申し子と呼ばれるまで   作:化学のハコ

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この物語のミホノブルボンはちょっと人間味強めです


3.マスター

選抜レースの夜

 

 

流石にミホノブルボンも今日は休んでいるだろうと思うが……やはり少し気になって例の公園へと足を運んだ

 

 

 タッタッタッ……

 

 

 タッタッタッ……

 

 

彼女は

 

 

走っていた

 

 

アレほどの才能を選抜レースで見せつけ

 

 

三冠という夢を理由にトレーナーに選ばれず

 

 

それでも彼女は…

 

 

ミホノブルボンは………走っていた

 

 

彼女が視界に入った瞬間、俺は立ち止まった

 

 

俺は彼女に会って何をしたいんだろうか

 

 

また門限を理由に声をかけるだけなのか

 

 

それとも今日の惨状から、現実を見ろと冷たく言い放つのか

 

 

それとも…三冠を応援するのか

 

 

考える前に身体が動いた

 

 

立ち止まってたはずの足はフル回転していた

 

 

 ダダダダダッ

 

 

「………!?」

 

 

ピタッ

 

 

「………○○○○トレーナー。………こんばんは。今日も門限過ぎてましたか?」

 

 

俺の足音に気づいて足を止めた彼女

 

 

「……いや、まぁ……門限は過ぎてるんだが…」

 

 

「……そうですか、毎晩ありがとうございます」

 

 

いつも通りの機械的な口調

 

 

少しだけ、トーンが低く感じた

 

 

「では、私は帰ります。……今日の選抜レースでトレーナーを得られませんでしたから…また練習しないといけません」

 

 

 タッタッタッ……

 

 

走り去っていくミホノブルボン

 

 

俺が今日ここに来た理由

 

 

「…待ってくれミホノブルボン!!」

 

 

「…………」ピタッ

 

 

「……ちょっとだけ、話良いかな?」

 

 

「……はい、そこのベンチに座りましょう」

 

 

 

 

 

近くのベンチに腰をかける

 

 

「……それで、話とは?」

 

 

「あぁ…そのことなんだか…」

 

 

「??」クイッ

 

 

首を傾げるミホノブルボン

 

 

その動作がとても機械的で、とても可愛らしかった

 

 

「……あのさ、ミホノブルボン。君は自分の才能に気づいているか?」

 

 

「私の……才能……」

 

 

「短距離の才能さ。…圧倒的なスピード、パワー、トップスピードの持続力。どれを取ってもG1ウマ娘の素質がある」

 

 

「………私が、周りと少し違うのは気づいていました」

 

 

「そうか…」

 

 

自分の才能を気づいてなお、三冠ウマ娘を目指す彼女

 

 

「なぜ……君は三冠にそこまで拘る」

 

 

「私は……」

 

 

「正直、見たところ、君に長距離は全然向いていない。はっきり言って、このまま練習しても三冠どころかG1を勝てるかすら分からない」

 

 

「………」

 

 

彼女もその事実に気づいているのだろう

 

 

「教えてくれ、ミホノブルボン。……君がそんなに三冠に拘る理由を」

 

 

「……私は、昔はスプリンターを目指していました」

 

 

「目指していた…と言っても、当時はまだ小さかったですので、ただ速く走る練習をしていただけですが」

 

 

「ある時、テレビ番組であるウマ娘の特集を観ました。」

 

 

それが三冠を目指すようになった理由…

 

 

「『シンザン特集』神のウマ娘とも言われた、圧倒的な速さを誇ったウマ娘を私は観ました」

 

 

シンザン……クラシック三冠、その他八大競走と言われる数あるレースの中でもレベルの高いレースを計5勝し、その連対率は100% レースにシンザン記念というものが作られるほどのウマ娘だった

 

 

「その特集を観て…私は思いました」

 

 

「私もシンザンのような…強いウマ娘になりたいと」

 

 

「才能を無駄にしてしまってもか?」

 

 

「……はい」

 

 

答えた彼女はこちらをまっすぐな目で見ていた

 

 

それは機械的でも何でもなく、ただの思春期の少女の目だった

 

 

「………ミホノブルボン」

 

 

「何でしょう…○○○○トレーナー」

 

 

覚悟は決めた

 

 

俺は彼女の話を聞いてなおさら応援したくなった

 

 

今、憧れを超えようとしているウマ娘を知っている

 

 

そのウマ娘なら超えれるだろう

 

 

超えれるだけの才能を持っている

 

 

しかし、このミホノブルボンにはその才能はない

 

 

努力するしかないんだ

 

 

今まで彼女が1人でやってきた事を

 

 

俺がトレーナーとして支えてあげるしかないんだ

 

 

「………俺を、君のトレーナーにしてくれ」

 

 

「……!!」

 

 

驚いて少し目を開くミホノブルボン

 

 

「俺なら……トレーナーが君に付けば、長距離を走れるようになるかもしれない」

 

 

「○○○○トレーナー……私は先程貴方に言われた通り、才能を捨てるに等しい行為をするつもりです。貴方が私のトレーナーになってくれる……申し訳ありませんが、理解しかねます……」

 

 

「いいんだよ、自分の走りたいように走れば」

 

 

「それだけではありません。私の三冠の夢を手伝うということは、私を短距離から遠ざけること、周りのトレーナーに貴方が悪く言われるのが目に見えています」

 

 

「それもどうだっていい。君が夢を叶えてくれればそれはそれは褒められる事だ」

 

 

「……それ…だけ…で…は…ありませんっ」

 

 

彼女の声が震える

 

 

「私は…コミュニ…ケーションが…にが…てです」

 

 

ずっと無表情で、機械的な口調だった彼女

 

 

「貴方を…誤解させて…しまうかもしれませんっ」

 

 

そんな彼女も今はただの少女

 

 

ここまで感情の起伏があるとは思わなかった

 

 

多くのトレーナーに夢を否定されて、すこし思い詰めてたのかもしれない

 

 

「良いよ、俺も人と話すのは少し苦手だ。お互いに頑張らないとな…」

 

 

「……!!」

 

 

ミホノブルボンの眼を見つめる

 

 

「俺を君のトレーナーにしてくれ…ミホノブルボン」

 

 

「……分かりました。……私は貴方をマスターと登録します」

 

 

「……よしっ、じゃあ今日は帰って寝ろ!」

 

 

「了解しました。話していたらかなり時間が経ってしまいました」

 

 

「ハハハ……それは悪かった」

 

 

午前2時、昼からが本格的な仕事の俺ならともかく、学園の生徒である彼女をこんな時間まで夜に留めておくのは申し訳ない

 

 

「明日、最初のミーティングをするから、トレーナー室に来てくれ」

 

 

「了解しました。……それではまた明日ですね………マスター」

 

 

 タッタッタッ

 

 

契約を結んだのは良いけど……

 

 

………マスターって

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