Fate/√  【群像時変】   作:わが立つ杣

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2月1日 未明








第36話 ~2日目②~ 「弐vs壱」

 Interlude in

 

 

「・・・逃げられました・・・か?」

 

 バゼットは目線を左右に送って、周囲の様子を窺う。

 この辺りはバスルーム関連の商品が集められたエリアだった。シャンプーボトルやバスマットなどの商品が丁寧に陳列されている。

 敵のマスターである遠坂凜を追って来たわけだが、障害物の多い店内では、一度見失った相手を捕捉するのは容易ではなかった。

 

「確かに一旦、マスターが離脱してサーヴァント単体になったほうが、行動しやすいという考え方もあるでしょうが・・・」

 

 もし、この状況で彼女が逃げれば、敵のセイバーは、ランサーとバゼット両者を相手取ることになる。勿論、バゼットは単独で、最優と謳われるサーヴァントであるセイバーと渡り合えるわけはないが、ランサーをバゼットが支援するということになれば、圧倒的にセイバーが不利に陥ることくらいは察している筈だ。

 魔術協会から派遣されてきたバゼットは、聖杯戦争の要であるアインツベルン、遠坂、間桐という御三家の情報は一通り得ている。今代の遠坂家当主、遠坂凜はまだ若いが、五大元素を司る優秀な魔術師と聞いている。

 年齢や経歴から考えて実戦経験が豊富なわけではないだろうが、先程のランサーの仕掛けに対する対応力を見ていると、戦闘時における機転や判断力は秀逸なように感じられた。

 

「どこかに潜んで、機を窺っていると考えたほうが良さそうですね」

 

 ドゴッ!!

 

 おもむろにバゼットは手近な陳列棚を強かに殴りつけた。

 木片が弾け飛び、

 

 ズズゥゥゥン―――

 

 棚はゆっくりと横倒しとなり、そこに収まっていた商品群はバラバラと散逸する。

 

「・・・であれば、探すよりも、炙り出す方が早い」

 

 

 

 凛はクッションが積み上げられたワゴンの影に隠れて、相手の様子を窺っていた。

 なんとなくだが、戦闘人形(バトルマシーン)という言葉が頭に浮かぶ。

 追ってきた女は、一見無防備なようにも見え、特段敵の攻撃に備えているという風でもない。だが、その周囲にはある種の結界が張られていて、間合いに入った敵を瞬時に探知し、自動的に迎撃されるのではないかと思わせるような雰囲気が滲み出ていた。

 

「とんでもない出鱈目っぷりね」

 

 先程から見せる彼女の戦いぶりは凄まじい。

 霊長の限界を極めた体術と、強化系魔術のブレンドによる類稀な戦闘能力。

 ランサーが呼んでいた彼女の名は【バゼット】。

 

「聞いたことがあるわ。封印指定の執行者で、戦闘特化型魔術師の女がいるって。あれが協会からエントリーされたってわけね」

 

 聖杯戦争には魔術協会の参加者枠がある。これだけ有力な魔術師が偶然マスターになるわけがない。

 とんでもない人間兵器を送りつけてきたものだ。

 

「脳まで筋肉がギッシリ詰まってるって噂は本当だったわね・・・」

 

 そうこうしているうちに、自身の潜む位置へと徐々に近付いてくる。そろそろ仕掛けないと不味い。

 と同時に、仕掛け時とも言える。

 いくわよ。

 

「そこにいましたか」

 

「げっ!?」

 

 自身の思考が読まれた?

 そんな疑念が頭をよぎる程のタイミングで、捕捉されてしまった。

 こちらの攻め気が、体の揺らぎに繋がってしまい気配を悟られたか。

 

 ザッ!

 

 一蹴りで、こちらへと飛び込んでくるバゼット。

 既に距離が近い。

 

 バッ!

 

 凛は自身に影響しないよう、氷結魔術を封じた宝石を投じた。

 

「凍れっ!」

 

 バゼットを取り囲むように至近距離に浮かんだ3つの宝石が、その効力を発揮する寸前。

 

「つぁぁっ!」

 

 バリリリンッ・・・

 

 その全てを、拳と蹴りで砕き割っていた。

 

「そうなるわよねっ!」

 

 だが、1秒ちょっとの貴重な時間を稼ぐことはできた。

 凜は宝石を放る間にも、隠れていたワゴンから移動して、食器類を陳列した大型の陳列棚に挟まれた通路へと入る。

 正面から打ち合う気は毛の先ほどもない。

 あれと白兵戦をやらかすなど論外だ。

 遮蔽物の多い状況を活かしながら、徹底的に相手の視界に入らないようにして、遠距離から攻撃を仕掛けていきたいところだった。

 

「爆ぜろ!」

 

 置き土産にワゴンの下に残してきた宝石。

 それを起爆するための、一節を唱える。

 バゼットの正確な位置はわからないため、効果があるかはわからないが、ダメージを与えられれば儲けものだ。

 

 ドゥンッッッ!!

