Fate/√  【群像時変】   作:わが立つ杣

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2月2日 未明








第37話 ~2日目③~ 「その洋館には人がいない」

Interlude in

 

 

「あら?どうしたのですか、お爺様?」

 

 正午という時間帯にも関わらず、薄暗い間桐邸の廊下。

 昨日は一日中姿を見掛けなかったこの邸宅の主、間桐臓硯と間桐桜は鉢合わせした。

 

「随分とお体の具合が良くなさそうですね」

 

「・・・く・・・どうもせん・・・」

 

 四肢の多くを欠損した老人は、苛立ちを隠そうともせずに言葉の上では否定する。

 昨日の未明、間桐臓硯はアサシンの召喚を企てたものの、果たせずに戻った。というだけでなく、キャスターとの一戦で、自身の身体を構成する素材、即ち蟲達の大半を失ってしまった。急場しのぎで貯蔵(ストック)していた蟲で補っていたものの、その日のうちに損傷した体を完全には再構築しきれていない状態だ。

 深夜になったら、街で生贄となる人間を襲うつもりだった。

 

「それにしても、桜よ。遂にあの影を受け入れたのだな。何よりじゃ」

 

 臓硯とすれば、自分自身から話題を反らしたいという意図もあって、桜に問い掛ける。

 老人の本体とも言うべき蟲は、彼女の中に潜んでいる。そのため、衛宮士郎の死を契機として、あの影と同化したこと自体は百も承知だった。

 

「うふふ。ありがとうございます。おかげさまで私、今すごく開放的な気分です。それに何より・・・」

 

 黒い桜は両手を広げて、その目を細める。

 

「あんなに慌てた姉さんを見れたのは、すごく気持ち良かったです」

 

 ペロリと唇に舌を這わせたその仕草は蠱惑的とも表現できる程で、とてもあの控えめだった少女のものとは思えなかった。

 臓硯は、その(さま)に微かな不安を覚える。

 

「うむ。その時の様子は蟲を通じて見ておったのじゃが・・・ライダーにはなぜあのようなことをしたのじゃ?まだまだサーヴァントとして使っても有用じゃったろうに。」

 

「・・・ちょっとしたお仕置きです。なぜか先輩と親密な雰囲気を仄めかしたんですもの・・・でも、考え違いだったようです。私もカッとなってしまって勢いでやってしまいました。ちょっと反省です」

 

「・・・そうか・・・既にしてしまったことは、無にはできん。止むを得まい。とは言え、聖杯戦争はまだ始まったばかり。いくら、その姿になったお前でもサーヴァントとまともに戦うのはリスクもあろう」

 

「大丈夫ですよ。少し様子は変わりましたけどライダーは充分に手懐けられます。基本的に戦いは彼女に任せますから」

 

「・・・む・・・なんじゃと・・・?」

 

 臓硯は困惑した。桜を黒化させたことは計画どおりではあったが、あの影の本体、【アンリマユ】が関連する全ての仕組みを把握しているわけではない。今の話からすれば、ライダーは消えたように思えたが、あくまでも取り込まれ、変質させられただけということだったのか。

 

「お爺様はかなりお疲れのご様子。この後のことは私にお任せいただき、少し休まれた方が良いのでは?」

 

「・・・孫娘にだけ負担を掛けるわけにもいくまい・・・とは言え、まあ良い。しばらくの間はお主の好きにするがよかろう」

 

 今の臓硯には強がるだけの余力もなく、そう告げてこの場を立ち去ろうとした。

 すると、その先からふらふらとした覚束ない足取りでやってくる人影があった。

 

「・・・畜生・・・どこに行きやがったんだ。あの女」

 

 その人物、間桐慎二が俯いたまま苛立たし気に呟く。 

 

「あら?どうなさったんですか、兄さん。いつにも増して、険しい顔をなさって」

 

「・・・桜?・・・それに爺さんもか・・・」

 

 慎二は既にかなり近付いていたが、桜に声を掛けられて漸く二人の存在に気が付いたようだった。

 

「兄さん、相変わらずお心が優れないご様子ですね。お部屋でお休みになっていたほうがいいんじゃないですか?」

 

 ライダーのマスター権を桜に返し、実質的に聖杯戦争からリタイアすることになってからの慎二は、臓硯にも桜にも殆ど関与することがなくなった。実際には、意識的に避けているのだろう。

