モンスターハンター ロストワールド   作:Haonawo

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熾烈を極めし親玉合戦(3)

 私たちはシュントの警戒と共に武器を手にかけ警戒する。

 

 警戒を向けるのは巨木の向こう側、と言ってもここは巨木が囲む野原である。正直どこからモンスターが来るのか検討もつかない。シュントの警戒する視線も一点に定まっているわけではないので、もしかすると、獣の匂いが近づいているのだけ察知しているのかもしれない。

 

(いや、もしかして……)

 私は嫌な予感がする。シュントの警戒がやけにあちこち向いているのだ。そして無数のランポスとジャギィの死体…。ここまで思考を巡らせて血の気が引く音がした。

 

 私たちは背中を合わせて、お互いの死角をなくすように立ち、その状態で端のほうに後ずさるように移動する。周りに注意しながら、武器を手に取りいつでも抜刀できるようにしながら。

 

 ついにはその体をこの野原を形作る巨木の囲いにつき、その巨木の一つに背を預ける。隣にフユがいることを確認して、私が左側、フユが右側の視界を警戒しておく。

 

 

 不意に、私の視界の方の巨木の群れから一つの影。ガサッという巨木の枝たちを掻き分ける気持ちのいい音を出しながら、一頭の大型モンスターがこの野原に勢いよく飛び込む。

 全体の体色が青く、黒く縞が入っており。両手両足の鋭い爪と細く身軽そうな体、そして頭のオレンジの鶏冠が立派である。

 これがランポスの親玉、ドスランポスである。

 

 続いて、フユの視界の方から枝を掻き分ける音が聞こえ、そこから現れる一つの影。こちらは地を踏み締めノッシノッシと歩いて一頭の大型モンスターが出てくる。

 全体を紫色の体色に覆われ、どっしりガッシリとした筋肉質で重たそうな足。頭の両サイドには立派な襟巻きのような耳が付いている。

 これがジャギィの親玉、ドスジャギィである。

 

 二体のモンスターは、まるで巨木に囲まれたリングにいるかのような風格で、お互い対峙する。少しずつ歩みを進めて、お互いの間合いを狭くしていく。

 

 

「……おかしい…」

 隣で小声を漏らすフユ。

「…だよね……」

 私もそれに反応する。

「体が黒ずんでる、それもかなり既視感を覚える形で…」

 フユが漏らしたその言葉。

 そう、お互い、ドスランポスもドスジャギィも体が黒ずんでいて傷だらけなのだ。おまけにどちらも目が赤く血走っている。

 既視感を覚えるのも仕方がない。ドスジャグラスにトビカガチ…何度かこのような謎の状態のモンスターを見かけたことがあるのだ。

 

 

 ギャァオ!ギャァオ!

 ァオッオッオッオ!

 

 

「うわっ!」

 私たちは耳を塞いだ。あまりに大きいその咆哮が、このリングを超え樹海中に響き渡る。

 見ると、ドスランポスとドスジャギィが、天を見上げ大きく咆哮している。ドスランポスは喉を裂くような声、ドスジャギィは喉の奥から響かせる声。おそらくこの咆哮は……。

 

 その思考が終わる前に、お互いが出てきた場所から無数の子分たちが現れる。左側からランポス、右側からジャギィとジャギィノスが、次々にこのリングに雪崩れ込む。お互いの群れがお互いの親玉に続くように陣を構えて、そこからギャーギャーと鳴きながらお互いを牽制しているようにも見える。

 

 

 今目の前で、ドスランポス一派とドスジャギィ一派の縄張り争いが幕を開けた。

 

 お互いの軍勢がお互いに一斉に襲い掛かる。

 

 

 親玉合戦の先手を取ったのはドスジャギィ。早速ドスランポスに噛みつき攻撃をする。

 

 ドスランポスはそれを横に跳んで回避し、そこから前足の爪引っ掻きで攻撃する。

 

 それを横っ腹に受けてしまい、少しよろけるドスジャギィ。だがこちらも負けじと、回転し太い尻尾で引っ叩く。

 

 それに直撃したドスランポスも大きくよろける。しかしそれでも軽快にジャンプし体勢を立て直す。

 

 

 ドスランポスの主な攻撃手段は、持ち前の脚力と、両手足の鋭く大きな鉤爪である。そのジャンプの力はドスジャギィくらいなら軽く跳び越えられる程度のもので、攻撃や回避に多用しているようだ。そして爪、かなり強く鋭利にできていて、これを用いたジャンプ攻撃ともなると、肉を軽く抉るくらいなら造作もないようだ。

 

 スピードのドスランポスに対して、ドスジャギィはパワーが持ち味である。体つきはドスランポスよりガタイが良く屈強で、尻尾や足は太く強靭である。ドスランポスほど身軽ではないもののジャンプもかなりできるし、何より持ち前のパワーを用いた力任せな攻撃が多用される。突進や尻尾振り回しなど、重い攻撃が得意である。

 

 子分の方はというと、種類による親玉のような特徴の差はあり、ランポスは飛び掛かり攻撃を多用するし、ジャギィノスは突進攻撃も行う。しかしながらやはりまだ戦い方も素のパワーも未熟なようで、最終的には泥沼化した噛み付き合いに発展してしまっているようだ。

 

 

 

 そんな様子を私たちは眺めていた。

 同時にどうしようかと悩んでいる。このような勢力の集中した状態で一網打尽にできる機会は中々ないものの、これに飛び込むのは中々自殺行為もいいところである。だが、これを野放しにすると、これがどこに飛び火するかなんてとても想像できない。おまけにここまで泥沼と化しているのを見ると、機会を伺うのも難しそうである。

 

「どうする…?」

 私はフユに意見を求める。

「正直放っておくとまずい気がする…っと」

 と、フユはその解答を中断し狩猟笛を抜刀、その勢いで左から右にブンッと振る。

 

 その攻撃を受けたのは、ランポスやジャギィ。いい具合に横っ腹に当たり、吹っ飛ばされる。

 フユはそのまま慣れた手つきで自己強化の演奏を入れる。

 

「…この通り、そろそろこちらにも飛び火してくる。どうにかしないと」

 と、フユは返して、フユは狩猟笛を右肩に担ぐ。

 

 見ると。お互いがお互いを攻撃していたはずのランポスやジャギィが、続々とこちらに攻撃を仕掛けようとしているのが見える。もう迷っている暇は無さそうだ。

 

「…いこうか」

 私は大剣を抜刀し前に構えて、フユに声をかける。

「…うん……!」

 フユは力強く頷いた。

 

 

 私たちも戦いの幕開けである。

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