 

「へっ?」

 

 凜は想定していた地点よりも遥かに近くで、爆音を聞くことになった。

 

 ガシャァァァァァァンンンッ!!!

 

「きゃぁっ!!!」

 

 割れた食器類の破片が雨あられと叩きつけられる。

 咄嗟に両腕で顔を守る事しかできない。

 完全に想定外の事態だったので、防御結界を張る暇も身体を硬化させる余裕もなかった。

 

「・・・う・・・つぅぅ・・・」

 

 そう長くは続かずに、嵐が収まる。

 控え目に言って、全身血塗れ、裂傷だらけ。

 赤いコートとその下のカットソーを切り裂き、硝子の破片が脇腹に食い込んでいたりもする。

 切り傷特有の鋭利で、耐え難い痛みが、全身をキリキリと苛んでいる。

 

「・・・ちっくしょ・・・何やってんのよ、わたしは・・・」

 

 おそらく、隠していた宝石に気付いたバゼットは、即座にこっちへと宝石を投げたのだろう。それが爆発して、陳列されていた食器類を吹き飛ばしたというわけだ。

 小声で悪態をつき、治癒魔術で応急処置を施しながら、それでも移動する。

 とにかく一つ所に留まってはいられない。追いつかれて、接近戦に持ち込まれたらお陀仏(ジ・エンド)なのだ。

 

「遠坂凜!あなたには確認したいことがあるのです」

 

 何の意図があるのか。

 おそらく陳列棚を複数挟んだ向こう側にいる筈のバゼットが、そう問い掛けてきた。

 

「監督役の神父・・・言峰綺礼についてです!彼は、法的にはあなたの保護者であり、また、魔術師としては、あなたの父親である遠坂時臣氏の弟子でもある筈。実際、私は彼とあなたが親し気に話しているのも見た」

 

「答えるわけないじゃない」

 

 口の中だけで、反論する。

 常識的に考えて、こちらの位置を把握するための罠だとしか思えなかった。

 

「あなたは、彼の本性を知っているのですか!」

 

「なんですって?」

 

 知りたくもないが、知ってるに決まってる。

 似非(エセ)神父。

 現状では未成者に過ぎない遠坂凜の保護者。

 私が尊敬する父さんを守れなかった使えない兄弟子。

 八極拳・・・ベースの怪しげな格闘術の達人にして、師匠。

 人の皮を被った鬼畜。

 人類の限界というものを量るためにのみ生産されているとしか思えない、あの【紅州宴歳館・泰山】の【赤い悪魔】が大好物。

 そして、何と言っても、

 心の内を読むことが絶対不可能な・・・理解不能、意味不明の男。

 

「・・・・・・ん?」

 

 あれ?

 そうだ。結局のところ、大事なことは何も知らない?

 いや、違う。

 知ろうとしなかったし、知ってはいけないと思っていた。

 知らなくても、あいつの根っこのところは、はっきりとわかるのだ。

 あの男だけは、どんなにそれっぽい優しさを見せられたとしても、まかり間違って親愛の情を感じたとしても、何があっても。最後の最後では自分の命運を委ねてはいけない、絶対に信じてはいけない(たぐい)の人間だということが。

 

「あの男は、サーヴァントを従えています」

 

「は?」

 

 思わず、素っ頓狂な声が漏れる。

 これは、流石に想定外だった。

 綺礼がマスター?

 そんなことが許されるわけがない。

 いや、許す許さないは、監督役が決めるのだから、この論法はおかしい。

 あいつがやるのだから、誰にも咎められないということになる。

 

「私をこの地に招いてくれたのは、彼だったのに」

 

 んん?

