ミホノブルボンと出会ってから、それとなく夜中に彼女のことが気になり始めてしまい
同じ頃、あの公園へと向かった
タッタッタッ…
タッタッタッ…
また、彼女は走っていた
ずっと、ずっっと長い距離を走っていた
しかし、ペースはバラバラで、呼吸の仕方も粗い
きっと彼女は長距離に向いていないのだろう
ピタッ
「○○○○トレーナー…」
「ごめんな、また門限すぎてるんじゃないかって思って来てしまった」
「いえ、私は機械類が苦手で時計すら持っていません。そのおかげでよく門限を過ぎてまで練習してしまいます」
「ハハッ…なんだよそれ…」
……意外と彼女はドジなのかもしれない
「また門限過ぎてるぞ、栗東寮に帰らなくていいのか?」
「………帰ります。教えていただき、ありがとうございました」ペコッ
タッタッタッ…
そう言ってミホノブルボンは礼をして走って帰っていった
俺は自室へ帰りながら考えていた
『長距離に向いていないから短距離で戦う』
これは世間では正しい判断である
しかし、彼女のように苦手な長距離を努力でカバーすることも決して間違ってはいないと思う
俺は彼女の夢を応援してあげたい
そう思った日から、毎日この時間帯に公園を訪れるようになった
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噂のウマ娘の選抜レース当日
開催場所には多くの見物客がいた
1割は記者、2割はトレーナー、残り7割はウマ娘だった
「○○○○さん、今回の選抜レース、すごい人気ですね…」
後輩が人の多さに少し引いていた
なんせ例のウマ娘の選抜レースだ
スプリンターとしての傑出した才能を持っていると聞いているが…
「………って、俺はまだ名前も聞いてないだったっけ」
「あれ、まだ知りませんでした?名前は確か---」
後輩が名前を言おうとした瞬間、記者のカメラの音や、ウマ娘たちの歓声が響いた
「おっと、例のウマ娘の登場らし……い……」
……芝に出てきた彼女を俺は知っていた
「……ミホノブルボン」
『……しかし、私の周りは皆、私は短距離路線を走った方が良いと言います』
彼女の言葉を思い出した
今こうして俺たちトレーナーが集まって期待している
それは何に?
そう……彼女のスプリンターとしての才能に
しかし、彼女はスプリンターではなく、三冠を目指している
「まだ専属トレーナーもつけていないのに、かなり仕上がっているように見えますね…」
「……そう…だな」
別に彼女は短距離戦のために練習を積んでるわけではないのだ
「あぁ〜…一体どんな走りを見せてくれるんですかね……早く彼女が走ってる姿を見たいです」
「…そう………」
そうだなとは言えなかった
--彼女の思いをしっているからこそ
俺らが期待しているのは『天才スプリンター』としてのミホノブルボン
しかし、彼女が目指しているのは『三冠ウマ娘』のミホノブルボン
俺は軽いショックを受けた
あんな夜遅くまで練習していた彼女に、知らなかったとはいえ勝手に期待してたのだ
名前も知らず、噂だけ聞いて『才能を活かしてほしい』だなんて
彼女には彼女の夢がある
だから、俺はそれを応援したかった
でも、この選抜レースを見てしまったらその思いも消えてしまうかもしれない
ここまで注目されるほどのスプリンターとしての才能
それを目の当たりにした時、それを伸ばさないトレーナーがどこに居るのか
だから俺は……
この選抜レースは出来ることなら見たくなかった
「○○○○さん…?レース始まりますよ」
「あぁ……」
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レースが終わった後、ミホノブルボンの周りにはトレーナーが集まっていた
レースの結果は圧倒的
スタート良く飛び出した彼女は、他を寄せ付けないまま4バ身差でゴール
本気で走った彼女は輝いていた
まさしく短距離を走れと言わんばかりの才能
今彼女に集まっているトレーナーも、その才能を活かしたいと思っているのだろう
「ミホノブルボン、君の才能なら短距離G1を取ることだって容易だ!俺にスカウトさせてくれないか?」
「いや、私の方が貴方を上手く走らせることができる。貴方に最高の勝利を味合わせれるわ」
「……トレーナーの皆様、申し訳ありませんが、私はクラシック三冠を目指しています。短距離路線はご遠慮お願いいたします」
「なんでだ勿体無い!向いてないことを矯正するのは脚への負荷だって途轍もないんだぞ?」
「そうよ、それに貴方には短距離の才能があるのよ!とびっきりの」
「……ですが、私には三冠という目標が…」
「………はぁ、わかったそこまで言うなら諦めるよ」
「えぇ…私も…」
「…………申し訳ありません」
俺は遠くから彼女を眺めていたが見る見るうちにトレーナーが彼女から離れていっている
きっと、彼女の目標を聞いて無謀だと、無理だと思ったのだろう
………結局彼女は誰も選ばなかった
続きます