モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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泰然自若たる白銀の霊峰(4)

 僕の目の前には律儀に体をこちらに向け、威嚇をするドラギュロスがいる。

 

 冥雷竜、その名の通り冥雷と呼ばれる赤黒い雷を操るモンスターだ。正直僕が相手をできるような弱さではない。

 だが、今ここにはハルお姉ちゃんも同行していた二人もいない。どうしようもない状況である。

 

 辺りが段々吹雪いてくるのを感じる。少し視界が悪くなってくる。

 

 僕は狩猟笛を肩にかけた。とにかくここは戦うしかない……!

 

 ドラギュロスが咆哮する。吹雪く音に若干かき消されつつも、その鳴き声は辺り一帯に轟いた。

 

 先に動いたのはドラギュロス。空に飛び立ち、その勢いで翼の後ろの方に伸びる鉤爪上の器官を叩きつけてくる。

 

 僕はそれを横に回避。

 

 するとその鉤爪が赤く光り、赤黒い電気の弾が地面を這うように放たれる。

 

「うわっ!」

 僕は死角になりつつある場所からの攻撃に驚きつつ、なんとか避けながら体勢を立て直す。

 

 その鉤爪を取り出したドラギュロスは、僕の方に低空飛行してくる。その際に鉤爪を地面に引き摺りつつ電気を纏っている。

 

 僕は尻尾と鉤爪の間をなんとかすり抜けるように回避。その勢いのまま狩猟笛をぶんと振って自己強化の演奏を入れる。

 

 しかしその演奏の後隙を狙ってくるようにドラギュロスは動いてきた。

 飛行方向の向きを変えると、電気を纏っていた両鉤爪を飛行しながら僕に叩きつけてきた。

 

 ギリギリ演奏を終えて僕はなんとか横に回避、がしかしそれで終わらない。

 

 ドラギュロスはそのまま一帯に放電したのだ。僕の真横に落ちてきた二つの鉤爪から辺りを球状で包むように放電。周りが赤黒く光る。とても避けれる技じゃなかった。

 

 

「グハァ!」

 もろに電撃を喰らってしまい、僕は喉の奥から息の漏れるような感覚で声が出た。

 勿論体全体に龍属性の電撃を喰らうことなんて初めてだった。初めて知る衝撃にまともに対抗できずに、その場に倒れ込んでしまう。

 

 悠々と着地したドラギュロスが、僕のことを見据えている。これから煮るなり焼くなりできるような目つきである。

 まともにたち打ちできていないこの状況、勝てない……、心の底からそう思ってしまう。

 

 

 

 辺りの吹雪が強さを増している。段々と視界がぼやけて、ドラギュロスの輪郭も若干ぼやけてくる。

 

 しかしながら、ドラギュロスが飛行体勢に入っているのが見える。これからさらに僕に攻撃を仕掛けてくるのだろう。なんとか避けないと今度こそ生きて帰れない、そう思って自分の体を起こそうにもまともにいうことを聞いてくれなかった。

 

 終わったのかもしれない、そう思った。

 

 

 

 しかし、主人公は遅れてやってくるようだ。

 

 

 ズシン…

 

 辺りが揺れる。倒れている僕の体には揺れがよく伝わる。

 

 ズシン…

 

 さらに揺れる。今度は前方のドラギュロスも、飛行体勢をやめて首を傾げている。

 

 ズシン…、ズシン…

 

 段々とその揺れが大きくなってくる。周辺の木々も揺れているのがわかる。時折木々に積もった雪がポロポロと落ちている。

 

 ズシン…、ズシン…

 

 その揺れが段々こちらに向かって来ている。それも僕の後ろの方から近づいて来ているのがわかる。

 

 ズシン…! ズシン…!

 

 僕はなんとか上半身を起こし、その揺れの主の方を見た。

 

 ズシン! ズシン!

 

 僕の視界から何かが現れた。

 吹雪の中から段々と顕になってくるその全貌。それは僕の予想を遥かに上回る、ドラギュロスの数倍に見える巨体だった。

 先端が雪を纏ってトゲトゲとしている、辺りの木々など簡単に薙ぎ払ってしまいそうな長い鼻。大きく曲がる立派な一対の牙と頭を覆う冠のような大きな甲殻は雪で白さを帯びている。足も雪を何層にも纏っていて、それが地に着くたびに辺りが大きく揺れる。紺色の体毛を全体に纏い、上部先端が白く色褪せている。

 吹雪の中から現れたそれは、とても山と勘違いしてしまうようだった。

 

 

「銀嶺…ガムート……」

 僕は、その圧巻の巨大の全貌を見て、この状況に似合わず感動していた。

 それは、ひとえに霊峰のようだった。

 同じ地面を踏みながらも、聳え立つその山は、僕のことなどまるで気にも留めないような落ち着きを見せている。

 この銀世界を統べ、人々の信仰とまでなるその巨獣は、まさしく霊峰の名に相応しいものだった。

 

 

 僕の目の前で銀嶺ガムートは足を止める。甲殻の端から見える眼でじっと僕を見据えている。威圧感に似たものを感じ、僕の体が震えて来てしまう。

 銀嶺ガムートはそんな僕にはあまり興味を示さなかったのだろうか、僕のことを鼻でひょいと持ち上げ、銀嶺ガムートの通る道の脇の方に投げられた。僕は上の空のままされるがまま投げられ、雪の上にポスッと尻餅を着く。

 

 僕のことを傍に投げた銀嶺ガムートは、さらに足をすすめる。一回一回足を踏むごとに辺りを包む地震は、さながら山が動いているようだった。

 

 銀嶺ガムートは、今度は冥雷竜ドラギュロスの前で足を止めた。ドラギュロスの方もぐるぐる唸りつつ威嚇している。

 

 

 痺れを切らしたドラギュロスが翼を大きく広げ咆哮した。

 

 パオォォォォォォン!!

 今度は銀嶺ガムートが、足踏みをしてから鼻を大きく掲げるようにあげ、巨大な咆哮をする。ドラギュロスも中々の大きさだったのに、それをいとも容易くかき消して、周辺の景色を揺らすような轟音を鳴らす。

 

 

 二体のモンスターが対峙した。

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