 凜のアンテナが反応する。

 何やらおかしな成分の混じった言葉だ。

 

「裏切られたってわけね」

 

 バゼットの会話に応じることにした凜は、遠くにいる筈の相手に聞こえるように声を張り上げる。

 ただし、足は止めない。なるべく優位に立てる場所を求めて、動き続ける。

 

「あなたは、あいつの推薦でこの聖杯戦争に参加することになったってことかしら?」

 

「そうです」

 

「それはあなたが強力な魔術師として、有名だったから?」

 

「いいえ。私と彼は以前から親交・・・面識があったからです」

 

「そう。さっきの話だと、どうやらこっちに来てから、あいつと一悶着あったみたいね」

 

「はい。彼に殺されかけました。ランサーのお陰で九死に一生を得ましたが」

 

「成程ね。ランサーとかち合っても死んでいないってことは、その時、綺礼のサーヴァントが出てきたってことね。何のクラスだったの?」

 

「・・・アーチャーです」

 

「・・・アーチャー?・・・()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・いいえ、そもそも綺礼のやつが嘘をついていたってこともあるか・・・」

 

 凜は少しだけ考え込んだ。

 

「それは確かなのかしら?」

 

「正確なところはわかりません。もしかしたら、正式な形で今回召喚されたわけではないのかもしれない。イレギュラーな存在であることが、言葉の端々から感じられました」

 

「・・・成程ね。それなら辻褄は合うか・・・つまり、サーヴァントが8人いるかもしれないってわけか」

 

「その可能性も否定できない」

 

「OK。貴重な情報をどうも」

 

 凜はニヤリと笑った。

 

「それにしても・・・」

 

 準備は整いつつある。凜はポケットの中の宝石の感触を確かめた。

 

「あいつがこっちの想定外のことをしでかすのも、あいつが人を裏切るのも、当たり前じゃない。有史以前から決まっているくらいの確定事項。そんなの一目でわかるでしょ」

 

「な・・・なんですって?」

 

「あんな男を信じるなんて、あなたよっぼど初心(うぶ)なのね」

 

「そんな・・・彼は、あんなにも強く、泰然として・・・」

 

 声の位置と方角からして、こちらが移動するのをほぼ一定距離を保つように、バゼットは移動している。

 向こうとしては、こちらを即座に仕留められなくても、封じておけばいいと考えているようだ。

 それだけ、自身のサーヴァントを信用しているということだろう。

 一対一の状況を作れば、ランサーなら必ず勝つという。

 

「・・・それはこっちも同じよ・・・・・・ちょっと方向性は違うけどね」

 

 凜はチラリと自身のサーヴァントが大穴を穿った陳列棚を確認する。

 会話を続けながらも、少しずつ移動してきた。

 自分を追うバゼットの声は徐々に近付いている。その動きには無駄がないとも言えるが、些か直情的に過ぎるようにも感じた。

 今、凜はタオル類が展示されている棚に身を隠している。

 握っていた宝石に魔力を通す。

 これがカウントダウン開始の合図だ。

 ここからきっちり5つ数える。

 5、4・・・

 

 バッ!

 

 凜の手から赤い宝石が投じられた。身を潜めていた棚と天井の隙間を通り、バゼットがいると推測される地点に向けて放物線を描く。

 

「そこですねっ!!」

 

 宙を舞った宝石に向けてバゼットが、尋常ならざる反応で跳びかかる。

 

「燃えろっ!」

 

 バリィッ!

 

 魔術が効力を発揮したかしないかの瀬戸際。

 バゼットの右掌によって、掴まれた宝石は瞬時に握りつぶされていた。

 

「漸く見つけましたよ」

 

 そのままの動きでバゼットは天井と棚の隙間を搔い潜って、凜へとその拳を振り上げた。

 

「・・・ゼロ」

 

 そう、遠坂凜はごく小さく呟く。

 

 ゴウッ!

 

 凜とバゼット目掛けて、何かが高速で飛来した。

 

 

 

 バギイィィンッ!

 

 赤のサーヴァントの左手にあった黒剣が鈍い悲鳴を上げて、砕けた。

 

「はッ!」

 

 自然の流れとして、青のサーヴァントは、邪魔するもののなくなった通り道にその長槍を走らせる。

 だが、

 

 スゥ―――

 

 手品のように再び現れた黒剣が、

 

 ガィィッ!