 

「・・・桜、ライダーはどこに行ったんだ?昨日(きのう)からずっと姿を見掛けないぞ」

 

「あ、そういうことですか・・・つまり、欲求不満なんですね?」

 

「う・・・うるさい!とにかく、あいつはどこに行ったんだ!?余計なことはいいから早く教えろっ!」

 

 桜の言葉に侮蔑的な響きを感じて声を荒げたが、慎二はふと彼女の様子が以前と違うことに気が付いた。

 

「・・・って、お前・・・なんか変だぞ・・・」

 

「うふふ。そう言えば、兄さんにもこの姿をまだお見せしていなかったですね」

 

 桜は朗らかとすら言える微笑みを浮かると、

 

シュルルルル―――

 

 彼女の全身からは無数の漆黒の帯が、蠢き始めた。それは、あたかも黒い蛇が鎌首をもたげて獲物を見定めているかようだ。

 

「な!?なな・・・なんだよ・・・お前・・・それ・・・」

 

 唖然とした慎二は腰を抜かして、その場にへたり込む。

 

「うふふ・・・そんなに驚かなくてもいいじゃありませんか・・・ライダー、兄さんがあなたをご所望よ。出てらっしゃい」

 

 ズズ・・・

 

「・・・・・・はい」

 

 桜の影から、ズルリ・・・と現れたのは、確かにライダーだった。

 長身、長い髪、細身。それでいて豊かなボディラインがくっきりとわかる露出の多い扇情的な服装(コスチューム)は以前と変わらない。

 だが、その姿は明らかに異様だった。

 白く透き通るようだった肌は一層白くなっており、元々備えていた艶やかさや滑らかさが失われていた。薄紅色の眼帯は煤けたように黒ずんでおり、全体的に色彩に欠け、味気ないモノトーン調といったところだが、病的と表現するのが相応しい。

 本質的に何かが違う。

 

「な・・・なんだ、コイツは?」

 

 その異様さを慎二も敏感に察して、あからさまに狼狽(うろた)える。

 

「そんなに怖がらなくてもいいじゃないですか。ほとんど変わっていないでしょう?兄さんはライダーの肉体(からだ)だけがお目当てなんだから。スタイルは全く変わっていませんし、むしろ受肉したから、具合が良くなっているかもしれませんよ」

 

 保証はできませんけど、と桜は軽やかな口調で付け加える。

 

「・・・そんなわけあるか・・・まるで、感じが違うじゃないか・・・」

 

「ふふふ。だから、試してみないとわからないんじゃないですか?」

 

「い、いや・・・もう、いい!・・・もう・・・いらない!!こんなの・・・」

 

「つれないですね、シンジ」

 

 発せられたライダーの声は冷たく、そして無機質だ。

 

「いつも、あれだけねちっこく私の肉体(からだ)にむしゃぶりついていたじゃありませんか?『いらなくなったからポイ』と言うのではあまりにも身勝手というもの」

 

 ゆっくりと、その足を一歩踏み出す。

 

「ひ・・・」

 

 依然としてへたり込んでいる慎二は、廊下についた両腕と両足をカサカサと動かして後退りする。だが、それで逃げおおせる筈もなく、ゆったりと歩みを進めるライダーはなんなくその距離を詰めていく。

 

「どうしたのですか?私から逃げるなんて、シンジらしくないですよ」

 

「ま・・・待ってくれ・・・」

 

「何をです?まさか、私があなたに何かをするとでも?」

 

「ぼぼぼ・・・僕が・・・僕が悪かった・・・・・・許してくれ」

 

「ふふふ。悪い事をしていた、という自覚はあったわけですね?」

 

 艶然と微笑んだ女がすらりとした白い腕を伸ばすと、しなやかな指が男の頬に触れる。やがて蛇の牙のように鋭く尖ったその爪が肉に食い込み、じんわりと血が滲んできた。

 

「・・・ひぃ・・・痛い・・・痛い・・・やめて・・・くれぇ・・・・・・」

 

「ええ、ええ・・・何も()()()()()()()()じゃないですか・・・私があなたをどれだけ、()()()()()()()()と思っていたことか。脳みその中までワカメが詰まっているあなたには想像もできなかったことでしょうね」

 

