そんなこんなで、シュカの案内のもと近くのハンター用のキャンプ地点にたどり着いた。
そのキャンプは崖による周辺の高低差を生かした高い位置に立地しており、周辺が自然の堀として機能しているようだ。それに加えて、その崖の上の高台の岩を、まるで人為的にくり抜いたかのような小さな洞窟の中にキャンプ地点があり、暗くじめじめするながらなんだか安心できる空間に仕上がっている。
そのキャンプ地点にて焚き火をつければ、荒々しくゆらめく炎が、洞窟の肌に心温かく思わせる暖色を散りばめ、心身ともに落ち着ける場所に成り上がる。
「…よし、焚き火はOKミャ」
それを慣れた手つきでセッティングするシュカ。猫の手ってここまで器用なのかと、正直私は驚いている。
「ガッツリ洞窟というわけでもないから、煙が溜まる心配がないのがいいね」
周辺を見渡しながら、そんなことをフユが呟く。
とりあえず、その焚き火を私たちは囲み、それぞれがそれぞれのことをする。私は晩御飯担当、シュカはそれのお手伝いを買って出てくれた。フユはフロギィやその他の記録をまとめて、シュントは毛繕い。
「シュカ、それとってくれない?」
「はいですミャ!」
という私とシュカのやりとりが響く中、フユは集中して手持ちの本に筆を滑らせる。シュントはそれを眺めながら大きく口を開けた。
「よし、ご飯の準備完了、と」
私がそう言って腰を下ろすと、各々がそれぞれのしていたことを一旦切り上げ、皿を取り分けたりと食事の準備を行う。なんだか一つの家庭のようなやりとりに、少し落ち着きを覚える。
「いただきます!」
私たちは声を合わせて挨拶し、ホカホカの料理に手をつける。焼いた肉を横から噛みつき、引きちぎり口に放り込む。若干がっつくような野生の食べ方も、私はハンターにならなかったらすることはなかっただろう。
と、一通り料理の出来を堪能したところで、私たちはとある話題に移る。
「シュカがオトモを志す話を教えて」
私はシュカに対して声をかける。
普段おどおどしている割に食事の時は少し口周りを汚していたシュカは、その手を止めると少し深く腰掛け直し、口調が少し重くなる。
「シュカは、元々野良のアイルーとして生きてきたミャ。それで、大型モンスターに襲われて、動けず野垂れ死しそうなところを、村のおじ様に拾われたミャ」
なるほど、普通のアイルーにしては大型モンスターに襲われるだなんてごめんな話である。
「おじ様というのは?」
フユがそこに繋げ、シュカがそれに答える形で話を続ける。
「おじ様は村で商店をしている方でしたミャ。その時はちょうど街から物を仕入れた時で、その帰りに拾われたミャ」
シュカの言う「おじ様」というワードの度、顔が暗くなるように見えるのは私だけなのだろうか。
その雰囲気に飲まれ、私たちは食事の手を止めて、シュカの方に注目する。
「シュカは結局おじ様の店の手伝いをすることになったミャ、そこでモンスターのことも勉強しながら、頑張ったミャ」
そのおじ様のお店のお手伝いをし、段々と店の看板娘のような働きぶりを見せつつ、モンスターのことを知り、自身の怖がりをなくそうと励んだようだ。
「おじ様のところには、ハンターさんもよく来て、そのアイルーとかからもモンスターの話をよく聞いてたミャ」
これが、シュカのハンターという憧れの存在を膨らませていった要因なのだろう。
私たちは、そのおじ様の商店における話を、とても真剣に聞いていた。シュントは少し後ろの方であくびをしていた。
「シュカはモンスターに襲われてから、とても怖かったミャ。けれども、それに果敢に攻めるハンターやオトモアイルーはとてもすごいと思ったミャ。おじ様に、『いつかオトモになりたい』と話したら、いつかなれると励ましてくれたミャ」
そしてそれを励ますおじ様、とても頼もしく、ありがたい存在だったのだろう、そんなふうに私たちは聞いていた。
「そしたら、街が嵐に襲われたミャ」
唐突な話の展開に、私たちは2人口を揃えて「え?」と声を出してしまう。
「シュカは生き残ったけど、街のほとんどが跡形もなく崩れて、人1人出てくることはなかったミャ…」
シュカの突然の出来事。それを抱えた上でのあの真剣さだったのだ。おんなじ境遇の私たちは、あのオトモを志願したシュカの真剣な顔を思い出す。
「シュカは街を出て、ハンターを探したミャ。あの街を復興させるべく、なんとかできる人。そして…、おじ様が笑ってオトモとして送り出せるようなハンターをミャ」
「わかった」
私は口を開く。シュカが、少し涙目になりながらこちらを見る。
「私たちもそこに向かう予定だったし。復興のお手伝いもする。それに…」
と、フユの方を見る。フユは、私の言わんとすることを察したように頷く。
「私たちもオトモがいると頼もしいからね、シュカのモンスター恐怖症は道中で頑張って治そうか」
と、シュカに声をかけた。
「ミャミャ!」
シュカはとても喜んでいるようである。
「このシュカ、主人様のために尽くすミャ!」
そう飛び跳ねて、敬礼をして見せるシュカ。
「と、とりあえず、食事を済ませて、明日に備えておくミャ!このシュカ、主人様のために頑張るミャ!」
そう意気込むと、止めていた食事の手を動かしてどんどん食事を平らげる。なんだか見てるだけでも賑やかに思えるその微笑ましい姿を見ながら、私たちも、少し冷めてしまった食事に手をつけた。
温かな火を前に温かな談笑をする私たち。シュカのことをよく知れたし、何よりとても楽しかった。