ひとまず私たちは、トビカガチの狩猟を達成した。
まずは剥ぎ取り。素材をいつ使うか分からないが、使えるものはしっかりと剥ぎ取っておく。それが命を頂戴するハンターという職業においての感謝を表す儀式のようなものだと父に再三聞かされた。
また、トビカガチの皮は絶縁体になっていること、トビカガチの逆立った毛と電極針に関することなど、加工における知識もフユは熱心にノートにとっていた。
その後のこのトビカガチに関する調査を行った(フユが主にこれをしてくれる、私は護衛に回っておく)ところ、やはりこの辺はトビカガチの縄張りではないらしい。トビカガチの縄張りには、体を擦り付け静電気を溜めている跡が見られたり、トビカガチの白い毛が雪のように降ってくる光景が見られたりするのだが、そういうものが一切発見できずじまいだったのだ。
加えて、このトビカガチに関して特筆できること、体中が黒ずんでいてかすり傷だらけになっていることに関して、断言はできないものの、以前戦ったドスジャグラスと同様のものと予想できた。本来トビカガチは比較的温厚なはず(とはいえ肉食相手にはちょっかい出してしまったりするのだが)、やはり今回のトビカガチは、あまりに縄張りを離れて暴れているようだったので、その辺りを某ドスジャグラスとの関係も含めてまた研究していかないといけないようだ。
そんな感じで調査を終えて、依頼を受けた村の方に報告をしに行った。
「少し時間がかかってしまいすみません…」
そんな風にフユが言った。
お相手、この依頼を出した村長さんは、
「いやいや、むしろ助かったよ!正直こんな小さな子たちがやってくれるとは思わなんだ!」
とか言って、ガッハッハ!と笑いながら激励してくれた。まぁ子供と言われるのは当然か。
「本当に誰も手を付けられなくて大変だったんだ!君たちには礼をしきれないほどさ!」
とにかく感謝されているのだからこれは受け取るべきだろう。子供とか言われようともハンターの腕でそれをひっくり返せばいいのだから。
「まぁね!私たち強いんで!」
私はそう笑顔で返しておく。
そんなやりとりをして報酬を受け取り、ついでに回復薬の補充などを済ませて、私たちは村を後にした。
そうして向かったのは、あの高い木々の地帯。私たちにはまだやることが残っている。
「すっかり良くなったね」
フユが包帯などを取り除きながらそんなことを言う。
ゴゴモアの治療も兼ねてここに滞在していたのだが、それも今日いっぱいでどうにかなりそうだった。ゴゴモアの怪我で最も心配されたトビカガチの噛まれた跡も、しっかり傷口が塞がっているようだ。なんともゴゴモアの回復速度はなかなかなもので、
「トビカガチの噛み跡も完全に治ってきている、すごいや」
とフユも驚いていた。
「もういいよ」
フユが声をかけて、一歩後ろに下がり離れる。
ゴゴモアは全ての治療部位の施しが取れたのを確認すると、左手から糸を上に飛ばし、スルスルと木の上に登っていった。左肩がトビカガチに噛まれていたので、左手一本で痛がらずゴゴモア自身の体重、加えて背中のココモアの体重を支えられるようになっているというのは立派な完治の合図である。
「これで大丈夫、だと思う」
テキパキと治療セットを片付けたフユが、少し名残惜しそうにそんなことを言った。
「よかったねー。これでまた旅に出れるね」
と、私は返した。
「日が沈まない内に進めるだけ進もうか」
そう私はフユに声をかける。
「そうだね、行こうか」
と、フユは返した。
あらかた済ませていた出発の準備を完了して私たちはシュントに乗る。シュントは久しぶりの二人乗りに少し喜んでいるように見えた。
「それじゃ」
と私が、
「またね」
とフユが、それぞれゴゴモアに手を振りながら声をかける。シュントが向きを変え、ゴゴモアに背中を向ける。
キーキーと後ろから甲高い鳴き声が聞こえてくる。ココモアの鳴き声だろう。木の上の親の背中は安心できて楽しいようだ。
シュントは駆け出した。私たちは高い木々の間を風のように進んでいく。