モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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序章 帰郷は愕然と共に

「おい、お前ら、大変だ!」

 朝、私とフユはおじさんの緊迫感に満ち溢れた声に叩き起こされた。

「……どうしたんですか……?」

 眠気でまだ瞼を開けきれない私に変わって、フユが目を擦りながらおじさんに聞くと、

 

「お前らの村が嵐に襲われた!街が全壊だ!」

 あまりにも急な展開を告げられた。

 

「……え?」

「……はい?」

 私とフユは一気に目が覚め、その言葉を聞き間違いか疑う。

「すぐに村に向かう!お前らもついてきたけりゃ準備してくれ!」

 そんなことを構う余裕もないおじさんは、そう言い残してドタドタと下に降りていってしまった。

 

「……フユ、」

「……お姉ちゃん……」

 フユが少し涙を堪えている。

「涙は後、今は準備だよ」

 私がとにかくとフユを急かすと、

「……うん……!」

 意を決したかのように力強くうなづいた。

 

 そして私たちは、とにかく急いで着替え等の支度をした。お揃いの狩りの服をきて、それぞれの武器のチェックを手短に済ませて担いだ。昨日も急いで準備してはいたものの、昨日とはまるで気分が違っていた。

 

 

 おじさんと私たち、そして複数人のハンターを含む大人で、ガルクで森を駆ける。先頭をおじさんが、その次を私たちとシュントが走る。

 

 私たちの故郷である村と隣町との間は、豊かな森林地帯となっている。昔からここの間での行き来があったので獣道のような道はできてはいるものの、その森の姿をあまり変えないようにとの配慮がなされている。そのためもあってか、ここは空気が美味しく、小動物、小型モンスターなどが多くみられるなど自然の豊かさはかなり誇れるほどになっているのだ。

 そのはずなのだが、今日の森は少し変だった。今回あった嵐のせいのようだが、落ち葉に加え小枝が落ちていて、嵐のせいで隠れてしまったのか、小動物などの見る影もなく、今日の森は妙に静かで、風に揺れるザワザワとした木の揺らめきが妙に煩かった。昨日と比べても少し森が色々な意味で暗く感じられた。

 

「…ジャグラスもいない、どこかに隠れてる……?」

 後ろで私の腰に手を回すフユがつぶやく。フユはこういうモンスターの生態に関することを父からよく教わっていた。そのため、フユはその類の話はかなり好きだし、知識もそこら辺の研究者には引けを取らないくらいのものになっている。やはりフユも、この妙な静けさに疑問を抱いているようだ。

 

 

「…着くぞ、準備はいいか……?」

 おじさんがガルクを走らせながら後ろを向いて言う。きっとこれは「心の」準備、という意味合いだろう。

「……フユ?」

「……うん」

 フユからの返答。研究者モードになったフユはこういう状況には強いようだ。

 

「……大丈夫です」

 私はおじさんへ返答する。おう、とおじさんが答えた。

 緊迫した空気にも慣れないといけなかった。フユもいる、姉はしっかりしないといけない。

 

 

 

 1日ぶりに帰郷を果たした。

 景色は、凄惨なるものだった。

 

 村は、付近の森を巻き込む形で一面瓦礫となっていた。家のかけらであろうものが辺りに散らばって積み重なっている。とは言っても、積み重なり方はあまり高くなく、村のあったであろうところは一変、視界が妙に広く、嵐によって乱雑に平にならされたようだった。瓦礫の木を見るにこの嵐は大雨も纏っていたのだろう、地面はかなりぬかるんでいて、小川のようなものができているところも散見された。兎にも角にも、言葉を失う光景であることに間違い無いだろう。

 

「これは、ひどい……」

 おじさんがポツリと漏らす。

 隣の私は今にも泣きそうになっていた。もうこれでは、救助どころの騒ぎではない、村にいた人々の生存は、父の生存は、かなり絶望的だった。

「お姉ちゃん、」

 後ろから声が聞こえる。

「……泣いちゃダメ、周辺にモンスターがいたら、反応するかもしれない」

 不自然に力がこもるフユの声。研究者モードのフユでもこの光景は流石に堪えるものがある。私にしろフユにしろ、10歳児に見せていい映像ではなかった。

 

 大人たちは、辺りの見回りを始めた、私たちの集まりは、嵐の直後この村に初めて来たことになる。周辺がどんな状況かも報告しないといけないし、もしかしたら生存者がいるかもしれない。それの捜索も兼ねて、一度あたりを見回りすることになった。フユの助言の通り、あまり大声での捜索ができないのが悔やまれてならなかったが。

 おじさんは、啜り泣きを我慢する私たちのそばにいて黙っていた。私たちはとりあえずこの絶望的な予測を振り払うか受け止めるかどうにかして、ハンター見習いらしく大人たちの手伝いをしないといけないと、2人で我慢しようとしていた。それでもその時はあまりのショックで、足がまともに動くことはなかったわけなのだが。

 

 

 ふと、目の前の瓦礫が動き出す。瓦礫の山の一部が、音を立てながらむくりむくりと動いている。

 3人でそこを驚くように見る。

「お、生き残りか?」

 おじさんがまずそこから動き出す。それもそのはず、人ならば、一刻も早く助けなければならない。

 

「待って」

 そう、人ならば。

 フユの声で一度立ち止まるおじさん。

「なんでだ?生き残りだぞ?」

「うん、生き残りだよ、でも、人じゃない」

 フユが静止したところで、その瓦礫から、ガラガラと崩れたそこから、全貌が顕になる。

 

 そこからは、妙に息を荒々しくした、ドスジャグラスが出てきた。

 ドスジャグラスは、ジャグラスという子分を束ねるモンスター、小さな鳥竜種を束ねるボスのようなモンスターという立ち位置は多くいる中での一種だ。ボスがいないのだから、ジャグラスが森にいなかったのも頷ける。

 そして、

「お姉ちゃん、この子、気が立ってる、怪我のせいかも」

 フユの通りだ。

 このドスジャグラス、いつもの黄色い肌が少し黒ずんでいて、所々かすり傷で赤くなっている。瓦礫に埋まっていたせいだろうか。

 

 

「……お姉ちゃん」

「……うん」

 私たちはおじさんを庇うように武器を構えた。それぞれ大剣と狩猟笛を体でしっかり支えるように持つ。今ここにはハンターなどはおらず、ついてきた人々もあたりに散らばっていて頼りにできない。大声で呼ぶにも、他のモンスターを呼び寄せるかもしれないので、ここは私たちで迎え撃つしかない。

 

 できるだろうか……

 

 狩り、およびそれでの戦い方はしっかり父から習っている。とはいえまだ10歳の私たち、実践も小型モンスターが主だったので、その大型を前にする機会はなかなか無い。

 

 いや、ここは、……やり切るしかない。

 父のためにも、これ以上失わないように。

 

 

 私とフユは、武器をしっかり構え、ドスジャグラスとの距離を保っていた。

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