「た・・・たた・・・助けてくれぇ・・・」

 

 成す術もない間桐慎二(えもの)の顔は、止めどなく溢れ出している涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになっていた。

 

「いやだあぁぁぁっ!爺さんっ!桜ぁっ!この化け物をなんとかしえくれぇぇっ!!!」

 

「ライダー、あんまりお(うち)を汚さないようにしてね」

 

 溜め息をつきながら、軽い調子で桜は自身のサーヴァントにそう告げただけだった。

 

「なっ!?桜っ!お前、何言ってんだよぉぉぉっ!?だいたいこいつはお前のモンだろうがっ!ちゃんと躾をしろよっ!!!」

 

「承知しました。じっくりと恐怖を味わわせながら、惨たらしく始末したいところではありますが・・・この汚物(ゴミ)の騒々しい声を、これ以上聞かされるのも耐え難いですし」

 

 ライダーは左手を後頭部に回すと、白い指で眼帯の留め具を外す。【自己封印・暗黒神殿(ブレーカー・ゴルゴーン)】から解き放たれ、美しい瞳が露になった。

 【石化の魔眼(キュベレイ)】が発動する。

 

「・・・は・・・?・・・な・・・なんだよ・・・これ・・・僕のからだが・・・?」

 

 間桐慎二はパキパキという骨が軋むような異音を発する自身の体を、唖然として見つめる。魔力を有さない者にとっては女の瞳の美しさなどなんの益にもならず、抵抗する術を持たない肉体は瞬く間に、灰色の石へと変じていく。

 

「・・・い・・・いいい・・・いやだぁ・・・・・・・・・」

 

 今際の際に及んでも、無意味な言葉を発する(いとま)しか与えられず。

 間桐慎二という名の少年は、ただただ無機質に、無機物となり果てた。

 両膝を突いて座り込み、自身の有り様を見て歪んだ表情を浮かべた不格好な彫像。そこに残ったものは、それだけだった。

 

「可哀そうな兄さん。これじゃ美術的な価値もなさそうね」

 

「はい。ただ単に邪魔で、しかも非常に目障りですね。外で壊してきます」

 

「ええ。そうして頂戴」

 

 桜の言葉に首肯したライダーは、桜たちのほうを振り向かずに眼帯を再び装着する。そして、間桐慎二だったものの石像を無造作に担ぎ上げると、廊下の先へと消えていった。

 

「あれは・・・燃えないゴミ・・・になるのかしら?お爺様、ご存知ですか?」

 

 ライダーの後ろ姿を見送った桜は小首を傾げると、一部始終を静観していた間桐臓硯にそんなことを問う。

 

「・・・・・・確かに慎二はもう不要ではあった。だが、殺す必要もなかったのではないか?うまく使えば、目くらまし程度には使う機会が訪れる事もあろう。これまでの仕打ちへの意趣返しということかのう?」

 

「そんなことはありませんよ。お爺様もご覧になっていたと思いますが、今のは私の意思ではなくライダーの意思です。よっぽど嫌いだったみたいですね」

 

「・・・それだけなら良いがの・・・」

 

 桜が微塵も止める素振りを見せなかったことも事実だったが、臓硯はそれ以上の会話を諦めることにした。

 今の彼女からでは、真っ当な回答を引き出せるとは到底思えなかったのだ。

 そもそも1ヶ月程前にサーヴァントを召喚させたものの、桜は戦う意思を微塵も持ち合わせてはいなかった。だから止むを得ず慎二を代理のマスターとした。臓硯としても今回の聖杯戦争における勝ち目は薄いと判断しており、そのこと自体にはさして痛痒を感じていなかった。

 しかし、今は違う。

 想い人であった衛宮士郎を、事もあろうにキャスターのサーヴァントに奪われたことにより、その怨嗟を滾らせたことにより桜は戦う意思を固めた。さらに、その衛宮士郎の死が既に現出しつつあったアンリマユの闇に染まる要因となった。

 桜が生む子を次代の聖杯戦争の勝者として育成することを目論んでいた老人からすれば、まさに棚から牡丹。餅、瓢箪から駒。とんでもない僥倖とばかりに、慌てて描いたこの青写真だったが、急拵え故の粗さが出てきているのではないか。

 老人はドロドロと粘ついた不安に、いいようのない気持ち悪さを感じていた。

 

