モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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糸で繋がる親子愛(6)

 僕を庇うように、颯爽とハルお姉ちゃんは現れた。

 

「大丈夫?フユ……?」

 ハルお姉ちゃんは僕の方に背中を向けつつも少しこちらをみて心配をする。

「うん…まぁなんとか…」

 僕はひとまず正直に状態を述べておく。

 

 僕はやっと立ち上がる。近くに転がる父の形見とも言える狩猟笛を握り、それを勢いよく肩に乗せる。ズシンとした重みを右肩に感じて、それを足で踏ん張り、トビカガチの方を見る。

 

 トビカガチの方も四肢をしっかりと地につけて立ち上がる。僕もある程度攻撃をしてはいるものの、先程のハルお姉ちゃんの一撃が重くトビカガチに響いたようで、少しよろけるような仕草を見せている。

 

「動けるの?」

 隣に立つハルお姉ちゃんがそう声をかける。

「大丈夫、ハンターだから」

 と、僕は気合を入れ直す。

 

 

 その掛け合いを終えると、ハルお姉ちゃんはトビカガチに向かってぐっと足を踏み込み駆け出した。

 

 対してトビカガチも、少し横っ腹の傷を思慮しつつもハルお姉ちゃんの方へ攻撃を開始する。いつも体色と対照的に目立つ赤い目が、より怪しく赤く光っているように見える。

 

 僕は最初の行動として、ハルお姉ちゃんに攻撃強化の演奏をかける。僕たちの狩猟の開始の合図、一種の儀式のようである。

 僕はああ気合を入れたものの、疲労であまり力になれない気がした。それでも、ハルお姉ちゃんの足を引っ張ってはいけないし、ちゃんとカバーを入れないといけないし、ゴゴモアの方も気を付けておかないといけない。

 

 

 その後、ハルお姉ちゃんとトビカガチが白熱した戦いを繰り広げる。僕の方はというと、ハルお姉ちゃんのカバーをするべく演奏を入れたり、トビカガチがこちらの方に跳んできた時にゴゴモアに飛び火しないように狩猟笛を振るったりした。

 

 そうやってハルお姉ちゃんは着実にトビカガチを追い詰めていた。段々とトビカガチの足取りが重くなっているのが見える。

 

 そんな最中、

「フユ!硬化かけて!」

 と、ハルお姉ちゃんが声をかけてきた。従い僕は硬化の旋律を奏でる。ピアノのような音が狩猟笛を震わせる。

 

 ハルお姉ちゃんは前にいたトビカガチに向かい横に大剣を大きく薙ぎ払う。

 

 トビカガチがそれになんとか反応して、バックステップで回避する。

 

 ハルお姉ちゃんはその横薙ぎ払いの勢いをそのままに、大剣を勢いよく納刀する。ハルお姉ちゃんの目が、トビカガチとは似ているものの少し違うように、赤黒く光る。

 

「フユももう辛いみたいだし、最後に一発で決める…!」

 僕のことなどよく分かっているハルお姉ちゃんからの一言。その言葉には、覇気がこもっていた。

 ハルお姉ちゃんがいとも容易く扱う狩技の一つ、『獣宿し【獅子】』。ハルお姉ちゃんからの威圧と黒きオーラは、気高き獅子そのものである。

 

 しかし、トビカガチの方もただ見ているだけではなかった。

 トビカガチはバックステップの着地地点からパッと跳び上がり、滑空……、この後尻尾叩きつけが来るとの予想ができる。この一連の戦いで何度も見せつけられてきたトビカガチの大技。

 

 それをハルお姉ちゃんは、納刀された大剣に手をかけてそれを見る。避ける動作を微塵もしないハルお姉ちゃんに、その大きな尻尾が容赦なく叩きつけられた。

 

「お姉ちゃん!!」

 僕は思わず叫ぶ。トビカガチほどの大型モンスターの一撃になると流石に重い…。身をもって体感したトビカガチの力を思い出し少し身震いする。

 

 しかし尻尾を叩きつけられたその場所には、大剣を握り力を溜めるハルお姉ちゃんの姿があった。溜めると言ってもいつもの背負い投げのような体勢でなく、足を大きく踏ん張り、体を下に曲げて、大剣が上を向くようにグッと構えて溜めている。

 

 ハルお姉ちゃんはそのトビカガチの一撃をものともしないように少しニヤリとすると、溜め込んだ力を大剣に込めて叫ぶ。

 

 

「……震怒竜怨斬!!」

 

 

 その一撃を、尻尾叩きつけの攻撃後に着地したトビカガチの脳天にぶつける。トビカガチも流石に攻撃の後隙で動けずその大剣が振り下ろされるのを見ることしかできなかった。

 

「ギギャァァァァァォ……!」

 トビカガチは痛みに悶えて大きく、しかし段々力無く叫んで、その場に倒れ込んだ。その額に残る一本の真新しい大きな切り傷が、このハルお姉ちゃんの一撃の重さを物語る。

 

 

 

「……ふぅ」

 獣のような赤い眼光も消えて、いつものハルお姉ちゃんが戻る。大剣を納刀して、僕の方を見て、

「終わったよ?」

 と、少し冗談めかして答えるのだった。

 

「うん、…ありがとう、お姉ちゃん」

 多大な尊敬の念とちょっとした劣等感を持って、僕はそれに答えた。

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