私たちは武器を構える。
対面するのは、瓦礫の上に鎮座し今にも襲いかかってきそうなドスジャグラス。
「お、おい、大丈夫なのかよ…?」
後ろでおじさんが少し狼狽えている。そりゃあ、目の前で10歳の双子が武器を構えてるところだなんて、あまりいい景色では無いだろうが、流石にここで引いていては、父の子供の名が廃ると言うものだ。とにかく、ここで犠牲者を出させるつもりはなかった。
最初に動いたのは、フユ。
私たちに攻撃強化をかける。やはりフユの鼓舞が一番力が出る。
ドスジャグラスがそれを聞くと即座に攻撃を仕掛ける。フユに向かって前脚を叩きつける。
フユはそれを横に回避して、その返りにぶん回すように一殴り。
私は瓦礫でジャンプをしながら抜刀で溜め斬りを決める。
ただこれだけでドスジャグラスは怯まない。
そんな一進一退の攻防を繰り広げようとする瞬間に、
「…あ、」
フユはいち早く危険を察知した。
「お姉ちゃん!退いて!」
フユがそう言うと、武器を納刀しておじさんのいる方向に走った。
「え?」
「いいから!」
私の疑問符に間髪入れずにフユが言う。何かがある。
「わかった!」
私も納刀して、フユのもとへ走っていく。そばにいるおじさんは何があったのかと慌てふためいている。
それを追うように、ドスジャグラスが飛びかかりの体勢に入る。
そして、ジャンプするタイミングで、
空から何かが降ってきた。
辺りが轟音に包まれる。
空から隕石でも降ってきたかのような衝撃波が辺りを襲う。風圧が一気にぶつかり10歳の私たちの体重くらいだったら吹っ飛ぶと思ったくらいである。まるで周辺の瓦礫がなくなり更地になるかのようなその勢いに、誰もが顔を手で覆い、見ることができないほどだった。
辺りに静けさが訪れる。私たちはそれぞれ顔を上げる。
「……え、」
「なんだぁ、ありゃあ」
私とおじさんがその景色を見て、声を失う。
轟音の爆心地には、ドスジャグラスを前脚で地面に押さえつける、巨体のモンスターがいた。
立派な四肢は大地を駆けるのに申し分なさそうで、そこには立派な爪があり、ドスジャグラスの喉元に食い込んでいた。足に一枚ずつ大きなヒレがついており、尾も細長い一本のものの下に尾ビレのようなものがついていた。
そしてその強そうな筋肉で重そうな体を十分に持ち上げられる力強い翼をはためかせていて、角を目尻の方に一対、額に大きな白い一本とついていた。そして、灰色の鱗に覆われる体で唯一の真っ赤な目が、印象的に私の目に写った。
ふと、辺りの雲行きが怪しくなったかと思うと、急にスコールのような雨が降り始める。それはまるで、このモンスターが豪雨を連れてきたようだった。段々と風も勢いを増していた。
「何かあったのか!?」
私たちに同行していたハンターたちがここにも集まってきた。ここにたどり着いた人が各々この今立ち込める鈍色の雲のような体色のモンスターに驚く。
「追い払う!」
そのモンスターに向かい、1人のハンターがライトボウガンを向けた。モンスターは目だけでそれをみて、暴れているドスジャグラスに再度脚を踏みつける。
「待って!」
それをフユが静止させる。モンスターの目がこちらへ動く。
「フユ、なんで?」
私がフユに聞く。
「未知のモンスター、これは本でもみたことがない、お父さんの教え、『下手に危害を加えない』」
フユは少し思い出してしまい、今は豪雨で見えないものの何かがこぼれ出たであろう。それをなんとか耐えてその発言をした。
モンスターはのっそりと体を伸ばした。
フユの発言の後、妙に辺りが静かになる。万一襲ってきた時のために、私たち含めハンターらが武器を構えて待つ。その空気に、豪雨の音がより強調される。
「グガァァァァァァ!!!」
一定の静寂をぶち破るようにモンスターが吠える。ギンと耳鳴りがするような重たい咆哮に、みんな怯んでしまう。
と、そのモンスターは、もう伸び切っているドスジャグラスの首根っこを咥え、とんでもなく大きな翼を大きく羽ばたかせ飛んでいった。
それと共に、風が少し和らぎ、雨が小降りになった。
私たちは、そろって力が抜けて、その場にペタンと尻もちをついた。
これが、後の宿敵である古龍、フユが名づけるに「フラウデュゴ」との最初の邂逅である。