 

 Interlude out

 

 

 C turn

 

 

「ん~~~~※¥$%」

 

 出来上がっただし巻き卵の有り様を見て、唸る。

 

「・・・ま・・・まあ、仕方ないさ。どうしたって調理器具が足りないんだから。あっちの屋敷には玉子焼き用のフライパンもあったしな」

 

「そ・・・そうよね。道具が悪い・・・いえいえ・・・そのせいにしちゃいけないわよね・・・」

 

「最低限の食器があるだけでもラッキーだったけど、ちょっとキツイな」

 

 溜め息をついた坊やが周囲を見回す。

 ここのキッチン自体は立派なものだ。

 裕福な人間が住むことを想定した屋敷には、相応の料理が作られることが考慮されている。とは言え、なにせこの洋館は第三次聖杯戦争時に、魔術協会からの参加者が拠点とするために建造されたものだという。自然(じねん)、器具が70年前の仕様になるので、使えるわけもない。止むを得ず、慌てて買ってきたカセットコンロを使って調理したのだ。

 ちなみに、お金は生前の坊やの貯金を拝借(?)している。

 

「そうね。後で器具を買い足しに行きたいし、坊やの屋敷から食器も持ち出したいわね」

 

「でも、ここに長居する気もないんだろう?」

 

「そのつもりだけど、実際どうなるかはわからないし。それに、このストレスは少しでも軽くしたいわ。正直、(わたくし)の料理の腕では、ある程度道具に頼らざるを得ないもの」

 

「味自体は問題ないんだけどな」

 

「見た目だって大事でしょう?坊やの作る料理は、味だけじゃなくて形や盛り付けもいいわ」

 

「まあ、気を遣っているのは確かだな」

 

「そもそも、ここは建物から内装まで完全に洋風なんだから、洋食にすれば良かったんだよな。マスターだって、そのほうがしっくりくるんだろうし。無理して慣れない和食を作る必要はないんじゃないか?」

 

「いいのよ。坊やは和食のほうが得意だし、折角だから私もそっちを習いたいし、食べたいわ。郷に入れば郷に従えって言うでしょう?」

 

「マスターの故郷にもそんな諺があるんだな」

 

「その土地に合ったものを取り入れるべきっていう考え方は普遍的なんだから、あとは言い回しだけでしょう?」

 

 そんな取り留めのない会話を続けながらも、出来上がった料理をテーブルに配膳すると、私と坊やは食事を開始した。

 この【双子館】は、新都の少し外れに佇む大きな洋館だ。

 現界して間もない頃、アトラム・ガリアスタ(以前のマスター)から情報を得た際に確認済だった。。一定の霊脈を有する土地に建てられているため、坊やの屋敷を離れることにした私達は、一時的にここを拠点にすることにしたのだ。

 

「・・・まあ、あくまでも急場しのぎよね・・・」

 

「どうしたんだ?マスター」

 

「いいえ、この屋敷も安全とは言い難いという話よ」

 

「ああ。遠坂陣営にはすぐに勘付かれるかもしれないんだよな」

 

「そうね。彼女は冬木全体の管理者だから、この館の存在も知っていると思うわ」

 

 70年前の協会推挙の参加者は双子だったらしいが、拠点とする屋敷を深山町側にも建てていた。だが、そちらは既に半壊していたことも私はこの目で見ている。破壊の痕跡はごく最近のものだったから、同様の事が新都側(こっち)に起きないとは断言できない。

 

「拠点が定まらないというのは、なかなか難儀なもんだな」

 

「ええ。できればあなたの屋敷に戻りたいのだけれど」

 

「殆どの陣営にバレているからな。オレが死んだと思っている相手はともかく、オレが生きている事を知っている遠坂陣営にはある程度マークされているだろうし」

 

「そうね」

 

「まあ、贅沢な悩みとも言えるか。そもそも料理なんて、食べなくても大丈夫なんだから」

 

「・・・えっと・・・そうなんだけれど・・・我慢できる自信がないわ・・・」

 

 正直、少年と出会ってから食事をするのが当たり前になってしまっていた。覚えてしまった『坊やの』料理の魅力に勝てない体になっていることを改めて実感する。

 

「完全に餌付けされてしまったものねえ・・・」

 

 坊やには絶対に聞こえないように小声で嘆息した。

 