 

 その一撃を受け流していた。

 

「おいおいっ!?」

 

 直後に振るわれた白剣を後方に大きく跳んで躱しながら、ランサーは悪態を吐く。

 

「まったく、どういうカラクリだ。その剣は?」

 

「壊れると自動的に復活する魔剣だな」

 

 両手に双剣を構えて敵の動きに備えながらも、()()()()は、表情を変えずに淡々と答える。

 

「ぬかせ」

 

「そもそも壊れないで欲しいのだがな。まったくもって、キミの槍の力は桁外れだな。敬服するばかりだ」

 

「その武器はさっぱりわからないな。東洋起源の剣だということくらいはわかるが。そして、てめえ自身の真名もな」

 

「その点、キミの正体はだいぶ察しがつくな。手にした赫の長槍、スピード、技の切れ、そして勇猛な戦いぶり。マスターが英国系というのもヒントになるか」

 

「ちっ。まあ、多少正体が絞り込まれたところで、ここで斃しちまえば関係ねえさ」

 

「そう易々と思惑どおりいくと思うかね?」

 

「ふん。そっちの力量は把握したぜ。あの手この手で驚かせてくれるが、素の技量で図抜けたものはない。多彩さは見事だが、やはりセイバーとしては少々物足りないな」

 

 ランサーの目がギラリと獰猛な輝きを孕んだ。

 

「次で殺らせてもらう」

 

「やれやれ、どうやら期待外れとの評価を下されてしまったようだな」

 

「そんなことはねえよ。お前はスゲえ。何て言うか、極限まで磨きあげてきたその過程(プロセス)がこっちにビンビン伝わってくるぜ。多分、人間やめちまって、その技のために体も心も削ってきたんだろうさ」

 

「その賛辞は、光栄なものとして受け取ろう。大英雄」

 

 打ち合った数は50合を超えているが、実態としては相手の攻撃を寸でのところで捌いているに過ぎず、セイバーからの有効な攻めは数えるほどだった。

 まあ、当然だな。

 心の中で、自嘲めいた呟きを漏らす。

 この相手が推測どおりの英雄だとすれば、自分如き凡人がここまで剣を交えられたのは僥倖というものだろう。

 ん?

 纏った外套の内側が、ほんのりと少しだけ熱を帯びた。

 待っていた合図だった。

 警戒されるリスクを避けるため、あくまでも視線は動かさず、視界の端に映る物の位置を確認する。それは、散乱したカラーボックスの付近に落ちており、ランサーからは見えない。

 

「行くぜっ!」

 

 ランサーが一気に間合いを詰めてくる。

 

「ふっ!」

 

 バッ!

 

 その動きと同時にセイバーは、ランサー目掛けて黒剣を投じる。

 

「なにっ!?」

 

 意表をつかれたランサーだったが、

 

 ガィィンッ!

 

 難なく、飛来した剣を槍で弾いた。

 

 ザッ

 

 一方の、セイバーはその間にも、左に大きく動くと目的の物を拾い上げた。

 それは今の一対一の戦いが始まった直後に、落とした弓と矢だった。

 

「今さら、弓が通じると思うなよっ!」

 

 ランサーが吠えながら、槍を構えて突貫してくる。

 それを()()で視認しながら、極限まで無駄を省いた動きで、右手の腹辺りで白剣を持ちながら、赤のサーヴァントは矢をつがえた。

 その先には、陳列棚に穿たれた大穴がある。

 

「なっ!?」

 

 狙いは自分ではない!?

 矢の向けられた方向と、敵の狙いに気付いたランサーが焦りの色を浮かべた。

 

「生憎だが、こっちは初めからマスター狙いだ」

 

「畜生め!」

 

 ゴウッ!

 

 銀の矢が黒弓の弦から解き放たれる。

 ランサーは咄嗟に自身の軌道を変えてその矢を止めようとしたが、時既に遅し。

 それを察した彼は、全力で警告(アラート)を発するしかなかった。

 

「バゼット!避けろっ!!!」

 

 

 

「バゼット!避けろっ!!!」

 

 ランサーの絶叫が広い店内に響き渡った。

 だが、その声が空気の振動となって、バゼットの鼓膜に到達する前に、

 

 ゴッ!

 

 並んだ棚の通路を切り裂き、必中・必死の矢尻が彼女に届く。

 一流の魔術師、いや超一流の魔術師程度では、サーヴァントの放った必殺の一撃を避けることなど不可能だ。完全に不意を突かれたなら、猶更だ。

 だが、こと、戦闘に関するセンスでは、バゼットはもう一つ『超』がつく魔術師だった。

 

「っ!?」

 

 矢が切り裂く空気の流れ、或いは凜の動きに何某かの意図を感じ取ったのか。

 確実に心臓を打ち抜く軌道。それをほんの数cmだけ、体を捻ることでズらしていた。

 

 ザシュゥゥゥッッッ!

