の建物もしっかりと確認したかったが、止むを得まい」

 

 二人は頷き合うと、廊下を抜けて、玄関を出た。

 すっかり降りきった闇の帳を、赤の主従が軽やかに切り裂いていく。

 

 

 Interlude out












凜&アーチャーのターンです。













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