モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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泰然自若たる白銀の霊峰(7)

 僕と銀嶺ガムートの間で、ちょっとした静寂の時間が流れた。

 

 

 銀嶺ガムートが今まで進んでた方向から向きを変える、それだけでもその足音は雪原を揺らし、この静寂はすぐに消え失せてしまう。どこか脆い一時だなと思ってしまう。

 

 段々と、銀嶺ガムートが近寄ってくる。僕の真正面、すぐ近くで足を止める。初めての邂逅の時と同様の立ち位置になり、改めてその巨体に威圧感のようなものを感じてしまう。

 それでも、なぜかわからないけど、どこか落ち着いている。銀嶺ガムートの目も、僕も。この雪原の中、お互い何も話さず、ただ白い息を吐くだけの時間が流れる。

 

 不意に、銀嶺ガムートの長い鼻が僕に巻きつく、あまりに急なその行動に少し焦ってしまうものの、その行動が攻撃のためにあるわけではないことを感じ、僕はじっとしておく。

 銀嶺ガムートの長い鼻は僕の体をぐるぐると巻く、その状態で僕を空中に持ち上げると、器用にその鼻を僕のお尻の下へと回し、その後鼻の巻きつきを解く。気がつくと、僕は銀嶺ガムートの鼻に座る状態になっていた。元々ガムートの鼻には棘がある上に、トゲトゲとした氷を纏っているのだが、思った以上にお尻が痛むことはなかった。

 

「……どこに連れて行くの?」

 僕は気になって聞いてみた。正直言葉が通じるとは思っていないが、それでも気になってしまい、不意に漏れてしまったのだ。

 銀嶺ガムートの方はというと、僕が安定して座っているのを確認して、体の向きを先程進んでいた方向に戻す。銀嶺ガムートの足取りが鼻を揺らして直に伝わってくるが、なんだか心地よい揺れだった。

 銀嶺ガムートは、僕を連れて歩き出す。先程ドラギュロスと戦っていた時の勇ましい足取りを少し残しつつ、今はその重そうな体をゆっくり動かしているように感じた。

 

 

 しばらくして、銀嶺ガムートはとあるところに来た。周りは針葉樹林、最初4人で植物を観察していた時のように、そこにはポポの群れがいた。子供も含め様々な個体が集まってゆったりと過ごしている様子だった。

 本来こういう小型モンスターたちは、大型モンスター、特に肉食のモンスターなどが近づいてくると即座に逃げていくのだが、これだけ地面を揺らして近づいてきた銀嶺ガムートに対しては、視認するだけでみんなまったりと過ごしている。ガムートとポポは共生関係にある時もあるそうだと本で読んだことがあるが、それの名残なのかもしれない。

 

 

 銀嶺ガムートの方もポポを軽く確認するだけのようで、ポポの邪魔にならないように群れの周りを回って通り、周りの針葉樹林の中で一際大きな樹木のそばに来て、僕をおろした。僕はその場に尻餅をつくように降りる。

 

 そのまま銀嶺ガムートは、その場に腰を下ろす。地べたに今まで足で支えていた体の全体を預けて、鼻で僕を優しく包んだ。銀嶺ガムートは先の戦いで疲れていたのだろうか、そのまま、段々と銀嶺ガムートの呼吸音が小さくなっていき、規則的な寝息へと変わる。

 

「……眠っちゃった?」

 僕はその場にちょこんと座る。銀嶺ガムートの長い鼻で体を囲まれ包まれていて、そばに立派な白い顔面の甲殻や今は閉じている目、大きく反りかえる牙がある。

 僕は手を置くそばにあった鼻の根元の部分を撫でてみる。銀嶺ガムートは普通のガムートと違い毛の赤い部分が白く色が抜けているのだが、青い体毛は健在のようだ。少しゴワゴワとしていそうな芯の強い太い毛で、艶があり、寒さをものともしなさそうである。そして、やはりそこからは温もりが伝わってくる。

 

「温かいね……」

 僕はそんなことをつぶやく。

「これが母親の温もりなのか……」

 続けてそんなことを考える。父はフラウデュゴに会う1日前まで一緒に住んでいたものの、母に関しては記憶に残っていない、ハルお姉ちゃんも同様だろう。僕らがいるということはいたであろう母。思い出すことも叶わない母の温もりを、今こうやって体感しているような気がしてならなかった。

 

 僕は、先程まで撫でていた鼻の根元の方に体を預ける。母親の温もりに包まれる心地は、やがて僕をゆっくりと眠らせた。

 

 

 

 ハルお姉ちゃんの話によれば、僕は銀嶺ガムートの側でゆったりと眠っているのが発見されとても安心したらしい。とても気持ちよさそうだったよ、とハルお姉ちゃんに言われた。

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