 

「くあぁぁぁっっっ!!!」

 

 だが、それで完全に銀の矢を躱しきれる道理もなく、バゼットの左半身の肉をこそぎ落としていった。

 大量の血飛沫が眼前の凜や、周囲の棚や通路を赤く染める。

 

「あれを、避けたっ!?」

 

 一方、バゼットの襲撃を受ける寸前だった凜だが、完全に不意をついた今の攻撃で致命傷を負わせられなかったことに驚愕する。

 とは言え、眼前のバゼットは相当な裂傷を負ったのは間違いない。

 止めを刺す好機ではある。

 いや・・・

 

「ここは欲張るとアブナイなヤツよね」

 

 凜は、すぐに頭を切り替えた。

 

 ダッ

 

 彼女は右手方向、即ち店の奥側へと駆け出す。

 なにせ左手側からは、目を血走らせた獣が迫ってくるのだ。

 

「バゼットォッ!!!」

 

 今、彼の大事なマスターに迂闊に手を出そうとすれば、自分の命運など蟻ほどの価値もなく踏み潰されるだろう。

 

「凜っ!離脱しろっ!」

 

 ゴゴウッ!

 

 牽制のために、自身のサーヴァントが矢を何本か放つが、ランサーは後方から飛来する矢に対して、まるで後ろに目がついているかのように、槍を振るって叩き落す。

 

「まったく、どいつもこいつも化け物だらけよね」

 

 凜はその様を見ながら、ランサーの視界から外れるために通路の端で右に曲がると、回り込むようにして店の出口へと向かう。

 自分のサーヴァント(相棒)も同じ場所を目指している筈だ。

 

 

 

「お疲れ様。()()()()

 

「マスターもな。いい立ち回りだった」

 

 店の外で合流した二人は、並んで走りながらお互いを労う。

 バゼットのダメージはかなり深刻だ。おそらく、ランサーはすぐには追ってこられない。

 

「それにしても、強烈な二人だったわね」

 

「ああ。間違いなく強力な相手だった。私も正直あのまま1対1で戦い続ければ、勝ち目は薄かった。幸い連携面では我々のほうが上だったわけだが」

 

「マスターを斃せれば良かったんだけどね」

 

「あの状態でマスターに止めを刺そうとすれば、逆上したランサーから捨て身の反撃を受ける可能性もある。逃げて正解だ」

 

「それで、次に戦う事になった時には勝てる?」

 

「大丈夫だ。向こうの正体はほぼ露見した。私はどちらかと言えば器用貧乏なタイプだが、逆に言えば手持ちのカードは多い。敵の情報があれば優位に立ちやすいからな」

 

「そ。期待しているわね」

 

「存分に期待してくれたまえ」

 

「でも、バーサーカーはとんでもないし、校舎を消した奴もいるし、ランサー陣営も強烈だし。いやあ、やっぱ一筋縄にはいかないわね。聖杯戦争」

 

「容易な戦いではないのは事実だな。だが、キミと私ならきっと勝利を掴み取れるだろう」

 

「ええ。やってやりましょう、セイバー」

 

 凜は隣を走る己がサーヴァントとその目を合わせる。

 

「そう言えば、ランサー達が強烈過ぎて忘れちゃってたけど、キャスターも仕留めそこなっちゃったわね」

 

「そうだな。あれだけの竜牙兵を操っていたということは、かなり魔力を搔き集めているのだろう。早めに潰したいところだな」

 

「あんた、キャスターの正体もだいたいわかっているっぽいわね」

 

「そうだな。今日出てきた骸骨兵は、古代の魔術で竜の牙から生み出されたという竜牙兵だろう。あとは、風体や態度などで見当がつく。十中八九、逃亡のために弟を切り刻んで囮にしたという魔女メディアだな」

 

「・・・聞いたことあるわ・・・如何にもって感じよね。切羽詰まっている筈だから、なりふり構わずに魂喰いを乱発しそうね」

 

「実際、それ以外に手立てがないだろうからな。早々に潰すべきだ。無論、キャスターに負けるつもりなどないだろう?」

 

「あったりまえじゃない」

 

 二人は後にしてきた道を振り返った。

 先程まで戦場となっていた建物は既に見えなくなっている。

 

「ま、なんにせよ、とっととこの場をズらかるわよ!」

 

「・・・凜・・・その台詞はどうかと思うぞ・・・」

 

 セイバーは眉間に皺を寄せて、渋面を作った。

 

 












忙しさにかまけて更新が遅れました・・・
普通に戦えば、バゼットさんに凜が勝てるわけないのですが、キャラ的には凜がバゼットさんに負けるわけもなく、こんな結果になりました。
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