「それにしても、昨日は目的を完全に達成できたんだ。幸先がいいと思っていいんじゃないか?」

 

 少年はこちらの心情を悟ったわけでもないだろうが、話題を転じた。

 

「ええ。ちょっと危なかったけれど」

 

「でも、実戦で早速オレがあいつ・・・アーチャーの武器を投影できることも、それなりに戦えることも確認できた。不幸中の幸いだな」

 

 昨夜の目的は、坊やが投影できることがわかっていたあのアーチャーの白剣と黒剣を直接見る事だった。その目的は達せられ、武器の入手には無事成功した。これで生前の彼と同水準以上となっており、多少の戦闘なら凌げる見込みも立てられる。

 

「そうね。私もほんの少し不安はあったけど、坊やがしっかりと投影できることが確認できたことはプラスだわ」

 

「さらに、あの相手を追尾する剣も見られたからな」

 

「え?あれも投影できるの?」

 

 私は虚を突かれて驚いたが、生前はあの双剣以外にはサーヴァントの武器を投影する機会はなかった。元々、無機物を投影することは得意としていたのだから、確かに可能なのかもしれない。

 

「さっき早速試してみたよ。いけそうだ」

 

「凄いわ。これも朗報ね。と言うか、あのアーチャーが凄いとも言えるのだけれど」

 

「・・・そう・・・かな・・・」

 

「剣も弓矢も自由自在。強力な宝具を矢にして遠距離攻撃もできるわけでしょう」

 

「まあ・・・そうだけど、」

 

 少年の反応は不可解なほど、歯切れが悪い。

 どうしたのだろうか?

 

「でも、そんなアーチャーでも、他のサーヴァントと比べれば特に秀でているというわけでもないのよね。本当に厄介だわ」

 

「ああ、バーサーカーと前回の生き残りのアーチャーとかいるんだもんな。でも、あの遠坂という魔術師との組み合わせを考えれば、陣営としての総合力は高いんじゃないかな」

 

「確かに、そうね」

 

「昨日戦っているところを見たけど、遠坂はかなり強力な魔術を使っていたし、アーチャーとの連携も安定している感じだった。こなれているというか、板についているというか」

 

「学校での戦いでは殆ど戦っていなかったから、私も初めてあのお嬢さんの魔術を見たけれど、現代の魔術師としては優秀だと思うわ。勿論、私とは比べるべくもないけれど」

 

「そんな奴らがマスターを狙っているからな。どう対処するか・・・」

 

 少年が思案顔になる。

 【魂喰い】を行っている私は、冬木の管理者であるあのお嬢さんからすれば見過ごせない存在だ。昨夜の行動からも、私を標的にしていることが明白だ。

 

「坊やの存在にはまだ気付いていないと思うから、その点は優位性があるわね」

 

「・・・う~ん・・・その点を活かすとなると、結局、マスターが囮になる的な戦い方になるよな・・・」

 

 それはちょっと嫌だな、と少年の表情が渋くなる。

 

「間違いなくマスターのほうが遠坂より強いんだから、オレがアーチャーを押さえている間に、マスターが遠坂を斃すというのが一番現実的かな」

 

「ええ。以前の坊やも一定時間は持ち堪えていた。今なら、より力をつけているから可能だと思うわ。その後、アーチャーからどう逃げるかっていう問題はあるけれど」

 

「2対1でもアーチャーを斃し切るのはキツイかな」

 

「五分以上にはなるかもしれないけれど、かなり危険だわ。マスターを斃せば放っておいても消滅するんだから、逃げたほうがいいわね」

 

「その線で行くか。仕掛けるなら早いほうがいいかな。ここで罠を張って待ち構えるか、あるいはまた・・・魂喰いってやつで他の場所に誘き寄せるか。向こうの本拠地に乗り込むのはちょっと止めたほうがいいんだよな?」

 

「敢えて、向こうの優位な場所で戦う必要はないわね」

 

 私達は差し迫った脅威として、遠坂凜とアーチャーへの対策について、暫く話し合い続けた。

 いつの間にか料理は全て食べ終えていたが、こういうのはちょっと勿体ない時間の使い方だとも思ってしまうのだった。

 

 

 












前作ではしぶとく生き残った慎二君ですが、今作ではあっさりご臨終となりました。
合掌。
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