私たちも見てるだけでは終わらない状況が出来上がった。
私は大剣を抜刀し、前に構える。ずしりとした重みを支えるように、しっかり大剣を握る。
既に自己強化の旋律を吹き終えたフユも、右肩に乗せる狩猟笛を握る手に力を入れる。
「いくよ!」
「うん!」
私たちは目の前の無数のモンスターに向かって駆け出した。
先を走ったのはフユ、向かってくるランポスとジャギィに向かって、狩猟笛を右から左に大きく振り回す。
それに巻き込まれた小型モンスターたちは奥へと吹き飛ばされる。しかしながら後ろにいた小型モンスターたちが雪崩れ込んでくるので、フユはその勢いのまま、今度は逆方向にぶん回す。
そして、その狩猟笛を腰元で止めて、演奏を行う。
私の体が少し軽くなり、力が漲る感覚が分かる。毎度お世話になる、フユの攻撃強化の旋律だ。
その演奏の先を狙うように、フユにランポスの飛び掛かりとジャギィノスの突進が向かうのが見える。
「今度は、…私の番!」
それに向かって、私は背中に大剣を背負うように構え、振り下ろす。
その攻撃は見事命中し、その小型モンスターたちは吹き飛ばされる。
しかし、さらに多くの小型モンスターが、囲うように攻めてきてるのが見て取れる。
それに対して、私は地面に叩きつけられた大剣を握り、前方に大きく踏み込み力を入れる。その勢いを大剣に乗せて、右側から後ろ、そして前方と一回転で大薙ぎ払いを決める。
周りの小型モンスターたちを大きく退かせることに成功する。
「お姉ちゃん、ナイス!」
後ろからフユの声も聞こえて、フユを守れたようで少し安心する。
そうやって2人で交互に攻撃して負担を分散しつつ、全体を攻撃できる薙ぎ払いなどを多用しながら、次々に向かってくる小型モンスターたちを蹴散らす。小型モンスターたちは吹き飛ばされては代わる代わる私たちに向かってくる。半永久的にこのような状況が続くのをわかっていたため、細かく交代しながら小型モンスターたちの処理ができたのは良かったかもしれない。
そして、そのような地道な討伐が功を成したのか、段々と向かってくる小型モンスターの数が減ってきていた。
「お姉ちゃん!」
その最中、小型モンスターの相手をしているフユから声をかけられる。
「なに?」
私は活力剤を口に運びながらそれを聞く。
「作戦変更!親玉を狙うよ!」
フユはそう言い放った。
「え?なんで」
と、私も聞き返したのだが、その回答をすることなくフユは狩猟笛を振るう。
フユは、体を弾ませながら狩猟笛をブンブンと数回回転させ、最後に体をどっしり構え狩猟笛を縦に立てる。この一連の動きの中でフユは演奏をしっかり決めてみせる。
そして、その立てた狩猟笛をぐるぐるとその場で回転。演奏音を出しながら辺りに音波による攻撃も出している。
この一連の攻撃で、私たちの周りを囲んでいた小型モンスターたちは一気に倒される。
私はこの動きを見て、それとなく感動していた。三音攻撃と気炎の旋律、どちらも狩技などの動きが苦手なフユがつい最近まで頑張って父と練習していた。実際の狩猟の場でしているのを初めて見た。
「お姉ちゃんはドスランポスを狙って!頭に一発、大きなのを叩き込んで!」
そう言ってフユは狩猟笛を納刀して、ドスランポスとドスジャギィのところへ駆け出す。
「あ、うん!」
私も遅れて反応する。大剣を納刀して、フユの後をついて走る。
なるほど、フユが狙っていることは理解できた。その方法をなるべく早く達成する方法は、おそらくあの狩技だ。
フユが向かう先、ドスランポスとドスジャギィは未だ白熱した戦いを繰り広げている。体は邂逅した時より一段と傷が増えているものの、未だその血走った目には殺気が健在である。
そこに向かってフユは腰のポーチから取り出した閃光玉を投げる。
「目を塞いで!」
フユの声に反応して、私は腕で目を覆う。
辺りが瞬間的に眩い光に包まれる。ドスランポスとドスジャギィの間で綺麗に炸裂した閃光玉の効果は的面。二頭ともまともに食らったらしく動けていない。
フユがドスジャギィの方へ向かう、まともに動けていないドスジャギィの頭に、容赦なく狩猟笛を叩き込む。
私はフユに言われた通りにドスランポスの方に。ドスランポスの頭に狙いを定める。大剣を握り抜刀、そのまま振り下ろすように縦回転を一回転、二回転、その勢いのまま大きく跳び上がって、回転の力をフルで大剣に乗せて振り下ろす。
「ムーンブレイク!」
ドスランポスの頭部にしっかり攻撃が入った。流石にこの一撃は応えるらしく大きくのけぞっている。そして……
「こっちもできたよ!」
フユの方から声が聞こえる。ドスジャギィの方もフユの狩猟笛がいい具合に当たったらしく大きくひるんでいる。
そして、二頭の頭部の部位破壊が完了する。
二頭が子分を呼ぶべく再び天を見て咆哮する。その咆哮はやはり通常よりはるかに大きいものの、明らかに周りの子分たちの統率が取れていないのだ。
これに関してはフユから聞いたことがあるのだが、ドスランポスのオレンジの大きな鶏冠、ドスジャギィの大きな耳、他にはドドブランゴの大きな牙など、親玉の象徴的部位が存在する。これがあることが力の証明であり、逆にこれがなくなったら子分がいうことを聞いてくれなくなるという。
子分たちが森に帰っていく。やはり傷だらけの状態での反応なのだろうか、戦いに残ろうとする子分はほとんどいなかった。
これで周りの妨害を気にする必要もなくなるわけである。このような作戦を思いつくフユも流石である。
「ここが踏ん張りどころ…!」
私は呟き、大剣を握り直す。フユも狩猟笛を右肩に担ぎ、さらに力を入れている。
ここから、親玉との戦いの始まりである。