泰然自若たる白銀の霊峰(1)
それは、ひとえに霊峰のようだった。
同じ地面を踏みながらも、聳え立つその山は、僕のことなどまるで気にも留めないような落ち着きを見せている。
この銀世界を統べ、人々の信仰とまでなるその巨獣は、まさしく霊峰の名に相応しいものだった。
桜色の大剣を担いだ私は姉のハル。
白色の狩猟笛を担いだこの子は弟のフユ。
2人はガルクのシュントに乗って、ハンター稼業をしながら、とあるモンスターについて調べるために旅をしている。
「少しいいかな?」
雪原地帯の一角に位置するとある村、私たちがそこに立ち寄り村の中を見回っていて少ししたら、気前の良さそうな若い男女の二人組に話しかけられた。
「はい?」
私はキョトンとしながらそれに反応する。
「見たところ君たちはハンターなのかい?」
二人のうち操虫棍を担いだ青年の方が私たちに訊いてきたので、
「はい、そうですが……」
それに対してフユが少し人見知りをしているような緊張具合で答えた。
「もし腕に自信のあるハンターさんだったら、私たちの依頼を受けてくれないかしら?」
それを聞いたもう一人の方、穿龍棍を担いだ女性の方がそんなことを言う。
「依頼……ですか?」
私がついそう返した。本来ハンターが受ける依頼をハンターが出すとなると、この二人の失敗したクエストの後始末でもやらされるのだろうか?
「あぁ、依頼というのは生態調査のお手伝いだ」
操虫棍使いの青年が答える。続けて、
「僕たちはこの雪原地帯一帯で信仰の対象のようにされている銀嶺ガムートを調べにきたんだ」
それに対して驚いたのがフユの方。
「え?銀嶺って、…あの銀嶺ですよね?」
驚くのも無理はない。そもそも二つ名は人々から畏怖の念を込められてつけられるもの、そんな危険な個体という証明のようなものである。
「あぁ、君の思ってる銀嶺で間違い無いだろう。知っての通りガムートは食料の問題上、外敵に敏感だったりして周辺の村を襲うことがある、加えて二つ名個体ともなれば強さも別格……」
そういう風に青年は続ける。フユが食いつくように真剣な顔でそれを聞いている。
「それなのに、ここら一帯ではその銀嶺ガムートを信仰の対象としていると聞いたんだ。それが不思議でならなくてね。それを調べにここにきたんだ」
それにつなげるように穿龍棍使いの女性が続ける。
「私はそんな銀嶺がいるんだったら一度会ってみたかったの。折角なら触れ合いなんかもしてみたいじゃない?」
なるほど、この人たちの目的はわかった。
「しかし……なんで私たちにこの依頼を?」
私は気になってそれを訊いてみる。
「ここら一帯では銀嶺ガムートの他にも凶暴なモンスターが山ほどいるらしくてね、それに対して僕たちだけでは少し不安だったんだ」
操虫棍使いの青年がそういう風に答える。
「なるほど……」
私が以上の内容に関して思案していると、
「やります!」
とフユが勢いよく声を上げる。二人も驚いた様子…。
「……フユ?」
私は確かめるように聞く。
「お姉ちゃん、これはまたとない機会だよ!二つ名個体の調査なんて中々ないし、ここら一帯の自然とかも気になるし!」
フユは続けて二人の方を向いて話す。
「僕たちはモンスターの調査をしながら旅をしているんです!僕が持っている知識やお姉ちゃんの力は、きっとお役に立てると思います!」
二人は少し勢いに呑まれそうになっている。フユの目はキラキラ輝いていた。
「……私も、やっていいですよ」
もうこうなったらフユは止められない。私もそれに従うことにした。
「ありがと、助かるわ」
穿龍棍使いの女性がそう笑顔で返した。隣の操虫棍使いの青年も笑っていた。
そんなやりとりを終え、私たちはこの二人のハンターと一緒に行動しつつ、この雪原地帯とここに住む銀嶺ガムートを調査することになった。早速私たちはホットドリンク等の準備をしっかり済ませて、その雪原地帯へと向かった。
この雪原地帯は、私たちにとって初めての雪の国である。雪がこんなに冷たいことを私たちは知らなかった。また、ここは雪がしっかり積もっている割に木がよく生えていて、植物が割と多く見られる。それでも、みるもの全てが白い雪化粧に覆われていた。
「早速ポポの群れがいるね」
操虫棍使いの青年、穿龍棍使いの女性、私たちはそれぞれガルクに乗ってそのポポの群れを見つけた。雪原地帯に入ってすぐのところにポポの群れを発見するとは、なんとも幸先のいいスタートである。
「うわぁ……!」
フユは初めての雪、というか雪地帯のモンスターに目を輝かせている。私も雪は初めてなので同様の反応をしていたというものの、ここまで目をキラキラさせてはいなかった……と願いたい。
「それじゃあ、早く行こうか」
操虫棍使いの青年の合図で、私たちはガルクを走らせた。
その後、あんなことになるとは思ってなかった。